研究報告書 2024.07.26 第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報) この記事は分で読めます シェア Tweet 大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員 NIRA総合研究開発機構 概要 慶應義塾大学経済学部大久保敏弘研究室、(公財)NIRA総合研究開発機構では、「第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(注1)」を実施した。本調査は、ポストコロナにおけるデジタル技術の社会実装の状況や、デジタル技術が就業者の働き方、生活、意識にもたらす変化等を把握することを目的としている。調査は2024年5月18日(土)~6月11日(火)に行われた。回収数は10,670件であり、うち過去の同調査からの継続回答は9,779件である。速報結果は以下のとおり。この速報のグラフ中の数字はすべて四捨五入したものであるため、グラフ中の数字の合計が100%にならなかったり、本文中の数字と一致しなかったりすることがある。 速報を読む(2024年7月26日公表) INDEX Ⅰ 調査結果 1.テレワーク利用率の推移 1.1.居住地域別、都道府県別でみたテレワーク利用率の推移 1.2.産業別でみたテレワーク利用率の推移 1.3.職業別でみたテレワーク利用率の推移 1.4.悪天候・災害、交通障害、家庭の事情が生じた時のテレワーク利用率 2.通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度の推移 3.テレワークに関する働き方や生活の考え 4.ICTツールの活用状況 5.SNSの利用状況 6.近い将来の仕事について 7.消費行動のデジタルシフト 8.デジタルプラットフォームでのオンラインショッピング 9.政策への賛否 10.能登半島地震に関する支援行動 11.メンタルヘルス 12.グリーン・ジョブ 13.金融資産 13.1.年齢階層別にみた金融資産額 13.2.金融資産の種類 Ⅱ 調査概要 1.調査の趣旨・目的 2.調査名 3.主な調査項目 4.調査期間 5.調査方法 6.回収数 7.回答者の属性 8.研究体制 9.外部資金 ポイント●2024年5月時点の全国の就業者のテレワーク利用率は13%となった。東京圏のテレワーク利用率は全国と同様の動きを示していたが、このところやや低下し21%となった。●テレワークを用いた働き方や生活に関して、肯定的な意見も否定的な意見も緩やかに増えており、ポストコロナでのテレワークの認識が形成されつつある。●テレワーク利用者のオフィス・現場での自動化ツールの利用率は、一貫して上昇しており、2023年10月以降は20%を超えている。●仕事上、SNSを利用している人の割合は26%となり、主には、仕事に役立つ情報、知識の獲得を目的として利用されている。●近い将来のICTや自動化技術を用いた仕事に関する認識(「人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を補助する」等)は、「できない」の回答が、「できる」の回答を大きく上回る。経年的には、2021年9月時点から2023年3月にかけて「できない」の回答割合が一旦大きく低下したが、それ以降、同割合は上昇している。●キャッシュレス決済について、フィンテックサービス(PayPayなど)の利用率は、2019年12月以降、一貫して上昇している。●デジタルプラットフォームでのオンラインショッピングを利用している人の割合は73%であり、利用者に限ると、購入金額の平均はおよそ2万5千円、最もよく購入されているのは「食料、飲料、酒類」であった。●政策の賛否について、デジタル化に関する政策への賛成の割合が、経年的に低下している。賛成の割合が最も高かったのは、地球温暖化防止対策で、特に年齢階層が高いほど、賛成の割合が高かった。●グリーン・ジョブに携わっている人の割合は21%であり、2021年9月時点と比べると10%ポイント低下する結果となった。 図表図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移図1-1-1 居住地域別でみたテレワーク利用率の推移図1-1-2 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移―新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較―図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細)図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)図1-4 災害、交通障害、家庭の事情が生じた時のテレワーク利用率図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移図2-2 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移図3 テレワークに関する働き方や生活に関する考え図4-1 ICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用別)図4-2 目的別にみたICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用者)図5-1 仕事上のSNSの利用状況図5-2 仕事上のSNSの利用目的図6-1 近い将来の仕事について図6-2 複雑な問題に直面する頻度と、自動化技術による業務の補助可能性の認識図7-1 決済方法の推移図7-2 オンラインサービスの利用の推移図8-1 デジタルプラットフォームでのオンラインショッピング図8-2 デジタルプラットフォームでのオンラインショッピングの利用額図9-1 政策への賛否図9-2 年齢階層別にみた地球温暖化防止対策、自動運転の推進への賛否図10-1 能登半島地震に関する支援行動図10-2 能登半島地震に関する支援行動(詳細)図10-3 一般的な人への信頼と寄付行動図11 K6の推移図12-1 グリーン・ジョブに携わっている人の割合図12-2 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(詳細)図12-3 グリーン・ジョブに費やす時間の割合(グリーンジョブに携わっている人のみ)図13-1 年齢階層別にみた金融資産額図13-2 保有している金融資産の種類図13-3 年齢階層別にみた保有している金融資産の種類 Ⅰ 調査結果 1.テレワーク利用率の推移 Q2.あなたは以下の時期に通常業務でテレワークを利用していましたか。(それぞれ1つずつ)(1)2024年5月3週目(5月13日~19日) 全国のテレワーク利用率の推移(注2)は、第1回目の緊急事態宣言が出された2020年4~5月は25%まで大幅に上昇したが、6月の緊急事態宣言解除後には17%に急速に低下した。その後、2022年12月までおおむね横ばいで推移した。2023年3月には13%まで低下し、それ以降は安定的に推移し、2024年5月時点も13%となった(注3)。東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)のテレワーク利用率(居住地ベース)は全国と同様の動きを示していたが、このところやや低下し、2024年5月時点は21%となった。 図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移 (クリックすると別ページで確認できます。) 1.1.居住地域別、都道府県別でみたテレワーク利用率の推移 居住地域別にテレワーク利用率をみると(図1-1-1)、京阪神(京都府・大阪府・兵庫県)、その他の地域では、2023年3月に低下し、その後、安定的に推移している。東京圏(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)も同様の動きを示していたが、このところやや低下している。 図1-1-1 居住地域別でみたテレワーク利用率の推移 (クリックすると別ページで確認できます。) 図1-1-2は居住都道府県別にテレワーク利用率をみたものである。コロナ禍前の2020年1月、全国的にテレワーク利用が最も進んだ1回目の緊急事態宣言時の2020年4~5月、直近の2024年5月の3時点の結果を示している。1回目の緊急事態宣言時にテレワーク利用率が伸びた大都市圏で、ピーク時からのテレワーク利用率の低下が目立つ。 図1-1-2 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移―新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較― (注)nは2024年5月時点のサンプルサイズを示している。軸からグレー、青、点線枠の白の順に積み上がっているのは、2020年1月時点より2020年4~5月時点の利用率が高く、その後、2024年5月時点では減少したことを示す。また、第1層が青になっている県(例:青森県)では、2020年1月時点よりも、2024年5月時点の水準が低くなっていることを示す。 1.2.産業別でみたテレワーク利用率の推移 産業別に推移をみると(図1-2-1)、2024年5月時点でテレワーク利用率が高い産業は、「情報サービス・調査業」、「通信情報業」、「金融・保険業」、「製造業」となった。他方、テレワーク利用率が低い産業として、「公務」、「運輸業」、「医療・福祉」があげられる。 図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移 時系列で詳しくみると(図1-2-2)、産業間のテレワーク利用率の差が徐々に縮まってきていることがわかる。 図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細) (クリックすると別ページで確認できます。) 1.3.職業別でみたテレワーク利用率の推移 職業別に推移をみると(図1-3-1)(注4)、2024年5月時点でテレワーク利用率が高い職業は、「管理的職業」、「専門的・技術的職業」、「事務」となった。他方、テレワーク利用率が低い職業として、「その他の職業」、「サービス職業」、「販売」があげられる(注5)。 図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移 時系列で詳しくみると(図1-3-2)、2023年以降、特に管理的職業のテレワーク利用率の低下が進んでいたが、このところやや上昇している。 図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細) (クリックすると別ページで確認できます。) 1.4.悪天候・災害、交通障害、家庭の事情が生じた時のテレワーク利用率 2024年5月時点の悪天候・災害、交通障害、家庭の事情が生じた時のテレワーク利用率をみると(図1-4)、いずれも10%未満となった。これらの中では、悪天候・災害時のテレワーク利用率が比較的高い。2023年10月と比べると、悪天候・災害、交通障害時のテレワーク利用率がやや低下した。 図1-4 災害、交通障害、家庭の事情が生じた時のテレワーク利用率 2.通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度の推移 Q3.あなたは以下の時期に、通常の職場に出勤しての勤務とテレワーク勤務を、どのぐらいの頻度で行いましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(1)2024年5月3週目(5月13日~19日) 通常の職場で勤務している人(テレワーク利用者含む)の出社頻度の推移をみると(図2-1)、2023年3月以降、「週5日以上」の割合が若干増加していたが、このところやや低下し、2024年5月時点は65%となった。一方、「週1日以下」の割合がやや上昇した。 図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移については(図2-2)、2023年10月から2024年5月にかけて、「週1日以下」の割合が増加し、週2日以上の割合が低下した。 図2-2 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移 3.テレワークに関する働き方や生活の考え Q4.テレワークによる働き方や生活に関するあなたの考えとして、最も近いものをお答えください。(それぞれ1つずつ)1.テレワークにより、労働時間を柔軟にでき、私生活を充実させることができる2.テレワークにより、通勤を減らし、遠隔地の好きなところに住むことができる3.テレワークにより、同僚や社外の人とコミュニケーションがしやすくなる4.テレワークにより、海外とのビジネス・仕事がしやすくなる5.テレワークにより、新しいあるいは創造的なアイデアをうみだしやすくなる6.テレワークにより、事務仕事(事務・連絡などルーティン仕事)を効率化することができる7.テレワークが進めば、組織・事業としての結束や一体感の維持が難しくなる8.テレワークが進めば、自律的に時間管理をするのが難しくなる9.テレワークにより、孤立感が深まり、メンタルヘルスの維持が難しくなる10.テレワークが進めば、成果主義の導入が進む テレワークに関する働き方や生活の考えについて、その変化を確認するため、2020年6月、2022年6月、2023年3月、2024年5月の調査すべてに参加したサンプルに限定した集計結果を報告する。 全体的には、「テレワークにより、同僚や社外の人とコミュニケーションがしやすくなる」、「テレワークにより、新しいあるいは創造的なアイデアをうみだしやすくなる」を除き、肯定的な意見(「とてもそう思う」と「ややそう思う」の合計、以下同)が、否定的な意見(「まったくそうは思わない」と「あまりそうは思わない」の合計、以下同)を上回る(図3)。 図3 テレワークに関する働き方や生活に関する考え 時系列の変化をみると、多くの項目で、肯定的な意見も否定的な意見も、直近では緩やかに増えている。肯定的な意見は、2020年6月から2022年6月にかけて低下したが、その後、2024年5月にかけて上昇している。他方、否定的な意見は、2020年6月から2024年5月にかけて一貫して上昇している。こうした変化は、ポストコロナで恒常的にテレワークを利用する場合のメリット、デメリットの認識が、緩やかに形成されつつあるためと考えられる。 4.ICTツールの活用状況 Q5.2024年5月3週目(5月13日~19日)で、あなたは、通常の職場に出勤しての勤務やテレワークで、以下のどのICTツールを利用していましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(いくつでも)<コミュニケーションの円滑化>1.テレビ会議・Web会議(Zoom、Skype、Teamsなど)2.チャットやSNSによる社内情報共有(Slack、LINEなど)<共同作業の円滑化>3.ファイル共有・共同作業(Dropbox、OneDriveなど)4.リモートアクセス(SWANStor、Platform V Systemなど)5.タスク・プロジェクト管理(Trello、Backlogなど)<業務管理>6.電子決裁(ジョブカンワークフロー、Create!Webフローなど)7.勤怠管理、グループウェア(Office365、サイボウズなど)8.従業員のメンタルヘルスチェック(jinjerワーク・バイタル、音声こころ分析サービスなど)9.営業管理(Sales Cloud、kintoneなど)10.生産管理・販売管理・在庫管理(楽商、アラジンオフィスなど)11.採用管理(HRMOS採用、ジョブカン採用管理など)12.人事管理(SmartHR、OBIC7など)13.会計管理(弥生会計、SuperStream-NXなど)<オフィス・現場の自動化>14.RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)(WinActor、Robotic Crowdなど)15.非接触型テクノロジー(自動運転ロボット、無人レジなど)16.自動翻訳(Google翻訳、DeepL翻訳など)17.BIツール(Tableau、Googleデータポータルなど)18.画像認識・画像解析ツール(Amazon Rekognition、Face APIなど)<新しいコンテンツの生成>19.生成AI(ChatGPT、Bing AI、Google Bardなど)<その他>20.上記のうち利用しているものはない・わからない 選択肢に提示したICTツールを少なくとも1つは利用している人の割合(「ICT利用率」、以下同)をテレワーク利用別にみると(図4-1)、テレワーク利用者はICT利用率が顕著に高い(注6)(注7)。しかし、推移をみると、このところやや低下し、2024年5月時点は81%となった。 テレワークを利用していない人についても、職場のデジタル化や、テレワーク利用者とのコミュニケーションにICTツールは有用であり、一定程度、利用していることがわかる。推移をみると、このところやや上昇し、2024年5月時点は29%となった。 図4-1 ICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用別) テレワーク利用者のICT利用率をツールの目的別にみると(図4-2)、コミュニケーションツールの利用率が最も高く、次に共同作業ツール、業務管理ツールが続いた。共同作業ツール、業務管理ツールは、このところやや低下している。オフィス・現場の自動化ツールは、2020年6月時点はその利用率が5%と極めて低かったが、一貫して上昇しており、2023年10月以降は20%を超えている。なお、自動化ツールの1つである生成AIの利用率は3.4%であった。 図4-2 目的別にみたICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用者) 5.SNSの利用状況 Q9.あなたは仕事上、SNS(※)を利用していますか。利用している場合はその用途を選んでください。(いくつでも)※本質問でのSNSはFacebook、X(旧Twitter)、LinkedIn、Instagram、YouTubeなどを指します。1.仕事に役立つ情報や知識を得るため2.仕事に役立つ専門的な人脈を作る、または維持するため3.仕事の新しいアイデアや発想を作り出すため4.社外の人と仕事関連の質問や相談、議論をするため5.同僚と仕事関連の質問や相談、議論をするため6.業界のリーダーやインフルエンサーをフォローするため7.仕事から精神的に解放するため8.同僚との個人的な関係を構築または強化するため9.仕事相手について知るため10.市場ニーズやトレンドを調べるため11.顧客やクライアントからのフィードバックや要望を収集するため12.自分の仕事上のアイデアや意見を発信するため13.自分の仕事の宣伝や顧客・ファンの獲得をするため14.新しい仕事の機会を見つけるため15.仕事上、SNSは利用していない 仕事上、SNSを利用している人は26%であった(図5-1)。 図5-1 仕事上のSNSの利用状況 仕事上、SNSを利用している人の利用目的をみると、「仕事に役立つ情報や知識を得るため」の回答が、他の目的と比べて顕著に多い(図5-2)。続いて、「仕事の新しいアイデアや発想を作り出すため」であり、SNSは情報、知識、アイデアの獲得、創出のために、利用されていることがうかがえる。また、「仕事に役立つ専門的な人脈を作る、または維持するため」や、「同僚と仕事関連の質問や相談、議論をするため」の回答も比較的多く、人的ネットワークの維持、発展や、同僚との仕事上のコミュニケーションツールとしても利用されていることがわかる。 図5-2 仕事上のSNSの利用目的 6.近い将来の仕事について Q7.あなたの仕事について、以下のことは近い将来どうなると思いますか。(それぞれ1つずつ)1.自身がテレワークで働ける2.国内の他の会社が、リモートで業務を代行する3.海外の他の会社が、リモートで業務を代行する4.会社に属さないフリーランスなどの個人が、リモートで業務を代行する5.人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を補助する6.人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を代行する7.人工知能に意思決定してもらい、それに従って働く8.自分の仕事は自動化されて完全消滅する9.VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)やAR(拡張現実)などのバーチャル技術を使って仕事をする、商品・サービスを提供する10.自身がリモートで本業以外の仕事を兼業・副業する 近い将来の仕事に関する認識について、2021年~2023年に実施した「テレワークに関する就業者実態調査」の結果と共に、4時点の結果を紹介する。これらは4時点の調査全てに参加した人に限定して集計した結果である。 いずれの項目も、できない(「まったくできない」、「あまりできない」の合計、以下同)の割合が、できる(「かなりできる」、「ある程度できる」の合計、以下同)を大きく上回った(図6-1)。2024年5月時点では、いずれの項目も、「できない」との回答が50%を超える結果となった。 図6-1 近い将来の仕事について 「できる」と回答した割合が比較的高かったのは、「自身がテレワークで働ける」、「人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を補助する」、「人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を代行する」であった。 一方、「できる」と回答した割合が比較的低かったのは、「自分の仕事は自動化されて完全消滅する」、「VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)やAR(拡張現実)などのバーチャル技術を使って仕事をする、商品・サービスを提供する」、「海外の他の会社が、リモートで業務を代行する」であった。 時系列でみると、いずれの項目も2021年9月時点では「できない」の割合が高く、その後、2023年3月にかけて同割合が一旦大きく低下し、それ以降、上昇している。 さらに、これらの結果は、どのような仕事を行っているかに大きく依存する。1例として、2024年5月の調査に参加した人に限定して、「良い解決策を見つけるのに少なくとも30分はかかるような複雑な問題に直面すること」の頻度と「人工知能やロボットなどの自動化技術が、業務を補助する」との認識の関係をみると、複雑な問題に直面しやすい就業者ほど、自動化技術が業務を補助するという認識が強いことがわかる(図6-2)。 図6-2 複雑な問題に直面する頻度と、自動化技術による業務の補助可能性の認識 7.消費行動のデジタルシフト Q26.以下の項目について、現在の日常的な利用状況として、最も近いものをお答えください。(それぞれ1つずつ)1.クレジットカード決済2.デビットカード決済3.現金支払い4.プリペイド(前払い)式の電子マネー決済5.その他のフィンテックサービス6.ネットデリバリーサービス7.オンラインショッピング8.インターネットバンキング9.有料のオンライン娯楽サービス10.シェアリング 本調査では、キャッシュレス決済、オンラインサービスの利用状況について聞いた。テレワークに関する就業者実態調査では、2019~2022年時点の状況も聞いており、以下では5時点の集計結果を報告する。 キャッシュレス決済については(図7-1)、その他のフィンテックサービスを利用している人の割合(「よく利用している」、「ときどき利用している」の合計、以下同)が、2019年12月以降、一貫して上昇しており、2024年5月時点で51%となった。一方、現金支払いは2022年12月までは低下傾向にあったが、このところ上昇し、2024年5月時点で73%となった。 図7-1 決済方法の推移 オンラインサービスについてみると(図7-2)、これまでと同様、最も利用されているものはオンラインショッピングだが、推移をみると、利用している人の割合はやや低下傾向にある。有料のオンラインサービスは、利用している人の割合が緩やかに増加している。 図7-2 オンラインサービスの利用の推移 8.デジタルプラットフォームでのオンラインショッピング Q11.デジタルプラットフォームが発達し、店舗に行くことなく、国内外から様々なものを手軽に購入できるようになりました。最近1ヶ月間のデジタルプラットフォームでのオンラインショッピング(※)において、以下の項目の購入額として、最も近いものをお答えください。(それぞれ1つずつ)また、販売元が海外の商品・サービスがある場合、小規模事業者・個人事業の商品・サービスがある場合は、それぞれ☑を入れてください。※代表的なデジタルプラットフォームとして、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、メルカリ、ZOZOTOWN、eBay、AliExpress、Etsy、ASOSなどがあります。1.メディア(書籍、雑誌、映像・音楽ソフト・ゲームなど)2.食料、飲料、酒類3.家事用品・生活雑貨4.医薬品・化粧品5.デジタル家電(パソコン、タブレット、スマホ、デジタルカメラなど)6.家具・生活家電(デジタル家電除く)7.衣類・身の回り品・アクセサリー・雑貨類8.趣味・スポーツ・楽器・娯楽用品(メディア除く)9.DIY、ガーデン、工具、ペット、花10.代行サービス・修理サービス デジタルプラットフォームでのオンラインショッピングについて、上記の10品目で最もよく購入されているのは「食料、飲料、酒類」であった(図8-1)。続いて、「家事用品・生活雑貨」、「衣類・身の回り品・アクセサリー・雑貨類」となった。一方、購入されにくいのは、「家具・生活家電」、「DIY、ガーデン、工具、ペット、花」、「代行サービス・修理サービス」があげられる。 図8-1 デジタルプラットフォームでのオンラインショッピング 利用者の購入金額をみると、どの項目も「1円~3,000円」が最も多い。また、上記10品目の合計購入額は図8-2のようになった。すべての品目でデジタルプラットフォームでのオンラインショッピングを利用していない人の割合は27%であった。利用している人の中では、5千円~2万円で26%を占め、1円~2万円で43%となる。半数弱の人が、デジタルプラットフォームで、月に1円~2万円の買い物をしていることがわかる。全体の平均金額はおよそ2万5千円であった。 図8-2 デジタルプラットフォームでのオンラインショッピングの利用額 9.政策への賛否 Q12.国民全体にとって、政府が以下の取組を進めることに賛成ですか、反対ですか。(それぞれ1つずつ)1.オンライン診療の推進2.オンライン教育の推進3.Eコマース・デジタル決済の推進4.人工知能(AI)、ビッグデータ活用の推進5.生成AI(例:ChatGPT)の開発・利用規制(例:開発における透明性確保の義務、利用における個人情報へのアクセス制限、著作権を侵害するコンテンツの除去など)6.生産拠点の国内回帰7.財・サービスの国境を越えた自由な取引(グローバリゼーション)8.人の自由な国際間移動や海外の人材の受入9.自動運転の推進10.常気象対策、地球温暖化防止対策 いずれの政策も、賛成(「賛成」、「やや賛成」の合計、以下同)の割合が、反対(「反対」、「やや反対」の合計、以下同)を大きく上回る結果となった(図9-1)。ただし、賛成の割合は50%に満たないものが多い。賛成の割合が最も高かったのは、地球温暖化防止対策で50%強であった。 図9-1 政策への賛否 時系列でみると、デジタル化に関する政策(上記の項目1~5、9)は、直近ほど、賛成の割合が低下する傾向がみられる。 また、地球温暖化防止対策への賛否を年齢階層別にみると、年齢階層が高いほど、賛成の割合が高い(図9-2)。地球環境問題のような世代を超える政策課題は、次世代に先送りされやすいともいわれるが、本結果からは、地球環境問題に関して、高年齢層の人々の方が、より将来世代の利益を考慮に入れた考えを有している可能性がうかがえる。なお、自動運転の推進においても、やや高年齢層の人々の方が若年層よりも賛成の割合が高いが、地球温暖化防止対策ではその傾向が顕著であり、年齢階層間で大きな違いがある。 図9-2 年齢階層別にみた地球温暖化防止対策、自動運転の推進への賛否 10.能登半島地震に関する支援行動 Q13.2024年1月1日に発生した能登半島地震に関して、以下のことをしましたか。また、する予定はありますか。(それぞれ1つずつ)1.寄付(クラウドファンディングによる寄付を除く)2.クラウドファンディングによる寄付3.被災地自治体へのふるさと納税4.北陸の産品のオンラインショッピング5.北陸観光(「北陸応援割」を利用しない)6.北陸観光(「北陸応援割」を利用した)7.被災地での災害ボランティア活動 能登半島地震に関する支援行動をみると、上記のいずれかの支援行動をとった人の割合は28%、今後のする予定がある人を含めると41%となった(図10-1)。 図10-1 能登半島地震に関する支援行動 次に項目別にみると、最も割合が高かった行動が、寄付(クラウドファンディングを除く)であり、すでに行った人は21%、今後する予定がある人を含めると29%となった(図10-2)。その他の項目については、すでに行った人の割合はいずれも10%未満だった。 図10-2 能登半島地震に関する支援行動(詳細) 一般的な人への信頼と寄付行動(クラウドファンディング含む)との関係をみると、「一般に、人は信用できる」について肯定的な人は、比較的、寄付行動をとったことがわかる。寄付行為と他者への信頼の間には、関係性があることがうかがえる。 図10-3 一般的な人への信頼と寄付行動 11.メンタルヘルス 就業者のメンタルヘルスについて調べた。ここでは、メンタルヘルスを測定するための指標として、K6を用いる。K6は得点が高いほど、メンタルヘルスが悪いと解釈できる指標であり、詳細については脚注を参照されたい(注8)。 本調査において計測した2020年3月~2024年5月の間のK6の得点分布を確認する(図11)。その結果、2020年3月から2021年9月にかけて、K6の得点が低い人の割合が増え、メンタルヘルスが大きく改善していることがわかる。2021年9月以降の変化は小さいものの、2023年10月までは緩やかに改善し、その後、2024年5月にかけて、若干悪化した。 図11 K6の推移 12.グリーン・ジョブ Q5.あなたの仕事はグリーン・ジョブに該当しますか。グリーン・ジョブの分類(以下参照)ごとに、お答えください。(それぞれ1つずつ)1.環境関連の法令順守(コンプライアンス)、教育・訓練、社会の認識の向上2.リサイクル・再利用、温室効果ガスの削減、公害の削減・除去3.天然資源の保護(有機農業、持続可能な林業、土地管理、土壌、水、野生生物の保護、雨水管理に関連するものも含まれます)4.エネルギー効率の向上5.再生可能資源からのエネルギー生成 日本でどの程度グリーン・ジョブが行われているかを調べた。ここでのグリーン・ジョブとは、米国労働統計局(BLS)の定義に従い、「環境に有益な、あるいは天然資源を保全するような商品・サービスを提供する仕事」や「生産プロセスを環境にやさしくしたり、天然資源の使用量を少なくすることに関係する仕事」を指している。上記の5つの分類ごとに、「該当する」「仕事の一部が該当する」「該当しない」の選択肢を提示した。 2024年5月時点で、少なくとも1つでも「該当する」あるいは「仕事の一部が該当する」と答えた人の割合は就業者全体の21%であった(図12-1)。2021年9月時点と比べると、10%ポイント低下する結果となった。 図12-1 グリーン・ジョブに携わっている人の割合 分類別でみると、2024年5月時点で該当する割合(「該当する」と「仕事の一部が該当する」の合計、以下同)が最も大きいものは、「環境関連の法令順守(コンプライアンス)、教育・訓練、社会の認識の向上」の17%である(図12-2)。次いで「リサイクル・再利用、温室効果ガスの削減、公害の削減・除去」(14%)である。一方で、「再生可能資源からのエネルギー生成」や「天然資源の保護」、「エネルギー効率の向上」に該当する人の割合は、11~13%とやや小さい。 図12-2 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(詳細) グリーン・ジョブに携わる人が、仕事の中でグリーン・ジョブに費やす時間の割合をみると、10%が最も大きく、グリーン・ジョブ従事者の49%にのぼる(図12-3)。仕事におけるグリーン・ジョブの比重はそれほど高くないといえる。この傾向は2021年9月時点と大きな違いはない。 図12-3 グリーン・ジョブに費やす時間の割合(グリーンジョブに携わっている人のみ) 13.金融資産 13.1.年齢階層別にみた金融資産額 Q23.あなたの世帯全体の金融資産(預貯金や有価証券等)は、およそどのくらいですか。(借金を引く前の額をお答えください)。(1つだけ) 世帯全体の金融資産額について、「金融資産はない」の割合が最も高く、28%となった。中央値は「100万円以上300万円未満」だった。なお、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」の結果によると、総世帯の金融資産非保有の割合は28.4%、中央値は230万円であり、本調査と同水準である。 年齢階層別にみると、どの年齢階層でも「金融資産はない」の割合が最も高く、年齢階層が高いほど金融資産額が大きくなる傾向がある。各年齢階層の中央値をみると、10~20代、30代では「100万円以上300万円未満」、40代、50~64歳では「300万円以上500万円未満」、65歳以上では「500万円以上700万円未満」となった。 図13-1 年齢階層別にみた金融資産額 13.2.金融資産の種類 Q31.あなたは以下の資産を保有していますか。(いくつでも)1.外貨預金2.株式3.債券4.投資信託5.REIT(不動産投資信託)6.先物、オプション、コモディティ商品(金など)7.FX(外国為替証拠金取引)8.デジタル通貨・暗号資産、仮想通貨(ビットコイン等)9.資産運用目的の不動産10.貯蓄型の生命保険11.確定拠出年金(iDeCo、企業型)12.新NISA(2024年1月から)13.旧NISA(2023年12月まで)14.保有していない15.わからない・答えたくない 上記の金融資産を保有している割合をみると、保有率が最も高いものは「株式」で24%、続いて、「新NISA」、「投資信託」となった(図13-2)。他方、保有率が低いものとして、「REIT」、「資産運用目的の不動産」、「先物、オプション、コモディティ商品」があげられる。一方、これらの金融資産を保有していない割合は35%となった。なお、預貯金は選択肢に含んでいない。 図13-2 保有している金融資産の種類 年齢階層別にみると、「株式」、「投資信託」、「貯蓄型の生命保険」、「外貨預金」、「債権」は、年齢階層が高くなるほど保有率が高い傾向がある(図13-3)。他方、「新NISA」、「FX」、「デジタル通貨・暗号資産、仮想通貨」、「先物、オプション、コモディティ商品」は、年齢階層が低くなるほど保有率が高い傾向がある。なお、「新NISA」については、10~20代の保有率は30代、40代よりも低い。 図13-3 年齢階層別にみた保有している金融資産の種類 参考文献川上憲人(2007)「全国調査におけるK6調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成18年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.Furukawa, T.A., Kawakami, N., Saitoh, M., Ono, Y., Nakane, Y., Nakamura, Y., Tachimori, H., Iwata, N., Uda, H., Nakane, H., Watanabe, M., Naganuma, Y., Hatah, Y., Kobayashi, M., Miyake, Y., Takeshima, T., Kikkawa, T. (2008)“The performance of the Japanese version of the K6 and K10 in the World Mental Health Survey Japan,” International Journal of Methods in Psychiatric Research, 17 (3), 152–158.Kessler, R. C., P. R. Barker, L. J. Colpe, J. F. Epstein, J. C. Gfroerer, E. Hiripi, M. J. Howes, S. T. Normand, R. W. Mandersheid, E. E. Walters, and A. M. Zaslavsky. (2003)“Screening for Serious Mental Illness in the General Population,” Archives of General Psychiatry, 60, 184-189.Okubo, T. (2022). Telework in the Spread of COVID-19. Information Economics and Policy, 100987. Ⅱ 調査概要 1.調査の趣旨・目的 デジタル経済・社会に関する就業者実態調査は、ポストコロナにおけるデジタル技術の社会実装の状況や、デジタル技術が就業者の働き方、生活、意識にもたらす変化等を把握することを目的としている。新型コロナの感染拡大初期から、同一の就業者を追跡調査することにより、新型コロナ禍からポストコロナにかけての変化をより正確に把握することができる。 本調査は、2020年4月、6月、12月、2021年4月、9月、2022年2月、5月、12月、2023年3月、10月の計10回実施したテレワークに関する就業者実態調査に続く、調査となる。就業者の働き方や生活の変化を捉え、災害や感染症による被害を受けても、1人ひとりが能力を十分に発揮して働くことができる社会に向けての課題を分析できる調査設計にしている。 2.調査名 第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査 3.主な調査項目 ・デジタルツール、デジタルシステムの利用状況 ・AI、テレワークが仕事に及ぼす影響 ・SNSの利用状況 ・キャッシュレス決済、オンラインサービスの利用状況 ・テレワークの利用状況、利用頻度、テレワークが仕事・生活に及ぼす影響 ・会社・経営組織の動向 ・メンタルの状態・コロナに対する意識 ・政策への賛否 ・能登半島地震にかかる被災地支援 4.調査期間 2024年5月18日(土)~2024年6月11日(火) 5.調査方法 1)実施方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)。回収目標数を10,000サンプルとして、過去の調査と同様のスクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信し、回収した(注9)。2)調査機関:株式会社クロス・マーケティング3)調査対象者:調査会社に登録しているインターネット調査登録モニター4)調査対象:(ア)テレワークに関する就業者実態調査の第1回から第10回調査の回答者(イ)第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査から参加する就業者 6.回収数 総数:10,670件 うち、過去の調査からの継続回答は9,779件、本調査から参加する新規回答は891件。 7.回答者の属性 (クリックすると別ページで確認できます。) 8.研究体制 大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員加藤究 フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員神田玲子 NIRA総研理事・研究調査部長井上敦 NIRA総研主任研究員関島梢恵 NIRA総研主任研究員鈴木日菜子 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 9.外部資金 本調査研究は科研費(基盤研究B「ポストコロナの世界経済とデジタル経済:国際貿易・空間経済学・災害の経済による分析」研究代表者:大久保敏弘23H00821、挑戦的萌芽研究「AIがもたらす不平等と平等:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)による解決」研究代表者:大久保敏弘24K21419)の補助を受けている。 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2024)「第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報)」 脚注 1 この調査研究は科研費(基盤研究B「ポストコロナの世界経済とデジタル経済:国際貿易・空間経済学・災害の経済による分析」研究代表者:大久保敏弘23H00821、挑戦的萌芽研究「AIがもたらす不平等と平等:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)による解決」研究代表者:大久保敏弘24K21419)の補助を受けている。 1 この調査研究は科研費(基盤研究B「ポストコロナの世界経済とデジタル経済:国際貿易・空間経済学・災害の経済による分析」研究代表者:大久保敏弘23H00821、挑戦的萌芽研究「AIがもたらす不平等と平等:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)による解決」研究代表者:大久保敏弘24K21419)の補助を受けている。 2 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の2020年3月時点では就業している人のみを対象としたが、第2~11回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。 2 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の2020年3月時点では就業している人のみを対象としたが、第2~11回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。 3 各時期の詳細結果については、2020年1~3月は第1回調査、4~6月の結果は第2回調査、9~12月の結果は第3回調査、2021年1~4月は第4回調査、7~9月は第5回調査、2021年12月~2022年1月は第6回調査、2022年3~5月は第7回調査、8~12月は第8回調査、2023年3月は第9回調査、4~10月は第10回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第4回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第5回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第6回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第6回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第7回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)―『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む―」第8回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第8回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)―『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む―」第9回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第9回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第10回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第10回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」 3 各時期の詳細結果については、2020年1~3月は第1回調査、4~6月の結果は第2回調査、9~12月の結果は第3回調査、2021年1~4月は第4回調査、7~9月は第5回調査、2021年12月~2022年1月は第6回調査、2022年3~5月は第7回調査、8~12月は第8回調査、2023年3月は第9回調査、4~10月は第10回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第4回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第5回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第6回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第6回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第7回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)―『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む―」第8回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第8回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)―『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む―」第9回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第9回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第10回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第10回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」 4 詳細なテレワーク利用の要因分析に関してはOkubo(2022)を参照。 4 詳細なテレワーク利用の要因分析に関してはOkubo(2022)を参照。 5 「その他の職業」には、保安、農林漁業、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、分類不能の職業に従事する者が含まれている。 5 「その他の職業」には、保安、農林漁業、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、分類不能の職業に従事する者が含まれている。 6 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。 6 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。 7 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションツールとして、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業ツールとして、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理ツールとして、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィス・現場の自動化ツールとして、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス(2023年10月実施の調査まで)、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツール、生成AIが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は2020年12月の調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは2021年9月実施の調査以降、生成AIは2024年5月実施の調査で追加された選択肢である。 7 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションツールとして、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業ツールとして、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理ツールとして、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィス・現場の自動化ツールとして、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス(2023年10月実施の調査まで)、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツール、生成AIが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は2020年12月の調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは2021年9月実施の調査以降、生成AIは2024年5月実施の調査で追加された選択肢である。 8 K6はKessler et al. (2003)で開発された尺度で、精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発されたものである。日本語版はFurukawa et al. (2008)で開発されている。設問項目は、「神経過敏に感じましたか」、「絶望的だと感じましたか」、「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」、「何をするのも骨折りだと感じましたか」、「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つの設問から構成されており、5段階のスケールで回答する形式となっている。各設問の回答を「まったくない」(0点)、「少しだけ」(1点)、「ときどき」(2点)、「たいてい」(3点)、「いつも」(4点)で点数化し、単純合計によって得点を算出する。厚生労働省『国民生活基礎調査』にも利用されており、メンタルヘルスを測定する指標として広く利用されている。『国民生活基礎調査』の詳細は、厚生労働省ウェブページ『国民生活基礎調査』で確認できる。なお、川上(2007)では、5~9点は「心理的ストレス相当」、10~12点は「気分・不安障害相当」、13点以上は「重症精神障害相当」と区分している。川上憲人(2007)「全国調査におけるK6調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成18年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.また、厚生労働省「健康日本21(第2次)」では、「気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少」の目標値として、厚生労働省『国民生活基礎調査』において、20歳以上のK6の合計点における10点以上の割合を9.4%(2022年度)と設定している。 8 K6はKessler et al. (2003)で開発された尺度で、精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発されたものである。日本語版はFurukawa et al. (2008)で開発されている。設問項目は、「神経過敏に感じましたか」、「絶望的だと感じましたか」、「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」、「何をするのも骨折りだと感じましたか」、「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つの設問から構成されており、5段階のスケールで回答する形式となっている。各設問の回答を「まったくない」(0点)、「少しだけ」(1点)、「ときどき」(2点)、「たいてい」(3点)、「いつも」(4点)で点数化し、単純合計によって得点を算出する。厚生労働省『国民生活基礎調査』にも利用されており、メンタルヘルスを測定する指標として広く利用されている。『国民生活基礎調査』の詳細は、厚生労働省ウェブページ『国民生活基礎調査』で確認できる。なお、川上(2007)では、5~9点は「心理的ストレス相当」、10~12点は「気分・不安障害相当」、13点以上は「重症精神障害相当」と区分している。川上憲人(2007)「全国調査におけるK6調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成18年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.また、厚生労働省「健康日本21(第2次)」では、「気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少」の目標値として、厚生労働省『国民生活基礎調査』において、20歳以上のK6の合計点における10点以上の割合を9.4%(2022年度)と設定している。 9 第1回テレワークに関する就業者実態調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000サンプルとなるよう調査を実施した。第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査では、2023年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、同様の割付を行った。 9 第1回テレワークに関する就業者実態調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000サンプルとなるよう調査を実施した。第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査では、2023年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、同様の割付を行った。 シェア Tweet 関連公表物 テレワーク、感染症対策から得た教訓とは 大久保敏弘 井上敦 関島梢恵 脱炭素社会実現に向けたグリーンジョブの推進 大久保敏弘 副業としてのギグワークはなぜ広まらないのか 大久保敏弘 コロナショックが加速させる格差拡大 大久保敏弘 ©公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ