研究報告書 2023.01.31 第8回テレワークに関する就業者実態調査(速報)『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む この記事は分で読めます シェア Tweet 大久保敏弘 NIRA総合研究開発機構上席研究員/慶應義塾大学経済学部教授 NIRA総合研究開発機構 最新の調査結果はこちら➡「第10回テレワーク調査」 概要 慶應義塾大学経済学部大久保敏弘研究室、(公財)NIRA総合研究開発機構では、「第8回テレワーク(注1)に関する就業者実態調査(注2)」を実施した。本調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響、ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識等の実態を捉えることを目的に実施したものである。調査は2022年12月16日(金)~2023年1月10日(火)にかけて行われた。回収数は9,804件であり、すべて過去の同調査からの継続回答者である。速報結果は以下のとおり。 PDFで読む INDEX Ⅰ調査結果 1. テレワーク利用率の推移 1.1. 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移 1.2. 産業別でみたテレワーク利用率の推移 1.3. 職業別でみたテレワーク利用率の推移 2. 通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度の推移 3. 仕事の効率の変化 4. ICTツールの活用状況 5. 新型コロナウイルス終息後のテレワークの利用希望 6. 感染症対策か経済対策か 7. ロシアのウクライナ侵攻に関する意識 8. 消費行動のデジタルシフト 9. サブスクリプション・サービスの利用状況 10. コロナ禍の転職 11. ギグワーク Ⅱ調査概要 1. 調査の趣旨・目的 2. 調査名 3. 主な調査項目 4. 調査期間 5. 調査方法 6. 回収数 7. 回答者の属性 8. 研究体制 9. 外部資金 ポイント●2022年12月時点の全国の就業者のテレワーク利用率は15%(東京圏24%)となった。テレワークから出社に戻る動きが若干でているものの、テレワーク利用率は大幅には低下していない。●新型コロナウイルスの感染拡大の出来事がなく通常通り勤務していた場合の仕事の成果を100としたとき、テレワーク利用者のうち、100と回答した人の割合が2020年6月から2022年12月にかけて大きく増加した。テレワークへの慣れや環境整備が進んだことで、テレワークの効率性が改善された可能性がある。●テレワーク利用者のオフィス・現場の自動化ツールの利用率は、2020年6月時点は5%と極めて低かったが、上昇傾向が続き、2022年12月時点で17%となった。●テレワーク利用者のテレワーク利用希望(「毎日出勤したい」人以外の合計)は、直近になるほど高まっており、2022年12月時点で92%に上る。一方、テレワーク利用していない人のテレワーク利用希望は、いずれの時期も50%を下回る。●政策の賛否について、経済対策重視が感染症対策重視を一貫して上回る。2022年5月以降は、特に感染症対策重視が減り、10%を下回っている。●ロシアのウクライナ侵攻に対する意識は、国内での食料・資源確保やロシアへの経済制裁に関して、賛成の割合は2022年5月時点よりも若干減少した。●防衛費の増大は賛成が反対を上回る一方、2022年5月時点からの変化をみると、反対する人の割合が増加した。●消費行動のデジタルシフトについて、2019年12月以降、現金支払いの頻度は低下傾向にあり、キャッシュレス決済が増加傾向にある。サブスクリプション・サービスを利用している人は40%であり、特に「動画配信サービス」、「音楽配信サービス」の利用率が高い。●コロナ禍で転職した人(転職活動中含む)の割合は21%に上る。若年層、低所得層、専門的・技術的職業、テレワーク利用者で転職した人の割合が高い。●ギグワーク経験のある人は4%と限定的だが、予定者、希望者まで含めると30%近くに上る。 図表図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移図1-1 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移-新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較-図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細)図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移図2-2 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移図3-1 仕事の効率(2022年12月、テレワーク利用別)図3-2 テレワーク利用者の仕事の効率(2020年6月と2022年12月)図4-1 ICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用別)図4-2 目的別にみたICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用者)表4-3 テレワーク利用者の目的別にみたICTツールの活用状況と仕事の効率(2022年12月時点)図5-1 新型コロナウイルスの終息後のテレワーク利用希望(テレワーク利用者)図5-2 新型コロナウイルスの終息後のテレワーク利用希望(テレワークを利用していない人)図6 感染症対策か経済対策か図7 ロシアのウクライナ侵攻に関する意識図8-1 キャッシュレス決済の推移図8-2 オンラインサービスの利用の推移図9 サブスクの利用状況図10-1 コロナ禍の転職図10-2 属性別にみたコロナ禍の転職図10-3 専門的・技術的職業の年代別にみたコロナ禍の転職図11-1 ギグワークの実施状況表11-2 ギグワーカーの仕事の種類 Ⅰ調査結果 1. テレワーク利用率の推移 Q3. あなたは以下の時期に通常業務でテレワークを利用していましたか。(ひとつだけ)(1)2022年12月3週目(12月12日~12月18日)(2)2022年8月 全国のテレワーク利用率の推移は、第1回目の緊急事態宣言が出された2020年4~5月は25%まで大幅に上昇したが、2020年6月の緊急事態宣言の解除後には17%に急速に低下した。その後の緊急事態宣言や東京オリンピック開催時期、オミクロン株による感染拡大を受けた2022年1月以降もおおむね横ばいで推移した。2022年1~12月にかけて緩やかな低下傾向となり、12月3週目は15%となった。テレワークから出社に戻る動きが若干でているものの、テレワーク利用率は大幅には低下していない(注3)。 東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に限ってみると、テレワーク利用率の推移(居住地ベース)は全国と比較して10%ポイント程度高い水準で推移しており、全国平均と同様に緩やかな低下傾向が見られるものの、大幅には低下していない。 図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移 1.1. 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移 以下では、属性別にテレワーク利用率の推移をみていく。帯グラフは、コロナ禍前の2020年1月、全国的にテレワーク利用が最も進んだ1回目の緊急事態宣言時の2020年4~5月、直近の2022年12月3週目の3時点の結果を示している。 居住都道府県別に推移をみると(図1-1)、コロナ禍前から直近までのテレワーク利用率の伸び幅が大きい都道府県は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府であり、大都市圏でテレワークの利用が広まっている。 図1-1 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移 -新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較- 1.2. 産業別でみたテレワーク利用率の推移 産業別に推移をみると(図1-2-1)、テレワーク利用率が高い産業は、「通信情報業」、「情報サービス・調査業」、「金融・保険業」となった。他方、テレワーク利用率が低い産業として、「運輸」、「飲食業・宿泊業」、「医療・福祉」があげられる。 時系列で詳しくみると(図1-2-2)、「通信情報業」は2021年4月以降、テレワーク利用率が徐々に伸び続けていたが、第6波の2022年1月以降、若干低下する傾向がみられる。また、「金融・保険業」、「公務」でも、2022年1月以降、テレワーク利用率が若干低下する傾向がみられる。一方、「農業・漁業・林業・水産業」は2022年1月以降、テレワーク利用率が上昇する傾向がみられる。「飲食業・宿泊業」、「医療・福祉」のテレワーク利用率は、コロナ禍前からほとんど上昇せず、一貫して低い水準で推移している。 図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移 図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細) 1.3. 職業別でみたテレワーク利用率の推移 職業別に推移(注4)をみると(図1-3-1)、テレワーク利用率が高い職業は、「管理的職業」、「専門的・技術的職業」、「事務」となった。他方、テレワーク利用率が低い職業として、「その他の職業」、「販売」、「サービス職業」があげられる。なお、「その他の職業」には、保安、農林漁業、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、分類不能の職業に従事する者が含まれている。 時系列で詳しくみると(図1-3-2)、2022年1月から5月にかけて、「管理的職業」のテレワーク利用率は低下したが、2022年5月以降は上昇傾向に転じた。「事務」は2022年1月以降、緩やかな低下傾向がみられる。現場での対面サービスの提供や作業が主の職業では1回目の緊急事態宣言時の2020年4~5月に若干テレワーク利用率が上昇しているが、その後のテレワーク利用率は10%未満と低く、大きな変化はない。 図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移 図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細) 2. 通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度の推移 Q4. あなたは以下の時期に、通常の職場に出勤しての勤務とテレワーク勤務を、どのぐらいの頻度で行いましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(1) 2022年12月3週目(12月12日~12月18日)(2) 2022年8月 通常の職場で勤務している人(テレワーク利用者含む)の出社頻度の推移をみると(図2-1)、2022年1月以降、目立った変化はなく、同程度の推移している。 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移についても(図2-2)、2022年1月以降、目立った変化はなく、同程度の水準で推移している。 図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移 図2-2 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移 3. 仕事の効率の変化 Q6. 新型コロナウイルスの感染拡大の出来事がなく、2022年12月3週目に通常通りの勤務をしていた場合を想像してください。通常通りの勤務に比べて、時間あたりの仕事のパフォーマンス(仕事の効率)はどのように変化したと思いますか。通常通り勤務していた場合の仕事の成果を100とした場合の数字でお答えください。たとえば、仕事のパフォーマンスが1.3倍になれば「130」、半分になれば「50」となります。上限を「200」としてお答えください。 Q6の回答の分布をテレワーク利用別にみると、図3-1のようになった。テレワーク利用者は、テレワークを利用していない人に比べて、100と回答した人の割合は低く、60~90や110~120と回答した人の割合が高くなっている。テレワークにより、仕事を効率的にできる人と、そうではない人がいることが伺える(注5)。 次に2020年6月時点と2022年12月時点の両時点でテレワークを利用していた人の仕事の効率性を比較する(図3-2)。2020年6月から2022年12月にかけて、100と回答した人の割合が大きく増加し、60~90と回答した人の割合が低下している。テレワークへの慣れや環境整備が進んだことで、テレワークの効率性が改善されたことが伺える。 図3-1 仕事の効率(2022年12月、テレワーク利用別) 図3-2 テレワーク利用者の仕事の効率(2020年6月と2022年12月) 4. ICTツールの活用状況 Q7. 2022年12月3週目で、あなたは、通常の職場に出勤しての勤務やテレワークで、以下のどのICTツールを利用していましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(いくつでも) 選択肢に提示したICTツールを少なくとも1つは利用している人の割合(「ICT利用率」、以下同)をテレワーク利用別にみると(図4-1)、テレワーク利用者はICT利用率が顕著に高い。(注6)(注7)しかし、テレワークを利用していない人にとっても、職場のデジタル化や、テレワーク利用者とのコミュニケーションにICTツールは有用であり、一定程度、利用している人がいることがわかる。推移をみると、テレワーク利用者もテレワークを利用していない人も、大きな変化は見られない。 次にテレワーク利用者のICTツール利用率をツールの目的別にみると(図4-2)、コミュニケーションツールの利用率が最も高く、2022年12月時点で75%となった。次に共同作業ツール、業務管理ツールが50%弱と続いた。オフィス・現場の自動化ツールは、2020年6月時点はその利用率が5%と極めて低かったが、上昇傾向が続き、2022年12月時点で17%となった。 2022年12月時点の、テレワーク利用者のICTツールの利用の有無と仕事の効率(詳細は「3.仕事の効率の変化」を参照)の関係をみると(表4-3)、特にコミュニケーションツールを利用の有無によって、テレワーク利用者の仕事の効率の平均値が大きく異なることがわかる。 図4-1 ICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用別) 図4-2 目的別にみたICTツールの活用状況の推移(テレワーク利用者) 表4-3 テレワーク利用者の目的別にみたICTツールの活用状況と仕事の効率(2022年12月時点) 5. 新型コロナウイルス終息後のテレワークの利用希望 Q9. 新型コロナウイルスの完全終息後の、あなたの希望する働き方をお答えください。 (ひとつだけ) テレワーク利用者のテレワーク利用希望(「毎日出勤したい」人以外の合計)の回答結果をみると(図5-1)、直近になるほど高まっており、2022年12月時点で92%に上る。特に「毎日テレワークしたい」と回答した人の割合は上昇傾向にあり、2022年12月時点で31%となった。テレワーク利用希望や希望頻度は一貫して多くなる一方、テレワーク頻度には大きな変化がなく(図1、図2-2)、労働者側と使用者側とのテレワーク利用の考え方の違いが大きくなってきている可能性がある。 一方、テレワークを利用していない人についてみると(図5-2)、2020年3月から12月かけてテレワーク希望の頻度は緩やかに増加し、それ以降は緩やかに低下している。いずれの時期もテレワーク利用の希望は50%を下回る。 図5-1 新型コロナウイルスの終息後のテレワーク利用希望(テレワーク利用者) 図5-2 新型コロナウイルスの終息後のテレワーク利用希望(テレワークを利用していない人) 6. 感染症対策か経済対策か Q10. 国民全体にとって、政府が以下の取組を進めることに賛成ですか、反対ですか。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえておうかがいします。(それぞれひとつずつ) ・感染拡大の抑止より経済活動の活性化を優先する政策の推進 「感染拡大の抑止より経済活動の活性化を優先する政策の推進」への賛否についてみると(図6)、直近ほど経済対策重視が増え、感染症対策重視が減少している。2022年5月以降は、特に感染症対策重視が減り、10%を下回っている。 図6 感染症対策か経済対策か 7. ロシアのウクライナ侵攻に関する意識 Q11. ロシアのウクライナ侵攻を踏まえておうかがいします。以下の意見や、個人の行動について、賛成ですか、反対ですか。(それぞれひとつずつ) Q11の2022年12月時点の回答結果を賛成(「賛成」、「やや賛成」、以下同)の多い順からみると(図7)、食料・資源確保や経済活動に関して、食料自給率の向上、中国に依存する経済からの脱却、国内のクリーンエネルギーによる発電の促進について、いずれも50%前後の人が賛成している。一方、原子力発電の推進への賛成は29%、保護貿易の推進への賛成は17%となり、他の項目に比べて、賛成の割合は低い。ロシアへの対応に関しては、ロシア産の商品の購入を控える、ロシアからの輸入を減らす、ロシアへの経済制裁を強化することについて、いずれも40%程度の人が賛成している。時系列でみると、全体的に賛成の割合は2022年5月時点よりも若干減少した。 防衛関係については、防衛費の増大は賛成が反対の割合を上回る一方、2022年5月時点からの変化をみると、反対する人の割合は増加した。2022年後半から防衛費増額をめぐる議論が活発になり、人々の反対の意識が表面化したものと考えられる。また、ウクライナへの武器供与は、最も反対の割合が高い項目となり、賛成よりも反対の方が多い結果となった。 図7 ロシアのウクライナ侵攻に関する意識 8. 消費行動のデジタルシフト Q26. 以下の項目について、現在と1年前それぞれにおける日常的な利用状況として、最も近いものをお答えください。(それぞれひとつずつ)1.クレジットカード決済2.デビットカード決済3.現金支払い4.プリペイド(前払い)式の電子マネー決済5.その他のフィンテックサービス6.ネットデリバリーサービス7.オンラインショッピング8.インターネットバンキング9.有料のオンライン娯楽サービス10.シェアリング 本調査では、2021年12月および2022年12月時点のキャッシュレス決済、オンラインサービスの利用状況について聞いた。第3回調査でも、同じ設問を2019年12月、2020年12月時点で聞いており、以下では4時点の集計結果を紹介する。 キャッシュレス決済については(図8-1)、その他のフィンテックサービスを2019年12月以降、「よく利用している」と回答した人の割合が一貫して上昇しており、2022年12月時点で27%となった。「ときどき利用している」も合わせると50%に達する。また、クレジットカード決済を「よく利用している」と回答した人の割合も徐々に増えている。一方、現金支払いの頻度は低下傾向にあり、キャッシュレス決済頻度の増加と整合的な変化がみられた。 次にオンラインサービスについてみると(図8-2)、最も利用されているものはオンラインショッピングであり、「よく利用している」、「ときどき利用している」と回答した人の割合はどの時点でも70%程度となる。しかし、「よく利用している」と回答した人の割合は徐々に増加しており、オンラインショッピング利用者の利用頻度は高まっていることがわかる。また、インターネットバンキング、オンライン娯楽サービスも「よく利用している」と回答した人が緩やかに増加している。 図8-1 キャッシュレス決済の推移 図8-2 オンラインサービスの利用の推移 9. サブスクリプション・サービスの利用状況 Q27. あなたが現在利用しているサブスクリプション・サービスをお選びください。(いくつでも) 本調査では、デジタルサービスの1つとして、サブスクリプション・サービス(以下、「サブスク」)の利用状況について聞いた。 その結果、何らかのサブスクを利用している人は40%に上った(図9)。具体的なサービスで上位なのは、「動画配信サービス」の利用者は28%、「音楽配信サービス」の利用者は12%となった。エンターテイメント系のサービスを中心に、人々の消費行動の場が実店舗からデジタル空間に移行していることが伺える。 図9 サブスクの利用状況 10. コロナ禍の転職 Q17. コロナ禍の期間(2020年2月~現在)で、転職しましたか(現在、転職活動中も含む)。転職した場合、あるいは現在転職活動中の場合、どのような転職活動をしましたか。(いくつでも) 本調査では、コロナ禍の転職(転職活動中含む)、および、その方法について聞いた。 その結果、コロナ禍で転職した人の割合は21%と、就業者の5人に1人に及ぶ(図10-1)。転職によく利用された方法は、ハローワーク等の公的機関や転職サイト・アプリであった。 また、転職した人の割合を属性やテレワーク利用別にみると、若年層、低所得層、専門的・技術的職業、テレワーク利用者が高い(図10-2)。さらに、最も転職した人の割合が高い専門的・技術的職業を年代別にみると、40歳以下の人の割合が高い(図10-3)。 図10-1 コロナ禍の転職 図10-2 属性別にみたコロナ禍の転職 図10-3 専門的・技術的職業の年代別にみたコロナ禍の転職 11. ギグワーク Q19. あなたは、インターネット経由で、雇用契約を結ばない企業や個人から単発・短時間の仕事を請け負う働き方(「ギグワーク(注8)」)をしたことはありますか。したことがない場合は、今後の予定や希望をお答えください。(ひとつだけ) 近年、ギグワークという働き方が注目されている。「ギグ」とは、その場限りで集まったミュージシャンが即興で演奏することを言い、それが転じて、その場限りで仕事は「ギグワーク」と呼ばれるようになった。本調査では、インターネット経由で、雇用契約を結ばない企業や個人から単発・短時間の仕事を請け負うギグワークを行ったことがあるかを聞いた。 その結果、ギグワークをしたことがある人は4%、今後する予定の人は4%、今後希望している人は20%となった(図11-1)。ギグワーク経験のある人は限られているが、予定者、希望者まで含めると、30%近くになる。就業者の3~4人に1人はギグワークに関心を持っていることになり、今後、社会に浸透していく可能性を秘めている。 次にギグワークの仕事内容をみると(表11-2)、2022年にギグワークをしたことがある人の仕事内容は、多いものから「(1)データ入力」 35%、「(2)文章入力、テープ起こし」 17%、「(50)モニター、アンケート、品質評価」 15%、「(3)添削、文章校正、採点」 15%となり、事務関連の仕事が多いことがわかった(注9)。 図11-1 ギグワークの実施状況 表11-2 ギグワーカーの仕事の種類 参考文献Okubo, T. (2022). Telework in the Spread of COVID-19. Information Economics and Policy, 100987. Okubo, T., Inoue, A., & Sekijima, K. (2021). Teleworker performance in the COVID-19 era in Japan. Asian Economic Papers, 20(2), 175-192. Ⅱ調査概要 1. 調査の趣旨・目的 テレワークに関する就業者実態調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響等の実態を捉えることを目的としたものである。同一の就業者に対する追跡調査を行うことにより、新型コロナウイルス感染症が、働き方や生活などに与える影響をより正確に把握することができる。 本調査は、2020年4月、6月、12月、2021年4月、9月、2022年2月、5月に実施した調査に続く、第8回目の調査となる。就業者の働き方や生活の変化を捉え、災害や感染症による被害を受けても、1人ひとりが能力を十分に発揮して働くことができる社会に向けての課題を分析できる調査設計にしている。 2. 調査名 第8回テレワークに関する就業者実態調査 3. 主な調査項目 ・メンタルの状態・コロナに対する意識 ・仕事・生活の変化 ・テレワークの利用状況・利用頻度 ・仕事の効率性 ・ICT利用状況 ・会社・経営組織の動向(BCP等) ・テレワーク利用希望 ・政策への賛否、満足度、幸福感 ・ウクライナ・ロシア危機に関する認識 ・生活満足度 ・コロナ禍の期間の転職状況、ギグワーク ・消費行動のデジタル化 ・その他個人属性 4. 調査期間 2022年12月16日(金)~2023年1月10日(火) 5. 調査方法 1)実施方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)。回収目標数を10,000サンプルとして、過去の調査と同様のスクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信し、回収した(注10)。 2)調査機関:株式会社日経リサーチ 3)調査対象者:調査会社に登録しているインターネット調査登録モニター 4)調査対象:第1回から第7回調査の回答者 6. 回収数 総数:9,804件 すべて過去の調査からの継続回答者である。 7. 回答者の属性 8. 研究体制 大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員加藤究 フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員神田玲子 NIRA総研理事・研究調査部長井上敦 NIRA総研研究コーディネーター・研究員関島梢恵 NIRA総研研究コーディネーター・研究員鈴木壮介 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 9. 外部資金 本調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2023)「第8回テレワークに関する就業者実態調査(速報)-『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む-」 脚注 1 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の2020年3月時点では就業している人のみを対象としたが、第2~8回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。 1 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の2020年3月時点では就業している人のみを対象としたが、第2~8回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。 2 この一連の調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。 2 この一連の調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。 3 各時期の詳細結果については、2020年1~3月は第1回調査、4~6月の結果は第2回調査、9~12月の結果は第3回調査、2021年1~4月は第4回調査、7~9月は第5回調査、2021年12月~2022年1月は第6回調査、2022年3月~5月は第7回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第4回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第5回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第6回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第6回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第7回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022) 「第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)-『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む-」 3 各時期の詳細結果については、2020年1~3月は第1回調査、4~6月の結果は第2回調査、9~12月の結果は第3回調査、2021年1~4月は第4回調査、7~9月は第5回調査、2021年12月~2022年1月は第6回調査、2022年3月~5月は第7回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第4回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第5回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第6回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第6回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第7回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022) 「第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)-『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む-」 4 詳細なテレワーク利用の要因分析に関してはOkubo(2022)を参照。 4 詳細なテレワーク利用の要因分析に関してはOkubo(2022)を参照。 5 詳細はOkubo, Inoue and Sekijima (2021)を参照のこと。 5 詳細はOkubo, Inoue and Sekijima (2021)を参照のこと。 6 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。 6 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。 7 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションツールとして、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業ツールとして、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理ツールとして、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィス・現場の自動化ツールとして、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は第3回調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは第5回調査(2021年9月実施)以降で追加された選択肢である。 7 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションツールとして、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業ツールとして、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理ツールとして、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィス・現場の自動化ツールとして、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は第3回調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは第5回調査(2021年9月実施)以降で追加された選択肢である。 8 ギグワークに関する詳細な分析は以下参照のこと。大久保敏弘(2023)「副業としてのギグワーク:就業者実態調査から見るギグエコノミーの現状と課題」(仮題)NIRAオピニオンペーパー(近刊) 8 ギグワークに関する詳細な分析は以下参照のこと。大久保敏弘(2023)「副業としてのギグワーク:就業者実態調査から見るギグエコノミーの現状と課題」(仮題)NIRAオピニオンペーパー(近刊) 9 表11-2は、2022年にギグワークをしたことがある人の、「Q20.前問(Q19)の仕事内容はどのようなものですか。行ったことがあるお仕事をすべて選択してください。」の設問に対する回答結果である。複数回答可能であり、1つの仕事でも複数領域に及べば複数選択できるようになっている。したがって、表中のnは2022年にギグワークをしたことがある人が受けた仕事数と異なることに留意されたい。 9 表11-2は、2022年にギグワークをしたことがある人の、「Q20.前問(Q19)の仕事内容はどのようなものですか。行ったことがあるお仕事をすべて選択してください。」の設問に対する回答結果である。複数回答可能であり、1つの仕事でも複数領域に及べば複数選択できるようになっている。したがって、表中のnは2022年にギグワークをしたことがある人が受けた仕事数と異なることに留意されたい。 10 第1回調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000 サンプルとなるよう調査を実施した。 10 第1回調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000 サンプルとなるよう調査を実施した。 シェア Tweet 関連公表物 第10回テレワークに関する就業者実態調査(速報) 大久保敏弘 NIRA総合研究開発機構 テレワーク、感染症対策から得た教訓とは 大久保敏弘(編著)井上敦 関島梢恵(著) コロナショックが加速させる格差拡大 大久保敏弘 テレワークを感染症対策では終わらせない 大久保敏弘 ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ