大久保敏弘 
慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員
NIRA総合研究開発機構

最新の調査結果はこちら➡第10回テレワーク調査

概要

 感染症対策か経済対策か。日本のコロナ対策はこの間で揺れ続けている。2020年12月に行った就業者実態調査の分析では、感染症対策より経済対策重視に賛成する人は28%、反対する人は18%と、相対的には経済対策支持が多い。しかし、飲食業・宿泊業など、対面サービスが中心でテレワークに不向きな産業は、所得が減少し続けているにもかかわらず、経済対策支持が少ない。徹底した感染症対策が、経済対策につながるという発想が出ているのかもしれない。

INDEX

ポイント

第1部のテレワークの利用率については、2020年12月時点の全国の就業者のテレワーク利用率は16%(東京圏 26%)となった。これは、前回調査の6月時点とほぼ同水準であり、緊急事態宣言前の3月時点に比べて、6%ポイント高くなっている。

●テレワーク利用率は性別、就業形態などで大きく異なる。性別では、男性18%、女性12%、また、就業形態別でみると、「会社などの役員」 25%、「正規職員」 21%である一方、「非正規職員」は7%となった。また、通勤時間別にみると、通勤時間が長いほど、テレワーク利用率が高くなる傾向がみられた。

●テレワークを利用している人の仕事効率については、2020年3月以降、通常通りの効率で仕事ができているという認識をもつ人が増加し、効率性が低下したという認識をもつ人が減少していることが確認された。

●新型コロナ下における企業行動として、オフィスの縮小、オフィスの移転・統合については、2020年12月時点で10%の企業が実施しており、実施予定も含めると18%になった。

●第2部では、新型コロナウイルスの感染拡大に際して、仕事や生活・意識の面で個人にどのような変化があったかを調べた。2020 年 6 月時点と比べて12月時点では、労働時間、所得や仕事の総量について、全体の20%前後の人が減少したと答えた。

●メンタルヘルスは2020年3月以降、徐々に改善しているが、新型コロナウイルス感染拡大前と比較すると、依然として悪い。12月時点のメンタルヘルスは、男女ともに、50代以上よりも40代以下で悪い状態であることがわかった。

●「感染拡大の抑止より経済活動の活性化を優先する政策の推進」を賛成する人は28%、反対する人は18%、どちらでもないは42%となり、相対的には、感染症対策重視よりも経済対策重視を支持する人の方が多いことがわかった。感染症への恐怖を頻繁に感じている人は感染症対策重視の傾向があり、また、飲食業・宿泊業では、所得が減少し続けている一方、感染症対策を望む傾向がみられた。

目次

I. 調査結果
第1部 テレワーク
1.テレワーク利用率
2.テレワークの利用頻度と時間
3.テレワークによる仕事の効率の変化と障害
4.テレワークに関する仕事、生活、考え方の変化
5.ICTツールの活用状況
6
. 新型コロナウイルスの感染拡大後の組織の変化

第2部 仕事や生活に関わる変化
7.仕事や生活に関わる変化
8.メンタルヘルス
9.新型コロナウイルスの感染拡大後の意識の変化
10.消費行動のデジタルシフト
11.政府の政策に対する賛否

参考文献
Ⅱ. 調査概要
参考資料

図表

図表1 全国および東京圏の平均テレワーク利用率
図表1-1 テレワークの利用開始時期
図表1-2-1 12月時点でテレワークを利用している人のテレワーク利用の変遷
図表1-2-2 12月時点でテレワークを利用していない人のテレワーク利用の変遷
図表1-3 居住地でみた都道府県別テレワーク利用率
図表1-4 勤務地でみた都道府県別テレワーク利用率
図表1-5-1 性別でみたテレワーク利用率
図表1-5-2 性別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-6-1 年齢階層別でみたテレワーク利用率
図表1-6-2 年齢階層別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-7-1 就業形態別でみたテレワーク利用率
図表1-7-2 就業形態別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-8 所得階層別でみたテレワーク利用率
図表1-9-1 学歴別でみたテレワーク利用率
図表1-9-2 学歴別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-10-1 産業別でみたテレワーク利用率
図表1-10-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移
図表1-11-1 企業規模別でみたテレワーク利用率
図表1-11-2 企業規模別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-12 企業側からみたテレワークの実施
図表1-13-1 職業別でみたテレワーク利用率
図表1-13-2 職業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移
図表1-14-1 ICTスキル別でみたテレワーク利用率
図表1-14-2 ICTスキル別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-15-1 家族構成別でみたテレワーク利用率
図表1-15-2 家族構成別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-16-1 通勤手段別でみたテレワーク利用率
図表1-16-2 通勤手段別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-17-1 通勤時間別でみたテレワーク利用率
図表1-17-2 通勤時間別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-18-1 通勤時間別でみたテレワーク利用率(東京圏の居住者のみ)
図表1-18-2 通勤時間別でみたテレワーク利用率の推移(東京圏の居住者のみ)
図表1-19-1 地域別でみたテレワーク利用率
図表1-19-2 地域別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-20-1 地域別、性別でみたテレワーク利用率
図表1-20-2 地域別、性別でみたテレワーク利用率の推移
図表1-21-1 地域別、年齢階層別でみたテレワーク利用率
図表1-22-2 地域別、就業形態別でみたテレワーク利用率
図表1-23-1 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率(東京圏)
図表1-23-2 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率の推移(東京圏)
図表1-23-3 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率(京阪神)
図表1-23-4 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率の推移(京阪神)
図表1-23-5 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率(その他の地域)
図表1-23-6 地域別、所得階層別でみたテレワーク利用率の推移(その他の地域)
図表1-24-1 地域別、職業別でみたテレワーク利用率(東京圏)
図表1-24-2 地域別、職業別でみたテレワーク利用率(京阪神)
図表1-24-3 地域別、職業別でみたテレワーク利用率(その他の地域)
図表2-1-1 通常の職場での勤務の頻度
図表2-1-2 テレワークでの勤務の頻度
図表2-1-3 勤務先が東京圏のテレワーク利用率とテレワークでの勤務の頻度
図表2-2-1 テレワークを利用している人の職場とテレワークによる勤務時間の変化(1日平均)
図表2-2-2 テレワークを利用している人の職場とテレワークによる勤務時間の変化(1週間平均)
図表2-3-1 テレワークを利用している人の職場とテレワークによる勤務時間の変化(テレワークの利用開始時期:4~5月以降)
図表2-3-2 テレワークを利用している人の職場とテレワークによる勤務時間の変化(テレワークの利用開始時期:3月以前)
図表3-1-1 テレワークによる仕事の効率(2020年3月、6月)
図表3-1-2 テレワークによる仕事の効率(2020年6月、12月)
図表3-2-1 ICT利用別でみたテレワークによる仕事の効率の変化(2020年12月)
図表3-2-2 ICT利用別でみたテレワークによる仕事の効率の変化(2020年6月)
図表3-3-1 産業別でみた仕事の効率の変化(2020年12月時点、テレワークを利用していない人)
図表3-3-2 産業別でみた仕事の効率の変化(2020年6月時点、テレワークを利用していない人)
図表3-3-3 産業別でみた仕事の効率の変化(2020年12月時点、テレワークを利用している人)
図表3-3-4 産業別でみた仕事の効率の変化(2020年12月時点、テレワークを利用している人)
図表3-4 産業別でみたテレワークの障害(項目別) 12月時点
図表4-1 テレワーク利用別にみた仕事、生活の変化
図表4-2 産業別でみた仕事、生活の変化
図表4-3-1 職業別でみた仕事、生活の変化
図表4-3-2 就業形態別でみた仕事、生活の変化
図表4-3-3 企業規模別でみた仕事、生活の変化
図表4-4 テレワーク利用別でみたテレワークの長所・短所に対する考え方(テレワーク利用者)
図表4-5 年齢階層別でみたテレワークを活用した地方移住の考え
図表4-6 新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-7 性別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-8 年齢階層別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-9 居住地域別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-10 所得階層別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-11 通勤時間別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-12 産業別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-13 就業形態別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表4-14 企業規模別でみた新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表5-1-1 ICTツールの活用状況
図表5-1-2 目的別のICTツール活用状況
図表5-1-3 テレワーク利用者のICTツールの活用状況
図表5-2 就業形態別でみたICTツールの活用状況
図表5-3-1 企業規模別でみたICTツールの活用状況
図表5-3-2 企業規模別でみた活用目的別のICTツールの活用状況(2020年12月時点)
図表5-4 産業別でみたICTツールの活用状況
図表6 新型コロナウイルスの感染拡大後の組織の変化
図表6-1-1 企業規模別でみた経営の全般的な見直し
図表6-1-2 企業規模別でみた組織の改編
図表6-1-3 企業規模別でみた生産拠点、取引先の国内回帰
図表6-1-4 企業規模別でみたオフィススペースの縮小
図表6-1-5 企業規模別でみたオフィスの移転・統合
図表6-1-6 企業規模別でみた就業規則の見直し
図表6-1-7 企業規模別でみた雇用削減や早期退職者の募集
図表6-1-8 企業規模別でみた時差出勤の実施
図表6-1-9 企業規模別でみた予約出社・ローテーション出社の実施
図表7-1-1 仕事や生活に関わる変化
図表7-1-2 消費支出と心身の健康の変化
図表7-2 労働時間の変化と仕事に関わる変化
図表7-3 労働時間の変化と生活に関わる変化
図表7-4 仕事や生活の変化と生活全体の幸福感の変化
図表7-5 産業別の労働時間の変化
図表7-6 産業別の所得の変化
図表7-7 産業別の仕事全体の満足度の変化
図表7-8 産業別の生活全体の幸福感の変化
図表7-9 仕事や生活の変化の推移(%)
図表7-10-1 産業別の労働時間の変化の推移(%)
図表7-10-2 産業別の所得の変化の推移(%)
図表7-10-3 産業別の仕事の総量の変化の推移(%)
図表7-10-4 産業別の仕事全体の満足度の変化の推移(%)
図表7-10-5 産業別の生活全体の幸福感の変化の推移(%)
図表7-11-1 テレワークの利用別の労働時間の変化
図表7-11-2 テレワークの利用別の家事・育児・介護時間の変化
図表7-11-3 テレワークの利用別の睡眠時間の変化
図表7-11-4 テレワークの利用別の余暇時間の変化
図表7-11-5 テレワークの利用別の所得の変化
図表7-11-6 テレワークの利用別の仕事の総量の変化
図表7-11-7 テレワークの利用別の仕事全体の満足度の変化
図表7-11-8 テレワークの利用別の生活全体の幸福感の変化
図表8-1-1 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布(12歳以上)
図表8-1-2 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布 有業人員(15歳以上)
図表8-1-3 K6の合計点の分布(2020年3月、6月)
図表8-1-4 K6の合計点の分布(2020年6月、12月)
図表8-1-5 新型コロナウイルス感染拡大前後のK6の合計点の分布
図表8-2-1 性別でみたK6の合計点の分布(2020年12月)
図表8-2-2 年齢階層別でみた女性のK6の合計点の分布(2020年12月)
図表8-2-3 年齢階層別でみた男性のK6の合計点の分布(2020年12月)
図表8-3-1 就業形態別でみたメンタルヘルス(12月時点)
図表8-3-2 就業形態別でみたメンタルヘルス(6月時点)
図表8-4-1 産業別でみたメンタルヘルス(12月時点)
図表8-4-2 産業別でみたメンタルヘルス(6月時点)
図表8-5 所得階層別でみたメンタルヘルス(12月時点)
図表9 新型コロナウイルスの感染拡大後の意識の変化
図表9-1-1 産業別にみた新型コロナウイルス感染への恐怖を感じた頻度
図表9-1-2 産業別にみた「身体的距離の確保(社会的距離)」を意識した頻度
図表9-1-3 産業別にみた人込みや集まりを避け、マスク、手洗いを徹底するように意識した頻度
図表9-1-4 産業別にみた生活が経済的に困窮するという不安を感じた頻度
図表10-1 キャッシュレス決済の利用状況
図表10-2 オンラインサービスの利用状況
図表10-3-1 年齢階層別にみた現金の利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-2 年齢階層別にみたクレジットカード決済の利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-3 年齢階層別にみたデビットカード決済の利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-4 年齢階層別にみたプリペイド式電子決済の利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-5 年齢階層別にみた、その他のフィンテックサービスの利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-6 年齢階層別にみたネットデリバリーサービスの利用状況(2020年12月時点)
図表10-3-7 年齢階層別にみたオンラインショッピングの利用状況(2020年12月時点.)
図表10-3-8 年齢階層別にみたインターネットバンキングの利用状況
図表10-3-9 年齢階層別にみた有料のオンライン娯楽サービスの利用状況
図表10-3-10 年齢階層別にみたシェアリングの利用状況
図表11a 政府の政策に対する賛否1
図表11b 政府の政策に対する賛否2
図表11c 政府の政策に対する賛否3
図表11-1-1 性別でみた感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-2 年齢階層別でみた感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-3 所得階層別でみた感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-4 産業別でみた感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-5 就業形態別でみた感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-6 新型コロナウイルス感染への脅威の頻度と、感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-7 「身体的距離の確保(社会的距離)」の意識の頻度と、感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-8 感染予防対策の意識の頻度と、感染症対策重視と経済対策重視
図表11-1-9 経済的困窮への不安の頻度と、感染症対策重視と経済対策重視

調査概要

調査方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)。回収目標数を10,000サンプルとして、これまでの調査と同様の方法で、スクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信・回収した。
※第1回調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000 サンプルとなるよう配信・回収を行った。
調査対象:
(ア)第1回、第2回調査の回答者
第1回調査、第2回調査の回答者の合計である14,247サンプル全てを調査対象とした。
(イ)第3回調査から参加する就業者
回収数:10,523件、うち、第1回、第2回調査からの継続サンプルによる回答9,201件(継続回答率:第1回調査、第2回調査の回答者14,247サンプルの64.6%)、第3回調査からの新規サンプルによる回答1,322件
調査期間:2020年12月8日(火)から12月21日(月)

研究体制

大久保敏弘   慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員
加藤究     フューチャー株式会社 シニアアーキテクト/NIRA総合研究開発機構上席研究員
神田玲子    NIRA総合研究開発機構理事・研究調査部長
井上敦     NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員
関島梢恵    NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員
増原広成    NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)大久保敏弘・NIRA 総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

研究の成果一覧へ