大久保敏弘 
慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構客員研究員
NIRA総合研究開発機構

最新の調査結果はこちら➡第10回テレワーク調査

概要

 中国・武漢から始まった新型コロナウイルスによるパンデミックに、日本も巻き込まれ、社会、経済は未曽有の危機を迎えている。2020年4月に行った就業者実態調査の分析では、3月のテレワーク利用率は全国で10%と、感染拡大前の1月の6%から伸び、感染抑止のために人々の働き方が変わり始めていることがわかった。生活面では、1月と比べ3月では、労働時間、所得、幸福感が減った人が20~40%と、既に負の社会的、経済的影響が出始めている。  

INDEX

ポイント

●2020年3月時点でのテレワーク利用率は全国平均で10%だった。1月時点の6%から4%ポイントほど増加した。居住地ベースで見ると、東京都が最も高く21%、続いて、神奈川県(16%)、千葉県(14%)、埼玉県(13%)が高かった。

2020年3月時点でテレワークを利用している人の開始時期に関しては、安倍政権が働き方実現会議を設置した2016年から2年間に利用を始めた人は12%であったが、働き方改革関連法案が成立した2018年以降の2年間では24%と倍増した。しかし、2020年1月の後、3月までの2か月で38%と急激に増加しており、これまでにない大きな変化が生じている。

1月と3月を比較するとその間に労働時間が減少した人が多く(23%)、仕事の総量の減少した人(25%)や所得の減少した人(23%)も多いのみならず、仕事の満足度、幸福感といった精神的な落ち込みが大きい人(それぞれ26%、35%)も多かった。3月時点で既に負の社会的、経済的な影響が出始めている。

労働時間が減少した人のグループでは、労働時間の減少とともに仕事の総量も減った人が75%と非常に多く、また、所得が減少した人も66%と多い。労働時間の減少とともに仕事が減り、所得が減った人がかなり多いと思われる。さらに、仕事の満足度が減った人が60%にのぼる。性別・年齢別に見ると、10~20代の女性の30%ほどは労働時間を減らし、幸福感や仕事の満足度の減少した人の割合が顕著である(それぞれ44%、35%)。

目次


I. 調査概要

II. 調査結果の概要
第1部 テレワーク
1.本調査の視点とテレワークの定義
2.テレワークの利用頻度と時間
3.テレワークによる仕事の効率の変化と障害
4.仕事上のコミュニケーション

第2部 仕事と生活・意識
5.仕事や生活に関わる変化
6.精神的状態
7.情報取得
8.新型コロナウイルス感染拡大の仕事への影響
9.新型コロナウイルス感染拡大の前後における考え方の変化

図表

図表1-1 全国就業者のテレワーク利用率(2020年3月時点)
図表1-2 都道府県別テレワーク利用率(回答者の居住地ベース)
図表1-3 都道府県別テレワーク利用率(回答者の勤務地ベース)
図表1-4 性別テレワーク利用率
図表1-5 年齢層別テレワーク利用率
図表1-6 就業形態別テレワーク利用率
図表1-7 所得階層別テレワーク利用率
図表1-8 学歴別テレワーク利用率
図表1-9 産業別のテレワーク利用率
図表1-10 企業規模別のテレワーク利用率
図表1-11 職業別テレワーク利用率
図表1-12 ICT スキル別テレワーク利用率
図表1-13-1 家族構成別(同居している人の属性別)テレワーク利用率
図表1-13-2 性別・家族構成別(同居している人の属性別)テレワーク利用率
図表 1-14 通勤手段別テレワーク利用率
図表 1-15-1 通勤時間の全体の構成比率
図表 1-15-2 通勤時間別テレワーク利用率
図表 1-16 通勤時間別テレワーク利用率(2020年3月時点、1月時点)
図表 1-17 通勤時間別テレワーク利用率東京圏抽出
図表 1-18 地域別テレワーク利用率
図表 1-19 地域別・性別テレワーク利用率
図表 1-20-1 東京圏における年齢層別のテレワーク利用率
図表 1-20-2 京阪神における年齢層別のテレワーク利用率
図表 1-20-3 愛知における年齢層別のテレワーク利用率
図表 1-20-4 その他の地域における年齢層別のテレワーク利用率
図表 1-21-1 東京圏における就業形態別テレワーク利用率
図表 1-21-2 京阪神における就業形態別テレワーク利用率
図表 1-21-3 愛知における就業形態別テレワーク利用率
図表 1-21-4 その他の地域における就業形態別のテレワーク利用率
図表 1-22-1 東京圏における所得階層別テレワーク利用率
図表 1-22-2 京阪神における所得階層別テレワーク利用率
図表 1-22-3 愛知における所得階層別テレワーク利用率
図表 1-22-4 その他の地域における所得階層別テレワーク利用率
図表 1-23-1 東京圏における職業別テレワーク利用率
図表 1-23-2 京阪神における職業別テレワーク利用率
図表 1-23-3 愛知における職業別テレワーク利用率
図表 1-23-4 その他の地域における職業別テレワーク利用率
図表 2-1 テレワークに関する勤務先の方針
図表 2-2 テレワークに関する勤務先の方針(勤務先地域別)
図表 2-3 テレワークに関する勤務先の方針(産業別)
図表 2-4 テレワークに関する勤務先の方針(職業別)
図表 2-5 テレワークに関する勤め先の方針(就業形態別)
図表 2-6 テレワークに関する勤め先の方針(企業規模別)
図表 2-7 テレワークの利用開始時期
図表 2-8 通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度(2020 年3月時点、1月時点)
図表 2-9 テレワークでの勤務日数の変化
図表 2-10 通常の職場での勤務日数の変化
図表 2-11 職場での勤務とテレワークによる勤務の時間の変化
図表 3-1 テレワークによる仕事の効率の変化
図表 3-2 テレワークによる仕事の効率の変化(テレワーク利用歴別)
図表 3-3 テレワークによる仕事の効率の変化(職業別)
図表 3-4 テレワークによる仕事の効率の変化(就業形態別)
図表 3-5 テレワークの障害
図表 3-6 テレワークをしやすい産業としにくい産業
図表 3-7 産業別のテレワークの障害(項目別)
図表 4-1 ビジネスチャット・Web会議の利用状況
図表 4-2 ビジネスチャット・Web会議の利用状況—性別、年齢層別、テレワーク利用別
図表 4-3 ビジネスチャット・Web会議の利用率—産業別(2020年 3 月時点)
図表 4-4 ビジネスチャット・Web会議の利用開始時期
図表 4-5 通常の職場で勤務する時のビジネスチャット・Web会議の利用頻度(2020年3月、1月)
図表 4-6 テレワークによる仕事の効率の変化(ビジネスチャット・Web 会議の利用別)
図表 4-7 コミュニケーションの頻度の変化
図表 5-1 仕事や生活に関わる変化
図表 5-2 労働時間の変化と仕事に関わる変化
図表 5-3 労働時間の変化と生活に関わる変化
図表 5-4 労働時間の変化(産業別)
図表 5-5 仕事の総量の変化(産業別)
図表 5-6 所得の変化(産業別)
図表 5-7 仕事全体の満足感の変化(産業別)
図表 5-8 生活全体の幸福感の変化(産業別)
図表 5-9 労働時間の変化(職業別)
図表 5-10 所得の変化(職業別)
図表 5-11 労働時間の変化(就業形態別)
図表 5-12 仕事や生活に関わる変化(テレワーク利用別)
図表 5-13 仕事や生活に関わる変化(地域別)
図表 5-14 仕事や生活に関わる変化(性別)
図表 5-15 労働時間の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-16 家事・育児・介護時間の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-17 睡眠時間の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-18 余暇時間の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-19 仕事総量の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-20 所得の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-21 仕事全体の満足感の変化(年齢階層別・性別)
図表 5-22 生活の幸福感の変化(年齢階層別・性別)
図表 6-1 過去30日に感じた気持ちの頻度
図表 6-2 過去30日にどれくらいしばしば神経過敏に感じたか(年齢層・性別)
図表 6-3 過去30日にどれくらいしばしば絶望的だと感じたか(年齢層・性別)
図表 6-4 過去30日にどれくらいしばしばそわそわしたり、落ち着きなく感じたか(年齢層・性別)
図表 6-5 過去30日にどれくらいしばしば気分が沈み込んで、 何が起こっても気が晴れないように感じたか(年齢層・性別)
図表 6-6 過去3 日にどれくらいしばしば何をするのも骨折りだと感じたか(年齢層・性別)
図表 6-7 過去30日にどれくらいしばしば自分は価値のない人間だと感じたか(年齢層・性別)
図表 7-1 メディアを通じた情報取得の頻度
図表 7-2 1日のうちインターネットニュースサイトによる情報取得
図表 7-3 1日のうちテレビ・ラジオによる情報取得
図表 7-4 1日のうちSNS(Twitter、Facebookなど)、ブログ、その他のサイトによる情報取得
図表 7-5 1日のうち新聞・雑誌による情報取得
図表 8-1-1 新型コロナウイルスの感染拡大によるトラブルの有無
図表 8-1-2 新型コロナウイルスの感染拡大によるトラブルの内訳(複数回答)
図表 8-2-1 新型コロナウイルスの感染拡大によるトラブルの有無(産業別)
図表 8-2-2 新型コロナウイルスの感染拡大によるトラブルの有無(職業別)
図表 8-2-3 新型コロナウイルスの感染拡大によるトラブルの有無(就業形態別)
図表 8-3-1 その他の仕事上のトラブル関する自由回答(ワード抽出)
図表 8-3-2 その他の仕事上のトラブル関する自由回答(一覧)
図表 9-1 新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方
図表 9-2 新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方(産業別)
図表 9-3 新型コロナウイルスの終息後に希望する働き方(企業規模別)
図表 9-4 ICTの活用に対する考え方の変化
図表 9-5 ペーパーレス化に対する考え方の変化(年齢層別、テレワークの利用別)
図表 9-6 政府の政策に対する賛否
図表 9-7 オンライン診療の推進に対する賛否(性別、年齢層別、テレワーク利用別)
図表 9-8 緊急事態における政府による個人の行動の制限や物資・経済統制に対する賛否(性別、年齢層別、テレワーク利用別)
図表 9-9 財・サービスの国境を越えた自由な取引(グローバリゼーション)に対する賛否(性別、年齢 層別、テレワーク利用別)

調査概要

調査方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)
調査対象:全国の満15歳以上の就業者
回収数:10,516件
調査期間:2020年4月1日(水)から4月7日(火)13時

※2020年4月7日(火)夕方に安倍晋三首相が新型コロナウイルス特措法に基づき緊急事態宣言を発令した時点までには、調査を終えている。

研究体制

大久保敏弘   慶応義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構客員研究員
加藤究     フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総合研究開発機構客員研究員
神田玲子    NIRA総合研究開発機構理事・研究調査部長
井上敦     NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員
関島梢恵    NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員
増原広成    NIRA総合研究開発機構コーディネーター・研究員

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
大久保敏弘・NIRA総合研究開発(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

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