総合研究開発機構

 東日本大震災の被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 早期に復旧、復興できるようお祈りします。

概要

 多くの犠牲者を出した東日本大震災から9ヶ月が経った。NIRAは、復旧・復興の状況の全体像を把握することを目的に、 「東日本大震災復旧・復興インデックス」を作成し、9月8日に公表した。 その後3ヶ月が経過した現下の復旧・復興の進捗をみるために、最新のデータにもとづいて、本インデックスを更新した。
 「東日本大震災復旧・復興インデックス」は、大震災で津波被害を受けた地域(被災37市町村・県)を対象地域とし、 当該地域の被災後の復旧・復興状況の推移を関連する指標を合成して作成している。

INDEX

エグゼクティブサマリー

復旧・復興インデックスとは

復旧・復興インデックスは、「生活基盤の復旧状況」を示す指数、生産や流通など「人々の活動状況」を示す指数(いずれも震災前を100とする)の2つから成り立っている。「人々の活動状況」指数は、地域の状況を表す10系列を分析したもの(バージョンI)と地方空港乗降客数・取扱貨物量も含めたもの(バージョンII)の2つのバージョンを作成した。
*復旧・復興インデックスの作成方法の詳細は、本報告書の「資料7(50~51ページ)」を参照。

図表1 「生活基盤の復旧状況」指数の動き

 被災3県の生活基盤(応急仮設住宅の入居率、電力・ガス・鉄道など公共インフラや瓦礫撤去率、義援金支払額、コンビニ店舗数など)に関する復旧状況は、8月から足踏み状態となっている(岩手県と宮城県で約8割、福島県で約7割)。とくに、福島県は原発事故の終息がみえず、復旧活動に制約があるため、他県に比べ指数が低い水準となっている。被災3県の復旧状況が伸び悩んでいる要因は、鉄道、瓦礫撤去率、医療施設数が十分に回復していないことにある。

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図表2 「人々の活動状況」指数(バージョンII)

 被災3県ともに、9月時点で指数上は全国水準を上回っている。大型小売店販売額、診療報酬支払額、公共工事請負金額、有効求人倍率の上昇が影響した。しかし、これらの動きは一時的なものと考えられ、必ずしも本格的な復興を表すとはいえない。実際、民間部門の活動は回復途上にあり、鉱工業生産、大口電力使用量が伸び悩んでいる。とくに、宮城県では鉄鋼業、化学工業、水産加工業などの工場が本格的な操業再開に至っていない。

(注)10月は暫定値

図表3 市町村別にみた「生活基盤の復旧状況」

 被災37市町村の復旧状況は、前回公表時に比べ、緩やかに進捗している市町村がある一方、なかには足踏み状態にある市町村もある。復旧度が高い10の自治体を左図に示した。①全体的に着実に回復している市町村(岩手県岩泉町・宮城県岩沼市・宮城県名取市・宮城県塩竈市)、②瓦礫の処理が復旧の課題となっているものの、着実に回復している市町村(宮城県七ヶ浜町・宮城県利府町・宮城県多賀城市)、③課題を抱えながらも、ガス・電力・道路などの復旧が全体としての復旧度を底上げしている市町村(宮城県仙台市・岩手県宮古市・岩手県久慈市)。

目次

東日本大震災復旧・復興インデックス
資料1 東日本大震災復旧・復興インデックス 採用系列の一覧表
資料2 「生活基盤の復旧状況」指数―グラフおよび数値―
資料3 「人々の活動状況」指数―グラフおよび数値―
資料4 市町村別にみた「生活基盤の復旧状況」
資料5 「人々の活動状況」指数に含まれる個別指標―グラフおよび数値―
資料6 9月8日公表分との指数の比較
資料7 東日本大震災復旧・復興インデックスの加工方法について
資料8 「人々の活動状況」指数 個別指標別バックデータ

図表

図表1 「生活基盤の復旧状況」指数の動き
図表2 「人々の活動状況」指数(バージョンⅠ)
図表3 「人々の活動状況」指数(バージョンII)
図表4 復旧が比較的着実に進む市町村
図表5 個別指標の動向

復旧・復興インデックス検討チームメンバー

市村英彦 東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授
柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授/NIRA理事
澤田康幸 東京大学大学院経済学研究科准教授
米岡大輔 東京大学大学院医学系研究科(国際保健)修士課程
和川央  岩手県復興局産業再生課主査
浜岡誠  岩手県復興局企画課企画専門員
神田玲子 前NIRA研究調査部長
斉藤徹史 NIRA研究調査部主任研究員
森直子  NIRA研究調査部研究コーディネーター・主任研究員

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)総合研究開発機構(2011)「東日本大震災復旧・復興インデックス(2011年12月更新)」

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