星岳雄
スタンフォード大学教授
アニル・K・カシャップ
シカゴ大学ブースビジネススクール教授

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概要

 本書は、1990年代以降に日本経済が長期停滞に直面し、 経済がほぼ同等ないし日本以上に成熟している先進諸国に比べても成長率が低くなってしまった要因を究明し、 経済成長を回復するために必要かつ実施可能な政策プランを提示するものである。
 第1部「何が日本の経済成長を止めたのか」では、日本が長期的停滞に陥った根本的な要因として、追付き型成長の終焉、 グローバル化と変動相場制への移行、高齢化による労働投入量の鈍化と貯蓄率の低下、の3点に突き当たる。そして、日本の経済政策が、 これらの試練を乗り切ることに成功していないどころか、増加したゾンビ企業の延命、特に非製造業部門における規制緩和の停滞、 マクロ経済政策の失敗といった、かえって経済成長を停滞させるような選択をしたと指摘する。
 第2部「経済改革の成功と挫折―小泉改革の検証」では、小泉内閣が取り組んだ経済改革のうち、金融システム改革、郵貯民営化、 労働市場改革、農業改革とFTA政策、構造改革特区、地方財政改革の6つについて、目標・計画、改革の評価・効果、 その後の揺り戻し等の観点から、それぞれ考察を試みている。
 第3部「日本再生のための処方箋」では、上述の考察を踏まえ、 日本が他の先進諸国と同程度の成長を回復していくために必要かつ実施可能な政策について提案している。具体的には、 ①他国と比べても高い事業活動コストの削減に資する諸施策の導入、②金融円滑化法など実質的にゾンビ企業を支援する結果となる政策の廃止、 ③非製造業での規制緩和の促進、④競争や生産性上昇を促進する重要な規制緩和を含む特区の推進を行うべきとしている。また、開国政策として、 ⑤TPPを含む貿易自由化や、⑥ゾンビ農家を生み出している農業補助金の削減、⑦移民の流入を促進する政策を実施することを提案する。 そして、マクロ経済政策としては、⑧日本の財政が維持不可能となる前に、歳入を増やし歳出を減らす財政改革をする一方で、 ⑨デフレ脱却のための金融緩和を行うべきであると指摘する。
 伊藤元重NIRA理事長の巻末の解説にあるように、本書は、失われた20年ともいうべき日本の長期停滞に対し、 正確なデータ分析に基づいて可能な処方箋を提示する「良質な政策分析」である。本書のような良質な政策分析により提示された処方箋に基づき、 日本の政策議論が前進していくことが期待される。

INDEX

目次

まえがき

第1部 何が日本の経済成長を止めたのか
はじめに/高度成長の終焉/ 高齢化と経済成長/輸出主導型の経済成長/成長を阻害するもの(1)ゾンビ企業への貸し出しと不徹底なリストラ/ (2)政府による規制/ (3)マクロ経済政策の失敗/小泉改革の評価/結論

第2部 経済改革の成功と挫折― 小泉改革の検証
金融システム改革/郵貯民営化/ 労働市場改革/農業改革とFTA政策/構造改革特区/地方財政改革/結論

第3部 日本再生のための処方箋
はじめに/規制改革(事業活動にかかわるコストの削減/ ゾンビ企業保護の撤廃/非製造業部門の規制緩和/成長特区)/開国政策(貿易自由化/農業保護の削減/移民政策)/マクロ経済政策の改善 (持続可能な財政政策/デフレ脱却のための金融政策)/結語

解説(伊藤元重)

著者

星岳雄 スタンフォード大学教授
アニル・K・カシャップ シカゴ大学ブースビジネススクール教授

発行:日本経済新聞出版社
定価:1,900円+税

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)星岳雄・アニル K カシャップ(2013)『何が日本の経済成長を止めたのか-再生への処方箋』日本経済新聞出版社

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