大久保敏弘
慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員
辻琢也
一橋大学大学院法学研究科教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員
中川雅之
日本大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機機構上席研究員

概要
 
 超高齢化や人口減少など、様々な要因がまちづくりのあり方に政策転換を迫っている。そのような中、地域における改革を成功させるキーマンは市町村長だ。そこで、全国市長村長(注1)を対象に、「政策意識とリーダーシップ」に関するアンケートを実施した。
 第1部では市町村長に実施したアンケート結果に基づいて、市町村長の平均的な姿を描き出した。市町村長の約7割が「子育て支援策の充実」を重視しており、超高齢化や人口減少に「抗する」拡大志向の政策に関して自身の政治判断を強調する傾向にある。
 また、「一般人よりはやや社交的で、リスクを厭わない普通の人間」であり、組織としての意思形成に努めるという「地味で実直な姿」が浮かび上がった。しかし、周囲を鼓舞しながら現実を変革していく「鼓舞型かつ変革型」のリーダーシップを発揮する市町村長は1%程度に過ぎず、市町村長のリスクを厭わないパーソナリティが、現場では必ずしも生かされていない。

INDEX

図表

図表1-1 アンケートの回収状況
図表1-2 回答した自治体と全国の人口規模別構成比
図表1-3 人口規模別、全国と回答自治体の総人口比較
図表1-4 市町村長の当選回数別の割合
図表1-5 市町村長の年齢別分布
図表1-6 回答自治体と全国の自治体のクラスター別の自治体比率
図表2-1 アンケート調査で提示した施策
図表2-2 重視してきた政策(第14順位の合計)
図表2-3 重視してきた政策と回答した市町村長の割合(優先順位別)
図表2-4 人口規模別、重視してきた政策(第1~4順位の合計)
図表2-5 行財政改革を重要とする市長の割合 ―520万人の自治体を財政状況別にみる
図表3-1 市町村長による政治判断の必要性
図表3-2 「行政ルール(A)」と「政治判断(B)」についての考え方
図表3-3 問3の優先順位別にみた、市町村長による政治判断の必要性
図表3-4 政策分野ごとの政治判断の必要性に関する全政策平均(各順位)との差異
図表3-5 「定住人口確保策」を重要施策とした市町村数
図表3-6 「農林水産業の振興等」を重要施策とした市町村
図表3-7 実証分析に用いた変数の記述統計
図表3-8 政治判断の必要性に関する実証分析結果
図表4-1 組織運営のあり方
図表4-2 組織運営をする上での考え方
図表4-3 人口規模別、「意思決定の内容」についての考え方
図表4-4 人口規模別、「意思決定の期限」についての考え方
図表4-5 カテゴリー分類
図表4-6 カテゴリー1とカテゴリー2の市町村の属性の相違
図表4-7 組織運営方針による市町村の差異
図表5-1 アンケート13項目の3つの区分
図表5-2 改革を進める上での障害
図表5-3 都市規模でみた障害に関する回答の平均件数
図表5-4 人口規模別、「財源が不足していること」についての市町村長の回答割合
図表5-5 人口規模別、「職員の数や質が不十分であること」についての市町村長の回答割合
図表5-6 人口規模別、「市町村長と議会が対立していること」についての市町村長の回答割合
図表5-7 人口規模別、「住民が協力的でないこと」についての市町村長の回答割合
図表5-8 人口規模別、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」についての市長村長の回答割合
図表5-9 緊急時における10個の課
図表6-1 質問した16項目
図表6-2 一般人と市町村長の性格平均
図表6-3 一般人と市町村長の性格分布
図表6-4 一般人と市町村長のリスク選好度
図表6-5 市長と町村長の特徴
図表6-6 コロナ禍前の政策選択と市町村長の特徴市区
図表7-1 タイプ分けに関わる質問事項
図表7-2 市町村長のリーダーシップの類型
図表7-3 「取引型かつ漸進型」とそれ以外との差異

調査概要

・調査方法:インターネット調査、郵送による調査
・調査対象者:全国の市町村長、東京23区長の計1,741自治体首長
・回収数:824件(回収率47.3%)
・調査期間:20201012日(月)から1130日(月)

研究体制

大久保敏弘  慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員
辻琢也    一橋大学大学院法学研究科教授/NIRA総研上席研究員
中川雅之   日本大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員
神田玲子   NIRA総研理事・研究調査部長
井上敦    NIRA総研研究コーディネーター・研究員
渡邊翔太   NIRA総研研究コーディネーター・研究員
       (当時、現在は、りそな銀行カスタマーサクセス部)
鈴木壮介   NIRA総研研究コーディネーター・研究員

はじめに 本研究の背景・目的・方法

 否応なく進む超高齢化や人口減少、地球環境問題、そしてデジタル化は、行政組織やまちづくりのあり方に大きな政策転換を迫っている。人口減少に対応して、サービス供給を担ってきた行政職員を減少させ、行政組織を簡素化する。デシタル化を効果的に進めるために、既存の行政組織の縄張りを超えて、システムの標準化や共同化を進め、煩雑な事務手続きをシンプルにネット対応できるようにする。頻発する自然災害のなか、空地・空家が増えているのだから、まちなかに安全で楽しくコンパクトに暮らすことを心掛ける。そして、何よりも、少子化対策を充実させて、地域住民の理想出生数を実現し、進む人口減少を抑制する……。こうした政策転換の方向性は、いわば自明の理であり、正面から異を唱える者は少ない。

 ところが、実際に政策転換を実現していく段階となると、なぜか容易に進捗しない。その進み方が鈍いばかりか、案件によっては、転換方向から逆流してしまい、人口増加時代と同じ方向で事態が進んでいるのではないかと、疑いたくなるものすらある。実際、ここ1、2年、公務員数は増加に転じ、広域行政の強化は容易に進んでいない。依然として新市街地における新築住宅・マンションは住宅市場において大きなシェアを占めている。そして、コロナ禍もあり、1年間に生まれる子ども数は劇的に減少し、ピーク時の半分以下の80万人割れも目前に迫りつつある。これまでのところ、超高齢・人口減少社会を克服するための施策は、市町村にしっかり根付いて、十分に成果を上げているとはいえないのである。

 これには、様々な要因が考えられる。大きな要因の1つは、住民に慣れ親しんできた生活スタイルの変革を迫るものが多いことである。「このままではジリ貧で、昔と同じようにはいかない」ことは、頭の中でわかっていても、いざ変えるとなると、躊躇する場合が少なくない。目前のリスクや負担を考慮すると、これまでのやり方を続けることに傾きやすい。実際、未知の世界を実現するための変革が、必ず成功する保証はない。

 しかし、超高齢化や人口減少が進んでいる今日、より多額の費用をかけて従来の政策を維持したとしても、昔と同様の効果をいつまでも期待することはできない。とすれば、住民を説得して、現実的な「良薬口に苦し」の改革を実現し、持続的に繁栄できる自治体経営を可能にすることこそが、市町村長に求められる「リーダーシップ」ではないか。仮に改革を実施することにリスクが伴うのであれば、そのリスクを最小限度に縮減して、改革を行うことが市町村長のすべきことであり、そうした市町村発の提案を国に向かって提案していくことが、市町村長の最大の役割である。

 他方、国の提案が実効性を伴わないものであれば、自治体の現場でそれに改善を加えて実現の道を切り開き、また、筋の悪い提案であればそれに従わないことを英断するのも、市町村長のリーダーシップのあり方の1つである。「国は何もしてくれない」だとか「余計なことばかりする」だとか、国の不作為や作為に文句を言ってばかりいるのではなく、国に先駆けて自治体が先行実施し、実現可能な形で国に提案することこそが、地方分権時代の市町村長に求められる姿なのである。逆に言えば、超高齢・人口減少社会に即して政策転換をできずにいるとすれば、それは、国とならんで市町村も力量不足であることを指摘せざるをえない。

 しかし、既に先駆的に政策転換に成功をしている市町村も存在する。それらの成功要因の鍵の1つは、市町村長の政策意識とリーダーシップに他ならない。分権型社会において改革を担う最大のキーマンは国ではなく、住民にもっとも身近な存在として、サービスを提供している基礎自治体たる市町村である。そして、その意思決定を最終的に担うのは、その長たる市町村長である。本研究が、現職の市町村長を対象にアンケート調査を行ったのは、こうした問題意識に基づいている。

 ところで、選挙によって1人だけが選ばれる市町村長は、多くの住民にとって、自分とは遠くの世界に生存する特別な人たちである。しかも、この特別な人たちは、残念ながら、現代日本においては否定的なニュアンスをもって語られることが多い。もっとも支配的なイメージは、「当選する前にはいろいろ言っていたのに、当選後は、国や役所のいうことばかりを代弁する役人の操り人形」「偉そうに威張っているが、決められたことだけをしていて、主体的には何もしてくれない人」といった「リーダーシップを著しく欠いた姿」である。「政治的パフォーマンス先行で調子はよいが、ほんとうにやってほしいことは何もしてくれない目立ちたがり屋」との批判もある。かつてに比べれば少なくなったものの、「利益誘導をして私腹ばかりをこやしている」とか「強いもの(既得権益層)の味方ばかりをする」という印象も、いまだにある。

 こうした市町村長に向けられる、さまざまなイメージは、私たちが未来を託したい「高い政策意識と強いリーダーシップをもった」市町村長像とかけ離れている。そして、これら否定的なイメージの根底には、「担がれる幸運に恵まれただけで、役所に支えられれば、あのぐらいのことなら誰でもできる。いや、自分ならもっとマシにできる」との思いもありそうだ。遠い存在とはいえ、国会議員や県知事に比べれば、身近な存在である市町村長には、やっかみまじりのより厳しい視線が住民から注がれてきた側面もある。

 しかし、これらイメージは実像なのだろうか。リーダーシップを発揮して、地域の課題を解決していくためには、市町村長はまず何から改革を進めていくのが得策なのか。さらに、その手法はどのようなものであり、逆に改革を阻んでいる要因は何なのか。果たして、市町村長にはどのような性格をもつ人間がなっており、どのような人間が向いているのか。そして、それを克服するために、市町村長はどのような工夫をすべきなのか。すでに先駆的成果を上げている市町村長と、一般の市町村長との間では、何が異なっているのか。

 本研究は、アンケート調査と事例研究に基づいて、これらの点を明らかにしている。超高齢・人口減少社会における政策転換の秘訣に、市町村長の政策意識とリーダーシップの観点から迫ろうとしたのである。

 以上の目的意識から、(公財)NIRA総合研究開発機構、大久保敏弘(慶應義塾大学)・辻琢也(一橋大学)・中川雅之(日本大学)は、共同で全国の市町村長、東京23区長を対象に、政策意識に関するアンケート調査を実施した(2020年10月12日(月)~11月30日(月))。幸い、全国の市町村長から多くの協力をいただき、任意の民間団体アンケートとしては、比較的多くの回答を得ることができた(回収率47.3%)。本研究は、これらアンケート調査の結果を実証分析したものである。

 最後に、本研究が前提とする「リーダーシップ」の概念と報告書の構成について、簡潔に説明する。リーダーシップに関しては、政治学や経営学をはじめとして、さまざまな分野において、多様に論じられてきた。こうしたなかで、本研究は、アンケート調査に際して、敢えて予断を与えるような定義を、市町村長に示していない。市町村長は、リーダーシップという言葉を、「自然体で」受けとめて回答している。

 広辞苑によれば、リーダーシップとは、「指導者としての地位または任務。指導権。」という意味と、「指導者としての資質・能力・力量。統率力。」(注2)という意味がある。市町村長という地位にある指導者にアンケートを行った本研究が問う内容は、後者である。また、後者に関しては、生まれながらにもちあわせた「能力」や幼少期から養われてきた「資質」等と、それ以外の様々な工夫によって、望ましい方向に他者を誘導する「統率力」に大きく分類できる。本研究が主に分析したのは、市町村長としての知恵(経験や知見)が問われる、この「望ましい方向に他者を誘導する統率力」である。

 すなわち、アンケート調査では、政策判断に関して「行政ルールVS政治判断」(自分自身による政治判断であることか、国等の方針に基づくものであること、のどちらを強調すべきか)、「組織運営方針」(成果主義か、年功序列によるべきか)等の質問を提示した。従来から問われてきた論点について、現職市町村長の見解を訊ね、改めて自ら志向する改革を阻んでいる認識している要因を端的に整理している。

 さらに、これまでの研究によれば、他者を効果的に誘導するためには、個人的な地位や資質、能力、政治行政的な調整テクニックもさることながら、「タイムリーに良い課題を提示する」(適切な時期に最適な課題を設定するアジェンダセッティング)ことこそが重要なことであると広く知られている。

 このため、本報告書の第1部では、先ず、市町村長が「重視する政策課題」を明らかにしている。そのうえで、指導者としての統率力に当たる「行政ルールか、政治判断か」、「組織運営方針」、「改革の障害要因」を把握し、そして統率者としての資質・能力・力量に関しては、「パーソナリティ」を調査した。最後に「リーダーシップ」の類型化を行った。

 続く第2部は、上記のアンケート調査を踏まえて、6人の市町村長に対して行ったインタビュー調査の結果をまとめたものである。事例研究の対象とした選定基準は、先駆的に改革を進めて、その成果がまちづくりに既に現れている団体ということである。同時に、改革を企図した時点から、成果を上げている今日まで、分析可能な1人の市町村長によって担われていることも、重要な選定基準の1つである。その上で、自治体の人口規模・地域が適度にバラつくよう配慮した。

 この際、本研究でとりあげた団体のほかにも、優れた団体は沢山あり、優れた団体を上位から順番に選択したものではないことを、あらかじめお断りしておきたい。そして、最後に、これら先駆的に改革を進めてきた市町村長の政策意識と、全国調査に確認でした市町村長のそれとを比較して、リーダーシップのあり方のどこかに、違いがあるかを、仮説的に考察している。

参考文献

新村出編著(2008年)『広辞苑(第六版)』岩波書店, pp.2938.

第1章 アンケート調査概要

 

 本アンケートでは、日本全国の市町村のうち、約5割の自治体からの回答があった。人口規模別の構成比、市町村長の当選回数別の割合や年齢別分布等に関して、回答自治体は全国自治体と同じ傾向を示している。

自治体の属性

 本アンケートは、日本全国1,741の市町村(注3)に対して、2020年10月12日から11月30日にかけ、インターネット、郵送によって行われた。回収状況は図表1-1の通りである。東京都の特別区のみ回答率は26%と低位であるが、全体で見ると約5割の自治体から回答をいただけた。

図表1-1 アンケートの回収状況(注4)

 人口規模別に6つのグループに分けて集計を行ったところ、「50万人以上」(n=16)、「20万人以上50万人未満」(n=40)、「10万人以上20万人未満」(n=57)、「5万人以上10万人未満」(n=110)、「1万人以上5万人未満」(n=333)、「1万人未満」(n=266)となった。回収できた自治体の人口規模構成比を全国のものと比較しても、それほど目立った乖離はない(図表1-2)。一部の人口規模の自治体の回答数が少ないことによって発生する偏重は少ないと言える。いずれも、「1万人以上5万人未満」の自治体が最も多く、「50万人以上」の自治体が最も少ないという結果になった。

図表1-2 回答した自治体と全国の人口規模別構成比

 回答した自治体の総人口(注5)と全国の総人口を人口規模別に比較すると図表1-3の通りである。「1万人未満」規模の回答自治体の総人口のみが全国の同規模の自治体の総人口の50%を超え、それ以外の人口規模の地域は下回る結果となった。つまり、該当する人口規模の中では小規模の自治体からの回答が多い。

 2015年度の『国勢調査』によると、市町村数を基準にいえば、日本の市町村長の7割は、人口10万人以下の小規模自治体に所属している。これに対して10万人以下の自治体の総人口は、全人口の3割程度を占めているのにすぎない。10万人以下の小規模自治体の市町村長であることが、日本の市町村長の標準的な姿であるが、半分以上の日本の住民は大都市や中都市に住んでいるのである。このため、本研究は、適宜、人口規模別に市町村長のリーダーシップのあり方を実証分析している。

図表1-3 人口規模別、全国と回答自治体の総人口比較

市町村長の属性

 続いて、回答いただいた市町村長の属性について検討する。当選回数についてみると、1回の者が最も多く、全体の約3割を占めた。当選回数が増えていくごとに割合としては小さくなっている。当選回数比率に関しても、回答いただいた市町村長は全国の市町村長と、ほぼ同じ傾向を示している(図表1-4)。

図表1-4 市町村長の当選回数別の割合

 年齢(注6)は「65歳以上70歳未満」の人数がピークとなり、ここを基準に次第に少なくなっている(図表1-5)。こちらも全国の構成比率と大きな違いはみられない。

図表1-5 市町村長の年齢別分布

自治体の特徴

 以上、本調査に回答した自治体と全国の自治体の人口規模別構成比に大きな違いがないことを確認した。ここでは、さらに地域特性を考慮して自治体を分類してみる。

 まず、全国の市町村を多様な地域特性を踏まえて類型化するために、人口構成、地理、経済、行政、労働、生活環境に関する様々な指標を用いて、クラスター分析という手法で、7つの類型(クラスター)を作成する。詳細な分析手法と結果については巻末(注7)に示している。その結果、都市部の特性を有した自治体と、地方の特性を有した自治体に二分された。

 さらに、都市部の特性を有した自治体は4つに分類された。各クラスターの特性から、東京都心部の自治体や政令指定都市が中心のクラスターは「大都市」、県庁所在地や中核市が中心のクラスターは「地方中核」、東京圏、京阪神の都心近郊の市が中心のクラスターは「衛星」、地方中核クラスターや衛星クラスターに該当する自治体の近郊に位置する自治体が中心のクラスターは「準衛星」と記した。

 また、地方の特性を有した自治体は3つに分類された。その特性から、65歳以上人口割合が比較的高いクラスターは「高齢」、最も多くの自治体が該当し、全体平均からの乖離が小さいクラスターは「標準」、第1次産業が中心のクラスターは「農林水産」とした。

 図表1-6は、回答自治体と全国の自治体のクラスター別の構成比を比較したものである。結果を見ると、回答自治体と全国の自治体で、各クラスターを構成する自治体の比率に大きな違いはみられない。このことからは、人口規模だけでなく、経済社会的な地域特性を考慮に入れた分類においても、回答自治体の構成は母集団である全国自治体の構成と大きく乖離していないといえる。

図表1-6 回答自治体と全国の自治体のクラスター別の自治体比率

参考文献

総省統計局(2015)『人口等基本集計結果』.

第2章 重視する政策課題

 

 ほぼ7割の市町村長が重要政策に掲げるのは「子育て支援策の充実」である。次いで多いのは「防災・災害対策の全般的な推進」であり、「地域づくり・商工業振興・雇用対策」「定住人口確保策」と続く。重視する政策課題には、「超高齢・人口減少」化の流れを抑制しようとする積極的な政策が並ぶ。

 これに対して、人口減少に即した行革関連政策については、「歳出削減や財源確保」が6番目に顔を出しているほかは、重視されていない。「行政組織の見直し・再編」も上位ではないし、「人員数や人件費の見直し」は低い水準となっている。もっとも「歳出削減や財源確保」を第1位とした自治体は16%存在している。リーダーシップをもって正面から行革を掲げるべきかどうかについて、市町村長の対応が分かれている。

 既に言及した通り、リーダーシップをうまく発揮できるかどうかは、属人的な能力やテクニックもさることながら、タイムリーに最適な課題設定ができているかどうか、によるところも大きい。果たして、現職の市町村長は、政策課題として何を重視しているのか。リーダーシップを発揮すべき市町村長の基本戦略は、端的にこの点に示される。

 今回のアンケート調査においては、市町村長に重要度が高い順に上位から4つまで、施策を選択してもらった。提示した施策は、図表2-1のとおりである。自治体の行っている施策を、「行財政改革」「まちづくり・地域づくり」「防災・消防・警察関連」「社会保障」「教育」という5つの領域に分け、全部で22の項目に整理した。

図表2-1 アンケート調査で提示した施策

図表2-2 重視する政策(第1~4順位の合計)

 図表2-2は、施策単位でみて、第1順位から第4順位のいずれかにランキングした市町村長の割合(1~4位にランキングした市町村長数/回答した全市町村長数)を、高いほうから順番に示したものである。

 今回、断トツに多くの市町村長が重視していた施策は「子育て支援策の充実」(69%)である。ほぼ7割の市町村長が重要政策に掲げた。端的にいえば、超高齢・人口減少社会に対応した政策転換の鍵と認識されているのは、子育て支援策の充実なのである。確かに子育て支援策の充実には、「出生率の回復による自然動態の改善」と「子育て世帯の転入という社会動態の改善」の両方から、人口減少の抑制を期待できる。しかも、子どものために投資することは、一般的には政治的支持を得やすい。

 これまで、子育て支援策の充実を阻んできた最大の障害要因は、予算制約である。実際、人口増加が著しかった高度成長期の都市自治体は、増え続ける児童増加に対して小学校や中学校を整備していくことに追われ、十分に認可保育所を設置できなかったと言われる。この結果、保育所に措置できない待機児童が恒常的に相当数に及んでいた。

 ちなみに、市町村財政の逼迫は、近年、むしろ、強まっている。それにもかかわらず、現在は、待機児ゼロを目指してかつてないスピードで対策が進められている。子育て支援策は、市町村長が重視し、劇的に改革することができた施策領域なのである。

 ただし、この背景には、子育て支援策に関して、市町村長が財政リスクをとって政策を進めてきたというよりも、「国策」で財政支援スキームが整えられた点が大きい。しかも、給付対象である子どもはさらなる減少が予測され、将来に見込まれる財政負担はさほど増加しないと言われる。つまり、給付対象である子どもの減少と国による財政支援スキームが、市町村が負わなければならない財政リスクを軽減し、市町村による大胆な子育て投資を可能にしているのである。現時点において、子育て支援策を充実させることは、決してリスクの高いことではない。

 ところで、子育て支援策が充実してきたことは事実だが、その充実が出生率の回復や子どもの増加といった成果を挙げているわけでは必ずしもない。元来、子育て支援策充実の目標は、あくまでも子育て環境の整備であって、直接、出生率の向上を約束するものではない。「生めよ、殖やせよ」を直接の目標とすれば、その途端に住民の反発から数字が低下する可能性もある。また、子育支援策の充実が、出生率の構造的な改善や総人口の増加に帰結するまでには、相当の時間を要することが想定される。

 本来、超高齢・人口減少社会の財政逼迫時代に、長期的な人口回復を期待して子育てに持続的に重点投資することは、短期での見返りが期待できない、リスクの高い政策選択である。それは、現代の「米百俵の精神」といってよく、それを持続させるためには高度なリーダーシップが必要とされる。人口回復に帰結するまでの長く険しい道程に、「米百俵の精神」と財政事情が耐えられるかどうか。子育て支援策の充実を長期間維持して、それを出生率向上や出生数の増加に結び付けられるかどうかに、リーダーシップの真価が問われている。

 次いで、市町村長が重視してきたのは、「防災・災害対策の全般的な推進」(46%)である。約半分の市町村長がランキングしている。ここ十年来、自然災害が頻発し、自治体は、災害発生時の応急・復旧対策や平時の災害対策に、恒常的に相当の行政資源を動員するようになっている。災害に伴う公共公益施設等の現状復旧に関しては、原則、国による全額の財政負担が期待できる。

 一方、平時と異なる非常時における避難誘導等については、リーダーには瞬時の的確な政治判断が求められることがある。政治判断の適否に、住民の命運が大きく左右されかねない。

 もっとも、本来、防災・災害対策においてリーダーシップが問われるのは、「事後の復旧」よりも「事前の予防」である。「災害発生時や発生後の応急・復旧対策を如何に迅速に行うか」という点よりも、「如何に災害に伴う被害を未然に防ぐか、最小限度に抑制するか」が重要だからである。予防を進めるためには、災害の痛みが顕在化していない平時に、防災訓練、立地制限、移転、建て替え、景観上の制限など、財政負担、自己負担、私権制限等を前提とした協力を求めなければならない。一方、災害発生時の復旧事業に比べれば、予防段階における国の財政支援は限定的である。予防対策をどこまで進められるかは、市町村長の腕の見せ所の1つである(高度なリーダーシップが求められる)。

 この他、回答割合が高かった選択肢の特徴として、「定住人口確保策」や「学校教育の充実」など、若い世代の取り込みや人口増加に関連するものが多い。さらに、「地域づくり・商工業振興・雇用対策」や「農林水産業の振興と食料の安定供給」など、産業振興に関連する選択肢についても多くの回答が得られた。どちらかというと、自治体の活動をプラスの方向に拡大する公約を掲げるものが、やはり、多くなっている。

 他方、「健康増進・保健所の機能強化・疾病対策」の充実については、回答の割合が低かった。新型コロナウイルス感染症の発生以前は、伝染病がほぼ抑えられていたことから、保健行政の比重が生活習慣病対策に移行しており、自治体として貢献できる余地が限定的になっていたことも影響している。現在、新型コロナウイルス感染症対策については、市町村長のリーダーシップが問われている政策課題の一丁目一番地といえ、コロナ発生経路の追跡調査や感染者対策、予防ワクチン接種、各種給付金の交付に、相当の激務が続いている。試行錯誤が続けられているこれら対策と、それに係る市町村長のリーダーシップのあり方については、残念ながら、今回調査の主たる対象とはなっていない。

 ところで、市町村長の対応が分かれたのが、「歳出削減や財源確保」と「定住人口確保策」である。「歳出削減や財源確保」を第1位とした自治体は16%あったが、上位にランク付けていない自治体も多かった(図表2-3)。また、「定住人口確保」を第1位にした自治体も、1万人以下の団体を中心に、17%あったが、2位、3位に選ばれる機会はさほど多くない。今日においても行革路線を継続させるべきか、人口減少が必至の時代において敢えて「定住人口確保策」を掲げ続けるべきなのか、リーダーシップをもって、これら政策を看板に掲げるかどうかに、市町村長の姿勢の違いが表れている。

 一方で、「高齢者福祉、障害者福祉、生活保護・自立支援対策の充実」については、第4位までの重要な政策として位置付けている自治体はやや多いものの(18%)、第1位として挙げた市町村長は少ない。高齢者が増えている今日、対象者数の増加にあわせて、高齢者福祉や医療全般、生活保護に係る費用が着実に増加してきている。しかし、今回の調査においては、この自然増の流れにも便乗する形で、生活保護費や医療費全般、そして高齢者福祉を、政策的に重視するとした市町村長は多くなかった。

図表2-3 重視する政策と回答した市町村長の割合(優先順位別)

重要度の高い政策を人口規模別にみると

 さて、図表2-4は、重視してきた施策を、人口規模別に整理したものである。自治体に関しては、市と町村を区別せずに、[1万人未満]、[1万人以上5万人未満]、[5万人以上10万人未満]、[10万人以上20万人未満]、[20万人以上50万人未満]、[50万人以上]の6区分である。これによれば、すべての階層で「子育て支援策の充実」が第1位となっている。しかも、人口規模の大きい自治体の市町村長ほど、「子育て支援策の充実」をランキングする割合が高い。実際、大都市ほど多くの待機児を抱える傾向にあった。その大都市でも待機児は相当程度、解消に向かっており、市町村長があげてきた成果は、大都市ほど大きい。

 また、第2位は、5万人以上の自治体においては「防災・災害対策」となっている。これもまた、人口規模の大きい自治体の市町村長ほど、「防災・災害対策」をランキングする傾向が強い。逆に、5万人未満の自治体において、「防災・災害対策」は第3位にとどまっている。これには、人口規模の大きい自治体ほど、管理しなければならない防災施設や公共施設が多いこと、また、人口規模の小さい自治体においては、その地理的条件によっては、災害経験が少なかったり、逆に地域単位の防災対策がすでに整っていたりすること、さらには、自ら管理しなければならない防災施設・公共施設が限定的だったりすること等が考えられる。

 なお、20万人以上の自治体においては、約3割の市長が「高齢者福祉、障害者福祉、生活保護・自立支援対策の充実」をランキングしている。人口規模の大きい自治体においては、今後も高齢者の絶対数の増加が予測され、今後も、成果として関連施設の整備が期待されている。これに対して、すでに高齢化率の高い町村は、さらに高齢化率は高まったとしても高齢者の絶対数は増えず、さらなる施設整備の必要は低い。また、生活保護や障害者福祉の業務は行っていない。かわって、1万人未満においては、約半分の市町村長が「定住人口確保策」を重視し、約4割の市長村長が「農林水産業」を重視している。それぞれの人口規模と地域事情を踏まえて、施策課題が政治的に重視されているものと考えられる。

図表2-4 人口規模別、重視する政策(第1~4順位の合計)

(注)カッコ内の割合は第1~第4順位で回答した自治体数を該当する人口規模の自治体数で割ったもの。

 ところで、超高齢・人口減少社会で持続的に自治体経営を進めるためには、縮小する人口規模にあわせて、自治体を「行革」することも必要である。しかし、今回の調査において、「行革」関連施策は概して上位にランキングされていない。人口規模に応じて身の丈にあった行政組織にし、歳出削減していくことを、政治的に強調して進めていく状況にはなっていないのである。

 ただし、[5万人以上10万人未満]、[10万人以上20万人未満]の中規模団体の3割強の市長が、「歳出削減・財源確保」をランキングしている(いずれも第5位)。図表2-5は、5~20万人の自治体を経常収支比率(2017年度)の水準により4グループに分けて、それぞれのグループにおいて、何パーセントの市長が「行財政改革に関する政策課題」(問3の選択肢1~6)をランキングしているかを示したものである。これによれば、経常収支比率(注8)の高い市長ほど、「行財政改革に関する政策課題」を重視していることを、改めて確認できる。元来、10~20万人規模の自治体は、地方交付税制度上、標準的とされてきた団体である。今日の市町村長が行財政改革を政治的に重視したがらない傾向があるなかで、人口規模別にみると、これら標準的な団体がそれを政治的にとりあげる状況にある点は、今後の地方財政運営を考える際に留意する必要がある。

図表2-5 行財政改革を重視する市町村長の割合
―5~20万人の自治体を財政状況別にみる―

(注1)回答のあった自治体を、経常収支比率によって4つのグループに分け、各グループ内で、「行財政改革」の政策を重要度が高い政策として選択した自治体の割合。
(注2)「行財政改革」に含まれる政策は、図表2-1を参照のこと。

第3章 行政ルールVS政治判断

 

 市町村長が重視してきた政策ほど、市町村長の政治判断が必要だと回答した割合が高い。特に高かったのは「地域づくり・商工業振興・雇用対策」であり、住民に直接サービスを提供するような政策において、政治判断が必要だと強調する傾向がみられる。
 加えて、転入超過率の高い自治体や第2次産業従業者比率が高い自治体の市町村長ほど、政治判断を強調する傾向にある。さらに、リスクを進んでとる市町村長の方が、政治判断をより強調し、また、加齢とともに政治判断を強調しなくなる傾向がみられる。

 それでは、それぞれの重要課題に、市町村長はどのように取り組んできたのだろうか。本研究は、市町村長のアプローチに、対照的な2つの方法を想定した。1つは、文字通り政策を判断するに当たって、自分の政治判断を強調するものである。もう1つは、国や県の助言を含めて行政のルールや慣例に従うことを強調するものである。後者が、「(A)行政におけるルールや、行政組織のこれまでの慣例を踏まえた判断」であり、前者が「(B)市町村長による政治判断」である。

 たとえば、市町村合併の選択を迫られている団体があるとする。この場合、「合併特例法に基づく財政措置があり、今、合併したほうが財政運営上も有利だ。多くの自治体が合併する。現行制度においては、国や市の方針や助言どおり、我々も不本意ながら合併を選択せざるをえない」と判断したとする。これは、(A)のアプローチである。

 翻って「単独行政を維持することもできる。長期的には、小規模でも単独行政を維持したほうが住民に手厚いサービスを提供できる。国や県の助言に従う必要はない」と判断したとする。これは、(B)のアプローチである。また、仮に最終結果として、合併を選択したとしても、「単独行政を維持することもできる。しかし、今後、人口減少と高齢化はさらに進み、少数の高齢者だけで現行の行政サービスを支えていくのは大変だ。まだ、体力がある今のうちに、地元に残る子どもたちの多くが住む隣町と合併し、有利に合併交渉を進めよう」と説得したとする。この場合も、(B)のアプローチとなる。

 つまり、同一の政策決定も、アプローチの仕方によって、(A)にも(B)にもなりうる。この際、本当に、どこまで「そうせざるをえない」のか。どこまで義務付けられているか。また、市町村長が深謀遠慮の末、国を悪者にして「そうせざるをえない」と説明したのか。逆に、事務的に伝えられた国の専門的助言を、全面的に信頼して従ったのか。様々なケースが考えられる。

 一般的には、(B)が分権時代の市町村長に想定されるアプローチである。しかし、すべての案件一切を、(B)によって合意形成するというのも大変なことである。敢えて「過去の習慣や国の方針」を持ち出す(A)も、リーダーシップを発揮するための便法の1つと、考えられる。「過去の習慣や国の方針」持ち出すことで、合意形成が容易になる面はいまだにある。果たして、現職の市町村長は、(A)(B)をどのように使い分けて重要課題に迫っているのだろうか。

 この点を明らかにするために、本研究は、回答結果にもとづき、課題別に、政治判断の必要性を数値化した。すなわち、(A)「行政のルールや慣例を踏まえた判断」の必要性が「さらに強め」=1、「より強め」=2、「やや強め」=3、「(A)(B)とも同程度」=4とし、(B)「市町村長の政治的な判断」の必要性が「やや強め」=5、「より強め」=6、「さらに強め」=7とした。数値が高ければ高いほど、政治判断が必要であると市町村長が強調していることを示している。逆に、数値が低ければ低いほど、行政のルールや慣行に基づく行政判断が必要であると強調していることになる。

 図表3-1は、問3(第1~4順位の合計)において20%以上の市町村長が重視していると回答した政策課題(対象数7)のみを取り出して表示している。果せるかな、今回の調査結果によれば、全体的に(B)、すなわち、市町村長の政治判断が必要であると回答した割合が高い。このうち、政治判断の必要性が特に強調されたのは、「地域づくり・商工業振興・雇用対策」、及び「定住人口確保策」であった。住民に直接サービスを提供するような政策に、市町村長が政治判断の必要性を強調する傾向がみられた。

図表3-1 市町村長による政治判断の必要性

(注)(A)「行政のルールや慣例を踏まえた判断」が「さらに強め」=1、「より強め」=2、「やや強め」=3、「(A)(B)とも同程度」=4、(B)「市町村長の政治的な判断」が「やや強め」=5、「より強め」=6、「さらに強め」=7として評価した市町村長の回答を、政策ごとに平均した。

政治判断の必要性の違い

 図表3-2は、重要とされた施策ごとに、「行政ルールVS政策判断」に関する回答割合を帯グラフで示したものである。政治判断が行政ルールよりも必要と答えている市町村長の割合は、いずれにおいても7割程度となっている。そのなかでも、行政ルールを踏まえた判断が必要と回答した市町村長の割合が相対的に高いのは、「防災・災害対策の全般的な推進」や「学校教育の充実」である。

 学校教育については教育委員会所管で政治的中立が求められる。また、防災・災害対策については専門的見地から科学的にリスクを軽減することも重要である。両施策とも政治的に「重視」することは重要であっても、政治的な裁量は求められていない点が、この結果に表れていると考えられる。

図表3-2 「行政ルール(A)」と「政治判断(B)」についての考え方

 図表3-3は、市町村長が重視してきた課題の順位別に、政治判断の必要性をスコア化したものである。これによれば、「重視している課題ほど政治判断が必要である」と、市町村長が認識していることを改めて確認できる。

図表3-3 問3の優先順位別にみた、市町村長による政治判断の必要性

(注)(A)「行政のルールや慣例を踏まえた判断」が「さらに強め」=1、「より強め」=2、「やや強め」=3、「(A)(B)とも同程度」=4、(B)「市町村長の政治的な判断」が「やや強め」=5、「より強め」=6、「さらに強め」=7として評価した市町村長の回答を、重視する政策の優先順位ごとに平均した。

 ここで図表3-4を見てほしい。図表3-4は、施策単位で順位ごとに、政治判断の必要性の認識を、第1~4順位に挙げた政策の平均値からの差で記述している。これによれば、政治判断の必要性が高いと認識される「地域づくり・商工業振興・雇用対策」「定住人口確保策」「子育て支援の充実」は、全ての順位において平均を上回って政治判断が必要とされているが、その多寡と順位には一定の関係がみられない。一方、政治判断の必要性が低いと認識される「歳出削減や財源の確保」「学校教育の充実」「防災・災害対策の全般的推進」についても、それぞれの施策の各順位において平均を下回る政治判断しか求められていないが、やはり、順位の多寡と必要性の認識には、明確な関係性を認めることができない。

 ちなみに、Alesina and Tabellini(2008)は、「利害関係者が多岐にわたらない施策」「成果判別しやすい施策」「コミットメントを守り切れない施策」については官僚が担うべきであり、再選をインセンティブとする政治家は、複雑な住民選好に敏感でその利害調整に長けているとした。まさに、「歳出削減や財源確保」「学校教育の充実」「防災・災害対策の全般的推進」はそれに該当し、本研究のここまでの結論は、この見解と整合的である。

図表3-4 政策分野ごとの政治判断の必要性に関する全政策平均(各順位)との差異

(注)全施策における政治判断の必要性の平均値を0としている。政治判断の必要性が高いとの回答が多い場合は0より上に振れ、政治判断の必要性が低いとの回答が多い場合は0より下に振れる。

政治判断の認識の違いはなぜ生じるのか

 以上、政治判断の認識は、基本的に各施策の特性を反映したものであることを確認できた。このほか、政治判断の認識のあり方に影響を与えている要因として、どのような要因が想定できるのか。①市町村の経済社会環境のほか、②市町村長の個人的属性、③市町村の役割と権能の違いが考えられる。以下、検証してみよう。(注9)

 図表3-5は、市町村を転入超過率が低い順から5%のクラスごとに並べ、それぞれのクラスで「定住人口確保策」施策を重要施策としてあげた市町村数を記述したものである。これによれば、転入超過率が低い市町村において、政治判断の必要性が高いと考えられている「定住人口確保策」施策が重要施策として位置付けられる。また、図表3-6は、横軸に「第1次産業従業者比率」の低い順番に並べたクラスごとに「農林水産業の振興と食料の安定供給」について同様の作業を行っている。これによれば、第1次産業従業者比率が高い市町村ほど、「農林水産業の振興と食料の安定供給」を重要施策としている傾向がみられる。ここから、政治判断の認識に、明らかに①経済社会環境が影響を与えていることを類推できる。

図表3-5 「定住人口確保策」を重要政策とした市町村数

(注)上記計数は、回答があった市町村を、人口増加率の高低で20分位に分け、各グループで「定住人口確保策」を重要施策に挙げた自治体数を示す。

図表3-6 「農林水産業の振興等」を重要政策とした市町村

(注)上記計数は、回答があった市町村を、人口減少率の高低で20分位に分け、各グループで「農林水産業の振興等」を重要施策に挙げた自治体数を示す。

 そこで、各市町村の各順位の「政治判断の必要性」を平均した「政治判断の必要性指標」を被説明変数として、①の観点から「転入超過率」「総人口」「第1次産業従業者比率」「第2次産業従業者比率」「経常収支比率」を説明変数に設定して最小二乗法(OLS)によって各要因の影響をみる。また、②の観点から「市町村長の年齢」「当選回数」「リスク選好度」を採用した。リスク選好度は、0~10の尺度でリスクをどの程度とるのかを答えてもらったものである。本来、生まれもったものであり、あまり変化するものではない。詳しくは、第6章を参照されたい。さらに、③の観点から政令指定都市、中核市、特別区、町村を除いた一般市(施行時特例市を含む。以下同じ)をサンプルとして取り出して、同様の推計を行った。

 ①と②の観点から、市町村長の政治判断の必要性を説明しようとしたのが[推計1:全市町村]、③の観点を加えて一般市のみのデータで推計を行ったのが[推計2:一般市]である。以下の図表3-7は、推計に用いた変数の記述統計である。総人口の平均値は約6万人であるが、標準偏差は約14万人とばらつきが大きい。第1次産業従業者比率 、及び第2次産業従業者比率の平均値はそれぞれ3%、27%である。経常収支比率の平均値は89%、標準偏差は6%である。また、市町村長の平均年齢は64歳であり、標準偏差は8.6歳となっている。当選回数の平均値は2.4回、最高回数は11回である。また、リスク選好度の平均値は6.4となっている。


  図表3-7 実証分析に用いた変数の記述統計(クリックすると拡大します)

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 図表3-8は、実証分析の結果である。[推計1:全市町村]では、①の経済社会環境の観点からは、「転入超過率」と「第2次産業従業者比率」に関して正で有意な係数が推定された。これは、人口の社会増加率が高く、また、企業や工場の誘致が必要な地域の市町村長ほど、政治判断を強調する政策を採用する傾向にあることを示している。逆に、人口減少やサービス経済化が進むと、地域の成長率が抑制され、政治判断の必要性があまり強く認識されないことを示している。これは、それらの地域の市町村長が、行財政改革などの政策を採用する傾向があることを意味する。また、「転入超過率」については、強い政治判断を発揮したからこそ、同時に、地域への転入や工場の誘致が進んだ面もある。さらに、「第1次産業従業者比率」については、有意な結果とはならなかった。

 ②市町村長の個人的属性の観点からは、「リスク選好度」が正で有意な係数となった。つまり、進んでリスクをとろうとするタイプの市町村長ほど、政治判断を強調する傾向にある。また、「市町村長年齢」が弱いもののマイナスの結果が得られた。これには、加齢とともに保守的な傾向が強くなること、年長者として、まかせるべき事務的な仕事と政治判断すべき大きな仕事の使いわけがうまくなることなどが考えられる。

 また、③市町村の役割と機能の違いの観点からは、「経常収支比率」に関連して、一般市のみのデータで推計を行った場合に、負の有意な係数が推定された。経常収支比率は、人件費や扶助費などの義務的経費が、地方税や交付税などの経常的な収入に占める割合を示したものである。人口規模や産業構造による影響を除くと、経常収支比率が低い団体の市長ほど、政治判断を強調する傾向にあることを意味する。これは、経常収支比率が低い、つまり、裁量で使える義務的経費の割合が低い団体ほど、政治的な手腕を発揮できる余地が広がるためと考えられる。他方、全市町村を対象とした[推計2:一般市]では、有意な符号とはならなかった。これは一般市とそれ以外指定都市・中核市・町村に関しては、県費負担教職員人件費、道路事業費、生活保護費の有無など、歳入・歳出項目が構造的に異なり、経常収支比率の水準が大きく異なるためと考えられる(注10)

図表3-8 政治判断の必要性に関する実証分析結果

(注) 括弧内の数字は標準誤差。*は10%、**は5%、***は1%水準で統計的に有意であることを表す。

参考文献

Alberto Alesina and Guido Tabellini2008” Bureaucrats or politicians? Part II: Multiple policy tasks”, Journal of Public Economics, (92), pp. 426-447.

第4章 組織運営の方針

 

 組織運営のあり方については、大多数の市町村長が同じ傾向の回答をした。「自律型」「プロジェクト単位で業務を進める」「チーム単位でビジョンを策定」する組織が望ましいとするものであった。政策決定については、「全体利益を重視」し、「一定期限内に結論を出す」という回答が多く、人事評価については「プロセス重視」するものの、給与については「成果主義」を重視する市町村が多い。

リーダーシップを支える組織運営とは

 次に、行政組織を中心に、市町村長による組織運営のあり方を検討しよう。今回の調査において、組織運営のあり方に関しては、図表4-1のとおり、基本的な7つの問いを、2つの考え方のうちどちらか近いものを選択する方法で投げかけた。

図表4-1 組織運営のあり方

 今回の調査での1番大きな組織運営に係る問いかけは、「市町村長自身による指示・命令を重視する統制型組織」と、「現場の職員の意思決定や判断を重視する自律型組織」のどちらか望ましいかを、訊ねるものである。組織規模の大小にかかわらず、日本の自治体がこなさなければならない業務は多岐に及んでおり、専門化・分業化が進んでいる。人口規模の小さい団体でも、1人の市町村長で広範囲にわたって仔細に指示することは困難であり、一般原則としては、「現場の職員の意思決定や判断を重視する自律型組織」が望ましい。しかし、その一方で、行政組織内においては市町村長だけが選挙で選ばれる「外様」である。役所内部における事務的決定が終始先行し、市町村長の主体性が発揮できないでいるとの指摘もある。「市町村長自身による指示・命令を重視する統制型組織」を提唱する市町村長が、どの程度存在するのかを把握することは、興味深いところだった。

 また、これに関連して、行政ビジョンの策定に際して「チーム単位」の活動か、「個人単位」の活動を重視するかを訊ねている。一般的には、組織としての活動を重視し、「チーム単位」の活動が行政運営のベースになると考えられる。しかし、役所のなかで、傑出した側近や逸材が「キーパーソン」となって、庁内調整やまちづくりが進むケースは、これまでもみられた。ブレイクスルーを期待して突き抜けた個人を重視し、リーダーシップを発揮する市町村長も存在するものと想定される。

 あわせて、既存組織で対応できない分野横断的な課題がある場合に、組織を再編して対応するかどうかを質問している。一般に、組織再編はリーダーがその姿勢を端的に示し、意図する組織運営を恒久化できる有効な方策の1つである。実際、地方自治法の改正に伴って、都道府県の部制例示がなくなって以来、独自の組織再編を行っている自治体は少なくない。ただし、既存組織を改変することには、働く職員からの反発も考えられる。既存組織には敢えて手をつけず、課題ごとに部局横断的なプロジェクトチームを作って対処するほうがより実効的だとの指摘もある。現時点において市町村長が、リーダーシップを発揮するに際して、どちらを選好しているか、改めて意見を訊いた。

 さらに、近年、行われた地方公務員法改正に伴って、人事運営の基本として義務づけられたのが、人事評価である。人事評価の運営方針や、それに係る勤勉手当等の支給、昇給のあり方は、市町村長のリーダーシップとも密接にかかわっている。人事評価については、成果とプロセスのどちらを重視するか。職員の給与については、成果主義を重視するか、結果としての年功序列を否定しないか、端的に質問した。

 最後は、意思決定の内容と期限である。合意形成に至らず所要の時間を使い切ってしまった場合、リーダーシップを「合意するまで期間を延長し、議論を続ける」ことに使うのか。もしくは、期限内に結論を出すことに使うのかによって、方向性は大きく異なる。また、「公平な分配が犠牲になっても、全体の利益を拡大することが望ましい」と考えるのか、「全体の利益が犠牲になっても、公平な分配を実現するのが望ましい」と考えるのか。ここではパレート最適(注11)を超えた政策決定を、現役の市町村長がどの程度、意識しているのかを、質問した。

 これら質問に対する回答結果を示したのが、図表4-2である。市町村長の回答は、こちらの予想を超えて、極めて明快だった。すなわち、大半の市町村長は、トップが逐次指示をする「統制型組織」より、積極的対応を期待する「自律型組織」を意図し、分野横断的な課題には既存の「組織を再編」してのぞむのではなく、各部署から人員を選抜して「プロジェクトチーム」で対処する。行政ビジョン作成に関しては、傑出した「個人」の活動に期待するよりも、組織全体の「チーム単位」で策定する。一方で、人事評価に対する考え方は、拮抗しているものの、「成果よりもプロセスを重視」するという過程重視の考え方が過半数を超えた。こうした「自律型組織」「プロジェクトチーム」「チーム単位」「プロセス重視」の各点は、日本の自治体組織から連想される項目が並んだ。ボトムアップの組織対応を重視してきた「戦後日本の官僚制」論の主張と同じである。

 ところが、意思決定の内容については、やはり、大半の市町村長は、「全体利益を重視」して、一定期限内に「結論を出す」とし、職員給与は、「年功序列」ではなく「成果主義」に基づいて支給するとしている。しかし、その一方で、人事評価は「プロセス重視」でありながらも、職員の給与は「成果主義」が大半であるなど、一見、回答が首尾一貫していないようにみえる点もある。果たして、伝統的な組織運営が支配的な「過程」に対する認識が、「全体利益を重視して一定期限内に結論を出す」姿勢や成果主義を生み出しうるのだろうか。以下で、この点をさらに詳しくみていく。

図表4-2 組織運営をする上での考え方

(注)数字は全体の回答における選択肢の回答割合。

組織運営の考え方を人口規模別にみると

 組織運営の考え方を人口規模別にみると、「意思決定の内容」について、人口規模が大きいほど、公平性を犠牲にしてでも全体利益を重視するとの回答が多い(図表4-3)。大都市であれば対象人口が多く、利害集団も多様なので、全員合意を図ることは難しい。一方で、小規模な自治体では、市町村長と「顔が見える関係をもつ」固定的な住民が多いうえ、利害集団も少ない。今後のまちづくりを協働することを考えると、メンバー間にしこりを残さず、なるべく全員が満足するよう、公平な意思決定を心掛けているものと考えられる。

図表4-3 人口規模別、「意思決定の内容」についての考え方

(注)数字は「全体利益重視」(左)と「公平性重視」(右)の回答割合。

 また、「意思決定の期限」については、「結論を出す」と回答する割合がどの規模でも7割程度以上になった(図表4-4)。一方で、大規模な自治体では、他の人口規模の自治体と比べて、「議論を続ける」とする割合が比較的高い。けだし、大規模な自治体においては、会派を中心とした議会運営が行われている。党派別に賛否が分かれるなかで、なるべくすべての会派が同意できるよう、日常的に努力されている。これに対して、一定の人口規模以下の自治体においては、無所属が多く、会派別に異なる意見が対立することが少ない。日常的に会派を前提に意見調整する機会自体が限られているのであり、この感覚の違いがアンケート結果の相違を生み出している可能性がある。事実、全員合意とならない案件数は、人口規模の大きい自治体のほうが多い。一方、中規模の自治体で「結論を出す」割合が大きいのは、大規模な自治体ほどは会派の対立が激しくなく、他方、小規模な自治体ほど顔が見える関係でもないため、比較的、結論を出しやすい、という特性を持っていることも考えられる。ただし、このアンケート調査においては、人口50万人以上のサンプル数は11と限られた数にとどまっている点に留意したい。

図表4-4 人口規模別、「意思決定の期限」についての考え方

(注)数字は「議論を続ける」(左)と「結論を出す」(右)の回答割合。

組織運営方針の違いを生み出している要因

 そこで、組織運営に対する考え方に基づいて、改めて市町村長を類型化してみる。組織運営に関する7つの問に対する回答のうち、多くの市町村長が同じ回答をした問いを除くと、次の3つが残る。これらの問に対する回答から、次のとおりにカテゴリー1と2に分類した。(注12)

図表4-5 カテゴリー分類

リスク選考度が高く、比較的年齢層の若い市町村長がカテゴリー1に該当

 最初に、カテゴリー1とカテゴリー2の市町村に関して、市町村長のリスク選好度と年齢を比較したのが、図表4-6である。リスク選好度については、カテゴリー1の市町村は平均6.6でカテゴリー2の市町村は6.3であり、t検定を行って有意な差を確認できた。

 また、市町村長の年齢についても、カテゴリー1の市町村は平均63.29歳、カテゴリー2の市町村は64.82歳であり、有意差を確認できた。つまり、リスクを取る傾向にあり、比較的若い市町村長の自治体において、「成果主義」に基づく職員給与の支払い、「期限を重視」した意思決定、「全体の利益」を重視した意思決定を行っている傾向が確認できた。

図表4-6 カテゴリー1とカテゴリー2の市町村の属性の相違
(注13)

組織運営の考え方と政治判断

 次に、意思決定の方向性と政治判断の関係について検証する。「意思決定の内容」についての質問では、「全体の利益を重視する」、あるいは「公平な配分を重視する」から市区町村長の考えに近いものを1つ選んでもらった。政策判断の基準と「全体の利益を重視する」と答えた市町村長をカテゴリー1’’とし、それ以外の市町村長と、政治判断を必要とする数値を比較したのが図表4-7である。すなわち、カテゴリー1’’の平均5.13は、それ以外の平均4.94より、わずかながらに高く、全体の利益を重視している市町村長は、他の市町村長よりも政治判断をより強調する傾向にあることを確認できた。

図表4-7 組織運営方針による市町村の差異

第5章 改革の障害要因

 

 改革を進める上での障害要因として、「財源が不足していること」を、4分の3の市町村長が指摘している。「市町村長と議会が対立していること」や「住民が協力的でないこと」は、約半分の市町村長が障害だと認識している。それらをより強く障害要因だと認識しているのは、人口規模の多い都市の市町村長である。
 さらに、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」は、「市町村長と議会が対立していること」や「住民が協力的でないこと」よりも、改革を阻む障害として認識されている程度は、やや低い。高齢化の進む分権型社会においては、国や県との調整よりも、自治体内の合意形成に、リーダーシップが期待されている。

役所・地方議会内の問題が深刻化

 翻って、市町村長の改革を阻む障害要因はどこにあるのか。アンケート調査では、「役所・地方議会」「地域内」「地域外」に大別できる13項目にわたって、何を障害と認識しているか市町村長に質問した。それぞれについて、「はい」「いいえ」「どちらでもない」のうちもっとも当てはまるものを選んでもらっている。

図表5-1 アンケート13項目の3つの区分

 今回の調査結果は、図表5-2のとおりである。これによれば、「財源が不足していること」(76%)がもっとも多い。人口減少・超高齢化の時代にあっても、「金さえあればなんとか」との思いが、市町村長にはいまだ強い。次いで多いのは、「職員の数や質が不十分であること」(57%)や「市町村長と議会が対立していること」(54%)などであり、役所・地方議会内の問題が上位を占めている。

 また、地域内では「住民が協力的でないこと」(53%)、「協働する地域団体や中間的組織が不足していること」(43%)の順で上位に指摘されている。地域外では、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」(46%)が高かった。なお、留意してほしいのは、「地域外の問題」を障害と感じる程度が、他の2つの課題よりも少ないことである。すなわち、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」よりも、「市町村長と議会が対立していること」や「住民が協力的でないこと」の方が、改革を阻む障害であると認識されている。

 地方分権改革一括法が施行されて20年経過し、構造改革特区制度や提案募集方式も定着してきた。超高齢化の進む分権型社会においては、国や県との調整よりも、自治体内の合意形成に、リーダーシップが期待されているのである。

  図表5-2 改革を進める上での障害(クリックすると拡大します)

rp112201_data5-2.png(注)計数は市町村長の回答数の割合。

障害をどう乗り越えるのか

 図表5-3は、人口規模別に「障害である」という回答を得た設問の件数と、「障害ではない」という設問の件数を整理したものである。これによれば、基本的には、人口規模の大きい市町村長ほど、「障害である」課題が増えている。大きい自治体の市町村長ほど、使える行政資源も多いが、対処しなければならない課題も、また、多くなるものと考えられる。逆に、人口規模の小さい自治体ほど、「障害である」課題の件数は低下し、「障害ではない」は増加している。

図表5-3 都市規模でみた障害に関する回答の平均件数

(注)質問した障害要因13項目の内、市町村長の回答別平均件数。

 ここで、「障害である」と感じている課題が何かを見ると、人口規模にかかわらず、財源、あるいは、職員の数や質を上げている市町村長が多い。なかでも、人口規模の小さな団体の市町村長ほど、「財源が不足していること」「職員の数や質が不十分であること」など、基本的な行財政力の不足を指摘している。また、「協働する地域団体や中間的組織が不足していること」「有力な地元企業や民間団体が衰退していること」「地域外企業の協力が得られないこと」なども、全体傾向よりも多くの市町村長が「障害である」と考えている。

 その一方で、規模の小さい市町村長は、「住民が協力的でないこと」「自治体域内におけるコミュニティ間で対立があること」「住民間の関係性が希薄で、人的ネットワークの構築が進まないこと」などは、障害と認識していない。また、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」は「障害がある」とは認識されていない。狭い伝統的な守られた世界で、安定的な行政運営を行っている側面もありそうだ。

図表5-4 人口規模別、「財源が不足していること」についての市町村長の回答割合

図表5-5 人口規模別、「職員の数や質が不十分であること」についての市町村長の回答割合

図表5-6 人口規模別、「市町村長と議会が対立していること」についての市町村長の回答割合

図表5-7 人口規模別、「住民が協力的でないこと」についての市町村長の回答割合

図表5-8 人口規模別、「現行の法制度等を前提とした国・県等との調整が進まないこと」についての市長村長の回答割合

危機時におけるリーダーシップ発揮の障害

 一般にリーダーシップのあり方は、平常時と危機時で大きく異なる。今回の調査においては、「緊急時(コロナ禍や水害・地震などの災害時)の自治体運営について、どんな問題や課題」があるか、自由記載を求めた。自由記入に回答した市町村長は646名である。以下、実証分析手法(注14)(注15)用いて自由記入の内容を分析した。

 図表5-9は、自由記述にみられた問題や課題について、10項目に整理したものである。もっとも高かったのは「職員と専門スタッフの不足」で、その平均比率(以下同)は16.9%である。特に、保健師や看護師、建築技術士など、専門人材の不足を懸念する声が大きかった。2番目に高かったのが、「避難所の確保と運用」で平均比率は15.8%である。一方、「避難の態勢」の平均比率は7.6%とやや低い。3番目に平均比率が高かったのが、「情報の発信と管理」(12.9%)である。

 災害時に、正確かつ迅速に状況を把握・分析し、下した判断を住民に素早く伝えることは、リーダーシップの発揮そのものである。とりわけ、50万人以上の自治体で平均比率が18.7%であるのに対して、1万以下の都市では10%程度と低い。人口規模が大きい市町村ほど、情報の発信や管理に細心の留意を払っている。

図表5-9 緊急時における10個の課題

(注)平均比率とは、自由記入の文書をデータベース化し、各課題に関連する用語の出現率を示したものである。

 これに対して、人口規模の小さい市町村で指摘される傾向が強い課題は、「職員と専門スタッフの不足」「避難所の確保と運営」「地域の孤立」、そして「地域固有の災害」である。人口規模別の平均比率をみてみると、「職員と専門スタッフの不足」は、人口が少ない市町村ほど、数値が高くなっている。また、人口規模が小さくなればなるほど、「地域の孤立」を指摘する割合は概ね高くなっており、人口1万人以下の町村では10%強である。

第6章 市町村長のパーソナリティ

 

 「Big Five」とよばれるパーソナリティの指標等を用いた分析の結果、市町村長は一般人と比較して、外向性、勤勉性、開放性が高い一方、神経症傾向が低く、かつ、リスク選好的であることが明らかとなった。また、市長と町村長を比べると、市長の方がその傾向がより強い。さらに、市町村長のリスク選好度、パーソナリティ、年齢、経歴によって、重視される政策が違うことも確認された。(注16)

市町村長のパーソナリティ

 さて、市町村長は、政治家向きの特異な人格をもった特殊な人間なのだろうか。それとも、私たち一般人と同じよう普通の人間なのだろうか。そもそも、的確にリーダーシップを発揮できる市町村長に、ふさわしい性格や能力はあるのだろうか。第6章においては、心理学で用いられている「Big Five」とよばれるパーソナリティの理論に基づいて測定結果の比較を行った。Big Fiveはパーソナリティを外向性、協調性、勤勉性、心配性、開放性の5つの因子で構成したパーソナリティ理論である(Goldberg, 1990)。

 Big Fiveを測定する尺度としては、2017年に実施されたドイツ社会・経済パネル調査(SOEP)で用いられた16項目からなる設問を日本語訳して利用した。図表6-1のそれぞれの項目について、「非常に当てはまる」「当てはまる」「多少は当てはまる」「何とも言えない」「あまり当てはまらない」「当てはまらない」「全く当てはまらない」の中から選んでもらった。

図表6-1 質問した16項目

 一方、比較のため用いたのは、2019年の慶應義塾家計パネル調査(KHPS調査2019)の結果である(注17)。日本全国の一般の個人を対象としたKHPSでは、Big Fiveを10項目の設問で測定するTen Item Personality Inventory(TIPI)(Gosling et al., 2003)の日本語版であるTIPI-J(小塩ら, 2012)が用いられている(各因子に対して2項目の設問からなる)。いずれの尺度も、各項目につき、7件法で回答を求めている。各因子のスコアは、Gosling et al.(2003)に基づき、必要な項目について反転処理をしたうえで、各因子に対応する項目の回答結果を加算して、加算した項目数で割ることで算出した。いずれの因子も、値が大きいほど、その傾向が強くなることを意味している(注18)(注19)

 これによれば、一般人よりも市町村長は、外向的で、勤勉性が高く、開放性である。また、一般人よりも市町村長において神経症傾向は少ない(図表6-2、6-3)。協調性の平均値は一般人と市町村長でほぼ同じだが、ばらつきは市町村長の方が小さい。「政治家」としては、予想された結果といえる。

図表6-2 一般人と市町村長の性格(平均)

(注)性格に関する5要素を1~7の7段階で評価。数値が大きくなるほど傾向が強くなる。図は回答の平均値。

図表6-3 一般人と市町村長の性格(分布)

(注)性格に関する5要素を1~7の7段階で評価。数値が大きくなるほど傾向が強くなる。図は一般人、市町村長それぞれの回答分布。

 なお、市町村長の重要な資質の1つに、リスクテイクできるかどうか、という点が指摘されることがある。今回の調査は、この点を正面から市町村長に質問している。図表6-4は、この回答結果を、大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)の一般人の結果と比較して示したものである。これによれば、リスク選好度の平均値は、市町村長が6.4、一般人が3.9である。市町村長は一般人よりも、明らかにリスク選好的である。

図表6-4 一般人と市町村長のリスク選好度

(注)リスク選好度について、0(まったくリスクをとろうとしない)~10(とても進んでリスクをとろうとする)で選択した際の回答分布。

都市と地方で、市町村長のパーソナリティはどう違うのか

 ところで、パーソナリティは、先天的な側面と後天的な側面をあわせもっている。しかも、都市部と町村部では経済社会環境が大きく異なる。とすれば、その違いは、選挙で選出される市町村長のパーソナリティにも影響を与えているのだろうか。以下では、市(特別区を含む)と町村に分けて、市町村長のパーソナリティを検証してみる。

 図表6-5は、市町村長のパーソナリティを、市と町村に分けて整理したものである。これによれば、町村長と比べて市長は、平均的に外向性、開放性が強く、リスク選好的である。また、平均年齢が2.7歳ほど低く、無投票当選は2割低い(注20)。さらに、市長と町村長で分けると、市長は、町村長よりも、一般人と比べて市町村長が有する特徴を、より強く代表している。

図表6-5 市長と町村長の特徴

(注)市区の観測値数は346。町村の観測値数は446。

市町村長のパーソナリティによって重視される政策は違うのか

 また、市町村長のパーソナリティの違いは、重要施策の選定に影響を与えているのだろうか。具体的には、パーソナリティや特性ごとに、強いグループ(上位)と弱いグループ(下位)に市町村長を分けて、両者で重視する施策に違いがあるかどうかを確認した(注21)

 図表6-6によれば、リスクを好まない市町村長は、「子育て支援策」を重視する傾向が強い。また、協調性の強い市町村長は、「防災・災害対策」を支持している。さらに、高齢の市町村長は、「子育て支援」「防災・災害対策」に精力的に取り組み、他方、若い市町村長は、「学校教育の充実」「歳出削減や財源確保」をより重視している。

 そして、それより特徴的なのは、市町村長になる以前の職務経験によって、選択する重要施策に違いがみられることである。民間経験をもつ市町村長は、公務員出身者よりも、歳出削減や財源確保を重要施策として掲げる傾向が強い。民間経営者がトップに就任し、行財政改革を断行するパターンが散見される。他方、公務経験のある市町村長は、「定住人口確保」を重視する傾向がある。また、政治家出身の市町村長は、「地域づくり・商工業振興・雇用対策」に熱心である。とりわけ、無投票当選でリスク回避的な市町村長は、「地域づくり・商工業振興・雇用対策」を重要施策として掲げる傾向がある。

図表6-6 コロナ禍前の政策選択と市町村長の特徴(市区)

参考文献

Goldberg, L. R. (1990). “An alternative "description of personality": The Big-Five factor structure”. Journal of Personality and Social Psychology, 59(6), pp.1216–1229.
慶應義塾大学(2019)『慶應義塾家計パネル調査』.
Gosling, S. D., Rentfrow, P. J., & Swann, W. B., Jr.2003.” A Very Brief Measure of the Big Five Personality Domains”. Journal of Research in Personality, 37, pp. 504-528.
小塩真司・阿部晋吾, Cutrone Pino2012)「日本語版Ten Item Personality InventoryTIPI-J)作成の試み」パーソナリティ研究, 21, pp. 40-52.
David Richter, Maria Metzing, Michael Weinhardt, and Jürgen Schupp,2013“SOEP Scales Manual”, SOEP Survey Papers.
時事通信社(2020)『全国知事・市町村長ファイル2020-2021.

第7章 市町村長のリーダーシップの類型化

 

 自治体運営の実際を尋ねてみると、「鼓舞型かつ変革型」(周囲を鼓舞しながら現実を変革していくタイプ)よりも、「取引型かつ漸進型」(関係者の合意を取りつつ時間をかけて少しずつ変えていくタイプ)が多い。一般の人々よりも、外交的・開放的でリスクを好む性格ながら、組織や制度を重んじて地道に合意形成をかさねて、少しずつ変革を図っていくというのが、日本の市町村長の姿である。この背景には、取引によって関係者の合意を形成し、漸進的に改革を進めていくことが、より実効的であるという日本社会の特質が考えられる。
 「取引型かつ漸進型」のリーダーシップをとる市町村長の場合、政治判断を強調する度合が、やや低い。日本を取り巻く人口減少や高齢化、デジタル化の進展は予想以上に速い。取引型の漸進型の取組が熟成するまでの時間的余裕を許さない可能性もある。少々の反発を覚悟しても、鼓舞型・変革型の要素を強めて、実効的に改革を進める必要があるのか、あらためて問われている。

ジョセフ・S・ナイによる米国合衆国歴代大統領の類型

 以上、現代日本の市町村長の実像について、分析してきた。第1部の最後に、これら実像を類型化して、今後のリーダーシップのあり方を展望する。将来の国際比較も射程に、本研究は、ジョセフ・S・ナイ(Nye, 2013)が用いたリーダーシップの類型に基づき分析する。ジョセフ・S・ナイ(2014)は、米国合衆国の歴代大統領を「目標」と「スタイル」の2つの軸から分類した。

 まず、リーダーが求める「目標」の尺度は、「現状維持」に始まり、段階を追って徐々に進める「漸進型の変革」、そして一挙に進める「大規模な変革」まである。リーダーはこの尺度のどこかに自分の目標を設定する。そして、ナイは、大規模な変革を追求するリーダーを「変革型リーダー」、その対極にあるリーダーを「漸進型リーダー」とした。ナイによれば、リチャード・ニクソンは変革型リーダーであり、ドワイト・D・アイゼンハワーは漸進型リーダーである。

 ニクソンは、「アメリカ経済の弱体化に対して、変革型の目標をもってそれに対処しようとした。つまり、金とドルの兌換を停止し、違法な輸入課徴金を導入し、国際的な協議をまったく行わずに調整のコストを同盟国に転嫁するという方法であり、アメリカが創設に一役買っていた国際経済体制、ブレトンウッズ体制を破壊するという、劇的な結果につながった」からである。

 一方で、アイゼンハワーは、「現状維持型と漸進型の目標を明確に追及していた。賢明な判断により、ソ連の封じ込め政策を強化しながらも、朝鮮半島やベトナムでの地上戦を回避し、国内経済を支えるために海外での支出を削減し、ヨーロッパや日本との新しい同盟関係を強化した」。

 次に、「スタイル」はどのような手法を用いるかを意味する。このスタイルについてナイは、ハード・パワー資源とソフト・パワー資源の使い方によって2つに区別した。強制に伴う補償や代償・代替措置など、ハード・パワー資源を使うリーダーシップが「取引型スタイル」である。これに対して、魅力や説得というソフト・パワーのスキルに依存するリーダーシップが「鼓舞型スタイル」である。

 ナイによれば、「舞台裏で仕事をする大統領」と評されたアイゼンハワーは典型的な取引型スタイルのリーダーである。また、ウッドロー・ウィルソンは、鼓舞型のスタイルをもって米国国民の過半数を説得して、第1次世界大戦に参戦し、戦争遂行をやりとげた。

 ただし、この際、重要なことは、1人のリーダーが1つのタイプ(目標とスタイル)に固定化されるのではないということである。時々の外部環境やキャリア過程に応じて、リーダーは目標やスタイルを巧みに使い分ける。たとえば、バラク・オバマは2008年の選挙キャンペーンでは変革型の外交目標を打ち出したが、1期目には主として漸進型の政策をとった。逆に、1933年から45年までの4期に及ぶ任期を全うしたフランクリン・ルーズベルトは、外交政策において、在任1期目は漸進型だったが、2期目の後半は変革型に移行したという。

 一般に、リーダーの行動や判断を厳しく制約される環境においては漸進型のリーダーシップが発揮される可能性が大きくなる。これに対して、変化の必要性をフォロワーが感じているときには、変革型のリーダーシップが成功する可能性が高くなるという。また、安定した予測可能な環境では取引型のスタイルがより有効である。逆に、急速かつ不連続な社会的・政治的変化の時期においては鼓舞型のスタイルがより適している、と指摘している。

 鼓舞型
 (予測が困難な環境)
 取引型
 (予測可能な環境)
 変革型
 (制約が多い)
 ウッドロー・ウィルソン  ハリー・トルーマン
 漸進型
 (制約が少ない)
 ビル・クリントン  ドワイト・アイゼンハワー

日本の市町村長のタイプ分け

 このナイが示したフレームに基づいて、リーダーの目標とスタイルの観点から、日本の市町村長を類型化する。すなわち、リーダーの目標については、問7(17)(18)の「組織を抜本的に変えていきたい」と、「組織を一歩一歩、着実に変えていきたい」の2つの設問から分類する。設問に対する回答は、「非常に当てはまる」から「全く当てはまらない」までの7段階の選択肢から1つを選ぶものとなっている。「組織を抜本的に変えていきたい」を「組織を一歩一歩、着実に変えていきたい」と比べて、より強く当てはまると回答した場合は「変革型」、その逆の場合は「漸進型」、回答が同じ場合を「中間」とした。

 次に、リーダーのスタイルについては、問7(19)(20)の「人を説得して、自分の考えに従わせることは得意だ」と、「人を動かすには、相手にとっても受け入れられる条件を提示することが大事だと考えている」の2つの設問から分類した。同様に、「人を説得して、自分の考えに従わせることは得意だ」を「人を動かすには、相手にとっても受け入れられる条件を提示することが大事だと考えている」と比べて、より強く当てはまると回答した場合は「鼓舞型」、その逆の場合は「取引型」、回答が同じ場合を「中間」とした。

図表7-1 タイプ分けに関わる質問事項

 結果は、図表7-2のとおりである。最も多い日本の市町村長のタイプは、「取引型かつ漸進型」(関係者の合意を取りつつ時間をかけて少しずつ変えていくタイプ)のリーダーである。このタイプには4割弱の市町村長が該当している。他方、「鼓舞型かつ変革型」(周囲を鼓舞しながら現実を変革していくタイプ)の市町村長は最も少なく、1%程度にすぎない。それ以外には、目標か、スタイルのどちらか、あるいは両方とも中間である市町村長が、合計で4割強存在している。

 すなわち、「組織を重んじて地道に合意形成を重ねて、少しずつ変革を図っていく」というのが、日本の市町村長なのである。大きなリスクをとって積極的に変革を起こしていくわけではない。第6章で論じた市町村長のパーソナリティ分析からは、一般の人々よりは市町村長が、外交的・開放的な人格で、リスクを好む性格であることが明らかとなった。しかし、現実の判断や取組は慎重であり、そのパーソナリティをフル回転させて、鼓舞型かつ変革型のリーダーシップを発揮しているのではない。

 そうした背景には、取引によって関係者の合意を形成し、漸進的に改革を進めていくことが、より実効的であるという日本社会の特質が考えられる。地方分権によって市町村長の権限が増え、その言動が注目されるケースも増えてきている。その際、市町村長は劇的に政策転換を図るのではない。国の方針や従来ルールを前提に議会や住民と丁寧に調整を進める市町村長が多いのである。

 また、図表7-3でみるように「取引型かつ漸進型」の市町村長と、それ以外の自治体の市町村長の政治判断の必要性を比較すると、有意な違いがみられた。「取引型かつ漸進型」の市町村長は、それ以外の市町村長より政治判断の必要性を強調する程度が弱い傾向にある。

図表7-2 市町村長のリーダーシップの類型

   図表7-3 「取引型かつ漸進型」とそれ以外との差異(注22)
   (クリックすると拡大します)

rp112201_data7-3.png 

 しかし、人口減少や高齢化、デジタル化の進展は、予想以上に速い。取引型の漸進的改革が熟成するまでの時間的余裕を許さない可能性もある。少々の反発を覚悟しても、鼓舞型・変革型の要素を強めて、実効的に改革を進める必要があるのかどうか。この点を、仮説的に検証するために、第2部へと進む。

参考文献

Joseph S. Nye,Jr.,2013”Hard, Soft, and Smart Power”, The Oxford Handbook of Modern Diplomacy.
Joseph S. Nye,Jr.,2013” Presidential Leadership and the Creation of the American Era”. Princeton University Press. (藤井清美 訳(2014)『大統領のリーダーシップ』東洋経済新報社.

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
NIRA総合研究開発機構・大久保敏弘・辻琢也・中川雅之(2022)「人口減少社会に挑む市町村長の実像と求められるリーダーシップ ー全国市町村長アンケート調査結果を中心にー」

脚注
1 本研究でいう市町村長は、厳密にいうと、市区町村長(もしくは、区市町村長)であって、このなかに法人格を持つ東京都の特別区の長は含まれる。しかし、法人格を持たない政令指定都市の行政区の長は含まれない。この市区町村長を本研究においては、「市町村長」と略称している。
2 新村出編著『広辞苑』第六版)岩波書店, pp.2938
3 脚注1を参照。
4 「不明」は自治体名が無記入、あるいは特定できなかった回答。
5 2015年度の『国勢調査』(総務省統計局)の結果に基づいている。
6 2020年1231日時点のもの。
7 「参考資料1 クラスター分析を用いた全国自治体の類型化」参照のこと。
8 地方税、地方交付税などの経常的な一般財源が、人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に、どれだけ充てられているかを示す指数。経常収支比率が高ければ、義務的経費以外に使える財源に余裕がないことを示す。
9 本項目の推計は中川雅之が行った。
10 なお、本推計は、逆因果関係のほか、内生性の問題もある。
11 一部の人々の満足を減ずることなしには、いかなる人の満足も増すことができない状態のこと。
12 該当する分析は中川雅之が行った。
13 箱ひげ図の箱の両端は25パーセンタイル、75パーセンタイルを示し、箱の中の垂直線は50パーセンタイル(中央値)を示している。「×」は平均値を示している。箱の両端についているひげは、箱の端から、1.5×四分位範囲(75パーセンタイルと25パーセンタイルの差)の範囲内にある最も遠い点まで伸びている。ひげの長さを超えた観測は、外れ値として「・」で示している。
14 本項目は、神田玲子(NIRA総研理事・研究調査部長)、金子智樹(当時、日本学術振興会特別研究員、現在は東北大学大学院法学研究科准教授)が担当した。
15 詳しくは金子智樹「参考資料2 2の自由回答データの分析に関するテクニカル・ノート」参照のこと。また、自由記入をご覧になりたい方は、弊機構のホームページを参照されたい 。
16 本章の推計は大久保敏弘、井上敦が行った。
17 KHPSでは社会全体の人口構成を反映した家計パネル調査を整備することを目的として、全国の20歳~69歳の男女を層化2段無作為抽出法により選定し、留置訪問調査方法で調査を実施している。本稿で用いるKHPS調査2019は、20192月に実施されたものであり、標本サイズは2,378であった。Big Five を測定するための設問の回答は1,745件ほど得られている。KHPSについては以下を参照されたい。日本家計パネル調査(JHPS/KHPS
18 開放性に対して4項目、開放性以外の因子に対して各3項目の設問からなる。SOEPの設問の開発についてはRichter et al.2013)を参照のこと。いずれの尺度も、各項目につき、7件法で回答を求めている。TIPIの詳細については、以下を参照されたい。GOZ LAB: TEN ITEM PERSONALITY MEASURETIPI。 
19 調査に参加した市町村長が、参加しなかった市町村長に比べて、系統的に何らかの特徴を持っている場合、全国の市町村長の母集団分布と本調査に参加した市町村長の分布の間に乖離が生じている可能性がある点に留意が必要である。
20 年齢、性別、当選回数、無投票当選、学歴、職歴は時事通信社(2020)『全国知事・市町村長ファイル2020-2021』の情報を紐づけて分析した。なお、略歴情報は市区長のみ付与されていたため、集計結果も市区に限って行っている。
21 グループ分けする際は、全回答者における中央値以下のグループ、中央値よりも高いグループに2分する。
22 該当する分析は中川雅之が行った。なお、箱ひげ図の箱の両端は25パーセンタイル、75パーセンタイルを示し、箱の中の垂直線は50パーセンタイル(中央値)を示している。「×」は平均値を示している。箱の両端についているひげは、箱の端から、1.5×四分位範囲(75パーセンタイルと25パーセンタイルの差)の範囲内にある最も遠い点まで伸びている。ひげの長さを超えた観測は、外れ値として「・」で示している。

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