研究報告書 2024.02.20 AIは民主主義を深化させるか?少子化政策の財源に関する調査実験 この記事は分で読めます シェア Tweet 谷口将紀 東京大学大学院法学政治学研究科教授/NIRA総合研究開発機構理事長 鈴木壮介 NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員 竹中勇貴 NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員 概要 人の役割をAIが代替する局面が増えているが、政治的熟議にAIは活用できるのであろうか。熟議の要諦は、人々が様々な情報に触れながら自らの意見を再考・修正するところにある。人々の情報収集をAIが支援するなど、熟議の過程にAIを介入させたとき、人々の意見形成にどのような影響が及ぶのか。 本プロジェクトでは、少子化政策の財源は税金・社会保険料と国債のどちらがよいかという争点を例に、熟議におけるAI活用の可能性を探り、以下の結論を得た。第1に、将来世代の意見を人間が予測してもAIが生成しても、その意見を見ると、将来世代の意見に接しないときと比べて人々は税金・社会保険料の引き上げに肯定的で、国債発行に否定的になる。第2に、将来世代の意見をAIが生成した場合も、人間が作った場合から少子化対策の財源に関する人々の考え方の変化に大差は見られなかった。第3に、人が提示した論点は自己中心性バイアスがみられるのに対し、AIが提示した論点はより多様な視点に立っており、かつ多くの回答者から重要な論点として評価された。 これらの知見は、民主政治における意見の提示や論点の設定という人間の役割を、AIは不自然ではない程度に代替できることを示唆している。ポイント●人々が少子化政策の財源に関する論点について考えると、自身の損得を優先的に考える自己中心性バイアスを帯びた視点が多くなった。●AIが少子化政策の財源に関する論点を抽出すると、専門家が発信している論点を包括する傾向が見られた。●AIが抽出した論点についても人々は重要だと考えており、AIを活用した論点設定の有効性がうかがえた。●人々がこれから生まれてくる将来世代の意見を見ると、少子化政策の財源確保のために税金・社会保険料の引き上げに肯定的になる一方、国債発行には否定的になった。●将来世代の意見を、人間が予測した場合でもAIが生成した場合でも、人々に与える影響について有意な差は見られず、双方を比べても遜色ない結果となった。●AIが生成した将来世代の意見を見た回答者に、違和感があったかどうかを聞くと、64%が「違和感はなかった」と回答した。図表図2-1 人々が考える少子化対策の財源図2-2 少子化対策の財源に関する論点表2-3 論点ごとの回答要旨表2-4 6つの動画の内容図2-5 本調査の概要表3-1 熟慮前後での意見分布図3-2 将来世代の意見の有無による考え方の変化図3-3 将来世代の有無での比較図3-4 AIが意見を作成したことによる考え方の変化図3-5 人の意見、AIの意見での比較図3-6 AIの意見への違和感図3-7 AIが論点を作成したことによる考え方の変化図3-8 人の論点、AIの論点での比較図3-9 人が重要だと思う論点 PDFで読む INDEX 第1章 研究の動機 1.熟議におけるAI活用の可能性 2.少子化政策の財源問題 第2章 研究方法 1.論点の抽出 2.論点に対する意見と動画の作成 3.人々の意見の変化の集計方法 第3章 調査結果 1.将来世代の意見を見ることによる影響 2.将来世代の意見をAIが作成したことによる影響 3.論点をAIが作成したことによる影響 第4章 結論 付録1 事前調査概要 付録2 本調査概要 付録3 本調査の質問票と単純集計結果 付録4 本調査の動画のスクリプト 第1章 研究の動機 要旨 人の役割をAIが代替する局面が増えているが、政治的熟議にAIは活用できるのであろうか。熟議の要諦は、人々が様々な情報に触れながら自らの意見を再考・修正するところにある。人々の情報収集をAIが支援するなど、熟議の過程にAIを介入させたとき、人々の意見形成にどのような影響が及ぶのか。これが本研究の動機である。 本稿では、少子化政策の財源は税金と国債のどちらがよいかという争点を例に、熟議におけるAI活用の可能性を探る。 1.熟議におけるAI活用の可能性 研究の趣旨 AI(Artificial Intelligence、人工知能)は民主政治の味方か、それとも敵か。NIRA総合研究開発機構のプロジェクト「AIを活用した熟議プラットフォームの形成」は、熟議民主政治に対するAIの活用可能性を検討した。 AIによるチャットツールとして、ChatGPTは広く知られている。ChatGPTは、OpenAIが開発した言語モデルの1種で、膨大なテキストデータの学習を通じて、ユーザーが与えた入力に対する応答を生成でき、尋ねた質問に答えたり、対話を行ったりする。 そこでは政治や経済に関するトピックスも対象になりうるが、将来さらにAIの技術が進んだとしても、AIが政治家を完全に置き換え、民主政治のすべてを担うことは難しい。民主政治とは決定された結果のみならず、その決定に至る過程も含むものだからである。もし、民主政治にAIを活用するとしたら、それは人々の政治的考察――例えば、ある政策案に賛成するのか、それとも反対なのか、あるいはどの政党を支持するのかを考えること――を支援するツールになりうるか、である。本プロジェクトは、AIによる情報の収集および要約が、人々の熟議を助けることができるかどうかを、調査実験を通じて明らかにしようとするものである。 熟議プラットフォームとしての討論資料 熟議とは、人々が政策などの問題について、異なる見方を知り、ときに議論し、熟慮した上で意見を形成することである。ある政策に賛成または反対、あるいは特定の政党・政治家を支持または不支持という個人の選好を世論調査や投票の形で集計するだけではなく、人の選好は変わりうることを前提として、様々な意見をじっくりと考慮し、ときに議論を交えることを通じて、より洗練された結論を追求しようとする。 このような熟議を重視する熟議民主主義の考え方は、例えば討論型世論調査や市民討議会、気候市民会議などとして、世界各地で社会実装が試みられている。 その際にポイントとなるのが、人々に議論してもらうテーマに関する参考資料(討論資料)作りである。参考資料には、そのテーマに関する様々な論点と、それらに対する立場と論拠など、人々の判断材料がバランスよく示されることが重要である。例えば、本プロジェクトで扱う少子化対策の財源問題には、大別して「税金・社会保険料を支持する立場」と「国債を支持する立場」がありうるが、参考資料が「将来世代の負担にならないか」をはじめとする主要な論点を網羅し、かつ、それらに対する見解を双方いずれかの立場に偏ることなく紹介しなければ、単なる世論操作に堕してしまいかねない。 人間による熟議の限界とAIの利用可能性 通常、参考資料は、(調査を行う)人間によって準備される。ただし、いくつかの課題がある。 第1に、専門的知見を整理して、資料を作成することにはかなりのコストがかかる。つまり、準備のための時間・人数など工数が、熟議民主政治の機動的な実践に対する支障となる。もし、AIが人間の代わりに資料を作成できるならば、こうしたコストは大幅に軽減できる。 第2に、論点の抽出も、特定の意見に誘導しないように幅広く行うことが強く求められる。人間が論点を提示しようとすると、政治・経済状況の影響を受けたり、情報収集能力に限りがあったりして、本来提示すべき論点が抜け落ちる可能性がある。AIが抽出する論点に全く偏りがないという保証はないものの、膨大なデータから学習されていることから、多様な論点を抽出できる可能性があり、結果として偏りのリスクを相対的に抑えられるかもしれない。 第3に、顕在化していない意見を人間が述べることには心理的負担がかかる。例えば、本プロジェクトのように、少子化対策の財源を議論する際に「将来世代」の立場を考慮しようとするとき、この世にまだ存在していない人々の意見をどのように把握できるのか。フューチャーデザインのように今生きている人の「想像」に頼ることも1つの手であるが、過去に自らの人生の歩みを予想できたかどうかを顧みれば、未来人になりきることの難しさが分かる。ならば未来人になりきったAIに意見を述べてもらうことも選択肢だろう。 上記の観点から、熟議、なかんずくその中核をなす熟慮において、AIを支援ツールとして活用する余地があるのではないか、逆に、AIによる介入は人々の意見形成に特徴的な影響を及ぼすことにならないかというのが、本研究の動機である。 2.少子化政策の財源問題 本プロジェクトでは現在の日本で重要な政策問題の1つであると考えられている少子化政策を題材とした。岸田文雄首相は、2023年1月の年頭会見で「異次元の少子化対策」を表明し、6月13日に「こども未来戦略方針~次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~」を閣議決定した。そこには、児童手当や育児休業給付の拡充などが盛り込まれ、今後3年で年間3兆円台の予算を確保するとされた。 少子化政策の財源の選択肢は、大きく「税金・社会保険料」と「国債」の2つに分けられる。前者には、例えば消費増税や医療保険料の増額があり、いずれも現世代が負担することになる。他方、後者は国債の償還を通じて将来世代が負担することになる、というのが大方の理解である。 2つの立場のどちらが望ましいのか、世論は分かれている。日本経済新聞が2023年4月28日から30日にかけて実施した世論調査では、少子化対策の財源として適切なのは「増税」が23%、「社会保険料」が22%、「国債発行」が35%であった(注1)。ただし、世論調査の数字は必ずしも熟慮を踏まえたものではない。熟慮を経て、国債発行派が増税派に立場を変えたり、あるいは当初「分からない」と答えていた人が国債発行を支持したりすることもありえよう。 そこで、この少子化政策の財源問題をテーマに、人々に参考資料を示し、熟慮してもらう。その際、人間が論点を抽出し、あるいは意見を整理した場合と、これらの作業にAIを用いた場合とで、熟慮前後の意見変化にどのような違いが生じるのかを観察することが目的である。 以下、第2章では、調査の概要を説明する。第3章では調査データの分析結果を示す。そして、第4章では本調査から得られた知見をまとめると共に総括を行う。 第2章 研究方法 要旨 熟慮を促す論点抽出および意見提示の各段階において、AIの活用可能性を探るための調査を実施した。 論点抽出については、人間が考える論点を析出するための事前調査を実施した。少子化の財源を議論する際にどのような論点が重要か、回答者に自由に記入してもらい、その回答をテキスト分析することにより、論点を抽出した。事前調査と並行して、ChatGPTに直接質問を行い、AIによって抽出された論点リストを得た。 意見提示については、上記のとおり人間とAIにより抽出されたそれぞれの論点に対する各立場からの意見を、人間(調査者)またはAIがまとめたものを準備した。 次に、それぞれの(人間またはAIが抽出した)論点について、それぞれの(人間またはAIがとりまとめた)意見を紹介した動画を人々に見てもらう本調査を行い、各動画を視聴した前後の意見変化を観察した。その際「将来世代」の意見を含めるか否かによって、人々の意見が変化するのかについても併せて実験した。 以下では、研究方法について概説する。大きくは2つに分かれる。1つは、あるテーマについて熟議を行う際の論点を抽出するときにAIを活用することによる影響を検証するプロセスであり、もう1つは、抽出した論点に対する意見をAIに回答してもらい、それを参加者に提示することによる意見変化への影響を検証するプロセスである。 本プロジェクトでは「少子化対策の財源」をテーマに、事前調査と本調査の計2回アンケート調査を実施した。 なお、AI(本プロジェクトで用いたChatGPT)には、生成された回答が虚偽であったり、他者の著作権を侵害したりする恐れが指摘されている。本プロジェクトにおいては、このような問題が生じていないか、各ステップでAIの専門家及び憲法・情報法の学者の確認を受けながら調査を実施した(注2)。 1.論点の抽出 人々の論点 まず、論点については、人間が考える論点とAIが考える論点をそれぞれ抽出して比較する。人間が考える論点の抽出に際しては、1回目のアンケート調査(事前調査)において以下の自由回答方式の質問を行った。事前調査の概要は付録1を参照されたい。 <論点抽出のための質問:事前調査>Q 少子化対策を行うためには、その費用に充てるための財源が必要です。財源に何を用いるのかによって、だれが負担をするのかが異なります。 ●税金・社会保険料は、高齢者を含む現役世代(注3)が負担します。 ●国債の発行は、民間からの借金ですが、その返済はこれから生まれてくる将来世代が負担します。 あなたが少子化対策の財源として、税金・社会保険料、国債の発行のどれを充てるのが良いかを考える上で重視するポイント、あるいは政府や専門家に聞いてみたい点をお答えください。 図2-1は、上記の質問に対する回答に基づき作成した共起ネットワーク図である(注4)。 図2-1 人々が考える少子化対策の財源 (注)四角で囲んだ文章、点線の楕円はNIRAにて加筆。 円の大きさは単語の使用回数、線は共起頻度を表している。例えば、図2-1上方の「無駄な支出の削減による費用捻出」の部分を見てみると、「国会」「議員」「減らす」という3つの単語が線で結ばれているが、これは「国会議員の給与を減らすべき」というような意見が多く見られたことを示している。 同様に「国債発行による財源確保」を望む声も多く観察された。「国債」「発行」「将来世代」という結び付きからは、少子化対策は将来世代のための投資であることや、将来世代の恩恵・利益になる、といった理由付けが浮かぶ。 一方、「現役世代による負担」を望む人は、図からは問題関心が判然としないものの、該当する回答を見る限りは、子どもたちに借金を負担させたくない、という理由が目立った。 ただ、共起ネットワークで示されたのは、少子化対策の財源に関する「論点」というよりも、どちらかと言えば「結論」に近い。そこで、各群に分類された自由回答の背後に観察できる問題関心を、調査者において更に探索することにより、以下の論点を抽出した。人間が提示(考慮)した論点 ●少子化対策の恩恵は誰が受けるのか ●国債発行は将来世代への負担になるのか ●国民負担を増やす前にやるべきことはないか AIの論点 次に、事前調査の<論点抽出のための質問>をAIに対しても行った(注5)。ChatGPTに対して、以下の質問を入力した。 <論点抽出のための質問:ChatGPTへの投稿> 「現役世代とは高齢者を含む今生きている世代、将来世代とはこれから生まれてくる世代と定義して回答してください。少子化対策を行うためには、その費用に充てるための財源が必要です。財源に何を用いるのかによって、だれが負担をするのかが異なります。 ●税金・社会保険料は、高齢者を含む現役世代が負担します。 ●国債の発行は、民間からの借金ですが、その返済はこれから生まれてくる将来世代が負担します。 あなたが少子化対策の財源として、税金・社会保険料、国債の発行のどれを充てるのが良いかを考える上で重視するポイント、あるいは政府や専門家に聞いてみたい点をお答えください。」 AIの回答は以下のとおり。 1.負担の公平性:税金や社会保険料は現役世代が主に負担しますが、この負担が適正かどうかを考える必要があります。高齢者や低所得者の負担が過重にならないような調整が必要です。一方、国債の発行は将来世代への負担を増やします。今の世代が享受するための政策を将来の世代が負担することは公平性から考えると問題があるかもしれません。 2.政策の効果:税金や社会保険料の増加は対策の効果を直接的に現役世代が感じることにつながります。これは政策の透明性や理解度を高める可能性があります。一方、国債を発行した場合、現役世代が政策の費用を感じにくいため、政策の効果を評価しにくいかもしれません。 3.経済の状況:税金や社会保険料の増加は消費を抑制し、経済成長を阻害する可能性があります。逆に国債の発行は短期的な財政出動による経済刺激効果がある一方で、長期的な財政健全性への懸念が生じます。 以上、これらの観点から考えると、少子化対策の財源に関する最適な選択は、社会経済の状況、政策の効果、そして公平性の観点からバランスを取ることが重要であると思われます。 これらの作業より、少子化対策の財源に関して、人間が考える論点と、AIが考える論点を抽出できた。これをまとめたのが図2-2である。 図2-2 少子化対策の財源に関する論点 人間が示した論点は、「負担を増やす前にやるべきことはないか」など、自身の損得を優先的に考える自己中心性バイアスを帯びた視点が多かった。一方、AIにより抽出された論点には、専門家が発信している論点を包括する傾向が見られた。AIは膨大なデータを学習し、入力された質問文の内容に対して、もっともらしい文章を回答として返す。もし、AIへの質問文に「あなたは〇〇(例、70歳の女性、子育て中の主夫など)です。」といった役割を与えたならば、上記とは別の回答が引き出されたであろう。 2.論点に対する意見と動画の作成 論点に対する意見 次に、人間の意見とAIが作成した意見を見た場合とで、人々の考えの変化に違いがあるかを調べるため、図2-2のそれぞれの論点に対して、以下の4つの立場から意見を作成した。 ①税金・社会保険料引き上げに賛成する立場 ②国債発行に賛成する立場 ③将来世代の立場(実在する人物が将来世代になりきった時の回答) ④将来世代の立場(AIが将来世代になりきった時の回答) まず①、②は互いに対立しうる立場であり、それぞれの立場を取っている経済学者や評論家の意見を総合して作成した。作成された意見がそれぞれの立場を正しく要約していることを、識者による確認を受けた。 少子化問題は現世代だけでは解決できない長期的な課題である。そのうえ、現世代は負担を先送りにすることも可能であることから、これから生まれてくる将来世代もステークホルダーである。しかし、将来世代は発言できないため、③人が将来世代になりきった場合と、④AIが将来世代になりきった場合との2パターンを用意した。このうち③は、内閣官房「こども未来戦略会議」有識者構成員を務める新居日南恵氏(NPO法人manma創業者)にヒアリングを行い、同氏の了承を得て調査者が編集した。④はAI(ChatGPT)に論点の説明を与えたうえで、将来を代表する世代になりきって回答するよう指示した。それぞれの回答の要旨は表2-3の通りである。 表2-3 論点ごとの回答要旨 なおChatGPTに回答を求める際は、直前に生成された回答の影響を受けないように、論点1つごとにチャットを切り替えた。 6つの動画の作成 2回目のアンケート調査(本調査)においては、上記それぞれの立場からの意見を動画形式で提示する。 表2-4に示したとおり、論点の設定者(人間/AIの2パターン)×論点に対する意見(税金・社会保険料引き上げ&国債発行の立場のみ/人間がなりきった将来世代の意見を含む/AIがなりきった将来世代の意見を含むの3パターン)=6種類の動画を作成した。例えば動画1では、人間が抽出した論点について、「①税金・社会保険料引き上げに賛成する立場」と「②国債発行に賛成する立場」からの回答が示される。 表2-4 6つの動画の内容 発言者の服装や声など、論点と意見以外の要素が回答に影響しないように、6種類の動画はすべて、同一の司会者(実在のジャーナリスト)が各論点を質問し、これに対して同一の解説者(実在のエコノミスト(注6))が第三者として2または3つの立場に基づく意見を説明する形式を採った。また、動画視聴後に意見変化をみる質問への回答を終えるまでの間は、AIが設定した論点であること(動画4~6)や将来世代の意見をAIが作ったこと(動画3、6)は明かされない。 なお、動画の視聴時間を短くするため、AIの意見については出力されたものをそのまま使用することはせず、内容を変えない範囲で要約したものを使用した。実際に動画で使用したスクリプトは付録4を参照されたい。 3.人々の意見の変化の集計方法 本調査最大の関心事項は、視聴する動画の種類によって人々の意見変化に違いが生じるのかである。将来世代の意見の有無、将来世代の意見を人が作成したかAIが作成したか、論点を人間が作成したかAIが作成したか、という違いによって、人々の意見変化に影響はあるのか。本調査では、まず、アンケートの回答者になにも情報を与えずに、以下の質問に回答してもらった。 <財源に関する質問>Q 少子化対策の財源に関する以下の意見について、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか。(1)税金または社会保険料を増やして、高齢者を含む現世代が負担するべきだ(2)国債発行を増やして、これから生まれる人を含む将来世代が負担するべきだ(それぞれ「賛成」、「どちらかというと賛成」、「どちらともいえない」、「どちらかというと反対」、「反対」の5つから選択) 次に、回答者3,000人をランダムに6グループ(各500人)に分け、それぞれ1~6の動画を見てもらった。その後、少子化対策とは関係ない質問項目をいくつか挟んでから、再度上記の財源に関する質問をして、熟慮前後(動画視聴前後)でグループ毎に人々にどのような考えの変化が起きたのか、動画毎の影響を検証した(図2-5)。なお、本調査の概要については付録2を参照されたい。 図2-5 本調査の概要 質問では「税金か国債か」という二者択一ではなく、税金と国債の両方に賛成または反対といった立場もありうる点を考慮し、それぞれの賛否を尋ねた。したがって、以降の分析では、税金と国債のそれぞれについて意見の変化を見ることになる。 第3章 調査結果 要旨 将来世代の意見を含む動画を視聴した場合、将来世代の意見が含まれない場合と比べて、税金・社会保険料の引き上げに肯定的になり、国債発行には否定的になる傾向が見られた。将来世代の意見を人間が作成した場合とAIが作成した場合の比較では、熟慮前後での意見変化に有意差はなく、AIが人間の意見集約を代替できる可能性が示唆された。論点を人間が挙げた場合とAIが抽出した場合とで比べると、AIの論点をめぐる動画を視聴すると国債発行に肯定的になる傾向が見られた。事後評価では、回答者はAIによって選ばれた論点も重視しており、AIは論点抽出においても人々の議論をサポートしうる余地がある。 1.将来世代の意見を見ることによる影響 少子化問題は現世代だけではなく将来世代にも及ぶ長期的な課題だ。しかし、まだ見ぬ将来世代は声を上げることができない。そこで、本調査では、人間およびAIによって抽出された将来世代の意見を見た場合と見なかった場合とで、人々の意見の変化に違いが生じるかを検証する。 熟慮前後での意見分布 表3-1の上段は、税金・社会保険料の引き上げに対して、動画視聴前に賛成、どちらともいえない、反対のうちのどの意見であったのか、また、視聴後はどの意見となったのかの分布をマトリックスにして示したものである。一方、表3-1の下段は、国債発行に対して、視聴前に賛成、どちらともいえない、反対のうちのどの意見であったのか、また、視聴後はどの意見となったのかの分布をマトリックスにして示している。数字は回答者3,000人を100%とした時のそれぞれの割合を表す。動画を見て熟慮した結果、賛成方向へ変化した人(「反対」から「どちらともいえない」に変更した人を含む)は背景を赤く、反対の方向へ変化した人(「賛成」から「どちらともいえない」に変更した人を含む)は背景を青く示した。 表3-1 熟慮前後での意見分布 (注1)「賛成」、「どちらかというと賛成」の回答はまとめて「賛成」とし、「反対」、「どちらかというと反対」の回答はまとめて「反対」としている。(注2)構成比は小数点以下第1位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない。 まず、全体の動きを見てみると、税金・社会保険料の引き上げ、国債発行共に熟慮後には賛成の割合が増えている。特に国債発行については、賛成派が22%から28%へ大きく増加した。一方、税金・社会保険料の引き上げについては反対派が増えた(35%から39%)のに対し、国債発行についてはほぼ横ばいであった(39%から38%)。税金・社会保険料、国債共、動画を見た結果「どちらともいえない」の回答割合は減った税金・社会保険料の引き上げでは6ポイント、国債発行では4ポイント。 将来世代の意見の有無での比較 視聴動画によって人々の意見変化にどのような違いが生じたかを検証するべく、動画ごとに図3-2のような熟慮前後での意見分布を作成した。同図では、将来世代の意見の有無による違いを見るために、将来世代の意見が含まれない動画(動画1、4)を見た回答者と、将来世代の意見(人が作成したもの、AIが作成したもの双方を含む)が含まれる動画(動画2、3、5、6)を見た回答者との意見の変化を比べる。賛成方向へ変化した回答者の割合を正(表3-1でいう赤色部分の合計=(A))、反対方向へ変化した人の割合を負(表3-1でいう青色部分の合計=(B))で示し、両者の差し引きを黒い四角で示した。四角の位置の正または負によって、賛成・反対方向のどちらに変化した人の方が多かったかを表している。 図3-2 将来世代の意見の有無による考え方の変化 総じてみると、税金・社会保険料の引き上げについては、将来世代の意見の有無にかかわらず、動画視聴後に反対方向にシフトしており、国債発行については賛成方向にシフトしている。ただし、視聴した動画に将来世代が含まれない場合に税金・社会保険料の引き上げについて賛成方向にシフトした人は14%であるのに対し、将来世代が含まれる場合は16%に上る。逆に、反対方向へのシフトは将来世代が含まれない場合の20%に比して、将来世代が含まれる場合は17%と抑えられる。将来世代の意見を見ることにより、税金・社会保険料の引き上げに対する抵抗感が多少なりとも和らぐようだ。国債発行についても同様に、将来世代の意見を見ると賛成が減り、反対が増える結果となった。 付録2にあるとおり、本調査は国勢調査の性別、年齢、居住地の各割合を再現するように回収サンプルを決定し、6種類の動画のうちどれを視聴するかはランダムに割り当てられた。それでも各動画視聴グループ間に意図せざるアンバランスが生じることに備えて、調査の回答から得られた学歴、配偶者の有無、子どもの有無、世帯収入を統制した重回帰分析を行って(統制変数は以後も同様)、視聴した動画に将来世代が含まれていたときに、そうでないときと比べて視聴前後の意見変化に有意差があるかどうかを検証した。 従属変数は、動画視聴前後での意見変化である。動画を視聴する前の意見は「賛成」「どちらともいえない」「反対」の3通り、動画を視聴した後の意見も同じく3通りなので、意見変化の組み合わせは9パターンとなる。それぞれのパターンについて、該当するなら1、そうでなければ0となるダミー変数を作成した。つまり、9種類のダミー変数それぞれを従属変数とする、9個のモデルを推定した。 独立変数は、将来世代の意見が含まれる動画2、3、5、6のいずれかを視聴したら1、そうでなければ0となるダミー変数である。独立変数の回帰係数が正[負]方向に統計的有意であれば、将来世代の意見が含まれる動画を見た人は、そのモデルで従属変数となっているパターンの意見変化を生じやすい[生じにくい]ことを意味する。 回帰分析の結果を示したのが図3-3である。独立変数の係数を点で、その95%信頼区間をエラーバーで表しており、エラーバーが0のラインに掛かっていなければ5%水準で有意である。 図3-3において有意な係数は、税金・社会保険料についての「反対→賛成」、国債についての「賛成→どちらともいえない」と「どちらともいえない→賛成」の3つである。 将来世代の意見が含まれた動画を視聴すると、税金・社会保険料引き上げに「反対→賛成」と変化しやすい。当該係数の推定値は0.02、すなわち将来世代の意見が含まれた動画を見ると、将来世代の意見が含まれてない動画を視聴した場合に比べて、確率としては2ポイントほど「反対→賛成」と変化しやすくなる。 同様に解釈すると、将来世代の意見が含まれた動画を視聴したときには、国債発行に「賛成→どちらともいえない」と意見を変化させる確率が2ポイント高くなる。そして、将来世代の意見が含まれた動画を視聴すると「どちらともいえない→賛成」と変化する確率は、逆に2.5ポイント低下する。いずれも税金・社会保険引き上げを受け入れ、国債発行に慎重になる方向の変化である。 図3-3 将来世代の有無での比較 以上の結果は、人間が予測したものにせよ、AIが生成したものにせよ、将来世代の意見は税金・社会保険料の引き上げに肯定的で、国債発行に否定的であったことに起因していると推定される。将来世代の意見を考慮に入れる効果が認められると言えよう。 2.将来世代の意見をAIが作成したことによる影響 次に、将来世代の意見を人間が作った場合とAIが作った場合とで、人々の考えの変化に違いが生じたかを検証する。動画2、3、5、6には将来世代の意見が含まれていたが、そのうち動画2、5は人間が作成した将来世代の意見(以後、人の意見)、動画3、6はAIが作成した将来世代の意見(以後、AIの意見)を提示している。 まず、税金・社会保険料の引き上げについては差が見られず、国債発行についてはAIの意見を見た回答者の方が動画視聴後の意見が賛成方向へ変化しにくい傾向が見られた(図3-4)。 図3-4 AIが意見を作成したことによる考え方の変化 このような傾向が統計的に有意かどうかを図3-3と同様の回帰分析によって確かめた。ただし、将来世代の意見を人間またはAIが作成したことによる意見変化の違いの有無がここでの関心であるため、そもそも将来世代の意見が含まれていない動画1と動画4を視聴した人は分析から除外する。その上で、従属変数を先程と同じ9パターンの回答変化とし、独立変数はAIによって作成された将来世代の意見が含まれる動画3または6に割り当てられたら1、そうでなければ(すなわち、人が作成した将来世代の意見が含まれる動画2または5を視聴したグループ)0となるダミー変数とした。 推定結果を図3-5に示した。税金・社会保険料、国債の両方共、5%水準で有意となる意見変化パターンは認められなかった。こうした結果の背景には、人の意見も、AIの意見も、趣旨に大きな違いは見られなかったことを指摘できるだろう。事実、AIの意見を聞いた回答者(動画3または6を視聴したグループ)には、動画視聴後の財源に関する意見を回答してもらってから、動画内で紹介された将来世代の意見はAIが作成したものであることを明かし、動画視聴時に違和感があったかどうかを質問したところ、64%が「違和感はなかった」と答えた(図3-6)。本調査で用いた人の意見は少子化問題のスペシャリストによるものであった点を考慮すれば、人々の熟慮過程において、AIによって生成された意見が人の意見と同等の役割を果たす可能性を示した本調査結果は、それなりの意味を持つ。 図3-5 人の意見、AIの意見での比較 図3-6 AIの意見への違和感(単位:%) 3.論点をAIが作成したことによる影響 少子化対策の財源に関する論点を人間とAIのそれぞれに挙げてもらうと、前述のとおり、人間からは生活への影響に関わる論点、AIからは俯瞰的な論点が提起された。それでは、人間の論点に対する意見を見た回答者と、AIによって生成された論点に対する意見を見た回答者とで、動画視聴前後の意見変化に違いは生じたか。 まず、リアルな人間から集めた論点の動画を見た回答者(動画1~3グループ)は、AIの論点の動画を見た回答者(動画4~6グループ)よりも、税金・社会保険料の引き上げに対する反対がわずかに弱く、国債発行への賛成が強くなる方向に変化した人が増えた(図3-7)。 図3-7 AIが論点を作成したことによる考え方の変化 論点をAIが設定している動画4、5、6のいずれかを視聴したら1、人間が設定した論点を扱った動画1、2、3を視聴したら0となるダミー変数を独立変数とした回帰分析の推定結果は、AIが論点設定した動画を見た回答者は、税金・社会保険料については「どちらともいえない→賛成」の係数が、国債については「反対→賛成」の係数がどちらも正で有意となった(図3-8)。 図3-8 人の論点、AIの論点での比較 興味深いのは、AIの論点が含まれる動画を視聴することによって、国債について賛成方向に変化する傾向が見られたことである。人間が挙げた論点は誰が負担するのか、誰が恩恵を受けるのかといった損得に関するものが多かった。それに対して、AIの論点は「人々が政策の効果へ関心を持てるようになるか」、「日本経済や財政に悪影響は生まれないか」のように、より多様な視点に立っていた。こうした俯瞰的な論点で、単なる負担の先送りではなく、社会全体のことを幅広く考えても望ましいという国債派の見方が動画で提示されたことが、回答者に対して強い訴求力を持った可能性がある。 人々が思う重要論点 本調査では、事前調査から抽出した人間による論点3つと、AIが抽出した論点3つをランダムな順序で提示して、これらのうち重要と思う論点を2つまで選択してもらった。 最も重要だと思われている論点は、「負担を増やす前にやるべきことはないか」という人の論点で、61%の人が選択した(図3-9)。一方、2番目と3番目には「負担の公平性が保たれるか」「人々が政策の効果に関心を持てるようになるか」、というAIによって設定された論点が続いた。ここからもAIを活用した論点設定の有効性がうかがえる。 図3-9 人が重要だと思う論点(単位:%) (注)「当てはまるものはない」を選択した場合、その他の選択肢は選べないようにしている。 第4章 結論 本プロジェクトでは、民主政治における熟議なかんずく熟慮におけるAIの活用可能性につき、少子化対策の財源を事例として調査実験を行った。①まだ見ぬステークホルダー(本調査では将来世代)の意見をAIに抽出させることはできるのか、②人々が熟議・熟慮を行うために必要な参考資料の作成(各立場の意見のとりまとめ)を有識者の代わりにAIに行わせることは可能か、③AIは特定のテーマにおいて何を考えるべきかという論点も過不足なく抽出できるか、が関心事項であった。 分析結果のポイントは、大きく3つにまとめることができる。 1)人々は将来世代の意見に触れることにより、税金・社会保険料の引き上げには賛成の方向に、国債発行には反対の方向に変化しやすくなる。国債を財源にしたとき、将来世代は自らの負担が重くなることを懸念するものと予測され、こうした声に耳を傾ける機会を設けることには意味がある。 2)将来世代の意見を人間が作った場合とAIが作った場合とで、少子化対策の財源に関する人々の考えの変化に大差は見られなかった。このことは、人々が熟慮するための参考資料を、現在は調査者(人間)が大きな労力をかけて作成しているのに代わってAIに生成させても遜色ない結果が得られる可能性を示唆している。 3)少子化対策の財源をめぐって考慮されるべき論点を人間に設定させたときには、自分の生活がどうなるかなどの自己中心性バイアスが見られた。それに対して、AIに論点を生成させたときには、膨大なデータ学習から抽出された論点が総合的に提示される傾向が見られた。AIによって設定された論点は、事後的に多くの回答者から重要と評価された。このことは、熟議を行うための論点整理としてAIを活用する可能性を示しているといえるであろう。 以上の結果は、民主政治における意見の提示や論点の設定という人間の役割を、現在のAIは「使い方によっては」不自然ではない程度に代替できることを示唆している。人々に熟慮を促すための情報を提示しようとしても、それを調査者が準備するには大きなコストがかかる。提示する論点や意見には総合性が求められるが、人間のなしうる検索、情報収集には限界がある。このような人間を支援するツールとしてAIを活用すれば、代表制民主政治のブレークスルー、発展可能性にも繋がるかもしれない。例えば、年齢バランスが高齢者に偏っている市議会があったとして、そこで若年層の意見を政策決定に反映させようとしたとき、公聴会や出前議会を開催してリアルな若者の声に耳を澄ます下準備として、まずはAIに問いを投げかけてみることはありうるだろう。あるいは、声の大きさに影響されることなく意見を幅広く検討する際にも有用なツールとなろう。 もちろん、AIに全く問題がないわけではない。ChatGPTが示す文章はあくまで既存の情報から学習して生成しているだけであり、質問次第ではバイアスのかかった、熟慮に適さない回答を出力しうる。さらに、虚偽の情報をあたかも事実であるかのように提示し、意図せざるうちに人々を操作してしまう恐れも多々ある。本プロジェクトでは、AIや法律、経済の専門家のチェックを受けつつ調査を行ったが、実装のために専門家の伴走を必須とするならば、初めから有識者に資料を作成させれば良いことにもなりかねない。 また、本プロジェクトは少子化対策の財源に関するインターネット調査モニターを対象にした事例研究であり、本稿で得られた知見が異なる人やテーマを対象にしたときにも妥当するどうかという外的妥当性については、さらなる見極めが必要である。 AIは民主政治の味方か、それとも敵か。AIは文字通り日進月歩の進化を続けており、結論を下すのは時期尚早である。本プロジェクトは、AIが熟議民主主義の支援ツールとなる「可能性がある」ことを、現時点における暫定的見解として示したものである。 付録1 事前調査概要 調査名 少子化対策に関するアンケート調査方法 インターネット調査調査機関 楽天インサイト株式会社調査実施期間 2023年5月17日~2023年5月19日調査対象 楽天インサイトの登録モニターのうち、全国に住む18~89歳500名の回答を回収した。研究体制 谷口将紀 東京大学大学院法学政治学研究科教授/NIRA総研理事長 加藤善大 フューチャー株式会社グループリーダー/NIRA総研上席研究員 加藤究 フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員 古田大輔 メディアコラボ代表取締役/NIRA総研上席研究員 神田玲子 NIRA総研理事・研究調査部長 鈴木壮介 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 竹中勇貴 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 付録2 本調査概要 調査名 少子化対策に関するアンケート調査方法 インターネット調査調査機関 楽天インサイト株式会社調査実施期間 2023年9月19日~2023年9月21日調査対象 楽天インサイトの登録モニターのうち、全国に住む18~89歳3,000名の有効回答を回収した。 回収にあたっては、令和2年(2020年)国勢調査に基づき、性別(男女)、年齢(18~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70~89歳の6区分)、居住地(東日本、京浜、中日本、阪神、西日本の5地域)別の回答者数の構成比を算出し、この構成比を3,000サンプルに割り付けた。また、調査票には省力回答者(サティスファイサー)を検出する質問を入れた。省力回答者を除外したうえでのサンプル数が3,000件である。 集計結果の代表性を保つために、本報告書では総務省「国勢調査(2020年)」を母集団とみなして、サンプリングバイアスを補正するために母集団ウェイトを作成した。具体的には、上記の性別、年齢、居住地域に加えて、婚姻状態(未婚・離別・死別または、既婚の2カテゴリ)よりウェイトを作成した。 本報告書の集計結果は、有効回答に上述した母集団ウェイトを用いて集計したものである。研究体制 谷口将紀 東京大学大学院法学政治学研究科教授/NIRA総研理事長 加藤善大 フューチャー株式会社グループリーダー/NIRA総研上席研究員 加藤究 フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員 古田大輔 メディアコラボ代表取締役/NIRA総研上席研究員 神田玲子 NIRA総研理事・研究調査部長 鈴木壮介 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 竹中勇貴 NIRA総研研究コーディネーター・研究員 付録3 本調査の質問票と単純集計結果 (注7) 【スクリーニング(SC)設問】 SC1 あなたの性別をお答えください。 1.男性 1,447人(48.2%) 2.女性 1,553人(51.7%)SC2 あなたの年齢をお答えください(注8)。 1.18-29歳 431人(14.4%) 2.30-39歳 375人(12.5%) 3.40-49歳 525人(17.5%) 4.50-59歳 480人(16.0%) 5.60-69歳 457人(15.2%) 6.70-89歳 732人(24.4%)SC3 あなたのお住まいの都道府県をお答えください。 【本設問】 Q1 あなたが最後に卒業・修了した学校はこの中のどれにあたりますか。学生・生徒の方は、いま在籍している学校の区分をお答えください。 1.中学校(旧制の小学校や高等小学校を含む) 2.1% 2.高校(旧制の中学校を含む) 30.0% 3.短大・高専・その他(旧制の高校や専門学校等を含む) 22.0% 4.大学 40.2% 5.大学院 5.6%Q2 現在、あなたには、配偶者またはパートナーはいらっしゃいますか。届け出の有無に関係なく、この中から1つだけお答えください。 1.いる 61.1% 2.いない 37.1% 3.答えたくない 1.7%Q3 あなたにお子さんはいらっしゃいますか。 1.子どもはいない 41.7% 2.1人いる 14.8% 3.2人いる 30.9% 4.3人いる 10.8% 5.4人以上いる 1.8%Q4 お子さんの年齢を教えてください。複数人いらっしゃる場合は1番下の子の年齢をお答えください。(Q3で1.以外の回答者のみ回答) (省略)Q5 あなたにとって、理想的な子どもの数は何人ですか。※既にお子さんがいらっしゃる方は「合計何人が理想か」をお答えください。(50歳未満の回答者のみ回答) 1.0人 22.1% 2.1人 10.5% 3.2人 45.6% 4.3人 18.6% 5.4人以上 3.2%Q6 では、実際には何人の子どもを持つつもりですか。※既にお子さんがいらっしゃる方は「合計何人の子どもを持つつもりか」をお答えください。(50歳未満の回答者のみ回答) 1.0人 32.6% 2.1人 19.5% 3.2人 35.9% 4.3人 9.9% 5.4人以上 2.1%Q7 世帯全体のこの1年間の収入(税込み)についてお選びください。収入には、仕事からの収入や収益だけでなく、年金・恩給などの給付金、配当金、仕送り金なども含めます。ただし、不動産や証券などの財産の売却収入、相続や贈与に伴う収入、退職金などの経常的でない収入は含めません。 1.300万円未満 27.1% 2.300万円~600万円未満 40.4% 3.600万円~1,000万円未満 21.8% 4.1,000万円以上 10.6%Q8 少子化が急速に進行していますが、あなたは、「少子化」問題をどのように捉えていますか。 1.ただちに解決すべき問題だと思う 34.6% 2.できるだけ解決すべき問題だと思う 32.9% 3.重要な問題であるが、致し方ないことだと思う 25.4% 4.特に問題を感じない 7.1%Q9 本年6月13日、政府は「こども未来戦略方針~次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~」を公表しました。そこでは、今後3年間で、こども・子育て政策を加速させるとしています。あなたはその内容についてどの程度知っていますか。 1.人に説明できる程度によく内容を知っている 2.5% 2.新聞やニュースで大筋の内容を知っている 25.1% 3.公表されたのは知っているが、内容は知らない 44.8% 4.聞いたことがない 27.5%Q10 少子化対策の財源に関する以下の意見について、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか。それぞれの意見についてお答えください。※あなたのお考えに最も近いものをお選びください。 1.賛成 2.どちらかというと賛成 3.どちらともいえない 4.どちらかというと反対 5.反対(1)税金または社会保険料を増やして、高齢者を含む現世代が負担するべきだ 1.8.8% 2.20.4% 3.36.2% 4.16.9% 5.17.7%(2)国債発行を増やして、これから生まれる人を含む将来世代が負担するべきだ 1.7.5% 2.14.1% 3.39.3% 4.22.7% 5.16.4%■これから約6~8分程度の動画が流れます。動画の内容は以降の質問にも関わりますので、しっかりとご視聴ください。動画が見られる設定、音声が聞こえる設定にしてから再生ボタンを押して動画をご覧ください。(グループ毎に動画を視聴、スクリプトは付録4を参照されたい) Q11 あなたは、政治、選挙に関する情報を主に何から得ていますか。最も多くの情報を得ているものを1つ選んでください。 1.テレビ 46.4% 2.ラジオ 1.5% 3.新聞 14.0% 4.雑誌 0.3% 5.インターネット(ソーシャルメディアも含む) 28.5% 6.家族や知人からの話 3.2% 7.その他 0.6% 8.政治、選挙に関する情報は得ていない 5.4%Q12 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、日本の外交・安全保障政策に関してさまざまな議論が行われています。以下の意見について、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか。それぞれの意見についてお答えください。※あなたのお考えに最も近いものをお選びください。 1.賛成 2.どちらかというと賛成 3.どちらともいえない 4.どちらかというと反対 5.反対(1)日本もウクライナに殺傷能力のある武器を供与するべきだ 1.6.1% 2.10.3% 3.25.8% 4.25.5% 5.32.4%(2)日本も敵国の領域にある基地を攻撃する能力をもつべきだ 1.15.3% 2.19.1% 3.24.9% 4.17.5% 5.23.1%Q13 あなたは以下についてどのくらい当てはまりますか。次のことばがあなた自身にどのくらい当てはまるかについて、もっとも適切なものを選んでください。 1.そう思う 2.どちらかといえばそう思う 3.どちらともいえない 4.どちらかといえばそう思わない 5.そう思わない(1)人生で難しい問題に直面しても、自分なりに積極的に解決していく 1.17.2% 2.52.5% 3.22.3% 4.6.3% 5.1.7%(2)社会をよりよくするため、私は社会における問題に関与したい 1.7.4% 2.34.0% 3.40.5% 4.12.8% 5.5.3%(3)この項目では、「どちらかといえばそう思う」を選択してください 1.0.0% 2.100.0% 3.0.0% 4.0.0% 5.0.0%(4)将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したい 1.7.2% 2.26.4% 3.39.8% 4.18.1% 5.8.4%(5)政策や制度については専門家の間で議論して決定するのが良いと思う 1.7.4% 2.29.8% 3.37.7% 4.16.7% 5.8.3%Q14 少子化対策の財源に関する以下の意見について、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか。それぞれの意見についてお答えください。※あなたのお考えに最も近いものをお選びください。 1.賛成 2.どちらかというと賛成 3.どちらともいえない 4.どちらかというと反対 5.反対(1)税金または社会保険料を増やして、高齢者を含む現世代が負担するべきだ 1.7.1% 2.23.6% 3.30.0% 4.21.1% 5.18.2%(2)国債発行を増やして、これから生まれる人を含む将来世代が負担するべきだ 1.8.2% 2.19.3% 3.35.0% 4.23.2% 5.14.3%Q15 少子化対策の財源を考えるうえで、重要だと思う論点にはどのようなものがありますか。最大2つまでお選びください。 1.少子化対策の恩恵は誰が受けるのか 18.9% 2.国債発行は将来世代への負担か 13.4% 3.負担を増やす前にやるべきことはないか 61.3% 4.負担の公平性(例えば、現世代と将来世代の間が保たれるか) 34.5% 5.日本経済や財政状況へ悪影響は生まれないか 17.3% 6.人々が政策の効果に関心を持てるようになるか 20.1% 7.当てはまるものはない(排他) 6.6%Q16 見ていただいた動画には、3つの立場からの意見が出てきました。そのうちの1つ、若者代表の意見は、実は本物の若者の意見ではなく、AIのChatGPTが若者になりきって回答した内容です。聞いていて違和感がありましたか。(AIが作成した将来世代の意見が含まれる動画を視聴した回答者のみ) 1.聞いていて違和感があった 36.3% 2.聞いていて違和感はなかった 63.7% 付録4 本調査の動画のスクリプト ■動画1~3 (注9)<質問者> 少子化対策を行うためには、その費用に充てるための財源が必要です。 大きく2つの財源が考えられます。1つは、税金や社会保険料の引き上げです。企業や人々が利益や所得から支払うことになります。もう1つは、国債、つまり国の債券の発行です。これは、国が企業や人々からお金を借りることになり、将来返済が必要になります。 財源に何を用いるのかによって、誰が負担するのかが異なります。ここでは、3つの論点をとりあげ、それぞれについて、どのように財源を確保すべきか、異なる複数の意見をお伺いします。 では、1つ目の論点として、負担について考えてみましょう。 少子化対策の恩恵は誰が受けるのか、という論点で考えると、税金・社会保険料、または国債発行のどちらを充てるのが良いでしょうか。なお、ここでは、「現世代」とは高齢者を含めて今生きている世代のことを意味します。また、「将来世代」とはこれから生まれてくる世代のことを意味します。 ここからは、経済評論家の神田さんに、それぞれの考え方を解説していただきます。 まず、少子化対策の財源は税金や社会保険料が適切だとする人の意見を紹介してください。<解説者> 人口が増えることの恩恵は、将来世代だけではなく、現世代にも広く及ぶ、と考えるでしょう。人口が増加すれば、医療、介護、年金といった制度の資金面での「支え手」が増え、現世代に給付されます。もっとも、政策の費用を負担をするのが苦しい人もいます。しかし、税金や社会保険料を組み合わせることで、国民各層の負担を調整することができます。<質問者> 次に、少子化対策の財源は国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 少子化対策は将来世代への投資であり、その恩恵は将来世代が受ける、と考えるでしょう。まず対策の1つである「児童手当」は将来世代のための生活費や教育費に充てられます。また、医療・介護、年金制度の存続は、将来世代としても望ましいことです。国債で財源を確保すれば、現世代の負担にもなりません。<質問者=動画2・3のみ> この点に関して、将来世代はどのように考えるでしょうか。<解説者:人(注10)=動画2のみ> 人口増加の恩恵は、現世代・将来世代共に受けると考えるでしょう。しかし、人口減少問題は短期的に解決できる問題ではありません。そのため、今を生きている現世代が負担するだけでは足りず、ゆくゆくは将来世代の負担も必要になります。異なる世代で負担を押し付け合うのではなく、税金・社会保険料を長期的な財源とすることで双方ともに負担するべき、と主張するでしょう。<解説者:AI=動画3のみ> 少子化対策の財源は、経済状況や政策目標を踏まえて総合的に判断する必要があると考えるでしょう。現世代への公平な負担を求めるなら税金・社会保険料が有効です。一方、国債発行は将来世代への負担となりますが、経済成長を維持するためには適切な場合もあります。税金・社会保険料と国債発行の両方を組み合わせて、状況に応じて調整することが最善です、と主張するでしょう。<質問者> では、2つ目の論点として、国債発行による将来世代への影響を考えてみましょう。 国債発行は将来世代への負担の先送りになるのか、という論点で考えると、税金・社会保険料、または国債発行のどちらを充てるのが良いでしょうか。 まず、少子化対策の財源は税金や社会保険料が適切だという人の意見から紹介してください。<解説者> 国債は借金であり、その返済の負担は将来世代へ押し付けることになる、と考えるでしょう。現在の日本は、先進国の中でも最も高い国債残高を抱えています。これから生まれる将来世代が、生まれた瞬間から背負う借金をさらに増やしてはなりません。国債の返済が負担となり、将来世代の生活水準は下がってしまいます。<質問者> 次に、少子化対策の財源は国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 国債は将来返さなければならない借金ですが、将来世代の負担は軽くすることができる、と考えるでしょう。少子化対策により人口が増加すれば日本経済の規模が拡大するため、実質的な負担は小さくなります。また、経済規模が大きくなれば、税収も増えるので、返済のための資金に回せます。<質問者=動画2・3のみ> この点に関して、将来世代はどのように考えるでしょうか。<解説者:人=動画2のみ> 国債の発行は返済を先延ばしにし、将来世代の負担になることから、望ましいものではないと考えるでしょう。少子化対策は国の主要な予算と位置付けるべきであり、安定的な財源が必要です。現世代も将来世代も負担することになる、税金・社会保険料が財源としては適切、と主張するでしょう。<解説者:AI=動画3のみ> 税金・社会保険料は、将来世代に負担を残しませんが、現世代の生活に支障をきたす懸念があると考えるでしょう。一方、国債発行は、現世代の負担はありませんが、負担を将来の世代に押し付け、財政の健全性を損ないます。財政健全化を考慮すると、現世代が公平に負担を分担することになるので、税金・社会保険料を優先するべき、と主張するでしょう。 <質問者> では、最後の論点として、負担を増やす前にやるべきことはないか考えてみましょう。まずは他の予算を削減するべきではないか、という指摘があります。 この論点について、税金や社会保険料が適切だとする人の意見を紹介してください。<解説者> 無駄の削減で十分な予算を確保することは難しい、と主張するでしょう。まず、医療や介護のサービスの質を落とさずに費用を捻出するには、時間が掛かります。また、給付を削減すれば、今までのサービスをカットされる人も出てきます。少子化対策の費用を捻出するために、特定の人々にしわ寄せがいくことは避けなければなりません。<質問者> 国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 国債を発行しても現世代の負担は増えないため、政府が他の予算を削減する必要はないのです、と主張するでしょう。<質問者=動画2・3のみ> この点に関して、将来世代の意見を紹介してください。<解説者:人=動画2のみ> 少子化対策の中で効果の低いものの予算を削ったり、他の政策の財源を見直していくことは重要だと考えるでしょう。しかし、費用の削減だけで捻出できる金額には限りがあります。毎年安定して財源を確保するためには、予算の削減と並行して、税金・社会保険料で財源を確保することが必要、と主張するでしょう。<解説者:AI=動画3のみ> 少子化対策の財源は、持続可能であること、世代間公平性が保たれることを重視するでしょう。そのため、他の予算削減も1つの選択肢ですが、どの予算を削減するかは非常に重要です。社会全体が価値あると認識するものから資金を削ることは困難で、長期的な社会の安定性と持続可能性を損なう可能性があります。<質問者> 質問は以上となります。ありがとうございました。 ■動画4~6 <質問者> 少子化対策を行うためには、その費用に充てるための財源が必要です。 大きく2つの財源が考えられます。1つは、税金や社会保険料の引き上げです。企業や人々が利益や所得から支払うことになります。もう1つは、国債、つまり国の債券の発行です。これは、国が企業や人々からお金を借りることになり、将来返済が必要になります。 財源に何を用いるのかによって、誰が負担するのかが異なります。ここでは、3つの論点をとりあげ、それぞれについて、どのように財源を確保すべきか、異なる複数の意見をお伺いします。 では、1つ目の論点として、負担の公平性について考えてみましょう。つまり、誰が負担するのが1番公平かということです。 負担の公平性、という論点で考えると、税金・社会保険料、または国債発行のどちらを充てるのが良いでしょうか。なお、ここでは、「現世代」とは高齢者を含めて今生きている世代のことを意味します。また、「将来世代」とはこれから生まれてくる世代のことを意味します。 ここからは、経済評論家の神田さんに、それぞれの考え方を解説していただきます。 まず、少子化対策の財源は税金や社会保険料が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 国債の場合、将来世代が返済を負担します。人口増加の恩恵は、現世代も受けますので、税金や社会保険料を財源にして、現世代が負担することが必要、と主張するでしょう。もっとも、現世代の中でも所得の低い人や高齢者への負担についてはよく考えなければなりません。税金や社会保険料を組み合わせて、負担の程度を調整するべきです。<質問者> 次に、少子化対策の財源は国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 少子化対策は将来世代への投資であり、その恩恵は将来世代が受ける、と主張するでしょう。まず、少子化対策の1つである「児童手当」は将来世代の生活費や教育費に充てられます。次に、少子化対策の効果で人口が増えれば医療・介護、年金制度が今後も維持でき、将来世代としても望ましいでしょう。国債で財源を確保すれば、現世代の負担にもなりません。<質問者=動画5・6のみ> この点に関して、将来世代はどのように考えるでしょうか。<解説者:人=動画5のみ> 少子化対策の恩恵について考えると、現世代は子育て環境の充実、将来世代は社会保障制度の維持、というようにそれぞれ多少違った形ではあるものの、双方共に恩恵を受けると考えるでしょう。そのため、どちらか一方のみが負担するのは不公平です。税金・社会保険料を財源として、現世代も将来世代も切れ目なくみんなで負担をすべき、と主張するでしょう。<解説者:AI=動画6のみ> 税金・社会保険料と国債発行を組み合わせるべき、と主張するでしょう。将来世代の負担を増やさないでほしいですが、現世代が負担しすぎると、少子化を進行させてしまいます。現世代が負担しすぎないように税金や社会保険料の上昇を抑制し、国債発行も最小限に抑えるべきです。現世代と将来世代の負担が公平になるような、総合的な対策を期待しています。<質問者> では、2つ目の論点として、経済への影響を考えてみましょう。つまり、経済刺激効果や財政健全性、経済成長といった面への影響です。 日本経済や財政状況へ悪影響は生まれないか、という論点で考えると、税金・社会保険料、または国債発行のどちらを充てるのが良いでしょうか。 まず、少子化対策の財源は税金や社会保険料が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 今回の対策で必要となる消費税率は1~2%程度です。消費増税によって消費が落ち込むとしても、すぐに回復すると考えられます。日本の消費税率は、ヨーロッパと比較しても低い水準にあるため、消費増税は十分にあり得る選択肢、と考えるでしょう。<質問者> 次に、少子化対策の財源は国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 所得の低い世帯では、食料品など生活必需品を買うだけで家計が苦しい状況です。そのため、税金や社会保険料を上げると、所得の低い世帯の家計をさらに圧迫します。そうなれば、消費が減退することから景気に対してもマイナスに働く、と考えるでしょう。<質問者=動画5・6のみ> この点に関して、将来世代はどのように考えるでしょうか。<解説者:人=動画5のみ> 社会保険料を引き上げると、企業の経営が厳しくなり、賃上げできない企業が出てきます。そのため、DXの推進やリスキリングの支援など、各企業が生産性を高め、従業員の賃上げをできるような支援を政策としていくべきと考えるでしょう。社会保険料の引き上げは、このような変化への追い風にもなります。<解説者:AI=動画6のみ> 少子化対策の財源としては世代間の公正な負担分担と持続可能な財政を実現する立場から、税金・社会保険料の増額が適切と考えるでしょう。 国債発行は短期的な経済刺激として魅力的にみえますが、長期的に財政の健全性を損ね、将来世代に借金を押し付けるリスクがあります。一方、税金・社会保険料の引き上げによる影響は一時的であり、これは適切な経済政策により緩和できます。<質問者> では、最後の論点として、政策効果への意識を考えてみましょう。 人々が政策の効果に関心を持てるようになるか、という論点で考えると、税金・社会保険料、または国債発行のどちらを充てるのが良いでしょうか。 まず、少子化対策の財源は税金や社会保険料が適切だという人の意見から紹介してください。 <解説者> 税や社会保険料の場合、財源を現世代が自分で負担するからこそ、その財源の使い道や政策の効果に関心を持つ、と考えるでしょう。少子化対策の場合、政策が人口増加という効果を発揮しているか、関心が高まります。<質問者> 次に、少子化対策の財源は国債発行が適切だという人の意見を紹介してください。<解説者> 将来の返済を軽くすることを考えれば、少子化対策の効果が発揮され、人口の増加が実現し、経済成長が達成されていることが重要であると主張するでしょう。経済規模が拡大すれば、実質的な負担も小さくなります。効果的な政策に優先的に財源が割り当てられているか、人々の関心は高まる、と考えるでしょう。<質問者=動画5・6のみ> この点に関して、将来世代はどのように考えるでしょうか。<解説者:人=動画5のみ> 税金・社会保険料が適切と考えます。税金・社会保険料で財源を確保しようとすると、「負担を増やしたくない」という声が上がります。目の前の負担が増える分、税金・社会保険料の方が国債よりも政策効果への意識は高まる、と考えるでしょう。その結果、適切な政策へと予算が振り分けられるように人々が声を上げていくことが重要であると主張するでしょう。<解説者:AI=動画6のみ> 税金や社会保険料を引き上げる場合、現世代が直接負担を感じることで政策への関心が高まる可能性があります。国債発行の場合は負担が増えない代わりに関心が薄れるおそれがあります。 これらの利点と欠点を考慮し、税金・社会保険料引き上げと国債発行を適切に組み合わせるべきだと考えるでしょう。<質問者> 質問は以上となります。ありがとうございました。 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)谷口将紀・鈴木壮介・竹中勇貴(2024)「AIは民主主義を深化させるか?―少子化政策の財源に関する調査実験―」NIRA総合研究開発機構 脚注 1 「少子化財源、世代で差 国債35%・増税23%・保険料22%:年代高いほど「税」に理解 本社世論調査」日本経済新聞2023年5月1日(2023年12月4日アクセス) 1 「少子化財源、世代で差 国債35%・増税23%・保険料22%:年代高いほど「税」に理解 本社世論調査」日本経済新聞2023年5月1日(2023年12月4日アクセス) 2 本プロジェクトの調査は、NIRA総合研究開発機構倫理審査委員会(23102-2023R13-01、23102-2023R26-01)の承認を受けて実施された。 2 本プロジェクトの調査は、NIRA総合研究開発機構倫理審査委員会(23102-2023R13-01、23102-2023R26-01)の承認を受けて実施された。 3 本調査で用いた動画では、勤労者以外も含んでいることを明確にすべく「現世代」という単語に置き換えている。 3 本調査で用いた動画では、勤労者以外も含んでいることを明確にすべく「現世代」という単語に置き換えている。 4 「KH Coder」を利用し、NIRA総研研究コーディネーター・研究員の渡部春佳が作成した。 4 「KH Coder」を利用し、NIRA総研研究コーディネーター・研究員の渡部春佳が作成した。 5 2023年5月30日にOpenAI社のChatGPT(モデル「GPT-4」)に質問した。 5 2023年5月30日にOpenAI社のChatGPT(モデル「GPT-4」)に質問した。 6 ただし、このテーマに関する本人の立場は世間に明らかにされていない。 6 ただし、このテーマに関する本人の立場は世間に明らかにされていない。 7 ウェイト調整後の数値。表記の桁数以下は四捨五入。特に断りのない限り、%は各選択肢を選んだ人の割合を示している。 7 ウェイト調整後の数値。表記の桁数以下は四捨五入。特に断りのない限り、%は各選択肢を選んだ人の割合を示している。 8 1歳刻みで回答してもらったものを集約。 8 1歳刻みで回答してもらったものを集約。 9 動画1~3ではそれぞれで提示する意見が異なるため、このスクリプトから該当する意見を編集で切り出すことによって動画を3本作成した。後の動画4~6も同様。 9 動画1~3ではそれぞれで提示する意見が異なるため、このスクリプトから該当する意見を編集で切り出すことによって動画を3本作成した。後の動画4~6も同様。 10 将来世代の意見は、新居氏による意見とAIが作成した意見があるため、前者を紹介する際は「解説者:人」、後者を紹介する際は「解説者:AI」としている。以後同様。 10 将来世代の意見は、新居氏による意見とAIが作成した意見があるため、前者を紹介する際は「解説者:人」、後者を紹介する際は「解説者:AI」としている。以後同様。 シェア Tweet 関連公表物 デジタル・デモクラシーがやってくる! 谷口将紀 宍戸常寿 いかに少子化社会から脱却するか 鈴木壮介 前田裕之 ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ