NIRA総合研究開発機構

概要

 (公財)NIRA総合研究開発機構では、「第2回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)」を実施した。本調査は政治・経済・社会に関連する人々の意識を定点観測することを目的としている。今回の調査は昨年に続く第2回目となる。前回は、性別・年齢・居住地域で回収目標数を割り付けたインターネット調査を実施したのに対して、今回は、層化2段無作為抽出に基づく面接調査を主たる調査とし、面接調査を補完するため、面接調査と同一の調査項目、かつ全く同じタイミングで、インターネットでの調査を行った。
 この速報は、面接調査について、すべての設問の単純集計と一部の設問についてのクロス集計の結果をまとめたものである(インターネット調査の結果については、後日報告する予定)。
 本面接調査は2024119日(金)~202424日(日)にかけて行われ、回収数は2,441であった。この速報で示されている数値は、すべてウエイトによる補正をしたものである。「国勢調査(2020年)」の18歳以上の日本人を母集団とみなして、性別、年齢(18~39歳、40~59歳、60歳以上の3段階)、都市規模(21大都市に居住しているか否か)の3属性で、レイキング法によって補正した。また、この速報のグラフ中の数字はすべて四捨五入したものである。そのため、グラフ中の数字の合計が100%にならなかったり、本文中の数字と一致しなかったりすることがある。

INDEX

ポイント

長期的党派性として、自民党を支持すると答えた人は全体の35%であり、立憲民主党と日本維新の会(いずれも7%)がそれに続く。「そのような政党はない」と答えた人は全体の30%であった。

政治家を「非常に信頼する」あるいは「信頼する」と回答した人は、全体の20%程度にとどまった。政治家を信頼する層としない層では、自民党を支持する人の割合がそれぞれ56%30%と、大きな差があった。

「いまの政党や政治家は腐敗しており敵をやっつける強い指導者が必要だ」という質問に「そう思う」あるいは「どちらかといえばそう思う」と答えた人は全体の54%に及んでおり、その背後にはポピュリズム的な態度があると推察される。

510年後の経済状況について悲観視する人が多く、世帯の家計状況が「悪くなっている」と回答した人の割合は50%近くになり、日本の経済状況が「悪くなっている」と回答した人の割合は60%近い。

日本社会を取り巻く状況への見通しや、デジタル化や技術革新がもたらす影響について、全体的にネガティブな回答が多い。例えば、異常気象や大規模災害の発生、物価上昇による生活苦については、80%を超える人が起こりそうという認識を持っている。

情報メディアについては、若年層ほどSNS、高齢層ほどテレビへの接触時間が長い。若年層は、SNSへの信頼がない人でも、メディア接触時間としてSNSが最も長い人は半数を上回る。

理想の日本社会について尋ねたところ、自由に競争し、成果に応じて分配される社会を支持する人が多く、割合は49%となった。一方で、税を負担しても福祉などの行政サービスを充実させ、行政機関による規制を通じて人びとの生活の安全と経済の安定を守る社会を理想とする声も、それぞれ半数程度あった。公共と個人の利益のどちらを優先させるかという質問については、「どちらともいえない」と答える人が最も多く59%だった。

公的サービスの内容について、最も多くの人が理解していた項目は、医療サービス(47%)と年金制度(45%)だったが、「公的サービスの満足度」を尋ねる質問では、医療サービスへの満足度が高いことに比べ、年金制度の満足度は著しく低い結果となった。

公的サービスの質や給付を充実させるために、自身の税・社会保険料の負担が増えてもよいものを聞いたところ、最も優先度の高い項目として、年齢別で18歳から30代は「子育て支援」、40代以上は「年金」を選ぶ人が多かった。

国や自治体のサービスで、無駄な支出が少ないと思っている人が最も多いのは、「社会保障費」だった。「行政の人件費」や「公共事業費」に比べ、社会保障費に対して、無駄な支出が少ないと考えている人が多い傾向にある。

図表

図1-1-1 投票予定政党
図1-1-2 長期的党派性
図1-1-3 年齢別の長期的党派
図1-2 諸外国への親近感
図1-3-1 組織などへの信頼
図1-3-2 政治家への信頼と長期的党派性
図1-4-1 政治的有効性感覚、ポピュリズム態度、政治関心
図1-4-2 「いまの政党や政治家は腐敗しきっており、人びとの敵をやっつける強い指導者が必要だ」という質問と無駄に関する意識
図2-1-1 世帯の家計状況、日本の経済状況の変化(1年前との比較)
図2-1-2 男女別、年齢階層別にみた世帯の家計状況の変化(1年前との比較)
図2-1-3 世帯所得別にみた世帯の家計状況の変化(1年前との比較)
図2-1-4 男女別、年齢階層別にみた日本の経済状況の変化(1年前との比較)
図2-1-5 世帯所得別にみた日本の経済状況の変化(1年前との比較)
図2-2-1 世帯の家計状況、日本の経済状況の見通し
図2-2-2 男女別、年齢階層別にみた世帯の家計状況の見通し
図2-2-3 世帯所得別にみた世帯の家計状況見通し
図2-2-4 男女別、年齢階層別にみた日本の経済状況の見通し
図2-2-5 世帯所得別にみた日本の経済状況の見通し
図2-3-1 個人を取り巻く変化への見通し
図2-3-2 学歴別、年齢階層別にみた、居住環境に関する見通し
図2-3-3 学歴別、年齢階層別にみた、教育・保育に関する見通し
図2-4 日本社会を取り巻く変化への見通し
図2-5-1 デジタル化や技術革新の影響に関する認識
図2-5-2 年齢階層別にみたデジタル化や技術革新の正の影響に関する認識
図2-6-1 直近の通常の1週間の生活時間
図2-6-2 テレワーク利用別に見た学習・自己研鑽・訓練の時間
図2-7-1 接触時間が最も長かった情報メディア
図2-7-2 年齢階層別にみた接触時間が最も長かった情報メディア
図2-7-3 SNSへの信頼の有無別にみた、SNSへの接触時間が最も長かった人の割合
図2-8-1 地域、ボランティア、副業に関する活動状況
図2-8-2 属性別にみた副業率
図2-9-1 環境に配慮した活動
図2-9-2 男女別、年齢階層別にみた環境に配慮した活動
図3-1-1 社会に対する考え方
図3-1-2 政策等に対する考え方
図3-1-3 年齢階層別にみた転職の是非
図3-1-4 公共サービスの対象
図3-1-5 理想の社会
図3-2-1 公的サービスの対象
図3-2-2 世帯年収別・年齢階層別にみた公的サービス(児童手当)の対象
図3-2-3 公的サービスの水準
図3-2-4 都市規模別 公的サービス「学校教育」の水準
図3-2-5 公的サービスの満足度
図3-2-6 公的サービスへの理解
図3-2-7 税・社会保険料の負担が増えても質や給付を充実させたいと思う公的給付・公共サービス
図3-2-8 年齢別 税・社会保険料の負担が増えても質や給付を充実させたいと思う公的給付・公共サービス(最も優先度が高いもの)
図3-2-9 公的サービスの水準を維持したままどれだけ無駄な支出を減らせるか
図3-3-1 生き方の選択と社会への参加
図3-3-2 中核層の割合
図3-3-3 年齢階層別にみたパーソナリティ
図3-3-4 自己レベルの価値タイプ
図3-3-5 生活満足度
図3-3-6 人々の社会階層意識
図3-3-7 世帯年収別の社会階層意識

Ⅰ 調査結果

1.政治分野

1.1.投票予定政党と長期的党派性

Q1.もし、この週末に選挙があるとしたら、あなたは、どの政党に投票したいと思いますか。

Q2.多くの人が「長期的に見ると、自分は△△党寄りだ」とお考えのようです。短期的に他の政党へ投票することはもちろんあり得るとして、長い目で見ると、あなたは「何党寄り」でしょうか。

 投票予定政党として、自民党と回答した人は全体の29%であった。日本維新の会が12%、立憲民主党が11%と続く。「投票所で棄権する」人と「選挙に行かない」人の割合はそれぞれ7%18%で、合計25%となった(図1-1-1)。

 長期的党派性は、投票予定政党の結果と類似している(図1-1-2)。すなわち、自民党と答えた人が最も多く、続いて、立憲民主党や日本維新の会の順となった。若干の違いは、長期的党派性の質問では自民党を支持すると答えた人は35%であり、投票予定政党で自民党と答えた人の割合(29%)をやや上回った点である。他方、長期的党派性の質問で立憲民主党や日本維新の会(いずれも7%)と答えた人の割合が、投票予定政党の質問よりも少なくなっている。また、長期的党派性について「そのような政党はない」と回答した人の割合は、30%と大きい結果になった。

 長期的党派性を年齢別に集計したのが図1-1-3である。18~39歳、40~59歳、60歳以上の3つの階層に分けている。自民党を支持する人の割合は、18~39歳では29%40~59歳では33%60歳以上では41%と年齢が高くなるほど大きくなる。その他の政党の支持率も、総じて、年齢が高くなるほど少し大きくなる傾向にあった。他方、支持する政党がないと回答する人の割合は、18~39歳では42%40~59歳では34%60歳以上では19%と年齢が高くなるほど小さい。

1.2.諸外国への親近感

Q3.下にある5つの国について、あなたは親しみを感じますか、それとも感じませんか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)アメリカ
(2)ロシア
(3)中国
(4)韓国
(5)インド

 上の5つの国について、「親しみを感じる」、あるいは「どちらかといえば親しみを感じる」と答えた人の割合が最も大きいのはアメリカで、82%となった。アメリカに続くのが韓国とインドであり、次いで、韓国が48%、インドが42%であった。

 それとは対照的に、中国とロシアは「親しみを感じない」または「どちらかといえば親しみを感じない」と答えた人が多かった。これら2つの選択肢を選んだ人の合計では、中国が83%、ロシアは93%であった(図1-2)。

1.3.組織などへの信頼度と理由

Q4.あなたは、次にあげる日本のメディア、組織、人についてどの程度信頼しますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)新聞
(2)テレビ
(3)インターネットメディア(ニュースアプリ・サイトやブログなど)
(4)SNS(ツイッターやインスタグラムなど)
(5)警察
(6)裁判所
(7)政府
(8)国会
(9)国の行政機関
(10)地方自治体
(11)ボランティア団体・NPO
(12)政治家
(13)家族
(14)学者・研究者

 これらの項目について、「信頼する」あるいは「どちらかといえば信頼する」と答えた人の割合をみると、まず「家族」については96%と回答者のほぼすべてを占めている(図1-3-1)ことが明らかとなった。他の項目と比べて、「信頼する」とした人の割合が、「どちらかといえば信頼する」に比して大きいことも顕著な特徴といえる。

 公的機関のうち、信頼すると答えた人の割合が最も大きかったのは「裁判所」(85%)と「警察」(83%)であった。「地方自治体」(74%)がそれに続き、次いで、「国の行政機関」(58%)となった。国と地方では明確に差が見られる。また、「政府」を信頼すると答えた人は39%であり、「国会」の35%と同水準であった。他方、「政治家」への信頼は国会(35%)と比べてかなり低く、信頼するという人はわずか19%であった。少なくとも信頼という点では、回答者が「国会」と「政治家」を異なる概念として理解していることがうかがえる。他方、市民社会を担う存在である「ボランティア団体・NPO」への信頼は65%と比較的高い水準であった。

 メディアについては、信頼度が高いものと低いものに2分されている。「新聞」(84%)と「テレビ」(70%)は高かったのに対し、「インターネットメディア」と「SNS」はそれぞれ40%23%と低い結果となった。前者は歴史の長い伝統的なメディアであるのに対して、後者はインターネットを利用するメディアである。インターネットを介して提供される情報に虚実が入り混じっていることが、インターネットメディアやSNSへの低い信頼につながっている可能性がある。

 また、「学者・研究者」を信頼すると回答した人は83%であった。

 次に、政治家への信頼と長期的な党派性(Q2)の関係をみると(図1-3-2)、政治家を信頼する人としない人では、自民党を支持している人の割合が大きく異なることがわかった。自民党を支持する人の割合は、政治家を信頼しない人の中では、30%であるのに対し、政治家を信頼する人の中では56%という結果になった。政治家を信頼する人がそもそも少ないため、少しの人数で割合が大きく変化しやすい点に注意をする必要はあるが、それでも顕著な違いがあるといえる。「そのような政党はない」と答えた人の割合を比較すると、政治家を信頼しない人の中では33%、政治家を信頼する人の中では17%であった。

1.4.政治的有効性感覚・ポピュリズム態度

Q5.あなたは、次の政治に関する意見についてどう思いますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)今の政治家は、あまり私たちのことを考えていない
(2)国会議員は、おおざっぱに言って当選したらすぐ国民のことを考えなくなる
(3)自分には政府のすることに対して、それを左右する力はない
(4)政治とか政府とかは、あまりに複雑なので、自分には何をやっているのかよく理解できないことがある
(5)自分は、政治に関心がある方である
(6)日本をとりまく国際問題に関心がある方である
(7)いまの政党や政治家は腐敗しきっており、人びとの敵をやっつける強い指導者が必要だ

 これらの質問は、政治的有効性感覚、ポピュリズム態度、政治関心の3つに大きく分けることができる。

 まず、政治的有効性感覚について、「自分には政府のすることに対して、それを左右する力はない」や「政治や政府は複雑で何をやっているのか理解できないことがある」の質問に「そう思う」あるいは「どちらかといえばそう思う」と回答した人は、それぞれ77%64%であった。また、「国会議員は、おおざっぱに言って当選したらすぐ国民のことを考えなくなる」と「今の政治家は、あまり私たちのことを考えていない」については、いずれも70%台後半であった。全体としては、6割から7割の人が、政治的有効性感覚の質問に消極的な回答をしている(図1-4-1)。

 次に、人々のポピュリズム的な態度についてみると、「いまの政党や政治家は腐敗しきっており、敵をやっつける強い指導者が必要だ」という質問に対して54%が「そう思う」あるいは「どちらかといえばそう思う」と回答している。

 最後に、政治関心については、一般的な形で「自分に、政治に関心がある方である」という質問と、国際問題に焦点を当てた「日本をとりまく国際問題に関心がある方である」という質問をしている。「そう思う」あるいは「どちらかといえばそう思う」と答えた人の合計は、国際問題の方が52%と多く、一般的な政治関心(37%)を大きく上回っていた。

 これらの結果の中で特に注目に値するのは、「いまの政党や政治家は腐敗しきっており、敵をやっつける強い指導者が必要だ」という設問にそう思うと回答した人が半数以上になったことである。こうしたポピュリズム態度の程度が、政府の支出に対する評価に影響を与えている可能性がある。そこで、この質問に「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と答えた人とそうでない人に分けて、Q24の「国や自治体の支出について無駄をなくすことでどのくらい支出を減らせると思うか」という質問とのクロス集計を行った(図1-4-2)。強い指導者が必要という質問に「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と答えた人の方が、そうでない人よりも、政府の支出に無駄があると考える割合が大きい。この関係は、社会保障費、行政の人件費、公共事業費のいずれについても当てはまる。ポピュリズム的な態度が強い人の方が、政府の支出に対して厳しい見方をしていることが見て取れる。

2.経済分野

2.1.世帯の家計状況、日本の経済状況の変化

6.(1)あなたの世帯の家計状況と(2)日本の経済状況は、1年前と比べて現在はどうなっていますか。(○はそれぞれ1つずつ)

 1年前と比べた現在の状況について、世帯の家計状況は「変わらない」と回答した人の割合が54%で最も割合が大きかった。また、「悪くなった」と回答した人はおよそ40%であった(図2-1-1(注1)

 男女別にみると、女性の方が「悪くなった」と答えている人が多く、年齢階層別にみると、高齢層の方が「悪くなった」と答えている人が多い(図2-1-2)。世帯所得別にみると、低所得世帯ほど「悪くなった」と答えている人が多い(図2-1-3)。

 また、日本の経済状況については、1年前と比べた現在の状況を「悪くなった」と回答した人の割合が過半数に上った(図2-1-1)。なお、2023年第4四半期値の実質GDP成長率は、前年同期比+1.2%とプラス成長であり、調査実施時点の日経平均株価も高値を付けていたにもかかわらず、「悪くなった」と回答した人が多い理由として、円安を背景とした物価上昇などのネガティブな情報への反応が大きく働いている可能性があると考えられる(ネガティビティ・バイアス)。

 次に男女別にみると、「悪くなった」と回答した割合が女性の方が、また、年齢階層別にみると、若年層の方が大きかった(図2-1-4)。世帯所得別にみると、1,000万円未満の世帯は、1,000万円以上の世帯に比べると、「悪くなった」と回答した割合が高かった(図2-1-5)。

 さらに、世帯の家計状況と日本の経済状況への見方を比べると、後者の方が「悪くなった」と回答した人の割合が大きい。また、高所得層ほど、両者の認識に乖離があることがうかがえる。

2.2.世帯の家計状況、日本の経済状況の見通し

6.(1)あなたの世帯の家計状況と(2)日本の経済状況は、現在と比べて510年後はどうなっていると思いますか。(○はそれぞれ1つずつ)

 世帯の家計状況の見通しについて、現在と比べて510年後は「悪くなっている」と回答した人の割合が47%で最も大きく、次いで「変わらない」が43%だった。「良くなっている」と回答した人の割合は10%未満にとどまる(図2-2-1)。

 男女別にみると、ほとんど違いはないが、年齢階層別にみると、若年層は比較的明るい見通しを持っており、高齢層は悲観視する人が多かった(図2-2-2)。世帯所得別にみると、低所得層ほど悲観視する人が多く、高所得層ほど明るい見通しを持つ人が多かった(図2-2-3)。

 また、日本の経済状況の見通しについても、全体として悲観視する人が多く、現在と比べて510年後は「悪くなっている」と回答した人の割合が60%近くに上る(図2-2-1)。「良くなっている」と回答した人の割合はわずか6%であった。

 それを男女別にみると、女性の方が「悪くなっている」と回答した割合が、また、年齢階層別にみると、若年層の方が「悪くなっている」と回答した割合が若干大きかった(図2-2-4)。他方、世帯所得別にみると、ほとんど違いはなかった(図2-2-5)。日本の経済状況の見通しは所得階層間で大きな違いは見られない一方、世帯の家計状況の見通しには大きな違いがあり、低所得層ほど将来の家計に対して明るい見通しを持ちにくいことがうかがえる。

2.3.個人を取り巻く状況への見通し

Q7.510年後において、あなたご自身に、以下のことは起こりそうだと思いますか。ABのどちらに近いかお答えください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)
A:経済的に困窮する
B:経済的に余裕がある

2
A:心身の病気や障がいがある
B:心身の病気や障がいがない

3
A:子や孫などが十分な教育・保育を受けられない
B:子や孫などが十分な教育・保育を受けられる

4
A:快適な住宅に住めない
B:快適な住宅に住める

(5
A:家族に介護が必要である
B:家族に介護が不要である

 5~10年後における、個人を取り巻く状況への見通しをみると、「家族に介護が必要である」という状況が起こると思う人が多い(図2-3-1)。この見通しを持つ人の割合(「Aに近い」と「どちらかといえばAに近い」の合計。以下同)は54%と、過半数を超える。また、経済状況に関して、「経済的に困窮する」と考える人の割合は43%で、「経済的に余裕がある」と考える人の割合(12%)と比べて明らかに大きい。さらに、「心身の病気や障がいがある」と考える人の割合は30%を超えており、「心身の病気や障がいがない」と考える人の割合と比べてやや大きい。

    図2-3-1 個人を取り巻く変化への見通し

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 他方、居住環境と教育・保育についてはポジティブな見通しもみられた。「快適な住宅に住める」、「子や孫などが十分な教育・保育を受けられる」と考える人の割合は30%を超え、それぞれ反対の考えの人の割合よりもやや大きい。

 居住環境、教育・保育に関する見通しを、学歴別、世帯所得別にみると、4年制大学卒以上、高所得層ほど、ポジティブな見通しを持つ傾向がみられた(図2-3-2、図2-3-3)。

2.4.日本社会を取り巻く状況への見通し

Q8.510年後の日本について、あなたは以下のことが起こると思いますか。それとも起こらないと思いますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。

510年後の日本は・・・
(1)物価が上がって生活が苦しくなる
(2)より高齢まで健康でいられるようになる
(3)十分な年金や医療サービスを受けられなくなる
(4)国内に住む外国人が増える
(5)コロナのような感染症が再び世界的に流行する
(6)生活を揺るがすような異常気象や大規模災害が発生する
(7)近隣諸国で武力衝突が起きる
(8)国内の治安が悪くなる

 5~10年後における日本社会を取り巻く状況への見通しをみると、特に起こりそうだと思われている事項(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の合計でみる。以下同)は、異常気象や大規模災害の発生(85%)、物価上昇による生活苦(83%)、在留外国人の増加(80%)である。これらの事項は、起こらないと思う人(「そう(起こると)思わない」と「どちらかと言えばそう思わない」の合計)がほとんどいなかった(図2-4)。また、十分な年金や医療サービスを受けられなくなること、近隣諸国での武力衝突、国内の治安悪化、世界的な感染症の再流行についても、起こると思う人の割合が過半数を超え、そう思わない人の割合を大きく上回った。

 一方で、「より高齢まで健康でいられるようになる」という点に関しては、考えが割れた。起こると思う、思わないともに、回答した人の割合がそれぞれ30%程度となっている。医療の高度化が進展しているにもかかわらず、健康に対するポジティブな見通しが人々の間で一様に広がっているわけではないことがわかる。

2.5.デジタル化や技術革新の影響に関する認識

9.今後、デジタル化や技術革新によって、次のようなことが起こりそうだと思いますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)自分や家族ができる新たな仕事が生まれる
(2)自分や家族の仕事がなくなる
(3)コミュニケーションや人間関係が希薄になる
(4)生活が便利になる
(5)情報漏えい、不正アクセス等のセキュリティ被害が増える
(6)うその情報が増えて、だまされやすくなる
(7)富む人と貧しい人の所得格差が拡大する

 デジタル化や技術革新の影響に関する認識をみると、起こりそうだ(「とても起こりそう」と「起こりそう」の合計、以下同)として回答の割合が大きかった事項には、科学技術がもたらす負の影響に関する内容が並んだ(図2-5-1)。具体的には、「セキュリティ被害の増加」、「うその情報の増加」、「所得格差の拡大」、「コミュニケーションや人間関係の希薄化」である。特に「セキュリティ被害」、「うその情報の増加」、「所得格差の拡大」は、およそ90%の人が起こりそうだと考えている。また、「自分や家族の仕事がなくなる」と回答した人の割合は、「自分や家族ができる新たな仕事が生まれる」と回答した人の割合よりも大きい。

 科学技術がもたらす正の影響については、新たな仕事が生まれる他に、「生活が便利になる」という事項もたずねた。これが起こりそうだと思う人の割合は63%と過半数を超えたが、全体としてはネガティブな認識が目立つ結果となった。

 科学技術がもたらす正の影響に関する事項を年齢階層別にみると、若年層ほど起こりそうと回答した割合が大きくなった(図2-5-2)。

図2-5-2 年齢階層別にみたデジタル化や技術革新の正の影響に関する認識

(注)年齢階層別に、各項目について、「とても起こりそう」と「やや起こりそう」の合計の割合を示している。

2.6.生活時間

Q10.あなたは、直近の「通常の1週間」(注21)でどれくらいの時間、以下のことをしましたか。

(1)労働(残業、副業含む)※就業者のみ
(2)テレワークによる労働注2※2)※就業者のみ
(3)家事・育児・介護
(4)学習・自己啓発・訓練注23)
(5)新聞、テレビ、雑誌、ネットニュース、SNSなど情報メディアとの接触

 直近の「通常の1週間」の生活時間をみると、図2-6-1の結果となった。「1.労働(残業、副業含む)」と「2.1.労働(残業、副業含む)』のうち、テレワークによる労働」は、就業者のみに聞いた設問である。

 就業者のうち、テレワークを少しでも利用した人の割合は15%であった。

 学習・自己啓発・訓練の時間はゼロの人の割合が最も大きく47%、次いで、週14時間(1日に1530分)の人の割合が28%となり、多くの人が自己研鑽に時間を投資していないことがわかる。情報メディアとの接触時間は、週529時間(1日に13時間前後)の人の割合が最も大きく48%、次いで、週14時間(1日に1530分)の人の割合が23%であった。

 学習・自己啓発・訓練の時間をテレワーク利用別にみると、テレワーク利用者ほど自己研鑽の時間が多いことがわかる(図2-6-2)。

2.7.情報メディア

Q11.直近の「通常の1週間」の情報メディアとの接触時間では、どのメディアとの接触時間が最も長かったですか。この中から1つ選んでください。(○は1つ)

 情報メディアのうち、最も接触時間が長かったものとして挙げられていたのは、テレビ(39%)やSNS27%)、インターネットメディア(22%)であった。新聞は6%にとどまった(図2-7-1)。

 年齢階層別にみると、若年層ほどSNSの割合が、また、高齢層ほどテレビの割合が大きく、年齢階層によって用いる情報メディアが明らかに異なることがわかる(図2-7-2)。

 また、SNSへの信頼の有無別(SNSを「信頼する」、「どちらかといえば信頼する」と回答した場合には信頼有とする、以下同)に、SNSへの接触時間が最も長かった人の割合を年齢階層別にみると、若年層は、SNSへの信頼がない人でも、メディア接触としてSNSへの時間が最も長い人は57%に上った(図2-7-3)。

2.8.地域、ボランティア、副業に関する活動状況

12.あなたは、この1年間で以下の活動を何日ぐらいしましたか。行った活動の内容が、複数の項目にあてはまる場合はあてはまる活動それぞれについて、この1年間にしたものとしてお答えください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)地域コミュニティとのかかわり(例:自治会の行事、学校行事、地域サークルなど)
(2)ボランティア活動
(3)副業※就業者のみ

 地域コミュニティ、ボランティア、副業に関する活動状況をみると、この1年間で行ったことがある人の割合が最も大きい活動は、地域コミュニティとのかかわりで45%となった。ボランティア活動の同割合は18%、副業は15%であった(図2-8-1)。

 副業の実施率を属性別にみると、高齢層は若年層より、また、自営業者や非正規職員は正規職員より高くなっており、また、世帯所得では、所得の低い人ほど高いことがわかる(図2-8-2)。所得補填を目的とした消極的な副業が主であることがうかがえる。

2.9.環境に配慮した活動

Q13.あなたは、過去1か月で、以下のことをしましたか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)値段が高くても、環境に配慮した商品・サービスを購入・利用した(エコ商品、再生可能エネルギー、電気自動車など)
(2)募金や寄付をした(ふるさと納税を除く)

 環境に配慮した活動についてみると、環境に配慮した商品を購入した人の割合は20%、募金や寄付をした人の割合は30%で、どちらもそれほど大きくはなかった(図2-9-1)。

 また、環境に配慮した商品を購入した人の割合を男女別にみると、女性の方が大きく、年齢階層別にみると、4059歳が最も大きくなった(図2-9-2)。

 次に、募金や寄付をした人の割合を男女別にみると、女性の方が大きかったが、年齢階層間では明らかな違いは見られなかった。

3.社会分野

3.1.社会に対する考え方

Q14.あなたは以下の意見について、どのように考えますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)努力をして働けば、豊かな暮らしができる
(2)大多数の市民は善良だ
(3)一般論として、たいていの人は信頼できる
(4)今生きている人々の負担となっても、将来世代のことを考えて行動すべきである
(5)日本で働く外国人の受け入れを増やすべきだ

 社会に対する考え方について、およそ過半数の人が賛成(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)した意見は、「今生きている人々の負担となっても、将来世代のことを考えて行動すべきである」(57%)、「大多数の市民は善良だ」(52%)、「努力をして働けば、豊かな暮らしができる」(49%)だった(図3-1-1)。そのほか、「一般論として、たいていの人は信頼できる」には42%、「日本で働く外国人の受け入れを増やすべきだ」の意見には29%が賛成した。

 一方、反対(「そう思わない」と「どちらかといえばそう思わない」の合計)が過半数に達した意見はなかった。他の意見と比べて反対が多かった意見は、「日本で働く外国人の受け入れを増やすべきだ」(27%)、「努力をして働けば、豊かな暮らしができる」(26%)だった。

 また、「どちらでもない」と回答したものが最も多かった意見は「日本で働く外国人の受け入れを増やすべきだ」(43%)で、最も少なかったのは、「努力をして働けば、豊かな暮らしができる」(24%)であった。

 自らの生活向上や将来世代の負担軽減のために、勤勉に努力をすることが重要だと考える人が多いと考えられる。他方、努力すれば、豊かな暮らしを手に入れられるという意見に対しては、賛否が分かれやすいこともうかがえる。また、「日本で働く外国人の受け入れを増やすべきだ」という意見に対しては、多くの人が明確な答えを有していない。

Q15.以下の争点について、あなたのお考えはABのどちらに近いでしょうか。それぞれの項目について、ABのどちらに近いかお選び下さい。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)
A
:日本は財政赤字の懸念はなく、国債を発行しても問題ない
B:日本の財政赤字は危機的水準であるので、国債の発行は抑制すべきだ

(2)
A
:もし所得税を1割増やすなら、所得のある人全員の税率を10%ずつ引き上げるべきだ
B:もし所得税を1割増やすなら、高額所得者の税率の引き上げ幅をより大きくすべきだ

(3)
A
:政策を決定する際は、専門家が議論した結果を優先するべきだ
B:政策を決定する際は、ふつうの人びとの意見を優先するべきだ

(4)
A
:働いている人は、チャンスがあれば、転職する方がよい
B:働いている人は、同じ企業に長く勤める方がよい

(5)
A
:老後の生活は自助努力でまかなうのが基本で、国による生活保障は最低限にとどめるべきだ
B:すべての人が充実した老後を暮らせるように、国は十分な生活保障を行うべきだ

 財政赤字について、国債発行は抑制するべきと考える人(どちらかといえばそのように考えている人も含む。以下同)の割合(50%)は、財政赤字を心配する必要はないと考える人の割合(12%)を大きく上回った(図3-1-2)。また、「所得税を1割増やすなら、高所得者の税率の引き上げ幅をより大きくすべき」と考えている人の割合は55%と半数を超えた。政策決定に関しては、「ふつうの人びとの意見を優先するべきだ」と考えている人の割合は35%となり、「専門家が議論した結果を優先するべき」と回答した人の割合(22%)よりも上回った。

 労働者は転職をした方がよいかどうか、という設問では、「チャンスがあれば転職する方がよい」と回答した人の割合(38%)は、同じ企業に長く務める方がよい」と回答した人の割合(15%)を大きく上回った。終身雇用を選好する人が少なくなっていることがわかる。これを年齢階層別にみると、若い人ほど転職する方がよいと考えており、60歳以上では転職する方がよいと考える人が27%なのに対し、1830代では54%に上る(図3-1-3)。

Q16.次の公共サービスを充実させるための費用の負担の割合はどのようにすべきだと思いますか。あなたのお考えに近いものに1つずつ○をつけて下さい。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)医療・介護
(2)子育て支援
(3)防衛

 公共サービスの負担のあり方についてみると、「医療・介護」、「子育て支援」、「防衛」のすべての項目において、「国民全員がそれぞれの所得に対して等しい税率で負担すべきだ」と「所得の多い人ほど税率が高くなるようにしつつ、国民全員が負担すべきだ」の回答を選ぶ人が多く、割合もほぼ拮抗した(図3-1-4)。

 「子育て支援」では、「国民全員がそれぞれの所得に対して等しい税率で負担すべきだ」と「所得の多い人ほど税率が高くなるようにしつつ、国民全員が負担すべきだ」を選んだ人の割合が最も大きく、40%ずつとなった。次に「国民全員がそれぞれ等しい金額を負担すべきだ」の回答が12%、そして最も支持が小さかった回答は「そのサービスを利用する人が全額を負担すべきだ」で6%だった。

 「医療・介護」では、最も支持が多かった回答から順に、「所得の多い人ほど税率が高くなるようにしつつ、国民全員が負担すべきだ」(44%)、「国民全員がそれぞれの所得に対して等しい税率で負担すべきだ」(42%)、次に大幅に差をつけて「国民全員がそれぞれ等しい金額を負担すべきだ」(10%)、そして最も支持が少なかった回答は「そのサービスを利用する人が全額を負担すべきだ」で3%だった。

 「防衛」で最も支持が多かった回答から順に、「所得の多い人ほど税率が高くなるようにしつつ、国民全員が負担すべきだ」(39%)、次に「国民全員がそれぞれの所得に対して等しい税率で負担すべきだ」(36%)だった。上位2つから差をつけて、「国民全員がそれぞれ等しい金額を負担すべきだ」の回答が19%、そして最も支持が少なかった回答は「そのサービスを利用する人が全額を負担すべきだ」で5%だった。

 全ての項目において最も支持が多かった回答は、「所得の多い人ほど税率が高くなるようにしつつ、国民全員が負担すべきだ」で、数ポイント差で次に「国民全員がそれぞれの所得に対して等しい税率で負担すべきだ」だった。2つの回答は、「医療・介護」、「子育て支援」、「防衛」のそれぞれの項目で40%程度ずつの割合となった。一方で、「医療・介護」、「子育て支援」、「防衛」のすべての項目で、「そのサービスを利用する人が全額を負担すべきだ」と回答した人が、最も少ない結果となった。

 これらの結果からは、公共サービスの充実にかかる費用負担については、サービスの受益者が全額負担するよりも、国民全員が負担すべきと考えている人が多数を占めていることが分かる。もっとも、所得による負担額の差の付け方で意見が割れている点は留意すべきだ。所得に関係なく平等に負担すべきとする「国民全員がそれぞれ等しい金額を負担すべきだ」という回答への支持は、「子育て支援」や「医療・介護」でも10%程度とあまり大きくはなかったが、「防衛」に関しては19%と支持した人の割合がやや大きくなった。

Q17.あなたが理想とする日本の社会は、以下のABのどちらに近いと思いますか。それぞれの項目について、ABのどちらに近いかお選び下さい。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)
A
:働いた成果とあまり関係なく、貧富の差が少ない平等な社会
B:自由に競争し、成果に応じて分配される社会

(2)
A
:税負担は大きいが、福祉などの行政サービスが充実した社会
B:福祉などの行政サービスを必要最小限に絞り、税負担の少ない社会

(3)
A
:行政機関による多面的な規制を通じて、国民生活の安全や経済の安定を守る社会
B:規制を可能な限り排除し、民間の自由な活動と自己責任にゆだねる社会

(4)
A
:経済成長を重んじ、公共投資や公共事業を盛んに行う社会
B:財政規律を重んじ、国や地方自治体の借金を大きくしない社会

(5)
A
:国民一人一人が「個人の利益」を優先する社会
B:国民一人一人が「公共の利益」を優先する社会

 提示された2つの社会から、より理想とするものを選ぶ本設問は、市場と分配、行政サービス、公共に分けることができる。まず、市場と分配の点で、より理想的との回答が多かったのは、「自由に競争し、成果に応じて分配される社会」(49%)だった(「A(もしくはB)に近い」と「どちらかといえばA(もしくはB)に近い」と回答した人の合計、図3-1-5)。また、「財政規律を重んじ、国や地方自治体の借金を大きくしない社会」(33%の方が、「経済成長を重んじ、公共投資や公共事業を盛んに行う社会」(23%)よりも理想とされた。ただし、経済成長と財政規律については、「どちらともいえない」(43%)が多数となり、どちらが理想かは定まらない人も多い。

 次に、行政サービスについてより理想的であるとされたのは、「行政機関による多面的な規制を通じて、国民生活の安全や経済の安定を守る社会」(47%)であり、また、「税負担は大きいが、福祉などの行政サービスが充実した社会」(45%)だった。

 さらに、公共の視点から、より理想とされたのは「国民一人一人が「公共の利益」を優先する社会」(24%)で、「国民一人一人が「個人の利益」を優先する社会」(16%)をやや上回る。しかし、「どちらともいえない」(59%)が過半数を超えており、多くの人にとっては、公共と個人の利益のどちらを優先させるかは、明確な答えが出ていない。

 これらの結果から、日本社会の理想について支持されている意見をみると、自由に競争し、成果に応じて分配される能力主義社会が志向されている。その一方で、税を負担しても福祉などの行政サービスを充実させ、行政機関による規制を通じて人びとの生活の安全と経済の安定を守る社会を理想とする志向も同時に存在する。

3.2.公的サービスに対する考え方

Q18.以下の公的サービスの給付について、あなたは、所得に関係なく全員を対象にすべきか、一定の所得条件を満たす人を対象にすべきか、どちらの考えに近いでしょうか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)中学卒業までの児童1人につき、月額15,000円を支給する
(2)大学や専門学校などの授業料を無料にする
(3)職業訓練、学び直しなどスキルアップのための支援金を給付する
(4)75歳以上の高齢者は、医療費の自己負担割合を引き上げる
(5)経済が甚大な打撃を受けた場合に、国民に一律の給付金(例えば、110万円)を支給する

 本設問は、公的サービス給付や負担に当たって、全員を対象とするのか、あるいは、一部の人を対象とするのかを、具体的なサービスを提示して聞いたものである。

 まず、給付についてみると、「中学卒業までの児童1人につき、月額15,000円を支給する」(児童手当)と「経済が甚大な打撃を受けた場合に、国民に一律の給付金を支給する」では、「全員を対象にすべき」と回答した人と「所得条件を満たす人を対象にすべき」と回答した人はどちらも40%程度であった(図3-2-1)。これを世帯年収別、年齢階層別にみると、世帯年収が高いほど、また、若年層ほど全員を対象にすべきと考えている(図3-2-2)。また、職業訓練や学び直しのスキルアップに関しては、「全員を対象とすべき」、「所得条件を満たす人を対象にすべき」、「どちらともいえない」と回答した人が、それぞれ同程度に分かれた。

    図3-2-2 世帯年収別・年齢階層別にみた公的サービス(児童手当)の対象

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 他方、負担については、大学や専門学校などの授業料無償化では、所得条件を満たす人を対象にすべきと回答した人の割合が43%と、全員を対象にすべきと回答した人の割合の34%よりも多い。また、75歳以上の高齢者に対する医療費の自己負担金についてみると、所得条件を満たす人を対象にすべきと考える人は58%となり、全員を対象にするべきと考える人の17%を大きく上回った。

 このように、公的サービスの給付については、意見がほぼ均等にバランスよく割れているのに対し、負担に関しては、所得に基づいた応能負担への支持があることが明らかとなった。

Q19.以下の公的サービスについて、全国一律であるべきか、それとも地域の実情を反映して違いがあるべきか、あなたはどちらが望ましいと考えますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)医療サービス(保険料・サービスの質・費用など)
(2)介護・障がい者支援(保険料・サービスの質・障がい者手当など)
(3)子育て支援(育児休暇手当、保育サービス、児童手当など)
(4)学校教育(小中学校教育、高校教育など)
(5)雇用支援(求職支援、技能訓練支援、起業支援など)
(6)生活支援(失業給付、生活保護、公営賃貸住宅の提供など)
(7)公共安全(警察、消防など)
(8)緊急時・災害時の支援(災害救助、災害補償など)

 公的サービスの水準についてはどの項目も「全国一律のサービス」を望む人が60%程度以上となった(図3-2-3)。「生活支援」や「雇用支援」は、他のサービスと比較すると地域の実情を反映して違いがあるべきと回答した人が多いが、それでも25%程度である。人口に基づく都市規模別に見たところ、回答傾向に違いはあまり見られなかった。ただし、「学校教育」に関しては、町村のほうが他の都市よりも全国一律のサービスを支持する傾向があった(図3-2-4)。

Q20.以下の公的サービスについて、あなたはどのくらい満足していますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)医療サービス(保険料・サービスの質・費用など)
(2)介護・障がい者支援(保険料・サービスの質・障がい者手当など)
(3)年金制度
(4)子育て支援(育児休暇手当、保育サービス、児童手当など)
(5)学校教育(小中学校教育、高校教育など)
(6)雇用支援(求職支援、技能訓練支援、起業支援など)
(7)生活支援(失業給付、生活保護、公営賃貸住宅の提供など)
(8)公共安全(警察、消防など)
(9)緊急時・災害時の支援(災害救助、災害補償など)
(10)防衛(防御、警戒監視など)

 人々が最も満足している公的サービスは(「とても満足している」と「やや満足している」の合計、以下同)、「医療サービス」で49%、次いで「公共安全」が47%となった(図3-2-5)。医療、公共安全が全体の約半数、そして緊急時・災害時の支援は3割(33%)と、満足している割合が比較的大きい。

 他方、「満足していない(「全く満足していない」と「あまり満足していない」の合計、以下同)」と回答した人をみると、ほとんどの項目で2割程度だったが、「年金制度」は満足していない人が突出して多く、56%だった。次の「子育て支援」が27%だったのに比べても大きな差がある。

Q21.以下の公的サービスについて、あなたはよく知っていますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)医療サービス(保険料・サービスの質・費用など)
(2)介護・障がい者支援(保険料・サービスの質・障がい者手当など)
(3)年金制度
(4)子育て支援(育児休暇手当、保育サービス、児童手当など)
(5)学校教育(小中学校教育、高校教育など)
(6)雇用支援(求職支援、技能訓練支援、起業支援など)
(7)生活支援(失業給付、生活保護、公営賃貸住宅の提供など)
(8)公共安全(警察、消防など)
(9)緊急時・災害時の支援(災害救助、災害補償など)
(10)防衛(防御、警戒監視など)

 公的サービスの内容について「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した人が最も多かったのは、医療サービス(47%)や年金制度(45%)であり、5割弱程度であった(図3-2-6)。次いで、学校教育、子育て支援、公共安全、介護・障がい者支援であり、およそ30%前後が「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した。他方、「全く知らない」「あまり知らない」を選んだ人が最も多かった項目は、生活支援(44%)、防衛(43%)、雇用支援(42%)、介護・障がい者支援(40%)であり、4割強の割合だった。

 医療サービスや年金制度、介護・障がい者支援の項目に関しては、他の項目に比べて利用者が多いため、サービスをより身近に感じ、内容の理解へとつながっている可能性がある。ただし、Q20の「公的サービスの満足度」と合わせて確認すると、よく知られている医療サービスへの満足度が高いことに比べ、年金制度はよく知られているが満足度は著しく低い結果となった。

Q22.以下の公的給付や公共サービスについて、自身の税・社会保険料の負担が増えても質や給付を充実させたいと思うものはどれでしょうか。あてはまると思うものをすべてお選びください。(○はいくつでも)

(1)医療サービス(保険料・サービスの質・費用など)
(2)介護・障がい者支援(保険料・サービスの質・障がい者手当など)
(3)年金制度
(4)子育て支援(育児休暇手当、保育サービス、児童手当など)
(5)学校教育(小中学校教育、高校教育など)
(6)雇用支援(求職支援、技能訓練支援、起業支援など)
(7)生活支援(失業給付、生活保護、公営賃貸住宅の提供など)
(8)公共安全(警察、消防など)
(9)緊急時・災害時の支援(災害救助、災害補償など)
(10)防衛(防御、警戒監視など)
(11)該当するものはない

 公的サービスの質や給付を充実させるために、自身の税・社会保険料の負担が増えてもよいものを複数回答可能の形式で聞いたところ、13%の人が「該当するものはない」と回答し、残りの87%の人が1つ以上の公的サービスを選択した(図3-2-7)。

 負担してもよいと考える項目として回答が多かったのは、「医療サービス」(49%)、「年金制度」(41%)、「緊急時・災害時の支援」(37%)、「介護・障がい者支援」(34%)、「子育て支援」(33%)だった。一方、回答が少なかったのは、「防衛」(19%)、「生活支援」(15%)であり、最も低いのは「雇用支援」(10%)だった。また、Q20で満足度が最も高かった「公共安全」に関しては、負担が増えてもよいと考える人は21%と比較的小さかった。これは、現在のサービスに満足していることが作用していると考えることもできよう。

 また、その中から最も優先度の高い公的給付や公共サービスを1つだけ選ぶ設問(Q23)でも、複数回答形式の回答傾向と大きな違いはみられなかった。最も優先度の高い項目として、「年金制度」(18%)、その次に「医療サービス」(17%)、「子育て支援」(13%)、「緊急時・災害時の支援」(8%)、「介護・障がい者支援」(7%)が続く。優先度の高いサービスでは、複数回答の結果と比べて、順位が変動するのが特徴的である。

 また、年齢別で最も優先度の高い項目を見たところ、18歳から30代は「子育て支援」、40代以上は「年金」を回答する人が多かった。

Q24.国や自治体の支出について、現在のサービス水準を維持したまま、無駄をなくすことでどれくらい支出を減らせると思いますか。以下のそれぞれについて1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)社会保障費
(2)行政の人件費
(3)公共事業費

 国や自治体の支出について、現在のサービス水準を維持したまま、無駄をなくすことでどれくらい支出を減らせるかの考えを聞いたところ、最も減らせると考えられているのは「行政の人件費」で、5割以上減らせると考える人が18%いた(図3-2-9)。また、どの項目でも12割程度無駄があると思っている割合が最も大きく、35割程度の人が選択している。

 一方、無駄な支出が1割未満と思っている人が最も多いのは、「社会保障費」で27%となった。社会保障費に対しては他の項目と比べて、無駄な支出が少ないと考えている人が多い

3.3.人々の社会意識

Q25.あなたは以下についてどのくらいあてはまりますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)人生で難しい問題に直面しても、自分なりに積極的に解決していく
(2)社会をよりよくするため、私は社会における問題に関与したい
(3)将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したい
(4)新聞や自治体の広報誌を読む
(5)子どもや若者が対象となる政策や制度については子どもや若者の意見を聴くようにすべきだと思う
(6)少子化対策で現役世代の人が優遇されるのは不公平だと思う
(7)世間一般の意見に合わせていないと心配になる
(8)集団の中で、自分の意見が多数派の意見と異なる場合、自分の意見を主張せずに多数派に合わせる

 「子供や若者が対象となる政策や制度については子どもや若者の意見を聴くようにすべきだと思う」、「人生で難しい問題に直面しても、自分なりに積極的に解決していく」について、あてはまると回答(「よくあてはまる」と「ややあてはまる」の合計、以下同)した人は、6割を超える(図3-3-1)。

 一方で、あてはまると回答した人が最も少なかった項目は、「将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したい」の16%、次いで「少子化対策で現役世代の人が優遇されるのは不公平だと思う」、「世間一般の意見に合わせていないと心配になる」の17%だった。これら3つの項目に、あてはまらないと回答(「全くあてはまらない」「あまり当てはまらない」)した人は40%程度となり、あてはまると回答した人を大きく上回った。

 自分自身の身の回りのことで対応可能なことは積極的に取り組むものの、国や社会といったより大きな場での問題解決や政策決定への参加には消極的な傾向が見受けられる。

 またNIRA総研では、自らの生き方を主体的に選択肢、かつ、積極的に社会を支えるという自負と責任感を持った人々を「中核層」と定義している。本調査では、Q25の(1)、(2)について、両方とも「よくあてはまる」または「ややあてはまる」と答えた人を中核層とした(注3)。今回の調査では、中核層が20%を占めた(図3-3-2)。

Q26.次のことばはあなた自身にどのくらいあてはまると思いますか。それぞれもっとも適切なものに1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)活発で外向的だと思う
(2)他人に不満を持ち、もめごとを起こしやすいと思う
(3)しっかりしていて、自分に厳しいと思う
(4)心配性で、うろたえやすいと思う
(5)新しいことが好きで、変わった考えを持つと思う
(6)ひかえめで、おとなしいと思う
(7)人に気をつかう、やさしい人間だと思う
(8)だらしなく、うっかりしていると思う
(9)冷静で、気分が安定していると思う
(10)発想力に欠けた、平凡な人間だと思う

 本調査では心理学で用いられている「Big Five」とよばれるパーソナリティの理論に基づいて測定結果の比較を行った。Big Fiveはパーソナリティを外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性の5つの因子で構成したパーソナリティ理論である(Goldberg, 1990(注4)。外向性は質問の(1)と(6)、協調性は(2)と(7)、勤勉性は(3)と(8)、神経症傾向は(4)と(9)、開放性は(5)と(10)の回答から尺度を算出している。

 年齢階層別にみると、60歳以上の人々は神経症傾向が低く情緒が安定している(図3-3-3)。一方で、1839歳の人々は勤勉性が他の年代と比較すると若干低い。

Q27.次のような人は、あなたにどれくらい似ていますか。あてはまるものに、1つずつ○をつけてください。(○はそれぞれ1つずつ)

(1)親や年長者には常に敬意を払うべきで、素直であることが重要と考えている人
(2)信仰心を大切にしていて、その教えを懸命に実践しようとする人
(3)周りの人が心身共に満たされていることを願い、人助けをたいへん重視している人
(4)世界の全員が等しく扱われ、人生で平等な機会を持つべきだと考えている人
(5)何事にも関心を持ち、あらゆる物事を理解したいと思う人
(6)リスクを取るのが好きで、常に冒険をするチャンスを探している人
(7)喜びが感じられることを大切にし、あらゆる機会を捉えて楽しもうとする人
(8)大成功をおさめて、人々に感銘を与えたい人
(9)責任者になって、自分の言うとおりになるように指示したい人
(10)混乱を嫌い、物事がきれいに整っていることを重視する人

 本設問では、心理学や社会学で用いられるシュワルツ(Schwartz)の価値観理論でも、個人レベルの価値を探る10項目(調和、伝統、慈善、普遍主義、自主、刺激、享楽、達成、権勢、安全)(注5)について尋ねた。

 「自分がどのような人に似ているか」という質問に対して、自分に似ていると回答(「とても似ている」「似ている」と「まあまあ似ている」の合計、以下同)した人が多かった項目は、「親や年長者には常に敬意を払うべきで、素直であることが重要と考えている人(調和)」(59%)、次に「喜びが感じられることを大切にし、あらゆる機会を捉えて楽しもうとする人(享楽)」(52%)、「混乱を嫌い、物事がきれいに整っていることを重視する人(安全)」(51%)、「世界の全員が等しく扱われ、人生で平等な機会を持つべきだと考えている人(普遍主義)」(50%)だった(図3-3-4)

 また、「似ていない」「全く似ていない」と答えた人が最も多かった項目は、「責任者になって、自分の言うとおりになるように指示したい人(権勢)」(71%)、「リスクを取るのが好きで、常に冒険をするチャンスを探している人(刺激)」(67%)、「大成功をおさめて、人々に感銘を与えたい人(達成)」(63%)だった。

 喜びや周囲との調和、平等性を重視する人が多い一方、権力ある地位や新しい挑戦による刺激を求めたり、実行したことへの達成感を望んだりする人が少なかった。

Q28.あなたは、全体として見ると、現在の生活にどの程度満足していますか。(○は1つ)

 生活の満足度に関しては、「満足」と回答した人(「満足している」と「まあ満足している」の合計、以下同)の割合が59%で、全体的に満足度が高い傾向にあった(図3-3-5)。「不満」と回答した人(「不満だ」と「やや不満だ」の合計、以下同)は16%にとどまった。

 同様の質問を尋ねた内閣府「国民生活に関する世論調査」(注6)の結果では、現在の生活に「満足している」「まあ満足している」と回答した人の割合は49%、「不満だ」「やや不満だ」と回答した人は合わせて50.7%だった。

 両者の調査を比べると、満足度が高い人の割合は、NIRA基本調査と大きな違いはなかったが、不満と回答した人の割合では差が生じた。内閣府の調査では、「どちらともいえない」という選択肢を含めない4点尺度を使用しており、NIRA基本調査では、「どちらともいえない」を含む5点尺度を使っている。そのため、内閣府調査では「不満」と回答する人が、NIRA基本調査では、「不満」または「どちらともいえない」に回答が割れた可能性があると考えられる。

Q29.仮に現在の日本の社会全体を、以下の5つの層に分けるとすれば、あなた自身は、どれに入ると思いますか。(○は1つ)

(1)上
(2)中の上
(3)中の中
(4)中の下
(5)下

 人々の社会階層意識に関しては、「中の中」と回答した人が約半数(49%)を占め、「中の下」(29%)と合わせると80%程度となった(図3-3-6)。「上」と回答した人は昨年度のNIRA基本調査の結果と同様に1%と極めて少ない。一方、「下」と回答した人は6%となった。

 世帯年収別に社会階層意識の分布をみると、世帯年収が上がるにつれて上位の階層を選ぶ割合が大きくなる(図3-3-7)。また、1,000万円未満のどの世帯年収で見ても、「中の中」から「中の下」までのいずれかを選択する人が80%程度となり、国民全体としての総中流意識は維持されているといえる。

参考文献


小塩真司・阿部晋吾・カトローニ ピノ(2012)日本語版「Ten Item Personality InventoryTIPI-J)作成の試み」パーソナリティ研究, 21, 40-52.
内閣府「国民生活に関する世論調査」令和5年(202311月調査(2024426日アクセス).
中井遼(2022)「政治的左右と価値観の相関:欧州社会調査と世界価値観調査のシュワルツ価値理論設問を用いた国際比較」『北九州市立大学法政論集』第49巻第3・4合併号、57-94.
Goldberg, L. R. (1990). An alternative "description of personality": the big-five factor structure. Journal of personality and social psychology, 59(6), 1216.
Gosling, S. D., Rentfrow, P. J., & Swann Jr, W. B. (2003). A very brief measure of the Big-Five personality domains. Journal of Research in personality, 37(6), 504-528.
Sandy, C. J., Gosling, S. D., Schwartz, S. H., & Koelkebeck, T. (2016). The development and validation of brief and ultra-brief measures of values. Journal of Personality Assessment, 99(5): 545-555.

Ⅱ 調査概要

1.調査の趣旨・目的

 本調査は政治・経済・社会に関連する人々の意識を定点観測することを目的にしている。NIRA総研がオリジナルで設計した質問に加え、国勢調査や各種大規模社会調査と同様の質問も取り入れ、比較可能性の高い調査設計を目指している。

2.調査名

 第2回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)

3.主な調査項目

 ・基本的属性
 ・投票予定政党
 ・長期的党派性
 ・親しみを感じる国/親しみを感じない国
 ・組織などに対する信頼
 ・政治的有効性感覚・政治関心
 ・世帯の家計状況の変化日本の経済状況の変化(1年前と現在・現在と5~10年後)
 ・個人の将来の心配ごと、社会の将来の心配ごと
 ・デジタル化や技術革新の影響に関する認識
 ・生活時間
 ・メディア接触時間
 ・地域、ボランティア、副業に関する活動状況
 ・環境、募金などの活動
 ・社会・政策に対する考え方
 ・公共サービスへの費用負担
 ・理想の社会
 ・公的サービスに対する考え方
 ・公的サービスの水準
 ・公的サービスの満足度
 ・公的サービスの情報提供
 ・負担をしても充実させたい公的サービス
 ・公費支出の無駄に対する認識
 ・人々の社会認識
 ・パーソナリティ(big five、シュワルツの価値観)
 ・生活満足度
 ・社会階層意識

4.調査期間

 2024年119日(金)~202424日(日)

5.調査方法

 1)実施方法:層化2段抽出による訪問調査
 2)調査機関:一般社団法人 中央調査社
 3)調査対象者:18歳以上の日本人

6.回収数

 2,441(5,000人に訪問、回収率は48.8%

7.本報告書の集計方法

 集計結果の代表性を保つために、本速報では総務省「国勢調査(2020年)」を母集団とみなして、サンプリングバイアスを補正するために母集団ウエイトを作成した。具体的には、「国勢調査(2020年)」の18歳以上の日本人に限定した性別(男性、女性)、年齢階層(1839歳、4059歳、60歳以上の3階層)、都市規模(21大都市か否か)の分布をもとに、レイキング法によりウエイトを作成した。この速報の集計結果は、上述した母集団ウエイトを用いて集計したものである。

 下の表に、3つの属性の組み合わせごとに付されたウエイトを示している。補正前のデータでは、男性より女性が、若い世代より高齢世代が、21大都市居住者よりそうでない者の方が国勢調査での割合より多いというバイアスがあり、それを補正したものとなっている。

8.研究体制

谷口将紀  NIRA総研理事長/東京大学大学院法学政治学研究科教授
神田玲子  NIRA総研理事・研究調査部長
井上敦   NIRA総研主任研究員
関島梢恵  NIRA総研主任研究員
宇田川淑恵 NIRA総研研究コーディネーター・研究員
鈴木壮介  NIRA総研研究コーディネーター・研究員(当時)
鈴木日菜子 NIRA総研研究コーディネーター・研究員
竹中勇貴  NIRA総研研究コーディネーター・研究員
渡部春佳  NIRA総研研究コーディネーター・研究員(当時)

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)NIRA総合研究開発機構(2024)「第2回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)(速報)」

脚注
1 なお、総務省が2024年に公表した「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、2023年の実質消費支出の対前年同月増減率は2月を除き各月マイナスだった。
2 ※1「通常の1週間」とは、休暇や休日、祝日、病気などによって生活時間が大きく変わらなかった1週間のことを指す。※2「テレワーク」とはインターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。※3仕事・学業として行うものを除き、知識・教養を高めることや、仕事に役立てる(技術・資格取得を含む)ことなどを目的とした時間を回答いただいた。学生が授業・予習・復習として行うものや社会人の職場研修は除く。クラブ活動や部活動は含める。
3 NIRA総研が20213月に実施した「第3回中核層調査」では、同じ質問に対し、「強く/まあ/少しそう思う、どちらでもない、少し/おおよそ/全く違うと思う」の7点尺度で聞いており、両方の質問に「強く/まあ/少しそう思う」と答えた人を中核層としている。
4 本調査では、Big Five10項目の設問で測定するTen Item Personality InventoryTIPI)(Gosling et al., 2003)の日本語版であるTIPI-J(小塩ら, 2012)を用いた(各因子に対して2項目の設問からなる)。いずれの尺度も、各項目につき、7件法で回答を求めている。各因子のスコアは、Gosling et al.2003)に基づき、必要な項目について反転処理をしたうえで、各因子に対応する項目の回答結果を加算して、加算した項目数で割ることで算出した。いずれの因子も、値が大きいほど、その傾向が強くなることを意味している。
5 シュワルツの価値観理論を基に作成された個人の価値タイプを10項目で測定するTen Item Values Inventory(TIVI)(Sandy at al. 2016)を日本語に訳し、本調査に用いた。他に個人の価値タイプを20項目で測定するTwenty Item Values Inventory (TwIVI)がある。10項目の日本語訳は中井(2022)を参考とした。
6 内閣府「国民生活に関する世論調査」令和5年(2023年)11月調査。2024419日アクセス。

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