研究報告書 2012.03.01 東日本大震災復旧・復興インデックス(2012年3月更新)-データが語る被災3県の現状と課題- この記事は分で読めます シェア Tweet 総合研究開発機構 東日本大震災の被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。 早期に復旧、復興できるようお祈りします。 概要 多くの犠牲者を出した東日本大震災から1年が経過する。NIRAは、復旧・ 復興の状況の全体像を把握することを目的に定期的に公表してきた「東日本大震災復旧・復興インデックス」の改訂を行った。今回は、 同インデックスを用いて被災3県の状況を掘り下げて分析するとともに、災害時の危機管理体制としてのデータの収集・ 分析に関する提言を行った。 全文を読む Executive Summary (English) INDEX エグゼクティブサマリー第1章 復旧・復興インデックスでみた被災3県の状況 「東日本大震災復旧・復興インデックス」は、大震災で津波被害を受けた地域(被災3県・被災37市町村)の復旧・復興の状況及びその推移を把握するために、さまざまな指標を合成して作成した次の2本の「指数」から構成される。①被災地での生活を支えるインフラの総合的な復旧度を示す「生活基盤の復旧状況」指数、及び②被災した人々やその地域の生産・消費・流通などの状況を時系列で把握する「人々の活動状況」指数。いずれも、震災直前の状況を100とした指数である。●被災3県の「生活基盤の復旧状況」指数は、昨年8~9月頃を境に数値の改善が鈍化している。特に、岩手県、宮城県と比べ、福島県では原発事故の影響で低い水準にとどまっている。瓦礫撤去や保険金支払いを更に進め、被災者が自らの生活再建に向けた取組を図っていく上での制約とならないようにしていく必要がある。復興計画の実施や土地利用計画の策定を受けて動き出す、瓦礫処理、鉄道復旧、貸出金などは、数値が低く止まったままである。 ●被災3県の「人々の活動状況」指数は、宮城県では引き続き改善が続いたが、岩手県、福島県では昨秋以降、一進一退の状態となっている。消費活動は震災前の水準まで回復しているが、産業活動の回復は不十分である。震災前の水準まで鉱工業生産が回復せず、水揚量も回復が遅れている。また、政策効果から悪化が抑えられているものとしては、倒産件数、有効求職者数がある。これらは制度の適用がされなくなった段階で悪化に向かう可能性が高い。 図表2 「人々の活動状況」指数の推移 (注)報告書 図表1-3 ●市町村別にみた「生活基盤の復旧状況」指数は、前回公表時に比べ、総じて足踏み状態。市町村の復旧度は、鉄道復旧度、瓦礫撤去率、瓦礫処理率に左右される。復旧度が高い10の自治体をみると、①全体的に着実に回復(宮城県利府町・松島町)、②瓦礫処理が課題(宮城県仙台市・名取市・塩竈市・岩沼市、岩手県岩泉町・宮古市)、③鉄道復旧と瓦礫処理が課題(岩手県洋野町・久慈市)の3つに分類できる。第2章 各県の現状と課題岩手県●生活基盤の復旧テンポは鈍化。復興バブルはみられず、沿岸部の雇用はなお厳しい。●鉱工業生産は震災前比10%減程度、漁業はなお復旧途上。漁港の損壊状況や後継者問題から廃業を選択する者も。●今後は、求職者の増大に留意しつつ、中小企業者・漁業者等への「かゆいところに手の届く」ような支援が重要。あわせて、復興計画を着実に実施できるような行政面での人的支援も重要。 図表3 岩手県の水揚量は回復途上 (注)報告書 図表2-4 宮城県●公共工事を中心に復興需要が急増。雇用状況も改善。●沿岸部では、サプライチェーンの復旧が道半ば。農林水産業の復旧スピードは遅い。●民間の生産活動の復旧・復興を後押しし、地域の雇用確保につながるものから優先的に政策を実施する必要。また、行政職員不足への対処、協力が重要。 図表4 宮城県の鉱工業生産の回復は低調 (注)※報告書 図表2-6 福島県●津波・地震被害のほか、原発事故の影響が色濃く、生活基盤の復旧は遅い。●公共工事がけん引し、消費活動や雇用は堅調だが、伸びは弱く、今後の懸念要因も。●農林水産業、観光業は壊滅的影響。原発事故収束への取組に加え、新たな企業の参入等を促進する枠組みの活用が重要。 図表5 福島県の若年者の県外「避難」者が増加 (注)報告書 図表2-7 第3章 統計・データに基づく復旧・復興政策を 災害からの復興政策を効率的で効果的なものにするためには、統計やデータを政策立案の基礎に置いて役立てることが必要である。現在の統計システムは、災害時に対応しきれないため、事前に特別のルールをつくるべきである。例えば、災害時には地方自治体が国に統計やデータを提供して情報を共有する仕組みや、業務統計の積極的な活用などが考えられる。今後は、こうした統計やデータの収集に加え、その解釈や評価も重視すべきである。 目次はじめに第1章 東日本大震災復旧・復興インデックス第2章 各県の現状と課題 第3章 統計・データに基づく復旧・復興政策をおわりに参考資料1 東日本大震災復旧・復興インデックス 採用指標の一覧表資料2 「生活基盤の復旧状況」指数―グラフおよび数値― 資料3 「人々の活動状況」指数―グラフおよび数値―資料4 市町村別にみた「生活基盤の復旧状況」資料5 「人々の活動状況」指数に含まれる個別指標―グラフおよび数値― 資料6 9月8日公表分、12月20日公表分との指数の比較資料7 東日本大震災復旧・復興インデックスの加工方法について資料8 「人々の活動状況」指数 個別指標別バックデータ 図表図表1-1 「生活基盤の復旧状況」指数の動き(震災前=100)図表1-2 指数の各構成指標の状況(2012年1月及び2011年10月の比較)(震災前=100)図表1-3 「人々の活動状況」指数(新しい作成方法によるもの)図表1-4 「人々の活動状況」指数を構成する個別指標の状況参考図表1 転校者数と瓦礫処理率を除いて算出した「生活基盤の復旧状況」指数(震災前=100)参考図表2 震災前水準を上回った場合のデータ固定化処理を行わずに作成した「人々の活動状況」指数図表1-5 復旧が比較的着実に進む市町村図表2-1 公共工事が消費活動や雇用を下支え図表2-2 空路も陸路も増加図表2-3 鉱工業生産は震災要因による変動は小さくなる図表2-4 水揚量は回復途上図表2-5 公共工事が消費活動や雇用をけん引図表2-6 鉱工業生産の回復は低調図表2-7 若年者の県外「避難」者が増加図表2-8 公共工事と消費活動や雇用との関係図表2-9 福島県では近海漁業が再開できていない図表2-10 鉱工業生産は震災要因による変動は小さくなる 復旧・復興インデックス検討チームメンバー市村英彦 東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授/NIRA理事澤田康幸 東京大学大学院経済学研究科教授米岡大輔 東京大学大学院医学系研究科(国際保健)修士課程和川央 岩手県復興局産業再生課主査浜岡誠 岩手県復興局企画課企画専門員神田玲子 前NIRA研究調査部長斉藤徹史 NIRA研究調査部主任研究員江川暁夫 NIRA研究調査部主任研究員辻明子 NIRA研究調査部主任研究員森直子 NIRA研究調査部研究コーディネーター・主任研究員 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)総合研究開発機構(2012)「東日本大震災復旧・復興インデックス(2012年3月更新)-データが語る被災3県の現状と課題-」 シェア Tweet 関連公表物 東日本大震災復旧・復興インデックス(2013年7月更新)-データが語る被災3県の現状と課題Ⅳ- NIRA復旧・復興インデックス検討チーム 東日本大震災復旧・復興インデックス(2013年3月更新)-データが語る被災3県の現状と課題Ⅲ- NIRA復旧・復興インデックス検討チーム 東日本大震災復旧・復興インデックス(2012年6月更新)-データが語る被災3県の現状と課題Ⅱ- NIRA復旧・復興インデックス検討チーム ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ