本荘重弘
川西市企画財政部政策室長

概要

 兵庫県川西市においては、1992(平成4)年度から行政評価を試行・導入し、今日に至っている。この問、様々な紆余曲折を経てシステムの更新を図ってきたところであるが、一貫したポリシーは、「総合計画を基軸としたシステム化」であった。
 言うまでもなく、総合計画(基本構想)は、地方自治法の規定に基づく法定計画であり、議会意思の決定も要求されている。このことは、自治体におけるまちづくりについて、行政機関が独善的かつ野放図に行うことがないよう、一定の縛りを課したものとも解釈でき、それぞれの市町村固有の事情に応じて、地域における様々な統治主体が、共通のまちづくり理念に基づいて、協働して自治体を経営するという、言わば地方自治のありようが求められていると言えよう。
 自治体にとっては、正に、まちづくりのメルクマールとも位置づけられる総合計画であるが、一方で、自治体職員が、総合計画を日常的に意識しながら業務を遂行し、かつ、執行結果をしっかりと評価しているかということになるとかなり厳しい現実がある。本市においても、1992(平成4)年当時に行った総合計画の認知度調査では、散々な結果を目の当たりにしたところであり、このことが、行政評価に取り組む嚆矢となった。
 わが国自治体において、行政評価はこの10年の間に急速に導入され、定着した感があるが、一方で、行政経営に活用し切れていない、あるいは、内部評価にとどまっており、公表もしていないなど課題を抱えている自治体も多く存在している。様々な課題があろうが、その1つに、行政評価を行政内部の閉じたシステムとして取り扱われていることがあげられるのではないだろうか。
 本稿では、本市における評価の取組み経緯をご紹介するとともに、そもそも、総合計画の法定化はいかなる背景の下でなされたのか、また、自治体総合計画の現状はいかなるものなのかといった点を整理し、あるべき総合計画の姿を構想した。
 その結果、地域におけるより良きガバナンスを実現するためには、総合計画と行政評価を統合させた制度設計と活用が不可欠であるという確信を改めて持つに至った。
 本市においても、未だ悩みを抱えながら制度の改良を繰り返している途上であるが、今後とも、「総合計画を基軸としたシステム化」を基本に、市民・事業者・行政の協働とパートナーシップのまちづくりを具現化したい。

INDEX

目次

はじめに
第1章 川西市における取り組みの変遷
 1 導入の契機
 2 システムの変遷
第2章 我が国自治体の総合計画
 1 総合計画の変遷
第3章 総合計画と行政評価の展望
 1 望ましい総合計画の姿
 2 地域におけるガバナンスと総合計画・行政評価
おわりに

図表

図表1 施策体系別所属別総コスト一覧表
図表2 施策体系別所属別総コスト一覧表
図表3 施策別行政サービス成果表
図表4 事業別行政サービス成果表
図表5 新総合計画の体系と行政経営支援システムの各シートとの関係
図表6 川西市における行財政システム改革の変遷
図表7 川西市の行財政システム

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)本荘重弘(2008)「自治体のガバナンスと行政評価-川西市における行政評価の取組みを通じて」NIRAモノグラフシリーズNo.05

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