竹中勇貴
NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員

概要

 政府を信頼する人は、公共サービスのための税や社会保険料といった負担を受けいれやすいと言われることがある。しかし、そのような議論は、ロジックがあいまいで、抽象的な一般論のような形で提示されることも少なくない。本稿は、政府への信頼は無条件に負担の受容につながるわけではなく、政府への信頼と負担の受容の関係は高齢世代よりも現役世代において特に強いことを明らかにした。
 実際、2023年の「第1回NIRA基本調査」のデータを分析すると、特に介護や年金の分野で、政府への信頼と負担の受容の関係が現役世代において強く見られた。これらの分野では現役世代にとって給付を受けるのが遠い将来となり、受益の不確実性が高いといえる。それでも今すぐに負担するという意思決定をするためには、政府への信頼が必要となると考えられる。様々な政策が不確実な将来に向けて実施される今日、本稿の知見からは比較的若い世代における政府への信頼を高めることの重要性が示唆される。

INDEX

図表

図1 負担をしてもいいと答えた人の割合
図2 政府を信頼する人の割合
図3 政府への信頼と負担してもよいと答える確率の予測値
図4 政府への信頼と年齢の交互作用
図5 政府への信頼の限界効果の年齢による違い

1.政府への信頼は重要か?

 近年の福祉国家は厳しい財政状況の中で財源を調達して様々な公共サービスを実施するという難しい課題に直面しており、日本もその例外ではない。日本は、他の国と比べると福祉の充実度のわりに国民の負担が小さい一方で、負担に対する人々の抵抗感はとりわけ強い国であると言われる(佐藤・古市 2014;持田 2019(注1)。人々が負担を嫌う以上、世論の支持を求める政治家は人々の負担増を避け、国債発行などによって負担を先送りしようとすることになる。どうすれば人々が負担を受容するようになるかを明らかにする必要性は大きい(安中・鈴木・加藤 2022;高端ほか 2023)。

 人々が負担を受容するようになるための方策の1つとして、政府への信頼を高めることが挙げられている(久米ほか 2018;林・伊多波・八木 2015)。日本で政府を信頼する人の割合はOECDの平均よりも低く、政府への信頼は重要な研究テーマの1つとなっている(善教 2013;総務省大臣官房企画課 2006-2010;田中・岡田 2006)。海外の研究でも、政府への信頼を高めることによって、再分配への支持が高まることをはじめ(Macdonald 2021;Peyton 2020)、様々な形で政府に対する人々の意識に影響することが明らかにされてきた(レビューとしてDevine 2024)。

 しかし、政府への信頼に意味があるかを一概に論じることは難しい。政府への信頼については、それがどのようにして人々の意識に影響を与えるのかというロジックもあいまいなまま、とにかくポジティブな意義があるのだと、抽象的な一般論のような形で語られることも少なくない。

 それに対して本稿は、政府への信頼という概念を詳しく検討することを通じて、政府への信頼と負担の受容の関係の強さは年齢によって異なる可能性を検討する。年金や子育て支援を思い浮かべれば明らかなように、公共サービスへの負担をめぐっては世代によって利害関係が異なり、意識が大きく分断されていることが指摘されている(井手・古市・宮﨑 2016;Vallee-Dubois 2023)。政府への信頼もまた、この世代という分断を踏まえて議論する必要があるのではないか。

 以下、第2節では政府への信頼という概念の定義を論じるとともに、本稿で取り上げる公共サービスの種類ごとに、政府への信頼と年齢の関係を仮説的に論じる。第3節では、分析で使う「第1回NIRA基本調査」の概要を説明する。第4・5節では、データを実際に分析してその結果を考察し、最後の第6節で結論を述べる。

2.政府への信頼が負担の受容につながるロジック

(1)受益の不確実性と政府への信頼

 政府への信頼は、どのようなロジックで負担の受容につながるのであろうか。それを考えるためには、まず政府への信頼とは何かを明確にする必要がある。政府への信頼という概念の定義は様々であるが、本稿では政府への信頼を受益と負担をめぐる人々の損得勘定と結びつけて理解する(Rudolph 2017)(注2)。これは、近年の政府への信頼についての研究では国際的に盛んになっているアプローチである。

 政府に限らず一般的な信頼の定義の1つに、以下のようなものがある。相手と自分の利益が一致するとは限らない中で(注3)、相手が自分の利益に沿うように行動することへの期待である(山岸 1998)。この定義は人と人の関係のみならず、政府と人々の関係にも応用することができるであろう。つまり、政府への信頼は、人々にとって政府が自分たちの利益に沿った形で行動することへの期待として理解できる。

 この定義のポイントは、政府への信頼は政府が自分の期待するように動くか分からないという不確実性がある状況の下で、初めて重要になるということである(Rudolph 2017)。不確実性があるからこそ、政府を信頼する人は政府が自分の期待に沿うことを前提に意思決定をするが、政府を信頼しない人はそういったことを前提にしないという形で、意識に違いが現れるようになる。逆に、政府が人々の期待するように動くことが全くありえない場合、あるいは確実である場合、政府を信頼していてもしていなくても、人々の意思決定に大きな違いは出ないと考えられる。

 本稿のテーマである公共サービスへの負担という文脈で、政府への信頼の影響を具体的に考えてみよう。公共サービスのために税や社会保険料を負担することは、人々にとってコストである。それでも負担を受容するとすれば、その大きな理由は負担の見返りとして公共サービスから何らかの恩恵を受けることを期待しているからであろう。

 ただし、公共サービスの種類によっては、恩恵がもたらされるとしても今すぐではなく遠い未来になることもある。将来的に恩恵があるので今すぐに負担をしてほしいと政府が言っていても、政府が今後ずっとその約束を守ろうと努める保証はどこにもない(Jacobs 2011Jacobs and Matthews 2012)。年金でいえば、35歳の人が今の保険料を負担しても、その後30年の間に政府の年金政策が変わって給付水準を下げられてしまう可能性は十分にある。つまり、人々にとっての受益の不確実性にはバリエーションがあり、恩恵を受けるのが遠い将来になるほど、不確実性は大きくなるといえる。

 この受益の不確実性は、政府への信頼が負担の受容につながるか否かに影響するであろう。受益にある程度の不確実性がある状況では、政府を信頼する人ほど、不確実な中でも政府が自身に恩恵をもたらすことを期待し、今すぐに負担をするという意思決定をしやすくなると考えられる。恩恵を必ず受けられる、あるいは受けられないという状況では、政府への信頼は負担の受容とそれほど関係しないであろう。人々にとって将来的に政府がどう動くかを正確に予測することは非常に難しいが、政府への信頼をいわば不確実性の中での認知のショートカットとして使うということであり、「ヒューリスティックとしての信頼論(trust-as-heuristic thesis)」(Rudolph 2017)と呼ばれる考え方である。

(2)公共サービスごとの受益の不確実性の違い

 人々が受益の不確実性をどの程度大きいと考えるかは、公共サービスの特性、そして世代によって大きく異なるであろう。本稿では公共サービスとして医療、介護、年金、子育て支援、学校教育、生活支援の6つに注目する。それぞれの公共サービスについて、現役世代と高齢世代という世代による意識の違いに注目しながら政府への信頼と負担の関係を仮説的に論じる(注4)

現役世代が負担して高齢世代が給付を受ける医療、介護、年金

 まず、医療、介護、年金である。これらは一部を国庫負担によりながらも社会保険型の構造を基本としている。あらかじめ負担をしておくことで、リスクに直面したときに給付を受けることができる。介護や年金は、基本的に高齢になってからのリスクに備えるものである。医療もある程度は同じような側面があるが、介護や年金より若い世代にも需要がある(岩田 2017)。

 現役世代にとっては、自分が高齢になってこれらのサービスを必要とするときには制度が変わっており、今の時点で想定しているような給付を受けられないかもしれない。本当に自分が給付を得られるのかという意味で不確実性がある。給付を受けるとしたら今すぐになる高齢者とは、不確実性についての認識が異なるであろう。よって、現役世代において特に、負担という意思決定をするために政府への信頼が重要になると考えられる。

効果が現れるのに時間がかかる子育て支援・学校教育

 次に、子育て支援と学校教育である。近年、これらは少子化政策(西岡 2021)、そして未来に向けた「社会への投資」として実施されることが一般的になっている(三浦 2018)。その効果は非常に長い時間をかけて現れるであろう。今すぐに負担をしたところで、政策が本当に将来成功するかは不確実である。

 ただし、高齢世代にとっては仮に将来的に政策が成功しても、そもそもその恩恵を生きて受ける余地が必ずしも大きくない(Garritzmann, Neimanns, and Busemeyer 2023)。恩恵を受ける可能性が低いのであれば、高齢者としては政府への信頼が高くても負担しようとは考えにくい。こう考えれば、子育て支援や学校教育でも、政府への信頼と負担の受容の関係が相対的に強いのは現役世代の方であろう。

 もちろん、子育て支援や学校教育の恩恵としては、長期的なものだけではなく、児童手当の給付や産休・育休の充実のように短期的なものもある(翁 2023)。その恩恵は現役世代、特に子育てをしている人にもたらされるだろう。ただし、こういった恩恵はかなり近いうちに得られることが期待され、確実性が高い。確実性が高いのであれば、政府を信頼しているかいないかが、負担という意思決定に影響するとは限らない。よって、もし子育て支援や学校教育の意義がこのような短期的な給付のみであると人々に認識されているのであれば、政府への信頼と負担の受容はあまり関係しないかもしれない。

給付と負担の分断が大きい生活支援

 最後に、失業給付や生活保護といった生活支援の政策である。これらの政策の特徴は負担する人とその恩恵を受ける人の意識が大きく分断されていることである(青木 2010;岩田 2021)。負担をしても恩恵を受けるのは基本的に自分ではなく、社会的に大きく離れたところにいる別の誰かである。生活保護バッシングやスティグマの問題はこの分断を象徴しているといえよう。負担する人は、自らが受益者となる可能性があると考えながら負担をするわけではないと考えられる。

 よって、生活支援については世代に関係なく政府への信頼は負担の受容につながりにくいと考えられる。実際、生活支援への負担につながる意識としては、政府への信頼というよりは自己責任論や救済に値するかといった社会的な価値観が注目を集めている(阿部ほか 2019;山田・阿部 2022)。

3.分析の方法

 前節での議論の妥当性を検証するために、2023年にNIRA総合研究開発機構が実施した「第1回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)」のデータを分析する(注5)。この調査では政府への信頼や公共サービスごとの支払い意思をはじめ、政治、経済、社会の意識を幅広く尋ねている。回収数は2,000であり、そのうちトラップ質問をクリアした有効回答は1,805であった(注6)

 政府への信頼についての質問では、「あなたは、次にあげる日本の組織などをどの程度信頼しますか」という文で、項目の1つとして「政府」を挙げている。選択肢は「非常に信頼する」、「やや信頼する」、「あまり信頼しない」、「全く信頼しない」の4つである。

 もっとも、政府への信頼を尋ねる方法はこれに限らず様々である(善教 2013)。本調査の質問文は、世界価値観調査(World Value Survey)や日本版総合社会調査、JES(Japanese Electoral Studies)など近年の多くの大規模調査に準拠している。補遺Aでは、本調査の質問文から得られた政府への信頼についての回答が、前節で定義した政府への信頼の概念とどの程度整合的かを分析している。

 負担の受容については「以下の公的給付や公共サービスについて、その水準や質を上げるために追加の税金や社会保険料を自ら支払ってもよいと思うものをお選びください」という質問で、様々な公共サービスを挙げている(Q32)。回答はそれぞれの公共サービスについて選んだか否かの2つである。この質問文では、単に負担するかどうかではなく、「水準や質を上げるため」という条件が付いていることに注意されたい。また、この質問では複数の公共サービスを同時に選ぶことを可としている。子育て支援の財源を調達するために年金給付を削減するといったような、トレードオフの選択ではない。

4.負担の受容・政府への信頼と年齢の関係

(1)公共サービスへの負担の受容と年齢の関係

 本稿の関心は政府への信頼と負担の受容の関係が年齢ごとにどのように異なるかという点にある。そこで、まず公共サービスへの負担についての意識が年齢によってどのように異なるかを確認する。回答者を20代以下(18~29歳)、30代、40代、50代、60代、70代以上の6つに分け、それぞれの年齢階級の人数の合計を100%として、負担してもよいと答えた人の割合を図1に示した。

 医療では、負担してもよいという人がすべての世代で30%から40%ほど存在している。他の公共サービスと比べても割合が全体的に高く、若い世代から高齢世代まで幅広く負担が受容されていることが分かる(注7)

 介護に負担してもよい答えた人の割合は、世代によって大きく異なる。20代では10%台であるが年齢とともに増えていき、60代では25%を超える。70代になると少し下がるため単純増加とはいえないが、全体としては高齢世代の方が負担をしてもよいと答える人が多い傾向にある。また、30代と40代の間で約6%ポイントとやや大きな変化があり、40代になると介護保険料の納付が始める影響もあるかもしれない。

 年金でも介護と似たような傾向が見られた。負担してもいいと答えた人の割合は、20代以下では10%台だがそこから増えていき、50代では30%を超える。60代以上になると一転して少なくなっていく。60代になると年金の給付が始まることから、負担をするのではなく給付をされる側に回ったという意識に変わるのであろう。ただし、60代以上でも負担していいと答えている人が20%以上いることは注目に値する。

 子育て支援と学校教育は、負担してもよいという人が若い世代に多く、介護や年金とは対照的な結果になった。子育て支援に負担してもよいと答えた人の割合は20代以下と30代で30%を超える一方で、それより上の世代では20%前後であり、大きな差がある。学校教育も、水準は全体的に子育て支援より低いが同じような傾向になっている。子育て世帯が20代と30代に集中していることによる結果であろう(注8)

 生活支援に負担してもよいと答えた人の割合は、全体的にかなり低い水準となった。50代だけ他の世代より多いがそれでも16.7%であり、それ以外の世代は10%前後である。生活支援については、世代に関係なく受益感が小さいことが影響していると考えられる。

 すべての公共サービスに共通して、人々は自分に必要な公共サービスには負担しようとするが、そうでなければ負担をしようとしない傾向が見られた。裏を返せば、自分に受益がなくとも必要な他者のために負担するという意識はあまり見られなかった。人々が合理的に自己利益を追求しようとした結果であろう。その是非はともかく、本稿での政府への信頼の定義は人々が受益や負担を損得勘定で考えることを前提にしているが、その前提が確認されたといえる。

(2)政府への信頼と年齢の関係

 次に、政府への信頼と年齢の関係を明らかにするため、年齢階級ごとに政府を信頼する人としない人の割合を図2に示した。ここでは政府を「全く信頼しない」と「あまり信頼しない」という回答を「政府を信頼しない」とまとめ、「やや信頼する」と「非常に信頼する」を「政府を信頼する」とまとめて、4段階の回答を2段階にしている。

 政府を信頼する割合は世代によってかなり異なることが分かる。全体としては政府を信頼する人は現役世代より高齢世代の方が多いが、例外として20代以下では高齢世代並みに多くなっている(注9)。政府を信頼する人の割合は20代以下では30%台半ばであるが、30代に入ると10%ポイント以上減る。そこから50代にかけて約40%にまで増え、それ以降は同じ水準が維持されている。同じような傾向の国は他にもあり、20代以下の若い世代で政府への信頼が特に高くなっている理由としては、公教育の記憶が新しいことなどが指摘されている(OECD 2019)。

5.政府への信頼と負担の受容の関係

(1)年齢を統制した回帰分析

 ここまでの結果を踏まえて、政府への信頼と負担の受容の関係を分析する(注10)。政府への信頼と負担の受容は他の様々な要因に影響されると考えられるので、それらを統制した重回帰分析をした(注11)。例えば、この分析では子どもの有無という要因を統制しており、それによって子どもがいる人にもいない人にも共通するような、政府への信頼と負担の受容の関係を取りだすことができる。推定方法は線形回帰である。

 独立変数は政府への信頼で、0(全く信頼しない)から3(非常に信頼する)で4段階のカテゴリカル変数である。従属変数は、それぞれの公共サービスについて負担してもよいと答えたら1、そうでなければ0となる二値の変数である。公共サービスの種類ごとに別々のモデルを推定した。

 推定された回帰式から、政府への信頼の値ごとに公共サービスに負担すると答える確率の予測値を算出した(図3)。この予測値は、回帰式の統制変数の項にそれぞれの変数の平均値を代入し、政府への信頼の項に0(全く信頼しない)から3(非常に信頼する)までをそれぞれ代入して得られた値である。統制変数に含まれる年齢や学歴などすべての属性を回答者全体の平均的な水準に保ったまま、政府への信頼の高さだけを変えた結果を示したものであるといえる。図3では線が大きく右上がりに傾いているほど、政府への信頼の高まりが負担の受容につながりやすいと解釈できる。この線の傾きは回帰モデルにおける政府への信頼の係数と一致する。

図3 政府への信頼と負担してもよいと答える確率の予測値

(注)エラーバーは95%信頼区間である。

 図3を見ると、政府への信頼と負担の受容の関係は、すべての公共サービスにおいて正であるかほとんど0かであった。少なくとも、政府を信頼しない人の方が負担を受容しやすくなるという、正負が逆の関係にはなっていないことが確認できた。ただし、政府への信頼と負担の受容の関係は公共サービスによって少しずつ異なる。政府を「全く信頼しない」人と「非常に信頼する」人で負担すると答える確率の差を見ると、医療では10%ポイント強、介護、医療、子育て支援では10%ポイント弱、学校教育では5%ポイント程度である。生活支援ではほとんど差がなかった(注12)

(2)政府への信頼と年齢の交互作用

 政府への信頼と負担の受容の関係の強さが年齢によってどのように異なるかという、本稿の中心となる分析をした。回答者が60歳以上であれば1、そうでなければ0となる「60歳以上ダミー」を作り、政府への信頼との交互作用項を入れて線形回帰分析をしている(注13)。独立変数と従属変数は先の図3の分析と同じである。統制変数については、こちらの分析では60歳以上ダミーを入れているので、1歳刻みの年齢の値を統制していない点だけ異なる。

 推定された回帰式から、負担してもよいと答える確率の予測値を60歳以上ダミーが0の場合と1の場合に分けて示したのが図4である(注14)。この予測値は図3と同じように統制変数をすべて平均に保ったまま、政府への信頼の値だけを変えて計算したものである。

図4 政府への信頼と年齢の交互作用

(注)エラーバーは95%信頼区間である。

 60歳未満と60歳以上それぞれの場合での傾きの大きさを数値で比べられるようにしたのが図5である。図5では、政府への信頼が1段階上がることによって負担を受容する確率がどの程度増えるかという推定値を、「60歳以上ダミー」が0の場合と1の場合に分けて示している。この推定値が大きいほど、図4における線の傾きが大きい、つまり政府への信頼と負担の受容が強く結びついているという関係にある。図4と図5は同じ分析の結果を別の方法で示したものである。

図5 政府への信頼の限界効果の年齢による違い

(注)エラーバーは95%信頼区間である。

 図4から、まず医療では60歳未満でも60歳以上でも政府への信頼と負担の受容には右上がりの関係が見られる。60歳以上の場合の方が少しだけ傾きは大きいが、政府への信頼と負担の受容の関係は、60歳未満か以上かを問わず強いといえる。

 介護と年金では、60歳未満と60歳以上で傾向が大きく異なっている。60歳未満の場合、政府を「全く信頼しない」人と「非常に信頼する」人では負担してもよいと答える確率に15%ポイントほどの違いがある。しかし、60歳以上の場合、違いはほとんど0である。60歳未満の場合、「全く信頼しない」人が介護に負担する確率は60歳以上の人よりかなり低いが、「非常に信頼する」ようになると確率は60歳以上の場合と同じくらいまで高まる。年金では、60歳未満の場合、「非常に信頼する」人は負担すると答える確率がむしろ60歳以上の場合を上回るという、興味深い推定結果になっている。

 子育て支援と学校教育においても、60歳未満か以上かで若干ではあるが違いがあった(注15)。特に子育て支援では、60歳未満の方が少しだけ政府への信頼と負担の関係が強くなっており、60歳以上では関係はほとんど0である(注16)。これは介護や年金に同じような結果である。他方で、学校教育では逆に60歳以上の人の方がわずかに右上がりになっている。しかし、学校教育については図5の方を見ると60歳未満でも60歳以上でも推定値は5%水準で有意になっていない。年齢に関係なく政府への信頼と負担の受容の関係はそれほど強くないと解釈するのが妥当であろう。

 生活支援では、60歳未満と60歳以上で分けても政府への信頼と負担の受容はほとんど関係していない。確かに、図4では60歳未満の方が少し右上がりになっているように見えるが、図5を見ると60歳未満でも60歳以上でも政府への信頼と負担の受容の関係は5%水準で有意になってはいない。

(3)考察

 ここまでの分析結果を、第2節で論じた受益の不確実性と政府への信頼の関係についての議論と組み合わせて考察する。

 最も興味深い結果は、介護や年金への負担について、政府への信頼との関係が現役世代において特に強かったことである。介護や年金では、現役世代にとって今すぐに負担をしても恩恵を受けるのは将来高齢になってからであり、負担に見合うような恩恵を受けられるか不確実であるといえる。その中でも負担をするという意思決定をするためには、政府への信頼が重要になっていると考えられる(注17)

 同じことは医療にも当てはまるが、医療では現役世代のみならず高齢世代でも政府への信頼が負担の受容と強く関係していた。医療サービスについては、高齢世代にとっても高齢になったら当然に給付が必要とされるものではなく、いつ必要となるか分からない不確実性のあるものとして認識されている可能性がある。

 子育て支援と学校教育の結果は、解釈がやや難しい。これらの政策は社会的投資の1つとして、長期的で不確実な効果があることが指摘されている。よって、現役世代にとっては特に政府への信頼が重要になりそうであるとも考えられる(Garritzmann, Neimanns, and Busemeyer 2023)。そのような傾向は、子育て支援の方では見られたが学校教育の方ではほとんど見られなかった。論者が指摘するように子育て支援や学校教育が長期的な恩恵をもたらしうるとしても、人々からすれば児童手当など短期的で確実な給付をもたらす政策であるという認識の方が強いのかもしれない。

 生活支援では、どの世代でも政府への信頼と負担の受容がほとんど関係しなかったが、この結果もまた重要である。生活支援のように負担する人々に受益感がない場合、政府への信頼が高くてもそれが負担につながらないことを示唆するからである。政府への信頼は、自分に恩恵がなくとも、必要とする人に政府がきちんと恩恵をもたらすことへの期待という意味で使われることもある。しかし、今回の分析ではそのような意識は見られなかった。本稿の分析結果からは、政府への信頼を考える際に重要なのは、他者ではなくあくまで自分にとっての恩恵であるといえる。

 近年、受益者と負担者の分断を避け、すべての人々に受益感を持たせるという構想が盛んに論じられている(井手・古市・宮﨑 2016)。負担をする際にそれが最終的には自分にとっても受益になるという感覚を持つことは、政府への信頼を負担の受容につなげていくための前提条件として意義があるかもしれない。もちろん、本稿の生活支援についての分析結果のみから論じることには限界があるが、証拠の1つであるとはいえるであろう。

6.結論

 本稿は、政府への信頼の高まりが公共サービスへの負担の受容につながるという議論の妥当性を再考した。具体的には、政府への信頼と負担の受容の関係の強さが年齢によって異なる可能性に注目し、医療、介護、年金、子育て支援、学校教育、生活支援という6つの公共サービスについて、政府への信頼と負担の受容の関係の強さを分析した。データとして2023年にNIRA総合研究開発機構が実施した「第1回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)」の結果を使った。

 本稿の最も重要な知見は、政府への信頼の高まりが負担の受容につながるという関係は高齢世代よりも現役世代において強いということである。特に興味深かったのは、介護と年金についての分析結果である。回答者が60歳未満の場合、政府を「全く信頼しない」人と「非常に信頼する」人では、負担すると答える確率が15%ポイントほど異なったのに対し、60歳以上の場合、政府への信頼の強さによる確率の差はほとんど0であった。

 その背景として、現役世代と高齢世代で受益の不確実性についての認識の違いがあると考えた。介護や年金の分野では、現役世代にとっては今負担をしても給付を受けられるのは遠い将来である。将来の政府が本当に負担に見合う給付をするのか、大きな不確実性があるといえる。この不確実性の中でも今すぐに負担するという意思決定をするためには、政府への信頼が強く必要とされると考えられる。

 本稿のように政府への信頼を年齢という観点から分析することは、政府への信頼についての新たな課題を明らかにすることにつながるだろう。例えば、本稿では政府への信頼は現役世代より高齢世代の方が高い傾向にあることも示した。よって、政府への信頼が重要となるはずの比較的若い世代において、政府への信頼が低く負担の受容が進まないという構造的なジレンマが存在している可能性がある。本稿の知見からは、特に若い世代にとっての政府への信頼が重要であることが示唆される。

 様々な政策が長い時間をかけて経済的、あるいは社会的なリターンを生む「投資」として位置づけられる今日(三浦 2018)、政府への信頼をめぐるロジックをさらに詳しく考える意義は大きい。本稿は主に社会政策を対象にしたが、外国では政策の効果が長期に及ぶ環境政策や、負担と恩恵が大きく分断される移民政策などでも政府への信頼との関係を分析した研究が多くある(Devine 2024)。様々な政策を対象に検討する余地があろう。

 最後に、本稿の議論が日本以外にも応用できるかは今後の課題の1つである。本稿は日本の社会保障制度を念頭に、日本人を対象にした調査のデータを分析した。しかし、政府への信頼に関する世代間の意識の違いについての議論は、日本に限らず一般的に適用できる可能性がある。他の国よりも高齢化が早く進んでいる現在の日本を分析した本稿は、今後他の国で高齢化がより進んだ際に、有益な知見を提供することにもつながるかもしれない(Kweon and Choi 2022Lipscy 2023Umeda 2022)。

参考文献


青木紀(2010)『現代日本の貧困観:「見えない貧困」を可視化する』明石書店.
阿部彩・東悠介・梶原豪人・石井東太・谷川文菜・松村智史(2019)「生活保護の厳格化を支持するのは誰か:一般市民の意識調査を用いた実証分析」『社会政策』11(2): 145-158.
安中進・鈴木淳平・加藤言人(2022)「福祉国家に対する態度決定要因としての普遍的社会保障と逆進課税:消費増税に関するサーヴェイ実験」『年報政治学』73(1): 212-235.
井手栄策・古市将人・宮﨑雅人(2016)『分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略』筑摩書房.
岩田正美(2017)「社会保障制度の受益者と負担者という分断:特に世代対立をめぐって」『学術の動向』22(10): 67-71.
――(2021)『生活保護解体論:セーフティネットを編みなおす』岩波書店.
翁百合(2023)「子育て世帯の負担と給付の公正性は確保されているか:被雇用者世帯の所得と負担率の国際比較分析」NIRAオピニオンペーパーNo.65
久米功一・鶴光太郎・佐野晋平・安井健悟(2018)「社会保障の給付負担に対する選択を決定する要因は何か:個人の意識の役割」『行動経済学』11: 54-74。
佐藤滋古市将人(2014)『租税抵抗の財政学信頼と合意に基づく社会へ』岩波書店.
善教将大(2013)『日本における政治への信頼と不信』木鐸社.
総務省大臣官房企画課(2006-2010)『行政の信頼性確保、向上方策に関する調査研究報告書(平成17-21年度)』総務省.
高端正幸・近藤康史・佐藤滋・西岡晋編(2023)『揺らぐ中間層と福祉国家:支持調達の財政と政治』ナカニシヤ出版.
田中一昭・岡田彰(2006)『信頼のガバナンス:国民の信頼はどうすれば獲得できるのか』ぎょうせい.
西岡晋(2021)『日本型福祉国家再編の言説政治と官僚制:家族政策の「少子化対策」化』ナカニシヤ出版.
林智子・伊多波良雄・八木匡(2015)「税負担と行政サービス意識に関する経済分析」『会計検査研究』51: 11-31.
三浦まり編(2018)『社会への投資:〈個人〉を支える〈つながり〉を築く』岩波書店.
山岸俊男(1998)『信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム』東京大学出版会。
持田信樹(2019)『日本の財政と社会保障:給付と負担の将来ビジョン』東洋経済新報社.
山田壮志郎・阿部彩(2022)「コロナ禍と「援助に値する」貧困:一般市民を対象にしたビネット調査を用いた分析」『大原社会問題研究所雑誌』766: 2-15.
Beiser-McGrath, Janina, and Liam F. Beiser-McGrath. 2023. “The Consequences of Model Misspecification for the Estimation of Nonlinear Interaction Effects.” Political Analysis 31(2): 278-287.
Devine, Daniel. 2024. “Does Political Trust Matter?: A Meta‑analysis on the Consequences of Trust.” Political Behavior.
Garritzmann, Julian L., Erik Neimanns, and Marius R. Busemeyer. 2023. “Public Opinion towards Welfare State Reform: The Role of Political Trust and Government Satisfaction.” European Journal of Political Research 62(1): 197-220.
Hainmueller, Jens, Jonathan Mummolo, and Yiqing Xu. 2019. “How Much Should We Trust Estimates from Multiplicative Interaction Models?: Simple Tools to Improve Empirical Practice.” Political Analysis 27(2): 163-192.
Jacobs, Alan M. 2011. Governing for the Long Term: Democracy and the Politics of Public Investment. Cambridge University Press.
Jacobs, Alan M., and J. Scott Matthews. 2012. “Why Do Citizens Discount the Future?: Public Opinion and the Timing of Policy Consequences.” British Journal of Political Science 42(4): 903-935.
Kweon, Yesola, and ByeongHwa Choi. 2022. “Deservingness Heuristics and Policy Attitudes toward the Elderly in an Aging Society: Evidence from Japan.” Political Research Quarterly 75(3): 591-606.
Lipscy, Phillip Y. 2023. “Japan: The Harbinger State.” Japanese Journal of Political Science 24(1): 80-97.
Macdonald, David. 2021. “Trust in Government and the American Public’s Responsiveness to Rising Inequality.” Political Research Quarterly 73(4): 790-804.
OECD. 2019. Government at a Glance 2019. OECD Publishing.
Peyton, Kyle. 2020. “Does Trust in Government Increase Support for Redistribution?: Evidence from Randomized Survey Experiments.” American Political Science Review 114(2): 596-602.
Rudolph, Thomas J. 2017. “Political Trust as a Heuristic.” In Sonja Zmerli and Tom W.G. van der Meer, eds. Handbook on Political Trust. Edward Elgar Publishing, 197-211.
Umeda, Michio. 2022. “The Politics of Aging: Age Difference in Welfare Issue Salience in Japan 1972-2016.” Political Behavior 44: 575-597.
Vallee-Dubois, Florence. 2023. “Government Spending Preferences over the Life Cycle.” Journal of Public Policy 43(3): 468-489.

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)竹中勇貴(2024)「受益と負担をめぐる世代間の分断と政府への信頼」NIRAワーキングペーパーNo.7

脚注
1 厚生労働省の「2019年社会保障に関する意識調査」によれば、税と社会保険料の負担水準について約50%が「生活にはあまり影響しないが負担感がある」、約40%が「生活が苦しくなるほど重い」と答えている。 1 厚生労働省の「2019年社会保障に関する意識調査」によれば、税と社会保険料の負担水準について約50%が「生活にはあまり影響しないが負担感がある」、約40%が「生活が苦しくなるほど重い」と答えている。
2 政府への信頼を定義する別のアプローチとして、善教(2013)は広く民主主義という体制への信頼に注目している。この意味での政府への信頼は、人々の損得勘定のような打算的なものというよりは、心に深く存在する倫理的なものである。 2 政府への信頼を定義する別のアプローチとして、善教(2013)は広く民主主義という体制への信頼に注目している。この意味での政府への信頼は、人々の損得勘定のような打算的なものというよりは、心に深く存在する倫理的なものである。
3 山岸(1998)は、相手と自分の利益が最初から一致している場合は「信頼」ではなく「安心」であるとしている。 3 山岸(1998)は、相手と自分の利益が最初から一致している場合は「信頼」ではなく「安心」であるとしている。
4 本稿のように公共サービスごとに分けるやり方にはデメリットもある。例えば、若い頃に子育て支援から恩恵を得たので、その分高齢者になってから現役世代のための負担に寛容になる可能性などを捉えきれない。 4 本稿のように公共サービスごとに分けるやり方にはデメリットもある。例えば、若い頃に子育て支援から恩恵を得たので、その分高齢者になってから現役世代のための負担に寛容になる可能性などを捉えきれない。
5 楽天インサイト株式会社に委託し、2023年3月16日から3月20日にかけて実施された。 5 楽天インサイト株式会社に委託し、2023年3月16日から3月20日にかけて実施された。
6 トラップ質問としては「この項目には、「4.どちらかと言えばそう思わない」を選択してください」という質問を置いている。 6 トラップ質問としては「この項目には、「4.どちらかと言えばそう思わない」を選択してください」という質問を置いている。
7 健康保険組合連合会の「医療・介護に関する国民意識調査」(2023年3月)でも、医療のために高齢世代の負担増がやむを得ないと答えた人は60代や70代でも4割程度存在している。(2024年4月24日アクセス)。 7 健康保険組合連合会の「医療・介護に関する国民意識調査」(2023年3月)でも、医療のために高齢世代の負担増がやむを得ないと答えた人は60代や70代でも4割程度存在している。(2024年4月24日アクセス)。
8 本調査では孫の有無は尋ねていないので、同じ高齢世代でも孫の有無によって子育て支援や学校教育への意識は異なる可能性がある。 8 本調査では孫の有無は尋ねていないので、同じ高齢世代でも孫の有無によって子育て支援や学校教育への意識は異なる可能性がある。
9 政府への信頼と年齢の関係は加齢の効果だけで説明できるとは限らない。例えば、現在の20代以下が政府を強く信頼するような経験を共有しているという、世代効果の可能性もある(善教 2013)。 9 政府への信頼と年齢の関係は加齢の効果だけで説明できるとは限らない。例えば、現在の20代以下が政府を強く信頼するような経験を共有しているという、世代効果の可能性もある(善教 2013)。
10 この部分の分析は、筆者がすでにNIRA総合研究開発機構ウェブサイトで「研究員インサイト」として公表した「政府への信頼、国会への信頼、一般的信頼と公共サービスへの負担の関係」と部分的に重複している。(2024年4月24日アクセス)。 10 この部分の分析は、筆者がすでにNIRA総合研究開発機構ウェブサイトで「研究員インサイト」として公表した「政府への信頼、国会への信頼、一般的信頼と公共サービスへの負担の関係」と部分的に重複している。(2024年4月24日アクセス)。
11 統制している変数は、年齢(1歳刻み)、性別、最終学歴(中学校、高校、短大・高専、大学、大学院(修士課程)、大学院(博士課程))、職の有無、配偶者の有無、子の有無、世帯収入(13段階)、自民党支持である。かっこ内で項目を記載したもの以外はすべて0/1の二値変数である。 11 統制している変数は、年齢(1歳刻み)、性別、最終学歴(中学校、高校、短大・高専、大学、大学院(修士課程)、大学院(博士課程))、職の有無、配偶者の有無、子の有無、世帯収入(13段階)、自民党支持である。かっこ内で項目を記載したもの以外はすべて0/1の二値変数である。
12 補遺Dでは、政府への信頼の係数とその標準誤差を表にしている。政府への信頼の係数は、医療、介護、子育て支援は5%水準で、年金は10%水準でそれぞれ有意となった一方で、学校教育と生活支援は有意ではなかった。 12 補遺Dでは、政府への信頼の係数とその標準誤差を表にしている。政府への信頼の係数は、医療、介護、子育て支援は5%水準で、年金は10%水準でそれぞれ有意となった一方で、学校教育と生活支援は有意ではなかった。
13 本稿のモデルでは回答者の年齢を「60歳以上ダミー」という二値変数にして政府への信頼との交互作用を検討しているが、年齢を二値ではなくより細かく分けるとその調整効果は線形ではない可能性もある(Beiser-McGrath and Beiser-McGrath 2023; Hainmueller, Mummolo, and Xu 2019)。 13 本稿のモデルでは回答者の年齢を「60歳以上ダミー」という二値変数にして政府への信頼との交互作用を検討しているが、年齢を二値ではなくより細かく分けるとその調整効果は線形ではない可能性もある(Beiser-McGrath and Beiser-McGrath 2023; Hainmueller, Mummolo, and Xu 2019)。
14 政府への信頼と「60歳以上ダミー」の交互作用項を入れた回帰分析についても、補遺Dにすべての変数の係数と標準誤差を報告している。 14 政府への信頼と「60歳以上ダミー」の交互作用項を入れた回帰分析についても、補遺Dにすべての変数の係数と標準誤差を報告している。
15 子育て支援と学校教育について、図1のクロス集計では20代以下及び30代とそれ以上で負担してもよいと答える人の割合が大きく異なったが、図3の方では負担してもよいと答える確率の全体的な水準は世代によって違いがない。理由として、後者では回帰分析で子どもの有無を統制したことが考えられる。図3で示されているのは、子どもがいる人にもいない人にも共通する、60歳未満という世代としての意識であるといえる。 15 子育て支援と学校教育について、図1のクロス集計では20代以下及び30代とそれ以上で負担してもよいと答える人の割合が大きく異なったが、図3の方では負担してもよいと答える確率の全体的な水準は世代によって違いがない。理由として、後者では回帰分析で子どもの有無を統制したことが考えられる。図3で示されているのは、子どもがいる人にもいない人にも共通する、60歳未満という世代としての意識であるといえる。
16 ただし、補遺Dから分かるように、政府への信頼と60歳以上ダミーの交互作用項は有意になっていない。 16 ただし、補遺Dから分かるように、政府への信頼と60歳以上ダミーの交互作用項は有意になっていない。
17 介護については、医療と同じように高齢世代にとってはいつ介護を必要とするか分からないという意味で不確実性があるとも考えられる。そうであれば、高齢世代にとっても政府への信頼と負担の受容が強く関係するだろう。しかし、そのような分析結果にはならなかった。 17 介護については、医療と同じように高齢世代にとってはいつ介護を必要とするか分からないという意味で不確実性があるとも考えられる。そうであれば、高齢世代にとっても政府への信頼と負担の受容が強く関係するだろう。しかし、そのような分析結果にはならなかった。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:nira01@nira.or.jp

研究の成果一覧へ