株式会社都市文化研究所

概要

 本報告は、『地方の魅力づくりとその活用』ならびに『地域雇用拡大への新たな取り組み』をテーマに、全国5機関のシンクタンクに委託して実施した事例調査のうちの1つ「地域魅力を創出する関西圏の地域プラットフォーム経営と行政施策」の研究成果である。
 地方分権改革の方策の1つである「住民自治の確立」に向けて、従来の地方自治の仕組みとは異なる、「地域プラットフォーム」という仕組み(組織)が、関西圏の自治体で試行され始めている。地域プラットフォームとは、「地域協働の場」であり、行政のみならず、市民、企業、NPO、大学など地域の多様な主体が地域の諸課題を共有し、まちづくりを推進していく住民自治の組織手法である。住民と行政との協働や時に住民主体によりコミュニティの総合的なまちづくりが進められる一方、福祉、教育、環境、防災などの専門分野においても、行政政策・事業の立案段階から市民が参画し協働していくことを可能とする。地域の多様でクリエィティブな人材のパワーを活かす創造都市の施策であると言える。
 本研究では、関西圏におけるこのような地域プラットフォームの事例について、主体(担い手)の関わり方による類別を行い、各事例のあり方や特性を調査するとともに、今後の課題についてもそれぞれ展望した。
 その上で、地域の魅力を創出する市民参画の創造的手法として地域プラットフォームを立ち上げる際には、以下の行政支援施策が必要であるとの提言を行った。
 1.条例や計画により、「地域プラットフォーム」を位置づける
 2.地域住民によるプラットフォーム運営へ専門家を派遣する
 3.地域プラットフォームへの権限委譲を伴う財政的支援を行う
 4.地域プラットフォームの先進的事業を、自治体全体の政策・事業へ創りあげていく仕組み
 5.地域プラットフォームに対する、行政のタテ割りを超えた支援

INDEX

エグゼクティブサマリー

 近年、提唱されている行政・市民・企業等が協働で担う「新しい公」は、市民・企業等の民間活力を行政に取り込み、公務員のファシリテーション能力で民間パワーを引き出すことによって可能なものである。地域プラットフォームという場(仕組み)は、自治体の政策・事業の企画段階からの“市民参画と協働”の手法であり、地域の多様でクリエイティブな人材のパワーを活かす創造都市の施策であると言える。地域プラットフォームの仕組みを以下にまとめる。

 地域の魅力を創出する市民参画の創造的手法として地域プラットフォームを立ち上げる際には、以下の行政支援施策が必要である。

 1.条例や計画により、「地域プラットフォーム」を位置づける
 2.地域住民によるプラットフォーム運営へ専門家を派遣する
 3.地域プラットフォームへの権限委譲を伴う財政的支援を行う
 4.地域プラットフォームの先進的事業を、自治体全体の政策・事業へ創りあげていく仕組み
 5.地域プラットフォームに対する、行政のタテ割りを超えた支援

 地域におけるプラットフォーム経営とそれをサポートする行政支援施策により、地方分権時代にふさわしい創造都市が誕生する。

目次

エグゼクティブ・サマリー
Executive Summary
要約
第1章 住民自治のクリエイティブ組織、地域プラットフォーム
第2章 市民主体・行政支援型地域プラットフォーム~大阪市淀川区「淀川フォーラム実行委員会」~
第3章 行政主導・市民参画型地域プラットフォーム~川西市「福祉デザインひろば」~
第4章 コミュニティプラットフォーム~宝塚市「まちづくり協議会」~
第5章 大学・市民・行政協働型地域プラットフォーム~神戸大学・子育てプラットフォーム「あーち」~
第6章 商店街・住民協働型地域プラットフォーム~「立花通活性化委員会」と「堀江ユニオン」~
第7章 地域プラットフォーム経営の全体像
English Summary

図表

図表 「淀川フォーラム実行委員会」の主たる構成メンバー
図表1-1 西区の位置
図表1-2 平成7〜17年、大阪市都心区の人口推移と人口増加率
図表1-3 西区の人口・世帯数の推移
図表1-4 西区建て方・建物階数別住宅数の推移
図表1-5 町会の加入状況
図表1-6 町会の加入状況×年齢別
図表1-7 悩みと問題の相談者
図表1-8 地域活動に参加するために克服するべき課題(複数回答)
図表1-9 行政に求められる支援や取り組み
図表1-10 地域活動への参加意向
図表2-1 大阪市淀川区の位置
図表2-2 新淀川の流路を示した開削計画図
図表2-3 現在の淀川区域
図表2-4 十三干潟の位置
図表2-5 十三干潟の生き物の関係(食物連鎖)
図表2-6 「淀川フォーラム実行委員会」構成メンバーの出身団体と淀川への関わり
図表2-7 「よどがわ河川敷フェスティバル」のイベント展開と担い手
図表2-8 市民主体の川づくり活動の流れ
図表2-9 地域プラットフォーム、淀川フォーラム実行委員会の組織運営の特性
図表2-10 取り組み体制
図表2-11 『淀川区未来わがまちビジョン』表紙
図表2-12 『淀川区未来わがまちビジョン』で提案された区民プロジェクト「淀川・神崎川等の川の環境・文化を活かしたまちづくり」
図表2-13 リバーマスター講座で行った提案
図表2-14 淀川フォーラム実行委員の主な取り組み概要
図表2-15 淀川フォーラム実行委員の淀川流域調査観察状況図
図表3-1 川西市の位置
図表3-2 川西市の人口の推移(国勢調査)
図表3-3 川西市における地域福祉の取り組み
図表3-4 地域福祉計画の全体概念図
図表3-5 地域福祉計画策定プロセス
図表3-6 地域福祉資源マップの例:牧の台小学校区(大和地区)
図表3-7 地域福祉推進についてのアンケート結果
図表3-8 地域福祉推進についてのアンケート結果
図表3-9 地域福祉推進についてのアンケート結果
図表3-10 地域福祉推進についてのアンケート結果
図表3-11 「福祉デザインひろば」づくりのイメージ
図表3-12 「福祉デザインひろば」づくりの相談事業一覧
図表4-1 宝塚市の位置
図表4-2 宝塚市の人口推移(国勢調査)
図表4-3 まちづくり協議会区域図(第1ブロックから第7ブロックは自治会連合会ブロックの区域と同じである)
図表4-4 まちづくり協議会(地域プラットフォーム)のイメージ
図表4-5 コミュニティ支援の施策
図表4-6 まちづくり計画策定の手順
図表4-7 計画づくりに向けた推進体制のイメージ~市民と市の協働によるまちづくり~
図表4-8 西山会ニュース創刊号表
図表4-9 まちづくり計画における優先順位検討表:住民担当分の抜粋
図表4-10 地域創造会議の主な成果
図表4-11 自治会とコミュニティ協議会の関係
図表4-12 みやまあかね祭の記録(平成18(2006)年11月)
図表4-13 宝塚市におけるコミュニティ施策の経緯
図表5-1 区人口・世帯数の推移
図表5-2 区民・事業者・大学の役割分担図
図表5-3 神戸大学・自治体との地域連携協定(平成19年6月末現在)
図表5-4 「のびやかスペースあーち」平面図
図表5-5 「あーち」のプログラム(1)
図表5-6 「あーち」のプログラム(2)
図表6-1 堀江エリアとその周辺の位置関係
図表6-2 90年代の活性化活動(主なもの)
図表6-3 堀江の活性化プロセスを示すデータ
図表6-4 堀江各エリアの建物状況の変化
図表6-5 営業開始時期別にみる店舗の業種割合
図表6-6 堀江エリアの魅力
図表6-7 ショップの魅力(年齢別)
図表6-8 堀江における地域プラットフォームの動きとまちの変遷

研究体制

「関西圏の地域プラットフォーム」調査研究グループ
 株式会社都市文化研究所 ※役職は平成19年10月現在
  金井文宏(代表取締役)
  江弘毅(役員・主任研究員)
  堀内雄二(研究主査)
  奥西崇文(研究員)

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)株式会社都市文化研究所(2007)「地域魅力を創出する関西圏の地域プラットフォーム経営と行政施策」総合研究開発機構

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

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