企画に当たって

コロナ禍で懸念される少子化の加速

若者を重視する政策へのコミットメントを

翁百合

NIRA総合研究開発機構理事/日本総合研究所理事長

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出生数の減少、少子化のトレンド、若者重視の政策

 日本の2021年の出生数は約84万人と推計され、合計特殊出生率は2020年で1.33まで低下している。2015年の段階では100万人を超えていた出生数は、その後急速に減少してきており、実は新型コロナウイルス感染症の流行前から、出生数は縮小の一途をたどっていたのである。もちろん、近年政府もさまざまな政策を講じている。安倍政権は希望出生率1.8を適えることを政策目標として掲げ、待機児童の解消加速化プランの下で保育所整備を積極的に行い、幼児教育や保育の無償化も実現した。続く菅政権では、不妊治療の保険適用実現に動き、2021年には男性の育児休業取得を推進する新しい法律が国会を通っており、他にもさまざまな努力が重ねられてきた。しかし、少子化のトレンドは残念ながら変えることはできず、2020年以降の新型コロナ感染症の流行の影響で、少子化がさらに加速する可能性が指摘されている。

少子化は、経済や社会保障に深刻な影響

 少子化は日本社会の未来に極めて深刻な影響を及ぼす。少子化により、国内市場が縮小するだけでなく、働き手も減り、経済自体の存続にもかかわってくる。特に今後の十数年間の生産年齢人口の減少は、デジタル化などの生産性向上だけでは、潜在成長力の低下を補いきれないことが予想されている。人口動態は長期まで見渡せるため、現状においても、企業の設備投資は国内市場縮小を考慮して消極的にならざるを得ない。また消費者も、社会保障の持続可能性に不安を持ち、消費になかなか積極的になれなくなる。希望出生率1.8が実現できるよう、政府は本格的に対応を考える必要があるのではないか。そこで、今回の「わたしの構想」では、新型コロナ感染症拡大が少子化に与えうる影響とその受け止め、また少子化の流れを変えるための政策などについて識者の方に伺った。

コロナ禍の影響をどう考えるか

 まず、新型コロナ禍の少子化への影響について、人口学の視点から津谷典子氏(慶應義塾大学教授)は、コロナによる先行き不安から、妊娠・出産の先送りが起こり、それが産み控えとなって、出生率低下につながることを憂慮する。特に日本の問題点は、もともとコロナ以前から20代~30代の女性が減少傾向にあり、これに加えて、「晩産化」が進んでいるため、コロナによる出産先送りが人口減少に拍車をかけるのではと、警鐘を鳴らす。コロナ禍の少子化進行は長期的に大きな影響が及ぶ可能性があるという指摘だ。また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に参加し、行動経済学の視点からコロナ対応を分析、提言してきた大竹文雄氏(大阪大学特任教授)は、政府のコロナ対策の少子化への影響について懸念を示す。特にオミクロン株は、重症化リスクが高齢者と基礎疾患がある人に限られていることがエビデンスとして判明してきたのに対し、日本では英国などとは異なり、行動制限を年齢にかかわらず一律に強化した。若者や子どもの行動制限を緩めなかったため、若者は、日本社会を若者軽視社会と受け止めたのではないかと危惧する。大竹氏は政府がより子どもや若者を重視するメッセージを出し、あらゆる政策をその方針の下で考え直すことに強くコミットメントすべきとするが、一連のコロナ対策を振り返っても説得的な指摘である。

今、求められる少子化対策とは

 具体的な少子化対策の在り方について、さまざまな実証分析に取り組んできている山口慎太郎氏(東京大学教授)は、ジェンダーギャップの解消、なかんずく日本社会に根付いている男女の役割分担について見直すところから取り組む必要性を強調する。山口氏の分析によれば、在宅勤務が増えれば、男性の育児や家事の負担時間は増えることから、やはり働き方改革を進めることが不可欠とする。コロナ禍で半ば強制的にテレワークが日本でも始まったが、これを機に社会全体で柔軟な働き方を実現・定着させることは極めて重要だ。山口氏は、また、児童手当や保育所の充実も欠かせないと指摘するが、これらに必要なのは財源である。この点について、内閣官房参与として社会保障を担当する山崎史郎氏は、高齢者も含めたすべての国民が、子どものために財源を負担する社会的支援を考えるべきと指摘する。山崎氏は、人口減少により若者が停滞や心理的圧力を受け社会が不安定化することを回避するためにも、予防的対抗策が急がれるとする。そのうえで、社会全体で子どもを支援する「普遍的な子ども・家族政策」が重要であり、特に現状の支援策からこぼれ落ちている非正規社員の人たちをカバーするためにも、こうした政策を実現する必要性を説く。本格的少子化対策には財源の議論が欠かせないが、配慮すべき貴重な視点を提供している。

若者や女性が力を発揮できる社会づくりを

 このように、これ以上の少子化は日本社会存続にとって危機であるとの認識をあらゆるレベルで持つ必要があるという見解が多い一方、社会学の視点から白波瀬佐和子氏(東京大学教授)は、少子化対策に決め手はなく、出生数という即時的な回答を求めるというよりは、数としては減少している若者への投資を行っていくことが最優先政策とする。失業や雇用不安におびえる若者や女性のために投資して彼らが自らの力を発揮できる環境を整え、効率的で新しい人材活用のモデルを作るとともに、子育てと両立できるよう男女ともに制度として支援する必要性を説く。少子化対策のみを目標にするのではなく、潜在的な能力を発揮できなかった若者や女性が活躍できる社会に変革されて初めて、結果として出生数の持続的な回復につながることを示唆している。

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コロナ禍は日本の少子化に影響するのか。少子化問題にどう対応していくべきか。

コロナ禍による産み控えは、少子化の加速につながるのでは

津谷典子

慶應義塾大学教授/同大学グローバルリサーチインスティテュート上席研究員

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晩産化、産み控え、20代~30代女性人口

 新型コロナウイルス感染症拡大の出生率への影響は、短期的なものと長期的なものに分けることができる。短期的な影響は、コロナ禍により出産を一時的に先延ばしすることであり、長期的なものは、コロナ禍を契機に子どもを持つことを完全に諦めてしまうことである。しかし、この区分は概念的なもので、実際には一時的な延期が最終的な停止につながることも多く、2つを分けることは難しい。さらに、コロナ禍はまだ完全に収束しておらず、その影響を定量的に測ることは至難である。

 いずれにせよ、懸念されるのは、コロナ禍によって仕事や対話の機会を失うことで、経済的・心理的不安が増大し、それが産み控えにつながることである。女性の生物学的妊娠力のピーク年齢は20代から30代前半であり、30代後半以降は妊娠・出産の確率は低下する。戦後長きにわたり、日本の女性の出生率のピーク年齢は20代後半だったが、2000年代以降、ピークが30歳代前半にずれ込み、「晩産化」傾向が顕著になっている。コロナ禍により妊娠・出産のさらなる先送りが起これば、出生率はさらに落ち込むことになる。その結果、近年加速している少子化と人口減少に拍車がかかるのではと懸念される。

 内閣府が、日・独・仏・スウェーデンの20~49歳の男女を対象として、2020年秋から冬に実施した「少子化社会に関する国際意識調査」によると、日本(特に若い世代)は、生活状況が良くなる見通しがあると回答した割合が最も低かった。さらに、子ども数がゼロか1人の男女に子どもを持つことへの意識の変化を尋ねたところ、総じてコロナ禍による出生意欲の弱まりが見られた。これが一時的なものなのか、現時点では判断できないが、多くの男女が抱いているコロナ禍による家計や生活全般の先行きへの不安を軽視するべきではない。

 結婚・出産のピーク年齢である20代から30代の女性人口は減少傾向が続いており、たとえコロナ禍がなかったとしても、出生数の減少が続くことはほぼ確実であるが、コロナ禍による出生率のさらなる落ち込みを防ぐためにも、今後の生活への不安感を軽減するようなサポートが急務である。晩産化が進む中で、不妊治療が保険適用されたことは評価されるが、子どもを持ちたい女性やカップルの仕事と家庭の両立を助ける包括的政策支援や、子どもを持つ労働者に対する職場や市場の配慮の重要性が高まっている。

識者が読者に推薦する1冊

津谷典子〔2018〕「出生率と結婚の動向―少子化と未婚化はどこまで続くか」『ファイナンス』第54巻2号,pp.50-58.

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コロナ禍は日本の少子化に影響するのか。少子化問題にどう対応していくべきか。

今こそ、若者重視のメッセージを打ち出せ

大竹文雄

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授

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結婚件数の減少、社会規範、「高齢者偏重」の社会

 コロナ禍で人々が接触する機会が大幅に減り、社会の慣習や規範が大きく変化した。その影響で、日本の少子化問題はさらに悪化しかねない。コロナ禍の2年間で、結婚件数は過去の傾向を踏まえた想定件数から約1割減少した。「結婚の先延ばし」と捉えることもできるが、出産可能年齢には上限があり、結婚の「遅れ」は出生数の減少につながりかねない。人生には「出会いの可能性が最も高い年齢」があり、行動制限で失われた若者の出会いのチャンスを、後から取り戻すことは簡単ではない。オンラインでの出会いを受け入れられる人はよいが、対面の出会いが規範となっている人は、ネットでうまく代替できない。

 少子化を加速させかねない状況を変えるには、コロナ危機がもたらした社会や生活の変化を利用することだ。例えば、テレワークで在宅勤務が進み、男性の子育て経験が拡大したことで、性別による家庭内の役割分担の意識が変化した。コロナ前と比べて、「仕事と家庭」を両立させやすくなったのは確かだ。また、テレワークが浸透して通勤の必要性が小さくなり、子育てに適した環境を持つ地域への移住が促進された。こうしたことは、出生率の向上に寄与することになると思われる。したがって、このような動きが定着するように、社会の規範を形成していくことが大切だろう。

 一方で、今回のコロナ禍では「高齢者偏重」の社会であることが露呈した。第6波で流行した「オミクロン株」の重症化リスクは、それまでの変異株よりも低い上に、高齢者と基礎疾患のある人たちに偏っていた。しかし、行動制限は年齢にかかわらず一律に強化された。日本は高齢者の健康を守るために、子どもや働く人の行動制限を軽々に強制したことになる。イギリスは、当初、厳格な対応をとっていたが、子どもや若者の人生に与えるマイナスの影響を問題視し、今や社会を元に戻すことの重要性を強調している。この違いを、日本の政治が若者たちの人生を軽視している表れと、若者は受け止めたのではないか。日本社会を、若者重視の社会に変える必要がある。

 日本政府は「社会にとって子どもや若者が大事である」とメッセージを打ち出し、あらゆる政策をその方針の下で考え直していくことに強くコミットメントすべきだ。こうした政府の政策展開、そしてメッセージで若者に働きかけることで、若者が「安心して子どもを産んで、子育てができる」と認識する社会につながる。

識者が読者に推薦する1冊

大竹文雄〔2022〕『あなたを変える行動経済学』東京書籍

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コロナ禍は日本の少子化に影響するのか。少子化問題にどう対応していくべきか。

働き方改革で、ジェンダーギャップの解消を

山口慎太郎

東京大学大学院経済学研究科教授

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男性の家事・育児参加、在宅勤務、子育て支援策

 昨年(2021年)の出生数が落ち込んだのは、コロナ禍で子育てをすることに不安が高まり、出産のタイミングを遅らせているだけなのかもしれない。時期だけの問題であれば、コロナが収束すれば揺り戻しが起き、出生数は元のトレンドに戻るだろう。しかし、それだけの問題ではない可能性もある。経済状況が悪化したことにより、家庭や子どもを持つ責任を負いたくないと思うようになるのは、自然なことだ。今後も経済的な不確実性が増せば、結婚件数が伸び悩み、長期的に出生率に負の影響を与えるかもしれない。コロナ禍が与える長期的な影響は、まだ見極めが難しい。

 今回のコロナ禍でテレワークが進展し、ジェンダーギャップは解消に向けて一歩前進したともいえるが、依然として根深く、何か1つを変えるだけでは解決しない。男性の家事・育児参加をもっと進めるには、企業、教育現場など、日本社会のさまざまな分野に同時に働きかけて、ジェンダーに対する人々の固定観念を覆していく必要がある。

 コロナ禍で一気に導入が進んだ「在宅勤務」は、家庭における家事・育児負担の男女間格差を是正できるチャンスになりうる。男性の家事・育児参加の促進は、コロナ以前からの重要な政策課題だったが、なかなか実現してこなかった。日本の男性向け育児休業制度は形式的には世界一だが、実態としては育休自体が取得できていない。私のチームが行った研究では、在宅勤務が週1日増えると、男性の家事・育児にかける時間が6.2%増加し、また、家族と過ごす時間が5.6%増加することが分かった。コロナ禍を機に、今後、社会全体で働き方を変化させていけば、長期的には出生率にも良い影響が出るだろう。

 結婚や出産は、個人の選択においては自由であるべきだ。しかし、急激な少子高齢化は現役世代にかかる負担を極端に大きくする。現在は、子どもを育てる費用の負担が大きく、ベネフィットとのバランスが取れていない。少子化対策は必須だ。保育所の充実や児童手当などの子育て支援策が、出生率を増やす効果があることは研究で分かっている。待機児童など、子どもを産んですぐに直面する問題からまず解消すべきだ。日本の子ども・子育て支援に対する財政支出の規模はOECD平均の3分の2、ヨーロッパのトップクラスの国と比べれば半分に過ぎない。まだまだ政策で改善できる余地がある。

識者が読者に推薦する1冊

山口慎太郎〔2021〕『子育て支援の経済学』日本評論社

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コロナ禍は日本の少子化に影響するのか。少子化問題にどう対応していくべきか。

育児支援は雇用政策だけでなく、子ども・家族政策として社会全体で担うべき

山崎史郎

内閣官房参与兼内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局総括事務局長

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「年老いた国」、ミュルダールの予防的社会政策、普遍的な子ども・家族政策

 日本社会には、「もはや少子化は止められない」という諦念が広がっているのではなかろうか。2005年から10年間、出生率は一時的に上昇した。しかし、それは団塊ジュニア世代の駆け込み出産による一時的現象で、その後に続く世代の出生動向は過去最低の水準であり、コロナ禍でさらに下振れしている。確かに、人口減少のトレンドを反転できる状況にはない。だが、せめて急激な減少を緩和させねばならない。鍵になるのが、スウェーデンの経済学者のミュルダール(注)が言う「予防的社会政策」、すなわち、人口減少による困難な事態が社会に顕在化する前に、予防のための政策を講じる考え方である。

 このままでは、100年後の日本は人口5000万人を切る。これは、今から100年前の5000万人時代に戻るのとは全く違う。当時は、人口規模は小さくとも、高齢化率5%の若い国であった。これに対し、将来の日本は、高齢者が人口の40%を占める「年老いた国」である。国内マーケットが縮小し、投資が減り、イノベーションも停滞する恐れが強い。労働意欲や生産性が低下し、若年層が閉塞感を強める中で、世代間対立が激化する恐れがある。人口減少によって、社会経済や政治が不安定化しないうちに、予防策を打つ必要がある。

 これまで少子化を止めることができなかったのは、少子化問題に正面から取り組まず、後回しにしてきたからではないか。今の子育て政策は、各制度の寄せ集めで一元的な制度・政策となっていないため、多くの若年者が支援策からこぼれ落ちている。例えば、非正規雇用者に対する育児支援である。育児休業給付は、非正規がそれほど多くなかった1995年に雇用保険を財源として始まった。その後、労働環境は大きく変わり、今は女性の半数以上が非正規として働いているため、雇用保険制度による育休給付を利用できていないケースが多い。雇用政策だけで対応することに限界がきている。コロナ禍でも、経済的リスクは、非正規の若者・子育て世代に如実に表れた。

 今、重要なのは、社会全体で子どもを支援する「普遍的な子ども・家族政策」だ。全ての子どもを対象に切れ目ない育児支援を行う。親がどのような就業状況であろうが、子どもの育つ環境に差があってはならない。社会全体を安定させるためだから、負担は全世代が担うことが望ましい。残された時間は本当に少ない。今が最後のチャンスだ。

(注)ミュルダール夫妻(夫グンナーと妻アルヴァ)は、1930年代、スウェーデンの福祉国家の形成過程に深く関与した。
文中の意見にわたる部分は個人的な意見である。

識者が読者に推薦する1冊

山崎史郎〔2021〕『人口戦略法案―人口減少を止める方策はあるのか』日本経済新聞出版

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コロナ禍は日本の少子化に影響するのか。少子化問題にどう対応していくべきか。

出生数だけを見るのではなく、包括的な人への投資を

白波瀬佐和子

東京大学大学院人文社会系研究科教授

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人と交わる機会、女性への人的投資、若者の強みを生かす社会

 男女が一緒に生活する時間が長くなると、出生率にはプラスに働くとされ、以前、イギリスで労働時間を週48時間に制限したときには、一時的に合計特殊出生率が上昇した。しかし、今回のコロナ禍では、外出制限など家族と過ごす時間は長くなった一方で、アメリカでも出生率が低下した。失業や雇用不安による精神的なプレッシャーのほうが大きく、新型コロナウイルス感染症拡大は、日本を含めて出生率にマイナスに働いた。こうした中、今の少子化対策に、一律の決め手があるとはいえない。

 人と交わる機会がほとんどなくなったのは、さまざまな問題を生んだ。結婚など家族を形成するステージにある人たちの人生設計の環境が著しく揺らいでしまった。一度も対面せずに卒業してしまう大学生もいる。就職は新しい人間関係を形成する絶好の機会だが、ちょうど就職の時期にあたった若者への影響は少なくなかった。結婚前出産も含め、出生児数は減少し続けている。

 そこで、今の日本に問われているのは、「出生数の増加」を即時的な結果として求めるのではなく、いかに人に投資していけるかだと思う。さまざまな若い人たちの芽を摘まず、むしろ、彼らがリスクを取れるようにする。小さな芽が大きな木になるように育てる社会、数としては減少している若い人たちのそれぞれの強みやアイデアを生かせる社会にすることが大切だ。そのためには、多様な選択肢を提供し、ジェンダー、年齢、国籍、障害の有無にかかわらず、自らが望む選択ができる環境整備が求められる。個人がコントロールできない条件のために、特定の機会がはく奪されてはならない。

 女性の高学歴化や専門職・管理職の比率の高まりは、短期的には出生力向上に寄与しないかもしれないが、これまで男性と同等の機会に恵まれなかった者たちへの人的投資という意味において、むしろ優先的な対策を講じられるべきと考える。仕事と家庭の両立は、たまたま上司に恵まれるという「運」ではなく、制度として支えていくべきだ。子育ては、産む性の女性だけでなく、共に育てる性として男性も制度に組み込むことが望ましい。

 人的な投資は効果が現れるのに時間がかかるし、リスクもある。即時的な利益を求めずに投資することが肝要だ。中長期的にリスクを捉えることが、結果として効率的でかつ潜在的可能性を多く秘める人材育成モデル構築の是非を決める。日本の未来をも左右する最大のテーマである。

識者が読者に推薦する1冊

白波瀬佐和子〔2021〕「コロナ下の格差拡大(上) 不平等の構造 是正急げ」(経済教室)『日本経済新聞』2021年11月12日

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)NIRA総合研究開発機構(2022)「コロナ禍で懸念される少子化の加速」わたしの構想No.60

データで見る

  • 日本女性の年齢階級別の出生率の変化(2019年-2021年)

    注)本号公表時に2021年人口動態調査の12月値が公表前であったため、2021年の出生率の算出には2020年12月の出生数を使用。
    出所)厚生労働省(2021)「人口動態統計月報(概数)(令和2年12月~令和3年11月分)」、厚生労働省(2020)「人口動態統計(確定数)母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた合計特殊出生率(内訳)」、総務省統計局(2021)「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)年齢(各歳),男女別人口及び人口性比-総人口,日本人人口(2021年10月1日現在)」(いずれも2022年5月9日取得)をもとに作成。

    付表

  • 日本の自殺数の変動(2019年-2021年)

    注)週ごとのデータ。「予測自殺数」は、例年の自殺数をもとに推定。「予測閾値上限・下限」は、95%片側予測区間を示す。詳しくは国立感染症研究所のWebページ「我が国における超過死亡の推定」を参照のこと。
    出所)exdeaths-japan.org「日本の超過および過少死亡数ダッシュボード」(2022年5月9日取得)

    付表

  • 在宅勤務が男性の家事・育児参加に与えた効果

    注)在宅勤務が週1日増えた場合の、男性の家事・育児参加に与えた因果効果の推定結果。内閣府「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」の個票を用いて、計量経済学の手法である一階差分モデルと操作変数法を組み合わせて分析されている。対象は、「テレワークできる業務の割合が多い」という理由で、2019年12月と2020年12月の間に在宅勤務日数を増加させた、18歳未満の子供がいる984名の男性。エラーバーは95%信頼区間を示す。
    出所)C., Ishihata. Y., & Yamaguchi. S.(2021)“Working from Home Leads to More Family-Oriented Men,” CREPE Discussion Paper No.109.

  • ミュルダールの思想と人口政策への展開

    出所)藤田菜々子(2009)「1930年代スウェーデン人口問題におけるミュルダール――「消費の社会化」論の展開」経済学史研究 第51巻第1号 pp.76-92、藤田菜々子(2008)「1930年代人口問題におけるケインズとミュルダール」経済学史学会第72回全国大会口頭発表、渡邊幸良(2015)「ミュルダールの予防的社会政策」中央大学経済研究所年報 第47号 pp.447-460をもとに作成。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構
神田玲子、榊麻衣子(編集長)、山路達也
※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

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