企画に当たって

アフリカ経済の飛躍

日本に求められる3つの課題への貢献

東和浩

NIRA総合研究開発機構理事/株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長

KEYWORDS

アフリカ経済、リープフロッグ、ICTを用いたイノベーティブなサービス、アフリカの多様性、アフリカ開発会議(TICAD)、日本の責務、日本にも学びと刺激

「リープフロッグ」の発展を遂げるアフリカ

 近年、アフリカ経済は大きく成長している。2000年代初頭以降のドラスティックなアフリカの発展は、「リープフロッグ」と呼ばれている。リープフロッグとは、技術進歩を背景に、人びとの暮らしや産業の水準が段階を踏まずに一足飛びで進歩する現象を示す言葉だ。

 中でも、ICT技術を用いたイノベーティブなサービスが、アフリカで次々と登場している状況には、目を見張るものがある。ケニアでは、2007年に始まったM-Pesaというモバイル送金サービスの利用が急拡大している。この新たなサービスのおかげで、人びとは銀行口座をもたなくても、遠隔地間での送金や決済が可能となり、地域の金融アクセスは大きく改善した。また、同サービスを基盤に、銀行との連携融資や貯蓄口座の提供などのサービスも始まり、M-Pesaの登録ユーザー数は、2012年の1,500万人から、2017年には2,700万人に急増している。このできごとは、金融アクセスの困難さが成長の足かせといわれていたアフリカで、デジタル技術がその課題を克服した成功例といえる。

 デジタル技術に沸く「アフリカ経済の今」をどうみるか、また、アフリカの飛躍的な成長を持続的なものにするために必要なことは何か。5人の識者に話を伺った。

デジタル技術が解決する開発課題

 識者はみな一様に、ICTで躍動する今のアフリカを口にする。アフリカでは、ICTを使った多様なサービスが提供され、その普及のスピードは、先進国よりも速い。世界の成長から取り残されているといわれていたアフリカに、デジタル技術がこれほどの急速な変化をもたらすことができたのは、なぜだろうか。識者の指摘からは次のような点が浮かび上がる。

 1つには、課題を解決する上で、ICTやデジタル技術の導入がドラスティックな効果をもつことだ。アフリカ開発銀行の横山正氏が指摘するように、アフリカ大陸は広大で、人口密度は日本の8分の1程度であり、物流や通信、サービス供給網の整備は物理的に容易でない。だが、こうした厳しい環境だからこそ、道路や橋など既存の物流インフラを必要としないドローンは威力を発揮することができるし、また、住所を特定できない生活環境にこそ、モバイルは不可欠な手段となりうる。横山氏は、アフリカにはデジタル技術に対する大きな需要が潜在的にあると指摘する。

 もう1つには、先進国と積極的に協力するスタンスが革新的なサービスの誕生を可能にしていることが挙げられよう。レックスバート・コミュニケーションズの田中秀和氏は、革新的なサービスの多くは、先進国と協力することで実現している、と述べている。アフリカ各地に創設されたイノベーションハブでは、ICTを活用したビジネスを起業する取り組みがさまざまな形で行われており、それが先進国との協業を後押ししている。

「リープフロッグ」を邪魔する3つの足かせ

 他方、アフリカが持続可能な発展を実現するには、さらなる取り組みも必要である。識者からは、インフラの整備、技術者の育成、製造業の生産性の向上が指摘された。

 国際金融公社(IFC)のジャーマン・カフル氏は、インターネットはデジタル経済の基盤であり、世界最低レベルのインターネット普及率を引き上げることが、アフリカにとって急務であると強調する。デジタル・インフラには多大な投資が必要となるため、基地局、回線などを複数の事業者が共同で使用するインフラ・シェアリングなど、新たなビジネスモデルの活用を提案している。

 田中氏が指摘するのが、現地の技術者の能力向上だ。アイデアだけでイノベーションを生むことは難しい。現場で技術を鍛えてはじめて、アイデアを実現する実力が持てる。実務経験を積んだ技術者の層を地道に充実させていくことが、遠回りかもしれないが、確かな道である。

 一方、インスティテュート・フォー・グローバル・ダイアログ(IGD)のアシュラフ・パテル氏はアフリカの産業構造における異質さとして、製造業の発展段階をスキップして、一気に産業のサービス化に進んだことを挙げた。製造業が未成熟であることにより、世界の供給体制の一部に組み込まれず、多くの若者に雇用機会を提供できなくなる懸念もある。アフリカがICTを軸とした発展を目指す上でも、製造業の基盤は必要となるはずだ。

求められる日本企業の関与

 これらの点は、いずれも早急に解決しなければならない重要な課題であることは間違いない。考えてみれば、これらは、いずれも日本が得意とする分野ばかりであり、日本企業が協力できる可能性も高いのではないだろうか。しかしながら、現在のところ、アフリカのICT産業に対する日本の関心は低調なままである。ケニア共和国特命全権大使のソロモン・K・マイナ氏は、日本はインフラや人材開発、農業、エネルギー等、旧来のODA分野でアフリカへの支援を行ってきたが、ICT分野では米国・中国・韓国等に後れを取っている、としている。

 もっとも、アフリカが発展を遂げているとしても、その1人当たりの所得は世界平均の2割に満たず、かつ、国によってその特徴は一様ではない。当然、ICT技術の活用・発展の仕方や、開発課題も異なる。それぞれの地域に関する正確な情報を把握し、相手や状況に応じた適切かつ的確なアプローチをしていくことが求められる。

5人の識者の意見 アフリカのリープフロッグ、持続的成長への課題は何か

 本年8月には横浜市で、日本政府が国連等と共催して「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」を開く。アフリカは、国連が強い関心を持ち、また、開発課題の解決に力を入れている地域でもある。アフリカの持続的な成長を支えることは、国連の主要な財政貢献国である日本の責務ともいえよう。

 何も恩恵を受けるのは、アフリカだけではない。成熟国としての鈍いスピードに慣れ切った日本人が、アフリカ出身のランナーのように快走する「アフリカ経済の『リープフロッグ』型成長」を学ぶことは、大いなる刺激を受けることになるのではないだろうか。

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。さらなる発展のために必要なことは何か。

リープフロッグで、SDGs達成をねらう

ソロモン・K・マイナ,M.B.S.

駐日ケニア共和国特命全権大使

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リープフロッグ、金融サービス、eガバメント、eコマース、ICT分野への日本の投資

 ここ10~20年で、アフリカはリープフロッグ(一足飛び)の発展を遂げている。ICTの発展はこれまで先進国がリードしてきたが、いまやアフリカの多くの国が国際的ブロードバンドとつながり、世界から刮目(かつもく)されるほどになったと思う。大陸間を海底ケーブルでつなげることで、ケニアのインターネットの通信速度は日本とほぼ同じ速度を実現している。特にアフリカでICTによる発展が著しいのは、金融、政府、そして小売りの3つの分野だ。

 まず金融については、例えばケニアでICTインフラが非常に発展している。携帯電話プラットフォームでの金融サービスは著しく成長しており、M-Pesaでの送金は広く使われている。モバイル決済を利用すれば、どこからでも容易にビジネスを行うことができる。例えば、普通の農家も農場から直接製品を販売し、携帯電話から支払いを受けることが可能だ。プラットフォームは人々の生活に重要な存在となり、すべての国民が経済に包摂されるようになる。モバイルをうまく使えば、少なくとも世帯の2~3%を貧困や飢餓から救うことができ、貧困からの脱却を目指すSDGsの達成にもつながる。

 2つ目は、eガバメントだ。これまで、アフリカ政府のサービス効率は、悪いといわれてきた。このため、行政の透明性・説明責任の強化や、行政サービスへのアクセスの向上を図り、政府への信頼を高めようと努めている。ケニアでは、国の発展計画「ビジョン2030」の一環で、さまざまな行政手続きがオンラインでできるよう、eシティズンのプラットフォームを立ち上げた。またそれに関連して、政府は、すべての行政手続きを1カ所で行えるHuduma(注)センターを、国内各地に設けている。

 3つ目はeコマースだ。オンラインショッピングの利用者が増え、特に新しい動きに敏感な中間所得層の生活習慣が大きく変わろうとしている。先進各国に比べアフリカのeコマースの市場規模はまだ小さいがゆえに、これから成長の余地が十分ある。

 日本はインフラや人材開発、農業、エネルギー等、多くの分野でアフリカを支援してきたが、ICTに関しては大きな足跡を残せていない。米国・中国・韓国等がすでにICTでアフリカ社会に変化を起こしている中、日本がこの重要な分野で出遅れているのは非常に残念だ。8月のTICAD7では「アフリカの今」の状況を議論する。日本にはICTの直接投資に積極的に関わり、アフリカ経済に「プラグイン」していただきたい。

(注)スワヒリ語で「サービス」の意味。

識者が読者に推薦する1冊

Richard Heeks〔2017〕"Information and Communication Technology for Development (ICT4D)" Routledge

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。さらなる発展のために必要なことは何か。

新機軸となるインフラ・シェアリング

ジャーマン・カフル

国際金融公社(IFC)アフリカ・ラテンアメリカ テレコム・メディア・テクノロジー投資地域リーダー

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インターネット普及の促進、多大な投資が必要となるデジタル・インフラ、インフラ・シェアリング

 デジタル経済の隆盛は、新興市場にとって一世一代の好機だ。成長、経済的移動性、イノベーション、雇用への新しい道が開かれる。全産業の開発モデルがすでにテクノロジーによる創造的破壊へと進んでいる。アフリカの課題は、デジタル経済の基盤であるインターネット普及率を速やかに引き上げることである。

 デジタル経済が進展すると、どのような未来を手にできるのだろうか。アフリカ全土における携帯電話の普及、ブロードバンド接続の改良、モバイルマネーの広がりは、人びとやビジネスに新たなチャンスをもたらす。携帯電話契約率は、いまや53%に及ぶ(2010年は21%)。モバイルマネーによる金融包摂は加速しており、モバイル口座を持つ人の割合は2017年には21%と、ここ3年間で倍に増えた。アフリカのeコマースは、推計で年率40%の急成長を遂げている。

 将来的には、モバイル・エコノミーは、2022年までにアフリカのGDPの7.9%を超える見通しである。また、同年までの経済拡大のうち75%は伝統産業からもたらされる。例えば農業では、技術改良で10~20%成長するだろう。

 しかし、デジタル経済の十分な恩恵を得るには、デジタル・インフラへの多大な投資が必要だ。アフリカのインターネット利用率は急増しているとはいえ、いまだ24.4%と世界最低レベルで、世界平均51%の半分に満たない。より多くの人がネット接続し、また高速サービスに切り替えることが、デジタル経済の成長への第1歩だ。そのためには、例えばインフラ・シェアリング(編者注)でブロードバンド企業やマーケット・プレイヤーを呼び込むなど、新しいビジネスモデルに頼ることが必要だ。

 世界銀行グループは、2018年、アフリカ・ムーンショット・イニシアチブ共同設立者となり、このアジェンダ達成に向け、250億ドルの支援を表明した。アフリカの全人口、企業、政府がデジタルでつながることが目標だ。また、デジタル・サービス各社と連携し、さまざまな発展途上国に技術的な専門知識をもたらそうとしている。

 デジタル経済に大きな投資が行われれば、アフリカの経済成長は加速し、従来の経済発展のステップを飛び越えることさえ、できるかもしれない。

(編者注)鉄塔、建物などの基地局の設置場所を共同で利用したり、また、アンテナや基地局制御装置などを共同で利用したりするのが一般的。コアネットワークといわれる基幹回線網(交換機同士を結ぶ回線)の共同利用もありうる。この手法により、基地局設置や次世代規格への移行などの投資負担を軽減できる。
(寄稿)

識者が読者に推薦する1冊

World Bank Group〔2016〕"World Development Report 2016: Digital Dividends"

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。さらなる発展のために必要なことは何か。

自国での技術蓄積がアフリカにさらなるイノベーションを生む

田中秀和

レックスバート・コミュニケーションズ株式会社代表取締役

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新技術で革新的サービス、技術者の実務経験、先進国との協力、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)

 アフリカでは若者を中心にスマートフォンが普及しつつある。ITを学ぶ学生が増え、ICTを活用した新しいものを作り出そうというエネルギーが社会に生まれている。ケニアのモバイル送金サービスM-Pesaや、ルワンダでZiplineが行うドローンによる輸送事業など、新技術を応用して現地の課題を解決する革新的なサービスが数多く登場している。これらの取り組みの多くは、先進国と協力することで実現しており、アフリカの技術発展に大きく寄与している。

 他方、アフリカ自身の手でICTを活用してイノベーションを生みだすには、まだ時間がかかる。多様なシステムを企画・開発するには、技術経験を持つ開発者の層の厚さが重要だが、まだまだ足りないからだ。いまのアフリカに必要なのは、ITを学んだ人が「職を持ち、経験を積む」ことである。グローバル市場で求められるサービスの品質も、技術者が実務経験を通して「感覚知」として身に着ける以外にはない。

 今はIT大国の中国も、先進国のオフショアや下請けを経験してきた。アフリカ諸国も、ICTサービスが広がる今こそ、自国内での開発の経験を重ね、技術の蓄積をして、力を蓄えるときだ。われわれは、ルワンダでオフショア開発事業を行い、現地の技術者に職を提供している。技術者が多くの開発を経験し、国内で抱える課題を自分たちで解決できるように育つことが目標だ。幸いなことに、アフリカには、先進国企業の進出を積極的に受け入れる姿勢がある。先進国とアフリカが一緒になって開発を進めるやり方を見つけることができれば、ビジネスとしても成功し、アフリカの発展にもつながる。

 アフリカと一言でいっても、54の国があり、国ごとに言語や文化、歴史の違いや競争がある。近い国同士は歴史的に感情的な衝突もある。アフリカの発展は、他より一足早く成長した国が、少しずつ周辺国を巻き込みながら、結果的に1つのそれなりの規模を持った市場やサービスができていくという展開になるのではないか。将来的には、それらの市場やサービス間の連携をとるようなビジネスやサービスが生まれ、イノベーションの果実がアフリカに行き渡ることが期待される。その意味でも、「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」の発効は、成長の機会になるだろう。

識者が読者に推薦する1冊

服部正也〔2009〕『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』中公新書

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製造業の生産性向上がカギを握る

アシュラフ・パテル

インスティテュート・フォー・グローバル・ダイアログ(IGD)シニアリサーチアソシエイト

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イノベーションハブの始動、ICTによるサービス化の急進、未発達な製造業

 アフリカの多くの国で、ICT関連のイノベーションハブが始動しつつある。ケニアのシリコン・サバンナ、ケープタウンのシリコン・ケープやCiTiなどがその代表例だ。とりわけ、政府部門の電子化は、ガバナンス全体を向上させるだけではなく、市民の政治参加や、行政の説明責任能力を促進させる。ビッグデータを活用するようになれば、健康、公営住宅、都市計画、交通システムなどの政策決定に大きな効果がある。

 一方で、アフリカは、かつての先進国やアジアの成長モデルとは異なり、経済発展する上で大きな矛盾を抱えている。それは、製造業の発展段階をスキップして、サービス化に一気に進んでしまったという点だ。過去20年、農村から都市へ大量に流れこんでいる労働者の就業先は、製造業ではなくサービス業であり、その流れを後押しているのがICTであることは紛れもない。発展途上国における製造業の発達は、本来は、雇用創出の要であり、貧困を減らす非常に重要なファクターである。国内の所得格差を解消させる上でも、製造業が発達することが望ましい。

 ハーバード大学ダニ・ロドリック教授は、アフリカ経済の異質さを、「金融業はグローバル市場に統合されているが、製造業は先進国のサプライチェーンにつながっていない」と指摘する。アフリカの製造業の1人当たりの付加価値は、アジア地域やラテンアメリカよりも低く、素朴な財の生産にとどまっており、これでは、グローバルなサプライチェーンの仲間入りをすることはできない。先進国の生産プロセスに組み込まれるためには、付加価値の高い財の提供が不可欠である。付加価値の高い財を生産する先進国は、部品であっても付加価値の高いものを求めている。

 現状から脱却するには、堅実、かつスマートな産業政策を実施することだ。政府は研究開発に対して投資を増やし、後押しをする。また、技術革新やロボット化を活用して、工場のシステムを改善し、スマートファクトリーを実現することも必要だろう。それにより、アフリカ地域のバリューチェーンの改善や中小企業の成長が見込める。さらに、労働者の訓練やスキルアップの環境整備も求められる。製造業の確立なくして、アフリカが中国のようなIT大国にはなりえないだろう。

識者が読者に推薦する1冊

Carlos Lopes〔2019〕"Africa in Transformation: Economic Development in the Age of Doubt" Palgrave Macmillan

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。さらなる発展のために必要なことは何か。

日本はICTでアフリカとのウィンウィン関係を飛躍させよ

横山正(*)

アフリカ開発銀行アジア代表事務所所長

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膨大な開発課題がICT活用のチャンスに、ICT大国地域の可能性、日本に期待されるビジネス展開

 アフリカは、基礎インフラの不足、貧困、失業に加え、医療衛生保健、教育、金融分野でのアクセスが不足する等、広範な開発課題を抱えている。アフリカは日本の約80倍の面積を有する広大な大陸からなる。人口密度は高くなく、日本の8分の1ほどだ。人やモノの移動、送配電、通信、サービス供給の各面で、物理的に連結させることは容易でない。しかしその開発課題は、潜在性とコインの表裏をなしている。課題克服への需要も膨大であり、大きなビジネス投資機会が存在する。

 ここで大きな役割を果たしえるのがICT、デジタル技術である。ドローン、航空、衛星、リモートセンシング関連の技術は、広大で人口密度の高くない大陸での課題克服の可能性を広げる。先進国とは異なる制度・規制環境の下、また、レガシーが必ずしもないことが、これらの技術の活用に追い風となりえる。アフリカは、ICT等の技術を活用した革新的方法で開発課題を解決し、また、第4次産業革命を急速に実現し、ICT大国地域となる可能性を秘めている。リープフロッグの成長を遂げる大きな潜在性を有しているのである。

 ICT技術のビジネス活用例としては、銀行口座を有さず、物理的決済網も張り巡らすことなく、携帯電話等を通じた電子マネー送金や貯蓄が普及し始めている。多くの地域で住所付番がない中、携帯電話等の位置情報(仮想住所)を活用したモノ、サービスの配送・提供も始まっている。遠隔地への医療、教育サービス(画像診断、オンライン教育等)の提供も可能となってきている。また、多くのスタートアップが生まれている。

 日本に期待されるのは、ICT等の技術も活用したビジネス展開である。現地の課題や需要を理解し、利用可能な技術で解決策を提供すれば、多額の資金を要しなくてもビジネスとして成立するものは多々あろう。また、雇用創出、人材育成も期待される。

 少子高齢化が進む日本と若い労働力が豊富なアフリカは、補完関係にある。アフリカ発のビジネスモデルの中には、逆に日本で活用できるものもあろう。TICAD7を機に、令和元年が、日本の官民でアフリカの開発課題の克服に貢献しつつ、その成長の果実を共有するといったウィンウィン関係飛躍の「元年」となることを期待したい。(寄稿)

(*)肩書は原稿執筆時点。

識者が読者に推薦する1冊

アフリカ開発銀行ウェブサイト「Information & Communication Technology」(ICT分野への取り組み関連ページ)

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)NIRA総合研究開発機構(2019)「アフリカ経済の今」わたしの構想No.43

データで見る

  • 海外からアフリカへの直接投資額の推移(フロー、1990年–2018年)

    出所)「直接投資残高上位5か国と日本」における日本の計数(2018年)は、財務省「本邦対外資産負債残高(地域別)」、及び為替レート(2018年末110.40円/米ドル)をもとに作成。それ以外の計数は、UNCTAD,“World Investment Report 2019”をもとに作成。

    付表

  • アフリカのテックハブ(2018年)

    注)「テックハブ」とは、インキュベーター、アクセラレーター、ファブラボ、ハッカースペース等、技術系のスタートアップ企業をサポート、育成するための物理的な場所(NIRA記)。
    出所)Maxime Bayen.“Africa: a look at the 442 active tech hubs of the continent” GSMA, 22 Mar, 2018. https://www.gsma.com/mobilefordevelopment/blog-2/africa-a-look-at-the-442-active-tech-hubs-of-the-continent/(2019年7月16日アクセス)

  • 世界地域別にみた人口1人当たりの製造業付加価値額(名目、2017年)

    注1)各地域の製造業付加価値額の総計を、各地域の人口計で割った数値。国によっては2017年以外の直近データも含む。
    注2)中国(アジア太平洋に含まれる)の1人当たりの製造業付加価値額は2,567ドル。米国(北アメリカに含まれる)は6,684ドル。
    出所)G.Ibrahim, W.Simbanegavi, A.Prakash, W.Davis, W.Wasike, A.Patel (2019) “Industrial Development and ICT in Africa: Opportunities, Challenges and Way Forward” https://t20japan.org/wp-content/uploads/2019/03/t20-japantf5-3-industrial-developmentict-africa.pdf を参考に、World Bank, “World Development Indicators” をもとに作成。

    付表

  • サブサハラ・アフリカの国民総所得(GNI)の推移(1960年–2018年)

    注)マーカー付き折れ線は、サブサハラ・アフリカ、世界の国民総所得(名目総計、米ドル表示)を、1960年を基準に指数化したもの。
    出所)World Bank, “World Development Indicators”をもとに作成。

    付表

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構
編集:神田玲子、榊麻衣子、北島あゆみ、山路達也
※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

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