論文NIRAモノグラフシリーズNo.34 2012.07.01 社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服シルバー民主主義を超えて この記事は分で読めます シェア Tweet 八代尚宏 総合研究開発機構客員研究員/国際基督教大学客員教授 島澤諭 総合研究開発機構主任研究員 豊田奈穂 総合研究開発機構主任研究員 概要 少子化、高齢化の急速な進行の下で、社会保障制度を通じた世代間格差の拡大が大きな問題となっているにもかかわらず、給付と負担の均衡回復のための抜本的な改革が行われていない。こうした背後には、政治的な存在感を増している高齢世代の利益に配慮し、高齢者にとって負担増となる制度改革を先送りする政治のあり方がある。 このような問題意識のもと、NIRAでは「世代間公平性プロジェクト」を立ち上げた。 本モノグラフは、このプロジェクトの一部として、おおまかな事実関係と問題意識を示すため、第1に、世代会計の手法を用いて、現在世代の内の引退世代と現役世代、および現在世代と将来世代との2つの世代間格差に注目し、「生涯純税負担率」の概念を用いて、その規模を推計した。第2に、今回の「社会保障と税の一体改革」で予定されている消費税率の引き上げが、世代間格差の縮小に大きな効果を及ぼさないことを示した。第3に、日本について、高齢者の増加の地方政治への影響や高齢者の投票行動等の「シルバー民主主義」の実態についても数量的分析を行った。 しかし、長期的に見れば、現役世代と高齢世代との利害対立は避けられないものではない。政治的に大きな影響力を持つ高齢者の行動は平均以上に利他的であり、将来世代への配慮も大きい。また、近い将来の社会保障制度破綻のリスクを十分に認識すれば、高齢者にも理解を得られる社会保障制度改革を通じた、世代間の調和を図ることができる。 全文を読む INDEX 目次1. はじめに2. 世代間格差の実態と財政の持続可能性 (1)日本の世代間格差の実態 (2)一般政府財政の持続可能性3. 高齢化と投票行動4. 高齢者の社会保障制度に対する選好5. シルバー民主主義は存在するのか6. シルバー民主主義を超えて7. おわりに図表図表1 2010年基準の生涯純税負担率の推計結果(現在世代)図表2 2010年基準の生涯純税負担率の推計結果(将来世代)図表3 年齢別投票率図表4 有権及び投票者の高齢化(%)図表5 平均年齢と中位年齢の将来推移(歳)図表6 社会保障給付と負担図表7 選挙で考慮した問題(第22回通常選挙)図表8 シルバー民主主義の影響図表9 年齢階級別にみた社会保障の給付と負担のあり方について(%)図表10 世代別の寄付金額図表11 今後、政府の政策全般において高齢者や若い世代に対する対応をどのようにしていくべきだと考えるか図表12 社会保障制度の水準や負担のあり方付図 世代間格差等に関するイメージ付表1 2010 年基準の生涯純税負担率の推計結果(シナリオ 1)付表2 2010 年基準の生涯純税負担率の推計結果(シナリオ 2)付表3 2010 年基準の生涯純税負担率の推計結果(シナリオ 3)付表4 使用データの記述統計量 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)八代尚宏・島澤諭・豊田奈穂(2012)「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服―シルバー民主主義を超えて―」NIRAモノグラフシリーズNo.34 シェア Tweet ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ