柳川範之
総合研究開発機構理事/東京大学大学院経済学研究科准教授
森直子
総合研究開発機構主任研究員

概要

 
アジア地域が「世界の工場」として注目を集めて久しいが、近年は、急速な経済成長を背景とした旺盛な消費意欲に勢いづく「世界の市場」としての期待が高まっている。しかしその一方で、急速な経済成長を続けるアジア諸国の将来性に対する不安感も聞かれるようになってきた。
 NIRAでは、2009年10月に刊行した報告書『アジアを「内需」に』において、アジアの消費の中心となる中間所得層等(注1)が急速に増加する姿を示したところである。今回のシミュレーションでは、前回提示したアジア各国の過去の成長トレンドが今後も持続すると想定する「経済成長持続ケース」に加えて、中国とインド両国の経済成長が低成長になったケース、また、中国とインドは低成長になるが、その他のアジア諸国は基準シナリオよりも高い成長率を維持するとしたケースの2つのシナリオを追加してシミュレーションを行った。
 その結果、中国とインドが低成長になった場合、当然中間所得層以上の人口の伸びは小さくなるが、それでも巨大市場が出現することには変わりはなく、将来の大規模消費市場としてのアジアの重要性が再確認された。

INDEX

目次

Ⅰ. 基準シナリオ:経済成長持続ケース
Ⅱ. シナリオ2:中国とインド経済が急激にダウンしたら?
Ⅲ. シナリオ3:中国とインド経済はダウン、他は好調だとしたら?
<参考>

図表

図1 基準シナリオ:中間所得層+高所得層の推移
図2 基準シナリオ:中間所得層の推移
図3 シナリオ2:中間所得層+高所得層の推移
図4 シナリオ2:中間所得層の推移
図5 シナリオ3:中間所得層+高所得層の推移
図6 シナリオ3:中間所得層の推移

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)柳川範之・森直子(2010)「アジアの「内需」を牽引する所得層―景気が失速しても、中間所得層の拡大は大きい―」NIRAモノグラフシリーズNo.31

脚注
1 所得階層の定義:ここで、「中間所得層」とは世帯可処分所得5,000ドル以上35,000ドル未満、「高所得層」は世帯可処分所得35,000ドル以上を意味している。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

研究の成果一覧へ