鈴木和哉
国際協力機構地球環境部環境管理グループ環境管理第1課長
浅沼信爾
一橋大学国際・公共政策大学院客員教授

概要

 所得不平等が拡大せず「Pro-Poor」であったといわれる東アジアの経済発展だが、1990年代に入って都市部と農村部の所得格差(農工格差)が拡大している。この格差是正のための政策次第では経済発展の過程にネガティブな影響を与える懸念がでている。
 この都市・農村部の格差、農工格差を是正するためには、アジアの農業開発をさらに進める必要があるが、「緑の革命」が終焉するなかで取り得る政策は限定されている。農工間格差是正を目的として多くの東アジア諸国で様々な農産物価格支持政策をとっているが、こうした施策はグローバリゼーションに逆行するものであるという課題も抱えている。日本や韓国をモデルに形成されてきたアジア・モンスーン地帯に特徴的な労働集約的、零細・小農のビジネス・モデルを大胆に大規模農場ベースの労働粗放的な農業ビジネス・モデルに変革する政策努力が求められる。

INDEX

目次

はじめに
1. 東アジアの経済発展
2. 経済格差の出現
3. 東アジアの農業をどうするか
結論として

図表

表1 アジアの貧困と不平等
表2 農業人口と人口当たり付加価値
表3 農地面積と穀物収量
表4 農業保護政策

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)鈴木和哉・浅沼信爾(2008)「東アジアの経済発展と格差問題」NIRAモノグラフシリーズNo.13

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