谷口将紀
NIRA総合研究開発機構理事長/東京大学大学院法学政治学研究科教授
大森翔子
NIRA総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員

概要

 無作為抽出法により調査者を抽出する面接調査・郵送調査と比較して、インターネット調査は、概して費用が安いため、幅広く利用されるようになっている。しかし、インターネット調査には、特にサンプルの代表性について疑義が呈されてきた。
 本プロジェクトでは、インターネット調査回答者の特性を明らかにするために、無作為抽出に基づく面接調査と、性別・年齢層で回収目標数を割り付けたインターネット調査を、同一の調査項目で、かつ、全く同じタイミングで実施し、両者および国勢調査との比較を行った。
 分析の結果、国勢調査結果と比較して、インターネット調査には居住地域や学歴といった項目で偏りが見られたほか、面接調査にも持ち家率に偏りが見られた。また、国勢調査の調査票情報を用いた傾向スコアに基づく補正を行ったところ、基本的属性での補正には限界がありながらも、インターネット利用時間等の変数に対しては一定程度の補正効果があることがわかった。

INDEX

ポイント

●インターネット調査回答者の特性を明らかにするため、NIRA総合研究開発機構では、同じ質問項目によって構成される面接調査とインターネット調査を同時に実施し、両者および国勢調査結果との比較を行った。

●性別と年齢による割り付けを行った場合においても、インターネット調査の回答者には、国勢調査の人口構成よりも大都市居住者が多く、学歴も高い傾向がある。また、サティスファイサー(Satisficer、省力回答者)と呼ばれる、でたらめな回答を行う者が9~16%含まれる。

●無作為抽出に基づいて実施した面接調査にも、日本人全体と比べて安定した居住環境にある人が過大代表されやすいバイアスがある。すなわち、実際よりも持ち家率が高く、転居せずに同じ場所に住み続けている人の割合が高い。

●国勢調査データを基に、傾向スコア法という補正方法を用いてインターネット調査に重みづけを行ったところ、面接調査・インターネット調査ともに長期的党派性(政党支持率)、内閣支持率、生活満足度、景況感などの分布には大きな変化は見られなかった。一方で、1日当たりのインターネット利用時間の平均値には面接調査で15分以上、インターネット調査でも数分程度の補正効果が生じた。

●本プロジェクトの結果、今後の社会調査に対する示唆としては、以下の諸点を挙げられる。

①無作為抽出に基づく調査、特に面接調査を行う場合には、質問項目に居住形態や移転の有無など、国勢調査と同一の項目を含めておき、レイキング法などの事後補正を行うことで、バイアスを一定程度補正できる。

②インターネット調査を行うときには、事前に回収目標数の割り付けを行うだけでなく、サティスファイサーを取り除いた後に少なくとも性別・年齢・居住地域の構成比が国勢調査とそろえられるように、回収目標数を多めに設定しておくとよい。

③インターネット調査によって計測したい事柄が、調査回答者(調査モニターに登録するような)インターネットユーザーであることによって影響される場合(例、テレワーク利用動向、メタバース普及率など)は、インターネット利用時間などを実際の統計に合わせ、適切な事後補正を施すべきである。

④1回限りのインターネット調査で「知りたいもの」を計測できるという過度な期待はしないほうがよい。同一方法での調査を繰り返すことにより、前回との変化(例、内閣支持率の増減)を通じた世論の「観測」や、バイアスの傾向(例、調査に基づく得票率予測と選挙結果の差)理解を通じた世論の「推測」が可能になる。

目次

第1章 はじめに
第2章 研究方法
第3章 分析と結果
第4章 結論と暫定的対策

図表

表2-1 本プロジェクトの調査概要
表2-2 基本的属性項目における調査間の差異
表2-3 基本的属性項目以外における調査間の差異
表2-4 国勢調査サンプルデータの記述統計
表3-1 Aデータと面接調査データをマージしたロジスティック回帰分析結果:モデル1
表3-2 モデル1を用いたAデータの補正前・補正後の分布と平均(面接調査データに合わせた補正)
表3-3 Aデータと面接調査データをマージしたロジスティック回帰分析結果:モデル2
表3-4 モデル2を用いたAデータの補正前・補正後の分布と平均(面接調査データに合わせた補正)
表3-5 面接調査データと国勢調査サンプルデータをマージしたロジスティック回帰分析結果
表3-6 面接調査データの補正前・補正後の分布と平均(国勢調査サンプルデータに合わせた補正)
表3-7 インターネット調査データと国勢調査サンプルデータをマージしたロジスティック回帰分析結果
表3-8 インターネット調査データの補正前・補正後の分布と平均(国勢調査サンプルデータに合わせた補正)

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)谷口将紀・大森翔子(2022)「インターネット調査におけるバイアスー国勢調査・面接調査を利用した比較検討」NIRA総合研究開発機構

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