伊藤亜聖
NIRA総合研究開発機構上席研究員/東京大学社会科学研究所准教授

概要

 新興国・途上国で情報端末が普及したことで、各国の経済社会は急速にデジタル化しつつある。現地の各国政府も新たな開発構想に着手し、外資企業への期待も大きく様変わりしつつある。この趨勢の中で、日本政府、日本企業はいかなる役割を果たし得るのか。本レポートでは、まず、2020年以降の新興国デジタル化の主な動きを整理したうえで、後半で「共創パートナーとしての日本」の役割に着目する。とりわけ経済面での関与のあり方として①開発構想への参画、②研究開発、③市場開拓、④現地企業への出資と戦略提携、⑤日本への還流-の5つのチャンネルを検討する。

 日本企業は新興国・途上国のスタートアップ企業への投資や現地でのビジネス創出の取り組みに着手している。特に介護や医療など「課題先進国としての日本」の側面が、デジタル化の時代にも生きてくる可能性が示唆される。しかし同時に、東南アジアやインドを事例として取り上げてみると、急速に拡大するニーズに対して、日本の取り組みが十分とは言えず、日本の存在感が低下する懸念もある*

INDEX

はじめに~問われるデジタル化時代の役割

 近年、プラットフォーム企業の台頭に象徴されるようにデジタル経済が躍進してきた。コロナ危機の中で感染症対策の観点からも行政手続き、企業活動、そして消費行動の各面で一層のデジタル化が進みつつある(注1)。日本国内に目を向けてみると、2020年に見られたコロナ対策の遅れの中で、デジタル技術の社会実装の遅れが広く認識され、202191日のデジタル庁発足に象徴される政策的なてこ入れが始まっている(注2)

 本レポートで考えたい課題は、国外、とりわけ新興国・途上国でもデジタル化が進む中で、日本にどのような役割があり得るのか、である(注3)

 振り返ってみると、戦後日本は、経済復興を迎える中で1960年代以降、再びアジアを中心として対外経済活動を再興していった。当初は「政府開発援助の提供者としての日本」という役割から再出発した(図表1)。そして、1980年代以降にプラザ合意による円高に加えて、アジア諸国側に工業化の波に乗ろうという機運が生まれた際には、「先進工業国としての日本」の役割を果たし始めた。アジア諸国に直接投資し、工場を立ち上げて雇用を創出し、製造現場でノウハウを移転していった。さらに、2000年代以降には、環境対策や少子高齢化といった面で先行して社会課題の転換に直面してきた日本は、「課題先進国としての日本」と呼べる役割を果たしてきた。

 では、デジタル化の時代にはいかなる立脚点があり得るのか、考えるべき時期を迎えている。

図表1  新興国論の系譜と日本のアプローチ

(出所)拙著『デジタル化する新興国』図表1-3に加筆。

 国際比較をすると、日本国内でのデジタル技術の社会実装が遅れているという点が広く指摘されるようになっている(注4)。この事実を踏まえたうえで、新興国に向けて、どのようなアプローチがあり得るか。考えられるのは、デジタル化が新興国・途上国にもたらす正負の両面に目を向け、「共創パートナーとしての日本」という役割を強化・実現するアプローチである(注5)。ポジティブな面ではデジタル技術を利活用して新興国の諸課題を解決し、そしてビジネスチャンスもつかみ、同時に、新興国における試行錯誤から学びつつ、デジタル化が立ち遅れている日本にも還流する。一方で、負の面に目を向けると、例えばデジタル化が労働市場で社会保障制度が適用されない雇用を増加させる。この問題に対応するため技能トレーニングへの支援が考えられる。また新興国ではフェイクニュースの問題が一層深刻で、また権威主義体制とデジタル技術が融合して「監視社会化」が進むといった問題からも目を背けることができない。さらにAI(人工知能)の開発原則と軍事利用、データの越境移転などの面では、いまだ国際ルールが形成途上であり、日本としても国際的な議論に積極的に貢献することが期待される。

 本レポートでは、前半で直近の新興国デジタル化に関わる変化を整理する。そのうえで後半ではデジタル化が新興国の可能性を広げるポジティブな面に着目して、日本企業と日本政府がどのような取り組みを進め、そこにどのような潜在性と示唆、そして課題があるのかを検討する。

1.コロナ拡大以後の新興国デジタル化

1-1.ASEAN・インド発の有力企業の台頭

 コロナ危機以降、デジタル化が一層加速する中で、新興国でも新たな動きが見られる。1つの論点はグローバル・プラットフォーム企業への規制強化と、新興国企業の上場・合併の動きである。新興国発のプラットフォーム企業が一層台頭する予兆が見られている。

 2021年7月には、G20財務大臣・中央銀行総裁会議がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を含む巨大多国籍企業への課税について大筋合意に達した(注6)。原案では売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、利益率10%で線引きし、超過利益部分に対して市場・ユーザー国側に課税権が設定される。これは自国発の地場系プラットフォーム企業を有さず、一方で多数のプラットフォームユーザーを抱える新興国には、新たな税収基盤を提供する可能性がある(注7)

 同時に新興国ではユニコーン企業の更なる増加、そして地場企業の株式上場や合従連衡の動きが加速している。20215月にインドネシアでは、有力スタートアップ企業ゴジェックとトコペディアが事業統合し、新会社GoToグループを設立することが発表された(注8)。両社を合計すると2020年の企業価値は約2兆円、月間アクティブユーザー(MAU)1億人、年間決済数18億件の規模に達する(注9)。同社はニューヨーク証券取引所とインドネシア証券取引所への重複上場を目指していると報道されている(注10)。またインドではユニコーン企業の数が2020年以降に急増しており、20219月時点で57社に達した。現地のフードデリバリー大手のゾマトが20217月に国内の証券取引所に上場し、決済サービスを展開するペイティーエムも上場を準備しているとされる。業界分布で見ても、これまでの一般消費者向けビジネス(B to C)から、中小企業や業者を顧客とする企業間取引(B to B)の台頭が始まっている(注11)

 東南アジア、インドとは対照的に、プラットフォーム企業の台頭やB to Bビジネスも含めた成長という意味で、デジタル経済が成熟してきた中国では、プラットフォーム企業への規制が強化されてきた。2020年秋のアントフィナンシャル上場延期に加えて、滴滴出行(ディディ)が20216月にニューヨーク証券取引所に上場した直後に、中国政府からデータセキュリティの観点から調査を受け、中国国内のアプリストアでの新規ダウンロードが停止された(注12)。習近平政権は共同富裕を新たなスローガンにしつつあり、2010年代には成長の一途をたどったプラットフォーム企業に対してより厳しい態度を取るようになっている。

1-2.ミャンマー、アゼルバイジャンに見る技術運用

 デジタル化には新興国の脆弱性を深めてしまう負の側面もある。労働市場が流動化し、フェイクニュースの流布や監視社会化といったネガティブな面も深刻化している。過去1年を振り返ると、フードデリバリー宅配人の労働環境への関心の高まりに加えて、政治や軍事の面でも、デジタル化が内包する脅威を見せつけられた。

 コロナ危機の中で、とりわけ都市部ではフードデリバリーは生活の一部となった感がある。こうした中で20218月末、シンガポールのリー・シェンロン首相は、プラットフォーム企業から単発の仕事を請け負うギグワーカーの保障を強化する方針を打ち出した(注13)。プラットフォーム企業による傷害補償の義務化や年金への拠出が検討される見込みである。デジタル経済の拡大によって増えてきた社会保障制度の外側での雇用を、公的保障の枠内へと取り込もうという発想である。デジタル経済でのインフォーマル雇用が、よりフォーマルな雇用へと転換する兆しなのか、注目される。

 政治面では、ミャンマーで202121日に発生した国軍によるクーデターの直後、フェイスブックを中心としてSNS(ソーシャルメディア)上で国民による抗議活動がシェアされた。人々が抗議の歌を歌いながら行進する様子は多くの人々に勇気を与えるものだった。しかし、国軍は24日にプロバイダー各社に対してフェイスブックをはじめとするソーシャルメディアの遮断を命令し、それ以降の接続は不安定となった(注14)。権威主義体制でのインターネット管理の生々しさが示された事例であった。

 デジタル技術の軍事運用も進んだ。20209月から10月にかけて、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争地ナゴルノカラバフでの軍事衝突では、AI技術を搭載したドローンが導入された。新兵器を積極的に活用したアゼルバイジャン軍が勝利し、長らく実効支配できていなかった地域を奪還したのである。アゼルバイジャン軍がトルコ製の軍事用ドローンを導入したことで、ロシアが提供したアルメニア軍の対空防御網が無力化されたと分析されている。係争地での軍事バランスが変化し、今後、小国間での軍事衝突が増える可能性が指摘されている(注15)。またこのニュースは自律型致死兵器システム(Lethal Autonomous Weapons Systems, LAWS)の実戦投入と拡散への懸念にもつながるだろう。

 こうしたなかで、日本の政府、そして企業は、デジタル化が新興国にもたらす正、負の両面に目を向けて、「共創パートナーとしての日本」という役割を果たしていくことが求められる。

2.可能性を広げるための5つの経路

 以下ではデジタル化が新興国に与える正負両面の影響のうち、現地の課題解決や経済発展に寄与する正の側面に焦点を当て、日本企業と日本政府の関与のあり方を考えてみたい(注16)

 ビジネスの立ち上がり方に即して考えると、すでに進みつつある取り組みも少なくない。これらの動きを整理してみると、①国家の開発構想への参画、②研究開発、③市場開拓、④現地企業への出資と戦略提携、⑤日本への還流、以上の5つのパターンに新興国デジタル市場へのアプローチを整理できる(図表2)

図表2  新興国デジタル化への経済的関与のアプローチ

(出所)筆者作成。

 第1のアプローチは、新興国の政府や経済団体との政策対話や協力合意といったチャンネルからデジタル開発構想への参画を進め、情報収集を強化する動きである(注17)。この観点では日本政府は特に東南アジア諸国および東南アジア諸国連合(ASEAN)を通じたチャンネルの開設を先行させてきた。中でもタイは、これまでも日系企業進出の重要な拠点の1つとなってきたことから取り組みが先行してきた。タイ政府は「タイランド4.0」をスローガンとして、スマート製造業やデジタル経済の振興を目指してきたが(注18)、こうした政策動向を受けて、両国政府は201767日「東部経済回廊(EEC)およびタイ産業構造高度化に関する覚書」に署名している(注19)。日本の経済界でもタイ政府が重点事業としたEECへの関心は高く、201810月に日本貿易振興機構(ジェトロ)とEEC事務局との間で、投資促進の覚書が締結されているほか(注20)、三菱電機はEECでの工場自動化(ファクトリーオートメーション)のデモ施設の設置を進めてきた(注21)。タイ・バンコクにおける分厚い日系企業の集積を背景に、後述する日系スタートアップ企業向けのイベントも先行して立ち上がっており、日本の対新興国デジタル化戦略を考えるうえでの1つの先行実験地域とも捉えられる(注22)

 日本政府はインド政府との間でも複数のパートナーシップを結んでいる。201810月の「日印デジタル・パートナーシップ」では、バンガロールに「日印スタートアップハブ」を開設することや、日本のテクノロジー展示会CEATECにインドスタートアップを招聘するといった項目が含まれた(注23)20211月にはシンポジウム「日本インドデジタル大動脈パートナーシップ」が開催されるなど、コロナ下においてもビジネス情報の共有を目指しており、交流の場が、新たな事業の促進につながることが期待される。

 関連した取り組みとして、日アセアン経済産業協力委員会が主体に進めている「イノベーティブ&サステナブル成長対話」(Dialogue for Innovative and Sustainable Growth, DISG)がある(注24)。これは、日本とASEAN協力の下で、デジタル技術を活用したイノベーションを通じた更なる成長力の強化と持続可能な経済成長の実現を達成するために、何ができるか、日本とASEANの産学官の関係者による対話の枠組みである。ASEANと言っても置かれている状況は各国がそれぞれ異なることに鑑みれば、例えば国ごとにこうした対話を設けることも重要だろう。

 第2のアプローチは、日本企業が新興国にデジタル分野やイノベーション分野において研究開発拠点を開設する動きである。2017年から2019年頃にかけて特に活発化したのは、中国のイノベーション都市への拠点設置であった。杭州にはイオングループの開発拠点が設置され(注25)、京セラが深圳に京セラ(中国)イノベーションセンターを設置した(注26)

 第3のアプローチは市場を開拓するアプローチである。NECはインドの生体認証システム「アドハー」に指紋認証技術・顔認証技術を提供しており(注27)、新興国デジタル化の裏側を日本企業が支えている代表的な事例と言えるだろう。市場の開拓は、要素技術の提供ほかにも、社会実装の拠点を開設したり、日本国内で展開済みのサービスを現地で実証実験することも含まれる。富士フイルムはインドにがん検診を中心とした健診センターを開設しており、日本国内では規制上の問題で実装に障害がある新サービスを新興国で試そうとする事例である(注28)。経済産業省は東南アジアとインドでの企業による実証実験を支援する事業を立ち上げており、詳しくは次節で取り上げる。スタートアップ企業の海外展示会への参加支援や、現地大手企業(財閥)とのマッチングについては、バンコクの駐タイ日本大使館でエンバシーピッチ(Embassy Pitch)と呼ばれる興味深い取り組みがあったほか(注29)、日本貿易振興機構(ジェトロ)はグローバル・アクセラレーション・ハブ事業として世界各国の拠点を活用してイノベーション拠点とのつながりを深めようとしている(注30)

 第4のアプローチは、有力な新興企業に出資したり、戦略提携を深めるアプローチである。ベンチャー企業への投資はキャピタルゲインを狙うことだけでなく、投資側にとってシナジー効果が期待できる企業への戦略投資も重要である。日本、そして世界の中でも積極的にベンチャー企業に大型の出資を行っているのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SBVF)で、世界で注目を集める未上場の新興企業に、約2000億円ずつを投資するアプローチを孫正義・ソフトバンク会長は「群戦略」と呼んできた(注31)

 また現地企業との戦略提携も進んできた。中国では塩野義製薬が平安保険と戦略提携(注32)、トヨタ自動車は自動運転スタートアップ企業と提携を進めている(注33)。東南アジアでは、現地の新興プラットフォーム企業との戦略提携が動き出し、ライドシェアアプリのグラブには、ソフトバンクに加えてトヨタ自動車と三菱UFJフィナンシャル・グループが出資した。トヨタはグラブの車両への走行データから異常を検出し、メンテナンス頻度の最適化を図るといった戦略提携も行っている(注34)。また三菱UFJはグラブのユーザーやドライバーに向けての金融サービスの提供を目指しており(注35)、現地プラットフォーム企業との協業・提携によって市場開拓を目指す動きと言える。

 第5のアプローチは、新興国の活力を日本へと還流させようとするものである。例えば海外のスタートアップ企業の東京証券取引所マザーズへの上場の動きがある(注36)。上場には外国籍企業としての直接上場、日本法人を設立しての上場に加えて、米国で増えてきた預託証券による上場(外国企業が直接上場せず、株式を信託銀行等に預託し、それをもとに発行する証券を上場するスキーム)をもとにした、日本版預託証券(JDR)の仕組みを利用した上場も可能となっている。また還流の観点では、ソフトバンクビジョンファンドが1つの狙いとして明言してきたのが、海外ユニコーン企業の日本への進出支援であり、ある意味で、海外スタートアップを「黒船」として国内に呼び込むことで日本国内の社会実装を進めようというアプローチである。

3.暫定的な評価と論点

3-1.企業連携数の増加と絶対額としての不足

 それではこうしたアプローチの進捗をどのように評価できるだろうか。無論、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、新たなプロジェクトの推進に困難が生じていると考えられるため、あくまでも暫定的な評価である。

 図表3は日本総合研究所の岩崎薫里氏が企業のプレスリリース等の公開情報を基に作成した、日本企業による東南アジアのスタートアップ企業との広義の連携(出資、資本業務提携、共同開発等を含む)の件数である。2012年から2019年までに合計86件がリストアップされ、コロナ下の2020年は10件となっている。コロナ前までフィンテック、モビリティ、そして人工知能を含む新興技術領域での案件が増加してきたことが分かる。

図表3   日本企業による東南アジア・スタートアップ企業への出資および連携(件)

(出所) 日本総合研究所・岩崎薫里氏提供データより作成。2019年までの86件のデータについては岩崎薫里「東南アジアのスタートアップの進化と活発化する日本企業との連携─東証マザーズ上場を展望して─」『環太平洋ビジネス情報 RIM』Vol.20 No.76、1-37頁、2020年を参照。

 取り組みの数自体は増えてきたが、ベンチャー投資の動向からみると、絶対量として足りていないことも事実である。ASEANとインドのスタートアップ企業への投資は、総額としては2019年まで拡大してきたが、その中で日本のシェアは2016年をピークとして低下傾向にある(図表4)。総じて日本企業も新たな取り組みを増やしてきたが、量的には新興国の拡大する規模に対して、不十分であることが示されている。ベンチャー投資情報は異なるデータソースによって差があるが、別データ(Crunchbase)から東南アジア、インドへのベンチャー投資の比率を確認してみても日本の比率は低下している(注37)

 無論、金額的に増やせばよい、とは限らない。日本国内でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が多数設置された一方で、ただ投資するだけでなく目的と戦略性を持った投資案件の選定、そして時間をかけたノウハウの蓄積が求められるとの指摘もされてきている点には注意が必要である(注38)。しかしCrunchbaseデータの集計例から2020年の日本のシェアを計算すると6.1%であり、コロナ危機以後にも日本企業の取り組みは続いているものの、他のプレイヤーとの間の差が、一層広がっていくことが懸念される(注39)

図表4  主要国・地域によるASEAN・インドのスタートアップ企業への投資額推移(単位:100万ドル)

(出所) EY新日本有限責任監査法人『東南アジア等・インド地域を対象にしたアジアDX具体化に向けた実態調査』、p.49図表23データより筆者作成。元データはPreqinデータベース。

 国内への還流の面でも、進捗は限定的と言えそうである。ソフトバンクグループが支援してきた国外の技術・ノウハウの日本展開の動きでは、決済アプリPayPayの普及の事例を挙げられる。一方でソフトバンクが出資する配車アプリ滴滴出行(ディディ)は、20189月に国内でサービスを始め、25都道府県にサービス地域を広げたが、その後14都道府県に縮小した。またインドの格安ホテル大手、OYO(オヨ)も、日本市場での事業展開に苦戦している状況にある(注40)。これまでの事例からすると、海外スタートアップ企業の直接的な日本市場上陸は難度が高く、日本企業が介在したローカル化が比較的有効である可能性が示唆されている。東証への上場に目を向けてみると、20215月時点で、日本預託証券(JDR)を用いた上場は米国の半導体設計会社テックポイント、そしてシンガポールのプラスチック製造・販売のオムニ・プラス・システム・リミテッドの2社にとどまっている(注41)2021年時点で、30社程度の潜在的な案件があると報道されているが、依然として「還流」は限定的な状況にある(注42)

3-2.中国問題と経済安全保障

 もう1つの論点は、米中対立の激化による各国における経済安全保障の強化という趨勢との兼ね合いである。目下、米国、中国、そして日本においても経済安全保障の強化が目指されている。このため、新興技術領域への直接投資、技術輸出、そしてデータの越境移転に対してより厳しい規制が適用され始めている。データ管理の問題に関しては、近年、プライバシー保護の観点から、米中両国以外でも、新興国・途上国でも強化されつつある点も指摘できる(注43)

 ここで問題となるのは中国のデジタル経済、そして新興技術領域との関係である。端的に言えば、「中国は共創パートナーなのか?」という点である。中国はデジタル経済において明らかに先駆的な取り組みを進めており、文字どおりデジタル大国になっている。プラットフォーム企業が作り上げた独自のビジネスの生態系、そして活発なベンチャー企業の創業と新ビジネスの創出の面では、日本企業が協業からビジネスチャンスをつかみ、また中国における実践から学ぶべき点が数多くある。例えば日本への還流の事例としては、モバイル決済アプリのPayPayは、中国のアリババからインドのPaytmに提供された技術ノウハウが、インドから日本へと移転してきたとされる(注44)。またすでに言及した塩野義製薬と平安保険の戦略提携等、中国の有力企業との協力は進んできている。

 厳格化される規制に対して、まず直接的に求められる対応は法令・規制の順守である。こうした際の対応は、アルゴリズム(技術)の所在(日本側なのか外国側なのか)、データの所在(同じく日本側なのか外国側なのか)、そしてそれらの越境移転の有無によって変わってくる。特に関係国の技術輸出規制、サイバーセキュリティ規制の対象となるような機微な技術やデータの場合には、不要であれば可能な限り越境移転を避けるといった対応が必要となる。

 また、考えねばならないのはパートナーの選定の問題である。米中対立の激化によって華為技術(ファーウェイ)を筆頭とする中国のハイテク企業が米商務省のエンティティーリスト(EL)に掲載されてきた。背景には中国における企業と政府・党との関係の深さがあるが、具体的論点の1つとして中国政府が推進してきた軍民融合政策を挙げることができる(注45)。新興技術の多くが両用技術(民生用と軍事用の両方で活用できる技術)であり、例えばAIを導入した画像認識や、それを活用した監視カメラソリューションの領域で、中国には多数の有力スタートアップ企業が台頭してきた。これらの領域の多くの企業も、エンティティーリストに掲載されている(注46)。米国政府はこれら企業の顔認証技術が新疆ウイグル自治区での監視ツールとしても活用されている点を問題視しており、特に人権問題に深く関連付けられている。

 このように日本企業がイノベーション領域で、中国企業、そして現地子会社の研究開発拠点との関係をどのように位置付けていくかは難しい論点となっている。

4.コロナ下での模索

4-1.ADX実証実験の事例

 以下ではコロナ下での市場開拓の模索を検討するために、経済産業省が行ってきた支援事業の案件から、日本企業の潜在力を考えてみたい。支援事業はこれまでのところ「日ASEAN」と「日印」の2つの枠組みで構成されており、ASEAN地域では2020年度と2021年度に合計40件の案件が採択され、インドでも社会課題の解決に資するプロジェクト8件への支援が決定している(注47)。以下では「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」(以下、ADX事業)を取り上げ、公開情報からその概況を整理してみよう。

 図表5ASEANにおける支援事業40件の国別の内訳である。すでに触れたタイが最も多くの案件数となっており、それにマレーシア、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ミャンマーが続いている。東南アジアで、ハブとしての地位を有するとされるシンガポールに関しては、ベンチャー投資では中心地となっているが、一方で市場開拓の観点では、国内のデジタル化の進展と市場の狭隘さもあってか、比較的少数となっている。続いて図表6には業界構成を集計した(ここでの集計はジェトロの集計を基に筆者が再整理を行った)。最大の案件となっているのは医療・ヘルスケア・介護で、それに観光・モビリティ、農業、製造業が続いている。日系企業の東南アジア子会社の構成では製造業が約半数となっていることを考えると、サービス業の比率が高い(注48)

図表5  日ASEAN ADX採択案件の国別内訳

(出所) JETRO HP、2020年10月14日付記事「「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」(一般枠・特別枠)における採択事業者について」、2021年8月3日付記事「「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」第2回公募における採択事業者について」より筆者集計。

図表6  日ASEAN ADX採択案件の業種内訳(2020、21年度、計40件)

(出所)図表5に同じ。

 では具体的にはどのような案件が提案されているのだろうか。ここでは事業HPに公開されているものから、大企業、スタートアップ企業、中小企業の3つを取り上げてみたい。大企業の事例として、全体の構成から見て代表的なものは、パラマウントベッド株式会社がインドネシアの介護施設向けにIoTソリューションを提供する案件である(注49)。日本国内で展開してきた睡眠状態を記録する端末を、インドネシアで展開することを目指しているプロジェクトである。スタートアップ企業の事例としては、例えばサグリ株式会社を挙げられる(注50)。衛星情報を人工知能で分析し、デジタル地図を作成するものだが、これをタイのコメ農地に応用することを目指している。そして中小企業の事例としては株式会社エルムを挙げられる(注51)。生鮮野菜の多くを輸入に頼るブルネイで、コンテナ型の野菜栽培システムを展開するアイデアである。

4-2.日本の蓄積を生かせるか

 これらの取り組みはいまだに立ち上げ段階にあり、現時点での評価は時期尚早であろう。ただそのうえで、日本企業が新興国のデジタル分野での事業展開を考えるいくつかの示唆がありそうだ。

 第1は、いかに現地の地場企業、そしてもう一方でのプラットフォーム企業と差別化するかという点である。グローバルな事業展開をするプラットフォーム企業が競争力を持つ領域(人工知能の基礎的な開発、多数のユーザーとのマッチング等)や、逆に地場企業でこそ優位性のある領域(許認可が必要となる領域、最終ユーザーが分散的で営業にコストがかかる領域等)では、外国企業としての日系企業には限界があるかもしれない。一案として考えられるのは、国内で先行展開した業種・用途特化型ソリューションを展開していくことであろう。

 第2に、事業落とし込みの工夫である。新興国の現場にDX/IoTソリューションを落とし込んでいくうえで、医療系なら病院、福祉なら介護施設、中古パーツなら修理工場、漁業なら漁民・事業者、モビリティであれば交通機関等の現場のアクターへの営業や、これらの企業・機関との協業が不可欠となる。どのように効果的にこれらのアクターに働きかけていくことが有効かを考える必要があるだろう。

 日系企業のASEANでの取り組みから得られる示唆は小さくない。特に重要な示唆は、「共創パートナーとしての日本」の役割を考えていくうえで、これまでの日本国内での蓄積を生かしていく可能性が示されていることである。日系企業は製造業における優れた生産管理能力を生かして、「先進工業国としての日本×DX」という領域で一層の取り組みをする余地がある。同時に、医療、介護、農業といった領域で「課題先進国としての日本×DX」という「掛け算」からも、多くの事業提案が生まれつつある。また大企業だけでなく、スタートアップ企業ならではの身軽なグローバル展開や、中小企業にも海外展開の可能性が開かれている(注52)

おわりに~「共創パートナー」となるための3つの課題

 以上のように、デジタル化時代における新興国・途上国の「共創パートナー」となるうえで、日本企業は取り組みを増やしてきた。いまだ模索段階であり、依然として暫定的な評価にとどまるが、現時点で以下の問題が残っていると考えられる。

 第1に、急拡大する新興国のデジタル経済に対して、日本企業の新たな取り組みは増えつつも、絶対量としての金額と案件数が足りていない。この結果、日本企業の相対的な存在感が一層低下するリスクがある。「共創パートナー」としての立場を作っていくうえで、一定数の事業連携が継続的に行われることが望ましい。

 第2に、様々な連携を増やし、深めていくうえで、今後、各アプローチで効果的な取り組み事例を共有していくことが必要であろう。いわゆるベストプラクティスの共有である。本レポートでは、5つの経路を提示したが、それぞれに取り組みは動きつつある。今後、その成果を踏まえて、それぞれの経路の成功例を特定し、その要因を検討していくことが重要だろう。また日本政府や企業の取り組みとしては、例えばタイ・バンコクにおける取り組みが比較的先行してきたと思われるが、必ずしもその経験・ノウハウが他の新興国の拠点都市に横展開されていないことも指摘できるだろう。

 第3に、最終的には日本企業自身の組織変革も求められる。現地政府の開発構想への情報感度を高めること、研究開発拠点の開設を検討すること、出資に際しては現地部隊への一定の権限を持たせて本社と連動したオープンイノベーションの体制を構築することなど、新たな取り組みの経路に応じた組織改革を検討する必要がある(注53)。また市場開拓の面では、業種特化型の需要を掘り起こしていくためには、現地法人でのマーケティング企業が求められる。加えて日本へのソリューションを還流させるには、単なる輸入ではなく、日本のビジネス慣行とのすり合わせも必要になりそうだ。すでに述べた事例から考えても、新ソリューションの効率性を下げることなく、日本の文脈に落とし込む工夫が求められるためである。

 新興国・途上国が今後ますますデジタル化する趨勢は、不可逆的なものであろう。この潮流の中で、日本企業は各方面で一定の取り組みをしつつあるが、いまだ新興国デジタル化の潮流の中で試行錯誤の段階にある。今後、市場開拓の面でも評価できる時期にその事業効果を検討することが望ましい。

伊藤亜聖(いとう あせい)

NIRA総合研究開発機構上席研究員。東京大学社会科学研究所准教授。

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
伊藤亜聖 (2021)「共創パートナーとしての日本-新興国デジタル化時代の役割と課題-」NIRAオピニオンペーパーNo.59


脚注
* 本稿は『デジタル化する新興国 先進国を超えるか、監視社会の到来か』(中公新書、2020)の第6章の議論をベースに、『週刊東洋経済』2021925日号に寄稿した「新興国デジタル化の新局面 日本は共創パートナーになれるか」を大幅に加筆・拡張したものです。日本企業の連携案件データを提供いただいた岩崎薫里さん(日本総合研究所)に御礼を申し上げます。また本稿執筆に際して、草稿に対して岩崎薫里さん(日本総合研究所)、大泉啓一郎さん(亜細亜大学)、高口康太さん(キンブリックスナウ)、山本りりなさん(日本貿易振興機構、ジェトロ)よりコメントを頂戴しました。記して御礼を申し上げます。
1 例えば代表的なものとして、総論としては世界銀行『世界開発報告2016 デジタル化がもたらす恩恵』一灯舎(2016)、指標としてはOECD, Measuring the Digital Transformation: A Roadmap for the Future, Paris: OECD Publishing(2019)を、アジア太平洋地域の動向についてはOECD, Economic Outlook for Southeast Asia, China and India 2021: Reallocating Resources for Digitalisation, OECD Publishing(2021)を参照。
2 日本経済新聞、202191日記事「背水の行政DX デジタル庁きょう発足」。
3 2020年10月に刊行した拙著では2010年代に新興国・途上国が大いにデジタル化が進んでいることに着目した。伊藤亜聖『デジタル化する新興国 先進国を超えるか、監視社会の到来か』(中公新書、2020)を参照。
4 『令和3年版 情報通信白書』では、「我が国がデジタル化で後れを取った理由」との項目を設けて、国連経済社会局(UNDESA)をはじめとするデジタル化の国際的指標で、日本の順位が低下しつつあることを指摘している。そして順位低下の要因として①情報通信技術への投資の低迷、業務改革の欠如、人材の不足と偏在、過去の成功体験、デジタルへの不安感、リテラシーの欠如を指摘している。総務省『令和3年版 情報通信白書』2021年の序章を参照。
5 拙著、第六章参照。
6 日本経済新聞、2021年6月28日記事「デジタル課税、売上高2.6兆円で線引き OECDが原案」
7 なお、この点についてはIMFの研究チームはシンガポールや香港といった地域(「課税ハブ」)では、税収が対GDP比で最大0.15%減少し、国内市場が大きい国に与える税収増加効果は軽微となると推計している。Dabla-Norris, Era, Ruud de Mooij, Andrew Hodge, Jan Loeprick, Dinar Prihardini, Alpa Shah, Sebastian Beer, Sonja Davidovic, Arbind Modi, and Fan Qi, “Digitalization and Taxation in Asia,” International Monetary Fund (IMF) Asia-Pacific and Fiscal Affairs Departments, Discussion Paper No.2021-017を参照。
8 Techcrunch, 2021年5月18日記事「インドネシアの2大スタートアップGojekとTokopediaが事業統合、新会社GoTo Groupを設立」
9 Tokopedia HP, May 17, 2021, “Gojek and Tokopedia combine to form GoTo, the largest technology group in Indonesia and the“go to” ecosystem for dailylife”
10 Nikkei Asia, October 20, 2021,“Indonesia's GoTo bags $400 million from AbuDhabi ahead of IPO”
11 日本経済新聞、2021915日記事「インドのユニコーン急増 「オンラインBtoB」がけん引」、同20211013日記事「東南アジアでもユニコーン急増 インドを追走」。
12 関志雄「中国における民営企業への規制強化― アントグループとディディの事例を中心に独立行政法人経済産業研究所(RIETI)、中国経済新論、2021929日。
13 日本経済新聞、2021831日記事「シンガポール、ギグワーカーの保護策を導入へ」
14 ロイター通信、202124日記事「ミャンマー、フェイスブックへの接続を遮断」
15 読売新聞、20201221日記事「自治州巡る戦闘でドローン猛威、衝撃受けるロシア…「看板商品」防空ミサイル網が突破される」
16 デジタル化がもたらす負の側面については、技能教育への協力、フェイクニュース対策への貢献、サイバーセキュリティの面での協力、国際ルール策定への寄与といった論点を挙げられる。これらの面では企業よりも政府の役割が主体となるため、本稿では取り上げず、詳しくは別の機会に検討したい。
17 環太平洋パートナーシップ(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)といった多角的経済協定には電子商取引の章が設けられているが、その主眼はルール作りにあり、相互のビジネス創出の観点では、より具体的な事業案件に近い協力に着眼する必要がある。
18 大泉啓一郎「「タイランド4.0」とは何か(前編)―高成長路線に舵を切るタイ―」『環太平洋ビジネス情報 RIMVol.17 No.6691-103(2017)、および大泉啓一郎「「タイランド4.0」とは何か(後編)―EEC(東部経済回廊)開発とその課題―」『環太平洋ビジネス情報 RIMVol.17 No.6799-115(2017)を参照。
19 外務省HP201767日記事「菅内閣官房長官とソムキット・タイ王国副首相との会談」
20 日本貿易振興機構(JETRO)20181011日記事「ジェトロ、日系企業の投資促進で東部経済回廊事務局と覚書」
21NNA Asia2020921日記事「三菱電機、東部にEファクトリーのデモ施設」。関連した政策対話のチャネルとしては20208月の日ASEAN経済大臣会合にて「イノベーティブ&サステナブル成長対話(Dialogue for Innovative and Sustainable Growth, DISG)についての合意がなされている。経済産業省2020829日プレスリリース「共同メディア声明【仮訳】」
22 例えばJETROバンコク事務所はタイにおけるコンピューターサイエンス等を専攻した人材(DX人材)へのアンケート調査を行っている。JETRO「海外DX人材へのアンケート調査(タイ)」(20213月)
23 経済産業省、20181029「日印デジタル・パートナーシップに合意しました」
24 経済産業省、2020828ASEAN関連経済大臣会合が開催されました」
25 日本経済新聞、201949日記事「イオン、中国で新会社Aeon Digital Management Center」を設立」
26 京セラHP2019417「「京セラ(中国)イノベーションセンター」を深センに開設」
27 日本電気株式会社(NEC)HP20161012日記事NECが生体認証システムを提供しているインドのアドハープログラムの登録者数が10億人を突破」
28 日本経済新聞、2021125日記事「富士フィルム、がん検診を中心とした健診センターをインドに開設」
29 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「平成30年度アジア産業基盤強化等事業(タイにおける日系スタートアップのビジネス展開促進のための調査等事業)調査報告書」経済産業省委託
30 JETRO HP、「グローバル・アクセラレーション・ハブ」
31 ソフトバンクHP、ソフトバンクニュース、2018216日記事「【書き起こし】20183月期 第3四半期 決算説明会(前編)」、および後編の質疑応答を参照。
32 塩野義製薬HP20201013「塩野義製薬と平安グループとの 合弁会社設立 および合弁会社の事業計画」
33 日本経済新聞、2019826日記事「トヨタ、中国の自動運転スタートアップと提携」
34 トヨタ自動車HP20181218「トヨタとGrabの共同記者説明会」。
35 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、2020225Grab社との資本・業務提携について」
36 岩崎薫里「東南アジアのスタートアップの進化と活発化する日本企業との連携─東証マザーズ上場を展望して─」『環太平洋ビジネス情報 RIMVol.20 No.761-37頁、2020年。伊尾木智子「アジア発スタートアップに開かれる、東証マザーズIPOへの道」JETRO地域・分析レポート、202084日。
37 図表3の元データはPreqinデータベースであるが、第三国を経由した迂回投資や、大規模ベンチャー投資機関の登記地、投資額の詳細は公になっていないことから、集計には一定の影響がでている。ただし、別データであるCrunchbaseから算出された額を算出しても同様に、日本のシェアは低下傾向にある。インドおよびASEAN主要国のCrunchbaseデータの集計については日本貿易振興機構(JETRO)対日投資部対日投資課DX推進チーム「アジア新興国における競争力強化に資するスタートアップ投資に関する調査」(20214)を参照。このほかに東南アジア地域におけるベンチャー投資の情報はCento Venturesが公表するデータもある。2013年から2020年までの累計では、日本は金額ベースで、中国、シンガポール、オーストラリア、米国、インドネシアに次ぐ第六位(8.22億ドル)で、件数ベースではシンガポールとインドネシアに次ぐ第3位(45)である。Cento Ventures, “Southeast Asia Tech Investment – FY 2020” を参照。
38 次の報告書は日本企業の対新興国ベンチャー投資を考える上で非常に有用な提言を掲載している。経済産業省・PwC『「東南アジア・インドにおけるスタートアップ投資の現状と日本企業への提言」調査報告書』令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(新興国における買収及び出資の在り方に関する調査研究事業)報告書、20204(
3937で言及した資料掲載のデータより算出。
40 日本産業新聞、2021318日記事「ソフトバンクG・孫氏のAI群戦略、日本が「実験場」」
41 日本経済新聞、2021527日記事「外国企業、39カ月ぶりに東証上場 日本預託証券で」
42 日本経済新聞、2021629日記事「東証、新興アジア企業の受け皿に 30社超が上場検討」
43 越境データ移転に関する各国規制の近年の動向については、例えばUNCTAD, Digital Economy Report 2021: Cross-border data flows and development: For whom the data flow, UNCTAD (2021)、第5章を参照。
44 PayPayを開発について、中国のアリババの技術を踏まえたインドのスタートアップ企業Paytmによる支援によるものとの孫正義・ソフトバンク会長の説明は、ソフトバンクニュース、202128SBG=金の卵の製造業。金の卵を産み出す戦略 -ソフトバンクグループ株式会社 20213月期 第3四半期 決算説明会レポート」53分前後を参照。
45 軍民融合への暫定的な評価としてはKania, Elsa B., and Lorand Laskai, “Myths and Realities of China’s Military-Civil Fusion Strategy,” Center for a New American Security, Technology & National Security Report, January 2021 (, Lim Jaehwan, “Can “China Model” Compete? Evolving State Capitalism and Military-Civil Fusion Strategy,” IFI-SSU-Working Paper No.4, July 2021 を参照.
46 Tech Crunch, October 8, 2019, Eight Chinese tech firms placed on US Entity List for their role in human rights violations against Muslim minority groups
47 JETRO HP、20201014「日ASEANにおけるアジアDX促進事業 (2020年度)、同2021年8月3日「日ASEANにおけるアジアDX促進事業 (2021年度)、同2021年8月3「アジアDX等新規事業創造推進支援事業費補助金(日印経済産業協力事業)(2021年度)
48 経済産業省の海外事業活動基本調査(50, 2019年度実績)によれば、ASEAN10か国への日系企業の進出数は7,312社で、このうち製造業が49.7%にあたる3,635社、残りの50.3%にあたる3,677社が非製造業である。
49 「遠隔診療が普及するインドネシアにおけるセンシングデバイスを活用したより正確な見守りサービス事業展開に向けた実証事業」JETRO HP「「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」第2回公募における採択事業者について」より。
50「衛星データを活用したタイ王国向けコメ農地情報のデジタル基盤構築に係る実証事業」JETRO HP、「「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」第2回公募における採択事業者について」より。
51「コンテナ型栽培システム「エコナーセリー®」を活用したブルネイにおける温帯野菜の栽培技術の開発」JETRO HP、「「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」第2回公募における採択事業者について」より。
52 日本経済新聞、2021年11月25日記事「介護現場、DX競う「日本モデル」を磨く好機に」も参照。
53 経済産業省・PwC『「東南アジア・インドにおけるスタートアップ投資の現状と日本企業への提言」調査報告書』は、ベンチャー投資に関わる提言の1つとして、迅速に意思決定するための仕組み構築を挙げている。

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