データ 2021.06.01 第3回中核層調査2021年3月実施 この記事は分で読めます シェア Tweet ※以下の からはグラフが印刷できません。印刷は、グラフ右下より行なってください。 NIRA総合研究開発機構 中核層・信頼社会のアンケート調査に関する研究プロジェクトチーム 概要 先進国で所得格差が拡大し、社会意識も分断しつつあるといわれる。しかし、その反面、こうした社会の分断の圧力を緩和し、社会に積極的に関わっていく人々が社会に生まれつつあるのではないだろうか。もし、そうだとすれば、そうした人々に着目し、積極的な社会での位置づけがなされることは、民主主義の発展に寄与すると考えられる。 従前より、NIRA総研は、自らの生き方を主体的に選択し、かつ積極的に社会を支えようとする自負と責任感を持った人々を「中核層」と名付け、日本社会の将来を担う新しい人々として育成することが重要であるとしてきた。 中核層とはどのような人々で、社会のどこに存在しているのだろうか。中核層は社会の担い手として期待できるのであろうか。中核層の意識を把握するためアンケート調査を実施した。あわせて、現代日本の抱える政策課題として、今回は後期高齢者医療制度に対しての考えも聞いた。 PDFで読む INDEX 中核層の定義 中核層の定義 中核層の要件 中核層の規模 中核層のプロフィール 性別の差はない 年齢層は高め 学歴はほぼ差がない 年収はほぼ差がない 階層意識はやや高い 満足度と信頼 生活への満足度が高い 生活への満足度は高齢になるほど高い 国の政治への信頼はやや高め 国の政治への信頼は年代差なし 人への信頼が高い 人への信頼は高齢になるほど高い 政治・政策への考え 優先すべき政策課題に差はない 無党派が少ない 情報を得る頻度 テレビ視聴はやや多い ラジオ聴取はやや多い 新聞からの情報入手頻度は高い SNSの閲覧はやや多い インターネットの利用はやや多い 後期高齢者医療制度に関する考え 後期高齢者医療制度への関心はかなり高い 制度への関心は高齢になるほど高い 窓口負担の引き上げに対し意見のある人が多い 窓口負担の引き上げには若い人ほど賛成 医療費に関するクイズの正答率はやや高め 医療費の負担感にはあまり差がない 2割以上自己負担する後期高齢者の割合に対する考えには差がない パーソナリティ分析-ビッグ5- 外向性が高い 調和性が高い 誠実性はやや高い ストレス耐性はやや高い 開放性がやや高い ポイント● 「中核層」とは、自らの生き方を主体的に選択し、かつ積極的に社会を支えるという自負と責任感を持った人々。● 中核層は年齢や学歴、年収に関係なく、広く社会に存在する。つまり社会・経済的属性の必要条件はなく、だれでも中核層になりうる。● 中核層は生活の満足度や他者への信頼、情報感度が高い。また政策への関心が高く、自分の意見を持っている人が多い。● 中核層のパーソナリティは、外向性・調和性・開放性・誠実性・ストレス耐性が高めである。● 中核層は、いわゆるエリートの中にもそれ以外の人々の中にも存在し、双方をつなぐ軸になりうる人々である。社会の分断に⻭止めをかけ、将来へのビジョンを形成する中心的な役割を担うことが期待される。 調査概要• 調査対象:国内在住の20〜79歳の男女• 調査手法:インターネット調査(日経リサーチへの委託により実施)• 実施時期:2021年3月26日〜3月29日• 有効回答者数:4,238人• 性別比(男女比1:1)、年代比(20〜39歳:40〜59歳:60〜79歳が1:2:2)で割付して回収研究体制谷口将紀 NIRA総研理事長/東京大学大学院法学政治学研究科教授古田大輔 メディアコラボ代表取締役/NIRA総研上席研究員翁百合 NIRA総研理事/日本総合研究所理事長神田玲子 NIRA総研理事・研究調査部長川本茉莉 NIRA総研 研究コーディネーター・研究員(担当) 中核層の定義 中核層の定義 上下の階層や所属する組織を問わず、自らの生き方を主体的に選択した上で、社会のあり方を考えようとする人、さらに進んで積極的に社会を支えようとする自負と責任感をもった人(出典)谷口将紀・宇野重規・牛尾治朗「続・中核層の時代に向けて」 『Voice』2014年11月号 中核層の要件 アンケート調査において、下記の2つを質問。1. 「人生で難しい問題に直面しても、自分なりに積極的に解決していく」 ⇒【自らの生き方を主体的に選択】2. 「社会をよりよくするため、私は社会における問題に関与したい」 ⇒【積極的に社会を支えようとする自負と責任感】両方の質問に「強く/まあ/少しそう思う」と答えた人が中核層 中核層の規模 中核層のプロフィール 性別の差はない 中核層とそれ以外で性別の差はない。 年齢層は高め 中核層の年齢層は高めで、高齢者が多い。しかしどの年代にも一定程度存在する。 学歴はほぼ差がない 中核層の最終学歴はやや高めだが、学歴が大学・大学院卒以外にも一定程度存在する。 年収はほぼ差がない 中核層の世帯年収はやや高めだが、どの所得階層にも一定程度存在する。 階層意識はやや高い 中核層の階層意識は高めだが、4割以上が「中の中」と回答。「中の下」「下」と回答する人もある程度存在する。 満足度と信頼 生活への満足度が高い 中核層は現在の生活への満足度が高い。 生活への満足度は高齢になるほど高い 生活への満足度は、高齢になるほど高くなるが、同じ年代でも中核層のほうが満足度が高い。 国の政治への信頼はやや高め 中核層は国の政治への信頼度がやや高い。また「わからない」の回答が少ない。 国の政治への信頼は年代差なし 国の政治への信頼は、年代による差はほとんどなく、どの年代でも中核層のほうが信頼度が高い。 人への信頼が高い 中核層は他者への信頼度が高い。 人への信頼は高齢になるほど高い 人への信頼は高齢になるほど高いが、同じ年代でも中核層のほうが高い。 政治・政策への考え 優先すべき政策課題に差はない 優先すべき政策課題は、中核層とそれ以外であまり差がないが、中核層は「いずれでもない/わからない/関心がない」が少ない。 無党派が少ない 中核層とそれ以外で支持政党にあまり差はないが、中核層は無党派が少ない。 情報を得る頻度 テレビ視聴はやや多い 中核層はリアルタイムのテレビ視聴がやや多い。 ラジオ聴取はやや多い 中核層はラジオ(インターネットラジオ含む)を聴く頻度がやや高い。 新聞からの情報入手頻度は高い 中核層は新聞(電子版含む)を読む頻度が高い。 SNSの閲覧はやや多い 中核層はLINE・Twitter・YouTubeなどのSNSからの情報の入手頻度がやや高い。 インターネットの利用はやや多い 中核層は、SNS・動画以外のインターネットからの情報の入手頻度がやや高い。 後期高齢者医療制度に関する考え 後期高齢者医療制度への関心はかなり高い 中核層は後期高齢者医療制度への関心がかなり高い。9割近くが「大変/やや 関心がある」と回答している。 制度への関心は高齢になるほど高い 高齢者医療制度への関心は、高齢になるほど高くなるが、同じ年代でも中核層のほうが高い。 窓口負担の引き上げに対し意見のある人が多い 中核層は窓口負担の引き上げに対し意見を持っている人が多く、賛成の割合が中核層以外の人よりもその分多い。 窓口負担の引き上げには若い人ほど賛成 窓口負担の引き上げに対しては、若い人ほど賛成する人が多いが、同じ年代でも中核層のほうが賛成の人が多い。 医療費に関するクイズの正答率はやや高め 後期高齢者医療費についてのクイズは、全体的に正答率が高いが、中核層はそれ以外に比べてやや高め。 医療費の負担感にはあまり差がない 医療費の自己負担に対する負担感はあまり差がないが、中核層は軽いと感じている人がやや多い。 2割以上自己負担する後期高齢者の割合に対する考えには差がない 制度変更により2割以上自己負担する後期高齢者が3割となることに対する考えは、あまり差がないが、中核層は「どちらともいえない」という回答が少ない。 パーソナリティ分析-ビッグ5- 外向性が高い 中核層は外向性が高い。特に活発で外交的な人が多い。 活発で外向的だと思う ひかえめで、おとなしいと思う 調和性が高い 中核層は調和性が高い。特に人に気をつかう人が多い。 他人に不満を持ち、もめごとを起こしやすいと思う 人に気をつかう、やさしい人間だと思う 誠実性はやや高い 中核層は誠実性がやや高い。特に自分に厳しい人が多い。 しっかりしていて、自分に厳しいと思う だらしなく、うっかりしていると思う ストレス耐性はやや高い 中核層はストレス耐性がやや高い。特に冷静な人が多い。 心配性で、うろたえやすいと思う 冷静で、気分が安定していると思う 開放性がやや高い 中核層は開放性がやや高い。特に新しいことが好きな人が多い。 新しいことが好きで、変わった考えを持つと思う 発想力に欠けた、平凡な人間だと思う 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回中核層調査」 シェア Tweet 関連公表物 新たな当事者意識の時代へ 宇野重規 内田友紀 藤沢烈 米田惠美 中核層が活躍できる社会の構築 牛尾治朗 宇野重規 ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ