白石隆
政策研究大学院大学副学長/NIRA客員研究員

概要

 中国の経済的台頭は、東アジア地域秩序にどのような変化をもたらしそうか。東南アジアの国々は中国の台頭にどう対応しているのか。日本はどう対応すればよいのか。
 中国の台頭にともなって、中国中心の地域秩序が形成されつつあるわけではない。東南アジアの多くの国では、経済的相互依存の拡大とともに、中国との貿易拡大に応じて日本、米国、アセアン諸国との貿易も拡大している。また政治的には現在、マルティの地域協力はアセアン中心に進んでおり、それを踏まえた上で、各国はそれぞれの戦略によってバランスをとろうとしている。
 東アジア地域秩序「進化」のために日本がなにをなすべきか。その一つは日米同盟堅持である。世界政治の構造は現在、米国一極システムから米欧中印の4極システムに移行しつつある。このシステムで日本はおそらく一極を構成することはない。しかし、日本はミドル・パワーとしてアジアにおいて決定的な役割をはたすことができる。
 もう一つは経済協力・経済連携である。今日の世界は完全なアナキーではなく、相互依存が進展し、さまざまなかたちで世界的、地域的なガヴァナンスのしくみが形成されている。中国周辺の国々は経済的相互依存が進展すればするほど、中国への経済的依存を恐れることなく、中国との貿易を拡大することができる。また中国自身、その発展のためには、これからますます相互依存のネットワークに組み込まれていかざるを得ない。
 日米同盟堅持と相互依存の推進、これこそ地域秩序「進化」の鍵である。

INDEX

目次

1. 貿易の動向
2. マルティの関与
3. バイの動向
 (1)インドネシア
 (2)タイ
 (3)ミャンマー
4. まとめ


図表

表1 世界経済長期予測(国・地域GDP)
表2 東アジアの都市人口増加予測、2000-2030年
表3 メコン流域諸国の主要貿易相手
表4 インドネシアの主要貿易相手

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)白石隆(2008)「東アジア地域秩序の変容にどう関与するか」NIRAモノグラフシリーズNo.27

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