論文NIRAモノグラフシリーズNo.02 2007.10.01 個人宛通知による年金情報提供の強化スウェーデン「オレンジ封筒」の事例から この記事は分で読めます シェア Tweet 中嶋邦夫 ニッセイ基礎研究所副主任研究員 概要 年金制度への信頼を向上させる方策として、国民に対する年金情報の提供が近年注目されている。諸外国では、米国、スウェーデン、ドイツなどで年金情報の通知がすでに導入されているが、本稿ではスウェーデンの「オレンジ封筒」を紹介する。 スウェーデンでは1999年から、給付建てから拠出建てへの変更などを伴う大幅な年金改革が実施された。オレンジ封筒は、改革の結果必要となった個人ごとの残高情報や年金見込額を通知し、年金制度に関する知識や信頼を高めることを目的としている。 オレンジ封筒の導入は、上記の目的を果たし、現在も効果を維持している。その背景には、読みやすさや読まれやすさを中心に据えたデザイン、事前事後の意識調査を踏まえた不断の見直し、並行したキャンペーンの実施などがある。 一方、日本では、「ねんきん定期便」が2009年度より本格実施される見込みである。その内容は従来の情報提供から大幅に進展しており、信頼向上のきっかけとして効果が期待される。 ただ、スウェーデンと日本に共通した問題として、年金制度の意義や年金財政に関する情報が不足している。米国の社会保障通知を参考にしながら、給付削減による財政安定機能の啓蒙とセットで、さらなる改善を期待したい。 全文を読む INDEX 目次第1章 本稿の問題意識第2章 オレンジ封筒の背景 1 スウェーデンの年金制度とその改革の概要 2 年金情報キャンペーンの必要性第3章 オレンジ封筒の実施 1 オレンジ封筒の導入 2 オレンジ封筒とキャンペーンの改良 3 通知の内容 4 その他の特徴 5 関連するいくつかの取組み第4章 情報提供の効果と課題 1 オレンジ封筒とキャンペーンの効果 2 オレンジ封筒の課題と展望第5章 日本への示唆 1 年金情報に関する日本の問題 2 政府の対応 3 対応策の具体的な内容 4 評価と展望図表図表1 新旧制度の比較図表2 2001年のキャンペーンで使われたイラスト図表3 2003年から2005年のキャンペーンの概要図表4 オレンジ封筒図表5 公的年金に関する知識に対する自己認識図表6 受け取った通知に対する注目度図表7 米国の社会保障通知図表8 公的年金制度に関する周知度図表9 公的年金制度の情報源図表10 2002年年金週間のポスター案図表11 公的年金制度に関して知りたいこと図表12 日本における年金情報提供施策図表13 ねんきん定期便(35歳到達者向け先行実施版)の封筒図表14 近年の年金に関するポスターや広告 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)中嶋邦夫(2007)「個人宛通知による年金情報提供の強化-スウェーデン「オレンジ封筒」の事例から-」NIRAモノグラフシリーズNo.02 シェア Tweet ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ