[ゲスト]
ジャン・ピサニ・フェリー
ブリューゲル研究所所長

グントラム・ヴォルフ
ブリューゲル研究所次長

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.70  2013.01

ユーロ危機:何を学ぶのか?

概要

 ユーロ危機が始まってから約3年。様々な対策がとられ、現在は小康状態にあるものの、いまだ根本的に解決されずにいる。ユーロ危機から学ぶものは何か、欧州はどこに進もうとしているのか、EUを代表するシンクタンクであるブリューゲル研究所のピサニ・フェリー所長とヴォルフ次長にお聞きした。

対談のポイント

●欧州通貨統合では、危機に対応するメカニズムが欠如していた
●「銀行同盟」は、政府と銀行の間の悪い依存関係を断ち切る方策
●EUは欧州の利益を代表する正統性をもったシステムを必要としている

要旨

 欧州通貨統合では、危機を未然に防ごうとしてきた。しかし、火災が起きたときの「消火団」的なメカニズムがなかったため、いざ危機が発生してもユーロ加盟国が対処する術がなかった。
 南欧諸国の銀行は、強いホームバイヤス(自国の資産を選好する傾向)をもち、自国政府の発行した債券に莫大な投資をしている。それが政府と銀行の間に依存関係、悪循環を形成している。「銀行同盟」は、この悪循環を断ち切る方策と考えられる。
 EUには、システムとして、欧州の利益を政治的に代表するものは存在しない。有権者は欧州議会議員に正統性があるとは思っていない。欧州議会に大きな権力を付与するたびに、投票率は下がってしまった。

ジャン・ピサニ・フェリー(Jean Pisani-Ferry)
ブリューゲル研究所所長。フランス財務大臣の上席経済顧問(1997-2000年)、フランスの内閣経済分析審議会(CAE)委員長(2001-2002年)など歴任。現在、パリ第9大学経済学教授も務める。専門は欧州の経済政策および国際マクロ経済。2012年10月、東京で開催された第67回国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会のため来日。

グントラム・ヴォルフ(Guntram Wolff)
ブリューゲル研究所次長。ドイツ連邦銀行のエコノミスト、欧州委員会のエコノミストを経て現職。専門はユーロ圏の経済とガバナンス、および金融政策、国際金融、ドイツ関連。現在、フランスの内閣経済分析審議会(CAE)委員も務める。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構
※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp