[ゲスト]
山田光
スプリント・キャピタル・ジャパン代表取締役

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.65  2011.10

電力供給システムは垂直統合型から構造分離型へ

概要

 原発事故の発生により、日本では原発をこれまで予定していたように増やすことはできない。電力供給システムは大きな変革を迫られている。電力自由化をはじめ、日本に求められる電力制度について、スプリント・キャピタル・ジャパン代表取締役の山田光氏にお聞きした。

対談のポイント

●構造分離を進めているEUでは、発電と小売りの市場を自由化する一方、送電と配電というインフラ部門についてはむしろ規制を強化し、送電網運用の公平性とオープンアクセスを担保することにより電力供給の効率化を図っている。
●EUでは風力などの再生可能エネルギーの導入を進めているが、送電各社が送電網を協調運用し広域のネットワークを強化することにより、欧州全体での供給の安定性確保に努めている。
●日本に必要なのは、電力の効果的な需給調整システムと卸電力市場を整備して、電力システムを高度成長時代の垂直総合型から現在の経済状況にふさわしい構造分離型へと転換し、発電と小売りの市場を自由化する一方、独立性のある規制当局を確立することである。
●電力の小売り市場の自由化は、電力とガスの供給やホームセキュリティなどとの併売で、サービス産業として多様な発展を実現するためのチャンスでもある。

山田光(やまだ ひかる)
スプリント・キャピタル・ジャパン代表取締役。慶應義塾大学経済学部卒。バンク・オブ・アメリカ東京支店、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社、モルガンスタンレー東京支店等を経て、1995年に独立系エネルギー・コンサルティング会社であるスプリント・キャピタル・ジャパン(株)、2004年には米国 Sprint Capital NW Inc.を設立、現在に至る。その間、三菱総合研究所客員研究員、オレゴン州立大学電気工学コンピュータ科学学部客員研究員などを歴任する一方、日本や海外のエネルギー関係企業に対する助言や調査活動等を行っている。セミナーでの講演のほか、国内外のエネルギーメディアに寄稿した論文多数。訳書に、ケンブリッジ大学 MIT研究所編『世界の電力取引の監視メソッド』[2006]がある。

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