[ゲスト]
八田達夫
大阪大学招聘教授

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.63  2011.08

電力問題の解決は需給調整メカニズムの確立から

概要

 福島第一原子力発電所の事故以来、日本の電力政策が大きな争点となっている今こそ、中長期的なあるべき姿を考える必要がある。5年後、10年後に電力制度を望ましい方向に導くための根幹となる政策について、大阪大学招聘教授の八田達夫氏にお聞きした。

対談のポイント

●現在の電力供給体制の最大の問題は、電力の価値付けがきちんとなされていないことである。補助金の温床となっているCO₂対策と、電力問題とを切り離すべきである。
●北欧型の電力需給調整メカニズムには節電を促す仕組みがある。長期契約した電力を、市場価格に応じて、前日と当日の2度、市場に売り戻せる仕組みである。
●発送電の分離を通じて電力の自由化を進めれば、電気料金の引き下げや合理的な負荷平準化、効率的な温暖化政策などが行いやすくなる。
●原発事故による電力不足はガス発電で補う。環境アセスメントの基準を緩め、早急にガス発電への新規参入を促進すべきである。
●原発事故の補償など原子力発電の社会的コストは民間では賄えない。原発は国が引き取り、東京電力は新生東電として再生させるべきである。

八田達夫(はった たつお)
国際基督教大学教養学部卒。1973年ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士号(Ph.D.)取得。専攻は公共経済学。オハイオ州立大学経済学部助教授、ジョンズ・ホプキンス大学経済学部教授、大阪大学社会経済研究所教授、同所長、東京大学空間情報科学研究センター教授、国際基督教大学教養学部教授、政策研究大学院大学学長等を経て、現在、大阪大学招聘教授、学習院大学経済学部客員研究員。規制改革会議委員(議長代理)などを歴任。主な著書に、『ミクロ経済学 I・II』[2008・2009]東洋経済新報社、『電力自由化の経済学』(共著)[2004]東洋経済新報社、『日本の農林水産業』(共著)[2010]日本経済新聞出版社等多数。

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