[ゲスト]
富田俊基
中央大学法学部教授

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.55  2010.05

日本の財政破綻は避けられるのか

概要

 日本政府の債務残高は膨大であり、財政破綻のリスクが蓄積している。財政問題は何がきっかけで顕在化するのか。財政健全化のために必要なものは何か。財政制度等審議会委員などを務める、中央大学法学部教授の富田俊基氏にお聞きした。

対談のポイント

●現在は、デフレが続くということを多くの人が予測していることから「財政破綻」が顕在化しにくくなっている。財政健全化を先送りすることにより「破綻」のリスクが蓄積しているが、国債の金利はおおむね安定した状態にある。
●財政再建を図るために経済成長に期待したとしても、国債金利が上昇し、膨大な発行残高を抱え借換債の発行が巨額であるため、利払い増加によって財政収支がますます悪化し、逆に「破綻」が一挙に顕在化する恐れもある。金利の上昇は家計、企業を圧迫し、逆に経済成長の阻害要因となって、問題を一層難しくする。
●日本経済がこうした「閉塞状態」から脱却するには、国民的合意に基づく長期的展望が必要である。その際に、従来からある様々な誤解や幻想を排除し、慎重な見通しを立てねばならない。いずれにせよ団塊世代の高齢化で歳出が一段と増大する2012年、2022年の節目までに、消費税の増税を含めた財政健全化は不可欠であろう。

富田俊基(とみた としき)
1947年生まれ、関西学院大学経済学部卒業、1971年野村総合研究所入社、1996年同社研究理事。2005年から中央大学法学部教授。1990年京都大学経済学博士。財政制度等審議会委員、国債投資家懇談会委員などを務める。主な著書に『冷戦後の世界経済システム』(東洋経済新報社、1996年)、『日本国債の研究』(東洋経済新報社、2001年)、『国債の歴史』(東洋経済新報社、2006年;第49回日経・経済図書文化賞受賞)。

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