論文NIRAモノグラフシリーズNo.26 2008.03.01 中国の行方と日本の対応 この記事は分で読めます シェア Tweet 高原明生 東京大学大学院法学政治学研究科教授 概要 中国の行方を予測することは極めて難しい。ただ、イデオロギー論争には決着がつき、中国もグローバル化の影響を強く受ける「普通の国」になりつつあることは確かである。今後一世代に亘り、経済の市場化を最大の動因として大きな変化が政治や社会の領域で発生するだろう。そして、地理的に突出して大きい中国が成長を続ける上では、諸外国、近隣諸国との関係を安定的に発展させることも大きな課題となろう。 第一節においては、2008年2月から3月にかけて発生したチベット族の暴動を手がかりとして、中国が直面しており、その今後を左右する諸問題について検討する。チベット族の暴動については、可能性として3つの要因が考えられる。第一に、国民統合の難しさ。第二に、最近の物価の上昇が社会の不満と不安を高めていること。第三に、チベット族と漢族や回族との歴史的な争いに加え、より多くの漢族や回族などが経済機会を求めてチベット族が多数だった地域に進出してきたことである。経済進出は海外にも及んでおり、中国の目覚しい経済発展は、中国の外交や安全保障政策にも新しい要求をつきつけている。 第二節では、中国の行方に関する検討を踏まえ、日本の対応について考える。中国の行方に関するシナリオの理念型としては、諸問題がうまく解決されて中国が平和的に発展し、責任ある大国となるという望ましいシナリオと、諸問題がうまく解決されず、国内的な混乱と対外的な紛争に苛まれる厄介な大国になるという望ましくないシナリオがある。如何にしてリスクを回避し、望ましいシナリオを実現させ、安定的な日中関係を築くのか。そのためには、日中二国間の対話と協力のみならず、米国や東アジア諸国との協働が必要不可欠となるだろう。 全文を読む INDEX 目次はじめに1.中国の行方を左右する諸問題(1) 国民統合(2) 経済成長と政策論争(3) 経済改革と「三農」(農業、農村、農民)問題(4) 所得上昇と所得格差、抗議事件の増加(5) 価値体系、宗教(6) 一党支配体制(7) 冷戦後の軍事戦略と軍隊建設(8) 対外関係2.日本の対応(1) 人間の安全保障への支援(2) 内発的な社会発展への関与(3) 軍事的な信頼醸成の促進と日米安全保障協力の維持(4) 東アジアでの民主的な地域レジームの構築 引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。(出典)高原明生(2008)「中国の行方と日本の対応」NIRAモノグラフシリーズNo.26 シェア Tweet ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp 研究の成果一覧へ