[ゲスト] 末廣昭東京大学社会科学研究所所長 [聞き手] 伊藤元重総合研究開発機構理事長 対談シリーズNo.61 2011.03「中進国」アジアが直面する課題と日本概要 急成長を遂げるアジアが注目を集めているが、アジアで何が起きているのか、どういった課題を抱えているのか、そして日本に何が期待されているのか、アジアの視点から改めて考察する。その上で、日本はアジアとどのような関係を構築していくべきかについて、東京大学社会科学研究所所長の末廣昭氏にお聞きした。 全文を読む 対談のポイント ●世界経済に占めるアジアの製造業の地位は圧倒的なものとなった。またアジア域内の貿易も活発化している。中でも中国の比重が大きく、それは中国に進出している外国企業の企業内貿易によるところが大きい。 ●アジアが急速に都市化する中で、上海、バンコクなどのメガ都市の消費がアジアの「内需」を支えている。 ●「中進国」となったアジアでは、経済成長が鈍化するという「中所得国の罠」が起きているが、少子高齢化、高学歴ワーキングプアなどの「中進国の課題」にも直面している点が重要である。その多くが日本の抱える課題と共通している。 ●いまアジアの政治を動かしているのはインターネットや世論調査であるが、これらによる政治的動きは一時的で持続しない。アジアでは政治と経済が連動しない。 ●国際的安全保障の観点からも、日本はTPPへの関心を高めている。しかし、これまで積み上げてきた外交政策との調整を行わないままTPPに向かうことは、アジアとの関係で失うべきものも大きく、注意が必要である。 末廣昭(すえひろ あきら) 東京大学経済学部卒。経済学博士。専攻はアジア経済論、タイ社会経済史。アジア経済研究所、大阪市立大学等を経て、現在東京大学社会科学研究所所長・教授。アジア政経学会元理事長、現在、日本タイ学会会長。主な著書に、『東アジア福祉システムの展望』[編著、2010]ミネルヴァ書房、『タイ―中進国の模索』[2009]岩波新書、『ファミリービジネス論』[2006]名古屋大学出版会(第2回樫山純三賞)、『進化する多国籍企業』[2003]岩波書店、『キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望』[2000]名古屋大学出版会(アジア太平洋賞大賞)、『タイ―開発と民主主義』[1993]岩波新書、Capital Accumulation in Thailand 1855-1985[1989]ユネスコ東アジア文化研究センター(大平正芳記念賞、日経経済図書文化賞)、等多数。2010年紫綬褒章受章。 ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp