[ゲスト]
黒田東彦
アジア開発銀行総裁

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.53  2010.04

東アジア経済統合に向けて―為替協力と域内自由貿易―

概要

 政府が「東アジア共同体」構想を打ち出している。アジアの金融と通貨や貿易自由化の実現方法について、アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏に話をお聞きした。

対談のポイント

●東アジア域内の経済統合を進めるためには、為替協力が重要になる。為替の安定化には、各国ごとに異なる為替制度を調和させ、協調していかなければならない。そのためには、既存のASEAN+3の財務大臣会議の枠組みを改編し、議論の場に中央銀行総裁が参加できるようにすることが大切である。
●また、ASEANを中心としたFTAを通じて貿易自由化を促進することも有効だろう。ただし、東アジア全域での自由貿易を実現するためには、日・中・韓が自由貿易協定締結に踏み切る必要がある。経済協調のためには、域内の国内規制を調和させることも必要不可欠である。
●日本の高い環境技術をアジアに輸出することは、日本とアジアの双方にとってメリットがあるので、日本企業は積極的に環境技術を売り込んでいく必要がある。一方で、このような技術移転がビジネスとして成立するような仕組みも考えられなければならない。

黒田東彦(くろだ はるひこ)
1967年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。1971年オックスフォード大学経済学修士課程終了。96年財政金融研究所長、97年国際金融局長、98年国際局長。99年7月から3年半にわたって財務官を務める。2003年3月内閣官房参与、同年7月から一橋大学大学院経済学研究科教授を兼務。2005年2月よりアジア開発銀行総裁。主な著書に『元切り上げ』(2004 年)日経BP社、『通貨の興亡』(2005年)中央公論新社、『財政金融政策の成功と失敗-激動する日本経済』(2005年)日本評論社など。

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