ポール・ドメイン
Distinguished Scholar, The Population Council

青木玲子
一橋大学経済研究所 教授

牧原出
東北大学大学院法学研究科 教授

牛尾治朗
NIRA会長/ウシオ電機株式会社 代表取締役会長

柳川範之
NIRA理事/東京大学大学院経済学研究科 准教授
          

 対談シリーズNo.62  2011.05

「ドメイン投票法」の衝撃

概要

 日本の出生率は低い水準にあり、次世代の利益が意思決定に反映されないという問題を抱えている。そのため、少子化について根本的な議論を誘発し、新しい政策のアイデアを生み出すことが求められている。少子化問題への対応策として、子どもを持つ親に子どもの分まで投票権を付与する「ドメイン投票法」を提唱しているポール・ドメイン教授にお聞きした。

対談のポイント

●日本の出生率は、その目標とするターゲットよりも低い水準にある。単に人口規模だけでなく、年齢構成でみて、高齢者の人口が増え、若年の就業者が減ることになる。
●現在の投票システムが抱える本質的な問題点を正面から考えるべきである、すなわち、現状では次世代の利益が意思決定に反映されないという問題である。
●投票権を、親あるいは親になり得る人により多く与えるという、「ドメイン投票法」には、出生率の回復につながる可能性を求める意図もある。
●これまで、少子化問題を、日本の国力を大幅に損なう根本原因だとして対策をとってはこなかった。「ドメイン投票法」は、少子化について根本的な議論を誘発し、新しい政策のアイデアを生み出すきっかけの1つになるであろう。

ポール・ドメイン(Paul Demen)
プリンストン大学博士号(Ph.D.)。専門は人口問題。ハワイ東西センター人口研究所所長、ミシガン大学経済学部教授などを経て、1989年より The Population Council(米国)、Distinguished Scholar。

青木玲子(あおき れいこ)
東京大学理学部卒。スタンフォード大学大学院経済学博士号(Ph. D.)。専門は産業組織論、応用ミクロ理論。ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校 Assistant Professor、テルアビブ大学客員准教授、オークランド大学経済学部 Associate Professorなどを経て、2006年から一橋大学経済研究所教授。

牧原出(まきはら いづる)
東京大学法学部卒。専門は政治学・行政学。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、1993年東北大学法学部助教授を経て、2000年より東北大学大学院法学研究科教授。著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社、2002年、サントリー学芸賞)など。

牛尾治朗(うしお じろう)
NIRA会長。ウシオ電機株式会社代表取締役会長。日本青年会議所会頭、社団法人経済同友会代表幹事、KDDI株式会社会長、経済財政諮問会議議員などを歴任。

柳川範之(やながわ のりゆき)
NIRA理事。慶應義塾大学経済学部卒。東京大学 Ph.D。専門は契約理論、金融契約。96年東京大学大学院経済学研究科助教授、07年同准教授に就任。著書に『法と企業行動の経済分析』[2006]日本経済新聞社など。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構
※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp