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NIRA政策提言ハイライト

日本がAI研究の最前線に立つために

NIRA政策提言ハイライト 2019/9発行


■世界で急速に進展するAI研究
 Society5.0やデータ駆動型社会を目指し、人工知能(AI)の研究者・エンジニアの育成が急務となっている。カナダのAIスタートアップ企業「Element AI」のレポートによると、2018年に世界の主要なAI会議で英語論文を発表したAI研究者数は約2万2,400人で、前年に比べ19%増加した。AI研究者数を国別で見ると、米国が1万295人で全体の46%を占め、中国(2,525人)、英国(1,475人)、ドイツ(935人)と続く。日本は805人で6番目だ。急速な発展を遂げるAI研究領域において、我が国がイニシアチブを取るためにはどのような枠組みの構築が望ましいのか。

■ 進みつつある日本のAI人材の育成
 AI人材の育成に関しては、既にさまざまな試みが行われている。例えば、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年度より社会人技術者および研究者を対象とした教育プログラム「AIデータフロンティアコース」を開始した。委託先の東京大学と大阪大学を拠点に、最短半年間で即戦力となるAI人材を育成することを目指し、体系的なAI知識や、実践的なデータの構築方法、解析手法などのAI技術を教えている。こうした取り組みを続けることで、データ駆動型社会を担う人材の増加が期待される。実際、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」のデータからも増加のトレンドがわかる。先述のレポートによると、データサイエンティストや機械学習エンジニアなどAI専門家としてLinkedInに登録している人は全世界で約3万6,500人いる(2018年12月時点)。そのうち日本の登録者数は455人と少ないものの、前年比で見ると、全体の増加率66%に対し、日本は123%と大幅に増加している。

■適切なデータの提供がAI研究発展のカギ
 人材育成が進みつつある一方で、AI研究者などが取り扱う「データ」には何が求められるだろうか。わたしの構想No.39「ビッグデータ本格活用へ」で、柳川範之理事が指摘するように、AI(あるいは機械学習)は「大量のデータを集めさえすれば、あとはAIが適切に分析して、何か適切な『解答』を導出してくれるかのような」魔法の技術ではない。「AIの基本が統計処理である以上、何のために、どんなデータを大量に集め分析するのかが明確でなければ、どれだけビッグなデータを集めても、意味のある結果は得られない」のである。
 AIや機械学習を専門としない人からすると、AI研究者らの主要な業務は、実際に機械学習のコーディングをしたり、実行することだと思い描く。しかし、米国のクラウドソーシングサービス「Figure Eight Inc.」が世界のデータサイエンティスト・データエンジニア約300名に対して行った調査によると、回答者の40%が、データの管理・クリーニング・ラベル付けに業務の半分以上の時間を費やしている(図1)。データを解析する以前に、無秩序に集められたデータを整形する作業に多くの時間が取られるのだ。AIを用いた迅速な問題解決のためには、人材の育成だけでなく、彼らに適切なデータが提供されることが必須である。
 わたしの構想No.39およびNIRAオピニオンペーパーNo.43「21 世紀の「資源」:ビッグデータ」では、ビッグデータを巡る規制や制度の整備についての議論も紹介している。今後、ビッグデータの活用に関する枠組みづくりや法規制を進めていく中で、この分野で先行する諸国に日本が追いつき、追い越すためには、データのユーザーの視点を考慮し、適切なデータの提供や利活用を実現する柔軟な対応が必要だろう。

図1 データサイエンティスト・データエンジニアがデータの管理・クリーニング・ラベル付けに費やす時間(%)


(出所)Figure Eight Inc. (2019) “The State of AI and Machine Learning”より作成

<参考文献>
NIRAわたしの構想No.39(2018)「ビッグデータ本格活用へ
NIRAオピニオンペーパーNo.43(2019)「21 世紀の「資源」:ビッグデータ
Element AI(2019)“Global AI Talent Report 2019
Figure Eight Inc.(2019)“The State of AI and Machine Learning

関島梢恵(NIRA研究コーディネーター・研究員)

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