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NIRA政策提言ハイライト

統一地方選の投票率の低下は何を意味するのか

NIRA政策提言ハイライト 2015/04発行

熟議だけでは不十分
 4年ごとに行われる統一地方選挙。その投票率は、回数を経るごとに低下している。1947年当時は80~90%と高い水準にあったが、最近は50%近傍の水準にまで低下し、今回は、過去最低となった。メディアでは、住民の地方自治への関心が低下していることが指摘されている。近年、自治体ではさまざまな形で市民が地方行政に参加する機会が増えており、選挙で選出されたからといって首長や議員が政策を勝手には決められないようになっている。選挙で訴えなくとも、直接参加による「熟議」の場を通じて意見を伝えればよい、という市民の意識の変化が投票率に現れているのだろうか。
 仮にそうだとしても、市民の直接参加の機会の増加は、県議会や市町村議会が形骸化してよいという理由にはならない。早川誠(注1)がいうように議会のメリットは、公開の場で議論がされ、意思が決定されていく点であり、これは、熟議にはない良さである。熟議だけで地方自治が左右されてしまうとすれば、声の大きい市民の影響力が増し、それは民主政治から逸脱したものになってしまう恐れがあるだろう。

地域を再生するための3つの提言
 NIRAでは、地方自治の重要性について認識し、これまでも提言を発出してきた。いくつか紹介しよう。
 まず、NIRAオピニオンペーパーNo.12「中核層の時代に向けて」では、世界に開かれた地域を形成し、地域の衰退に歯止めをかけるには、政党政治を立て直すべきであることを述べている。そこでは、国、自治体、市町村といった多様な主体の意見を統合することが、政党に課された役割だとしている。市町村の間、あるいは、市町村と県との間で主張が対立したときに、各県や各市町村に首長や議員を輩出している政党がその調整を担うべきである。本来、政党とは共通の政策的な目的を実現するために作られる団体であり、権力に与(あずか)ることを目指すためだけのものではないはずだ。
 また、同リポートでは、地域社会に積極的に関わりをもつ人々である「中核層」を支えることが、地方自治体の重要な役割である点が強調されている。基礎自治体の新たな役割は、地域に関わる中核層が自由な発想に基づいて、公共活動に参加できるように支援し、協働する環境を整えることである。また、広域自治体である都道府県は、中核層を支援する基礎自治体に対して助言や提案を行っていくべきである。中核層が社会的サービスを提供することを地方自治体が後押しする、という新しい役割を自治体が積極的に担うことによって、中央政府に頼らずに地域の課題を地域が独自に解決していくことができるようになる。
 さらに、市長、官僚、学者が議論してまとめたNIRA研究報告書「選べる広域連携」では、こうした新たな役割を自治体が自ら率先して担うために、自治体が必要に応じて連携先の自治体を選べるようにすることを提言している。パートナーにしたい自治体は隣接する自治体の場合もあるし、地理的には遠く離れた自治体の場合もあるだろう。目的に応じて、パートナーとなる自治体を選択し、複数の自治体と協働することで、個々の自治体の強みを最大限に引き出すことが可能になる。その結果、中核層が複数の市町村にまたがって活躍し、地域の人々のネットワークの核となることもできる。
 これらの提言、すなわち、政党政治の再生、自治体による中核層の支援、そして、自治体同士の戦略的連携の3つの要素をうまく組み合わせることで、地域は再生することができるにちがいない。
 現在、政府の地方創生会議でも政策が打ち出されているが、各省の政策の寄せ集めの印象を受ける。政策が「仏つくって魂いれず」といった事態に陥らないようにするためにも、ここでいう政党政治、中核層、そして自治体の戦略といった「魂」を政策に入れることに、政府は注力すべきである。それは、自(おの)ずと投票率の改善にもつながるはずである。


(注1) 早川誠(2014)『代表制という思想』風行社

神田玲子 NIRA理事 兼 研究調査部長

<関連記事>
中核層の時代に向けて」(NIRAオピニオンペーパーNo.12/2014年12月)
選べる広域連携」(NIRA研究報告書/2014年4月)

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