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NIRA政策提言ハイライト

エネルギー自由化に必要な独立規制機関

NIRA政策提言ハイライト 2015/02発行

最終段階に入った第5次電力システム改革
 報道(注1)によれば、発電と送配電の法的分離を盛り込んだ電気事業法改正案が、去る2月17日、自民党に提示され、いよいよ、第5次電力システム改革は最終段階に入った。改革の肝は、小売全面自由化と同時に、発電と送配電が一体である電力会社を分離し送配電ネットワークを開放することで、より多くの市場参入を促すことにある。競争を活性化させることでサービスが多様化し、電力消費者の利便性が向上することが期待出来る。
 ここで注意すべき点がある。NIRAオピニオンペーパーNo.3「電力改革の方向を考える」(2011年8月)において、伊藤は、送配電ネットワークは独占事業であり、公平性と透明性を担保するために、強力な公的監視の仕組みが必要であると警告した。この観点では、経済産業省で新たな規制機関設立(注2)の検討が進められていることは、評価に値する。

求められる規制機関とは
 経済産業省の資料(注3)によれば、新たな規制組織は、金融庁の「証券取引等監視委員会」がモデルである。同委員会は、1992年、大蔵省(当時)にいわゆる八条委員会(注4)として設置されたが、1998年、総理府(当時)の外局に金融監督庁が設置されるにあたり、同庁へ移管された。透明かつ公正な金融行政への転換を図るため、監督機能と企画立案機能が分離されたのである。その後、同庁は企画立案業務も司る金融庁へと組織改編されたが、証券取引等監視委員会は現在でも、その八条委員会として存続している。
 新たな規制機関は、八条委員会よりも独立性の高い、いわゆる三条委員会(注5)であるべきとの声もある。現に、原子力規制では、推進側の資源エネルギー庁と規制側の原子力安全・保安院が同じ経済産業省内にあることの問題を指摘する声が高まり、最終的に「原子力規制委員会」が環境省の外局(三条委員会)として設置されたことは記憶に新しい。
 一方、欧州諸国では、エネルギー規制機関は国家行政組織から影響を受けない独立性が必要とされ(注6)
EU指令(注7)でも行政からの独立が義務化されている。例えば、活発なエネルギー取引が行われている英国とドイツでは、それぞれOfgemおよびBNetzAが、独立規制機関として設置され、大幅な権限委譲が行われている。他方で、フランスでは、政府組織が、一貫して既存組織に権益を残すことに腐心したため、規制機関への権限委譲は限定的であったとの指摘がある(注8)。なお、現在のフランスの電力・ガス市場では、既存事業者の独占的優位性に変化はなく、英独に比べて自由な市場取引は限定的である。

重要となるのは独立性と権限委譲
 以上の事例に鑑みると、新たな規制機関は、既存の行政組織から独立した組織とし、権限を大幅に委譲することが重要となろう。現在検討されている組織形態で独立性が担保されるのか、そして、電力市場の公平性と透明性が確保されるのかはさらなる議論が必要だ。電力は、産業のみならず、国民生活に大きな影響を及ぼす。わが国の電力政策が単なる産業政策ではなく、日本国全体としてどうあるべきかを見据えた上で、この新たな規制機関の在り方を慎重に議論すべきであろう。



注1 電氣新聞2015年2月18日「電気事業法改正案、送配電兼業を禁止-20年4月に施行」
注2 2013年の電気事業法改正法においても附則第11条第6項に「政府は、電気事業の監督の機能を一層
    強化するとともに、(中略)、電気事業の規制に関する事務をつかさどる行政組織について、(中略)、
    独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織に移行させるものとする。」と規定されている。
注3 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革小委員会制度設計
    ワーキンググループ第12回(2015年1月22日)配布資料 資料6-6参照
注4 国家行政組織法第8条に規定される審議会等。省庁などの行政機関に設置される合議制の機関。
注5 国家行政組織法第3条に規定される委員会で、省や庁などの行政組織と同等の権限を有する独立性
    の高い機関。運輸安全委員会(国土交通省)、公正取引委員会(内閣府)など。
注6 トマ・ヴェラン/エマニュエル・グラン、『ヨーロッパの電力・ガス市場』(山田光監訳、日本評論
    社、2014年12月)
注7 Directive 2009/72/EC concerning common rules for the internal market in electricity and
    repealing Directive 2003/54/EC, Chapter IX, Art. 35.4
注8 注6に同じ。

西山裕也 NIRA主任研究員

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