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NIRA政策提言ハイライト

地方創生の成否

NIRA政策提言ハイライト 2015/1発行

再生への動き
 2014年11月21日に、地方創生に関わる「まち・ひと・しごと創生法案」と「地域再生法の一部を改正する法案」の二法案が可決、成立した。続いて、翌月の27日には「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(長期ビジョン)」および「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」が閣議決定され、「地方創生」のスローガンのもと、各都道府県、市町村は持続的な地域社会の形成に向けて動き出そうとしている。

過剰の調整
 既知のとおり、わが国では急速な高齢化と人口減少が進行している。2010年には全市町村の70%以上で人口が減少した(図参照)。空き家の増加からもその一端を垣間見ることができるが、今後、成長時代に整備された住宅も含め、都市インフラの一部は確実に不要になる。NIRA研究報告書「選べる広域連携」でも、総人口の減少が避けられない状況下では、必要な市場規模を確保することができず、すべての地域で等しく同一のサービスを供給することは難しくなるとの認識を示している。各地方自治体は、近隣との連携、機能分担を図りながら、効率的な運営が可能な規模へのダウンサイジング、都市機能の集積によるコンパクト化を急がなければならない。

東京も例外ではない
 さらに、それは地方のみならず、首都圏についても例外ではないとする見方もある。東京一極集中の批判が根強くあり、首都圏の市町村では人口減少に対する認識が薄れがちである。しかし、NIRAわたしの構想No.6「グローバル都市 東京」の中で、藤村龍至東洋大学理工学部専任講師は、高齢化が進み人口流入が止まりつつあることは、今や、地方都市も、東京23区、多摩地域も変わらないとし、インフラを段階的に減量することの必要性を指摘している。また、同号で門脇耕三明治大学理工学部専任講師も、共働きを前提とする若い世代にとって郊外型居住は現実的なライフスタイルではなくなり、かつてのニュータウンは適切な再編が必要となる時期を迎えているとの見解を示している。

攻めの縮小
 こうした流れは一見すると地域活性化を目指す「地方創生」と矛盾するように感じられるかもしない。しかし、厳しい財政状況にあるわが国においては現行のままですべての地域を支え続けることはできない。政府が発表した冒頭の「総合戦略」にも描かれているが、中心となる拠点地域を選択した上で、そこに集中的な投資を行い、住民の利便性を確保しながらエリアを再編、活性化策を講じることが重要となる。林直樹東京大学大学院農学生命科学研究科特任助教は『撤退の農村計画』の中で未来に向けての戦略的な撤退と評していたが、地域崩壊を回避し、活力ある地域を実現するには、人口減少の間に必要な「攻めの縮小」を進めることができるかどうか、地方創生の成否はそこにかかっているのではないだろうか。



豊田奈穂 NIRA主任研究員

<関連頁>
・「グローバル都市 東京」(NIRAオピニオンペーパーNo.6/2014年11月) 
・「選べる広域連携」(NIRA研究報告書/2014年4月) 

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