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NIRA政策提言ハイライト

脱デフレの中で財政と社会保障を考える

NIRA政策提言ハイライト 2013/4発行

インフレと経済成長に依存した政策運営に潜むリスク
 日銀による異次元の質的・量的金融緩和を核とするいわゆるアベノミクスは、行き過ぎた円高の修正や株式市場の高騰をもたらすなど、その滑り出しは上々だ。このまま株式市場の好調が実体経済にまで波及すれば脱デフレも実現し、日本経済の復活が現実のものとなるだろう。しかし、一見良好なパフォーマンスを示すアベノミクスにも死角が存在する。それは政府財政と社会保障の持続可能性に関するものである。

高成長とインフレがもたらす財政のリスク
 
高成長とインフレは税収増加をもたらすことが予想できる。この結果、高成長とインフレが実現すれば政府の財政問題を解決できるという風潮が広まりつつあるように見える。しかし、例えば昨年内閣府が公表した『経済財政の中長期試算』によれば名目成長率3.5%という高い成長を見込んだとしても、歳出削減や歳入増等の改革が実施されない限り、政府の債務残高は高止まりする。また、2011年4月に総合研究開発機構が公表した報告書『財政再建の道筋―震災を超えて次世代に健全な財政を引継ぐために―』では、ソブリンリスクについて懸念を表明し、世界的なインフレの兆候、政府による財政再建の意思と能力が重要であると指摘している。

高成長とインフレがもたらす社会保障のリスク
 
高成長は保険料収入の増加をもたらす。さらに、インフレが名目金利の上昇をもたらすとすれば、年金積立金にプラスの影響を与える。したがって、高成長とインフレは社会保障全体に好影響を及ぼすと考えられる。しかし、今年2月に総合研究開発機構が公表した報告書『国債に依存した社会保障からの脱却ーシルバー民主主義を超えてー』では、日本の社会保障収支の赤字は、年々、拡大しており、毎年の国債発行と社会保障基金の積立金取り崩しによって支えられている状況を指摘し、給付削減もしくは負担増加等の抜本的な改革が行わなければ積立金が近い将来に枯渇することは避けられず、そうなれば、更なる赤字国債の増発を引き起こし、それがソブリンリスクの引き金を引く契機となる可能性を指摘した。

政府財政と社会保障の一体改革こそ必要
 
政府財政と社会保障の財政状況は著しく悪く、高成長やインフレに期待するだけでは持続可能性を維持することができない。しかも両者は公費(税あるいは公債)投入で密接にリンクしている。にもかかわらず、それぞれ個別に改革するのではマクロ的な整合性が図れるかは微妙である。つまり、政府財政に社会保障財政も含めた改革の全体像を提示することが重要である。

(注1)厚生労働省「平成21年財政検証」関連資料(第15回社会保障審議会年金部会平成21年5月26日開催)6頁にある機械的な試算④。
(注2)GPIFの自主運用開始時からの平均値(2001-11年)。
(注3)各数値は厚労省試算結果。
(注4)2040年時点の保険料率。
(注5)2013年度から給付額の一律削減
(注6) ケース①:運用利回り1.4%、賃金上昇率2.5%
   ケース②:運用利回り1.4%、賃金上昇率1.0%
   ケース③:運用利回り1.4%、賃金上昇率0%
(出所)総合研究開発機構『国債に依存した社会保障からの脱却ーシルバー民主主義を超えてー』10頁。


島澤 諭 NIRA主任研究員

<リンク>
財政再建の道筋―震災を超えて次世代に健全な財政を引継ぐために―」(NIRA研究報告書/2011年4月)
国債に依存した社会保障からの脱却―シルバー民主主義を超えて―」(NIRA研究報告書/2013年2月)

 

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