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NIRA政策レビュー

再生可能エネルギーの将来性

NIRA政策レビューNo.57 2012/07発行

伊藤元重(NIRA理事長)、和田武(日本環境学会 会長)、池辺裕昭((株)エネット 代表取締役社長)、 新原浩朗(資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長)、八田達夫(学習院大学経済学部特別客員教授)、 澤昭裕(21世紀政策研究所研究主幹)、藤野純一(国立環境研究所 主任研究員)

 国際的に地球温暖化対策が進められるなか、 日本では福島原発事故を契機に再生可能エネルギー(再生エネ)に関する議論が活発化している。再生エネを考える上で、エネルギー政策、 あるいは社会システムをどう見直すべきか。本号では、地域固有の自然特性をいかすために地域の力を活用する重要性、 再生エネの普及を阻害している既存の制度を変える必要性が確認され、 市場メカニズムをいかすための電力システム改革の課題が浮き彫りとなった。

供給者も需要者も選択できる市場を
    伊藤 元重(NIRA理事長)

識者に問う
 「再生可能エネルギーの将来性とは」

 温室効果ガスを排出せず、半永久的なエネルギー源である再生可能エネルギーは、温暖化対策としてもエネルギー安全保障としても、 期待の声が上がっている。日本における再生可能エネルギーの将来性をどうみるべきか。官庁、環境学者、経済学者のほか、 エネルギー政策の専門家や産業界の有識者に聞いた。

                          *以下、記事中の敬称は略
                          *再生可能エネルギーは、再生エネと記載

1 「地域主体の開発を
   和田 武 日本環境学会 会長

2 「電力の「見える」化で工夫を引き出す
   池辺 裕昭 (株)エネット 代表取締役社長

3 「発想の転換が再生エネの可能性を広げる
   新原 浩朗 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長

4 「市場原理を貫けば首都圏の再生エネ・コジェネにチャンス
   八田 達夫 学習院大学経済学部 特別客員教授

5 「政策目的を明確にした議論が必要
   澤 昭裕 21世紀政策研究所 研究主幹

6 「多様な観点と情報をもとに、地域ごとの再生エネ計画を
   藤野 純一 国立環境研究所 主任研究員

                  インタビュー実施 2012年6月
                  聞き手:西山裕也(NIRA主任研究員)

印刷版   English
 *印刷版「識者に問う」では、各識者の意見のエッセンスを抽出し、見開きの記事にまとめています。

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「供給者も需要者も選択できる市場を」
   伊藤 元重(NIRA理事長)

将来のエネルギーミックスはどうあるべきか
 今、 日本のエネルギー政策が大きく見直されようとしている。とりわけエネルギーミックス(将来のエネルギー源構成比率)をどうするのか、 特に再生可能エネルギー(以下、再生エネ)の利用をいかに拡大していくのかということが大きな政策課題になっている。
 今回の特集では、様々な立場の専門家の方に再生エネの将来像について語ってもらった。 専門家の間でも再生エネの将来像について意見が異なっている。それだけ将来に向かって多くの不確定性があるからだろう。
 太陽光発電や風力発電を普及させていくためには、もちろん技術革新を進めていくことが必須だ。また、 現状では高コストの風力発電や太陽光発電も、大量に普及させることによってコストを大幅に下げることが可能となるはずだ。 だから固定価格買取制度(FIT)などで普及の弾みをつけることが求められる。ただ、そうした政策が、 再生エネの普及とコスト削減にどこまで効果があるのかよく分からない。この点の見通しの違いが、楽観論と慎重論の差となって出てくる。 再生エネの普及に期待する和田氏と、その供給には限界があるとする澤氏の意見を比べてほしい。
 また、再生エネを促進させていくことの根拠をどこにおくのかということでも、意見に違いがあると見るべきだろう。 一般的にエネルギー政策を考える上で重要な基準として、エネルギーコストの削減、エネルギーセキュリティーの確保、 温室効果ガス排出抑制などの環境政策という三つの柱がある。
 日本が原子力発電を積極的に推進してきたのは、エネルギーコストの削減を実現し、 石油や天然ガスなどの輸入に過度に依存しないというセキュリティー確保を進め、そして温室効果ガスをほとんど発生させない、 という三つの柱のどれにも利点があったからだ。
 しかし、原発事故で、放射能汚染のリスクが非常に高いことが再確認された。原発の社会的コストが根本から見直されようとしている。 原子力政策について論じることがここでの目的ではない。ただ、原発の利点として挙げた化石燃料の輸入に頼る必要がなく、 温室効果ガスを発生させないという点が重要であることに変わりはない。その意味では、再生エネに注目が集まるのは当然だ。
 再生エネの欠点は、コストが高いこと、そして風力や太陽光では電力供給が不安定になることだ。 こうした問題をどう克服していくのかが問われている。

電力システム改革を進めよ
 再生エネの利用を拡大させるためには、 電力システム改革を進めていかなくてはならない。たとえば、北海道は風力発電の適地に恵まれている。しかし、 現在の広域連系線のキャパシティーでは、北海道から本州に運べる電力量には限りがある。北海道でどんなに風力発電をしても、 それを本州に持ってくることはできないのが現状だ。
 電力供給主体が地域ごとに分割されており、発電から送電・配電、 そして小売りサービスまですべて垂直統合された地域独占企業が支配していることが、広域で再生エネを活用することを難しくさせている。また、 新規の業者が再生エネの発電に参入しようとしても、日本の現状の電力システムの中では多くの困難が伴う。
 いま、政府の下で電力システム改革が進められているが、それは再生エネの利用を拡大するためにも必要なものである。 発電と分離されたより広域で中立的な送電配電網の確立が求められる。
 新原氏が強調しているように、出力変動を需要サイドで調整するという方法(DR:デマンド・ レスポンス)をフル活用することも再生エネルギー拡大の鍵となる。これまでの日本の電力システムでは、 需要に応じた供給を確保することが安定供給であった。そのため安定的に大量の電力を供給できる原子力発電への依存が高くなっていた。しかし、 供給の変動や制約に応じて電力消費量を調整する能力を高めることも重要である。DRにより需要を調整させる仕組みは、 欧米では積極的に活用されている。スマートメーターを導入することで需要をきめ細かに把握し、ピーク時の需要を抑え、 節電を進める誘因を高める制度設計が求められる。

温暖化対策と市場メカニズム
 温室効果ガス排出抑制にどう対応するのか。 そこでの再生エネの役割は何か。この問題について、基本的な点から考えてみる必要がある。
 これまで日本は、温室効果ガスの排出を抑制するため、原子力発電の利用を拡大してきた。原発がだめになったら、 それでは今度は太陽光発電だ、あるいは風力発電だ、ということで、こうしたものを積極的に押し進める。これではひとつの「統制経済」 から別の「統制経済」への移行に過ぎないのではないか。これはNIRAの対談シリーズ(『電力市場の再設計を急げ』(http://www.nira.or.jp/pdf/taidan64.pdf)における冨山和彦氏の発言である。 再生エネを促進するとしても、目標を設定してそれを実現しようという統制経済的な手法では好ましくないということだ。
 市場メカニズムの重要性を説く八田氏の主張は興味深い。5年後、10年後に、どの再生エネがもっとも有望であるのかは分からない。 市場が技術を選ぶ余地を高くするため、炭素税や排出権取引など、より一般的な手法で環境問題に対応していく必要がある。
 電力をどう供給すべきかという点だけに固執せず、利用可能な電力をどう利用するかを考えるべきであるということは、 再生エネについても言える。風力というと北海道で発電し、それを東京に持ってくると考えがちだ。しかし、八田氏が主張するように、 送電コストをきちっと電気料金に入れれば、北海道や東北で安い再生エネを活用する工場が多くでき、 電力コストの高くなった首都圏では太陽光発電やコジェネ(電熱併給システム)などが広がる可能性もある。

求められる柔軟性の高い制度
 池辺氏が指摘するように、 再生エネの利用を拡大していくためには、ユーザーである国民に、電力供給の実態がよく「見える」ことが重要である。 ユーザーの選択の幅を広げ、再生エネを選ぶことができるようにすることもできる。これも現在進められている電力システム改革の大きな目標だ。
 また、和田氏や藤野氏が指摘しているように、地域レベルでの対応力を高めていくことが必要だ。再生エネとはいえ、 いろいろな形での環境負荷がかかる。漁業権や温泉などとの利害の衝突もある。新原氏が指摘するように、 農地や屋根などを風力や太陽光発電のための貴重な資源としてどう活用するのか、ということも制度設計で考慮に入れないといけない。さらに、 藤野氏が指摘するような、地域の特性にあった再生エネを柔軟に組み合わせていく手法を確立することも効果的だろう。
 基本的な制度設計は国が行うとしても、地方レベルでのきめ細かな情報収集、地域レベルでの取り組みが重要である。
 原子力政策が大きく見直される現在、再生エネへの期待は大きい。しかし、 発電装置としての原子力発電を太陽光発電や風力発電に切り替えていくという単純な問題ではないことは明らかだ。 再生エネの利用が促進されるような電力システムの改革、地域の取り組み強化、規制緩和など、多様な取り組みを行う必要がある。
 電気料金や炭素税などで価格メカニズムを有効に活用することも大きなポイントとなるだろう。 どのような再生エネで今後技術革新が進むのかという点については不確実性が大きい。そして、どの再生エネが適しているのか、 地域によっても大きな違いがある。だからこそ市場メカニズムを活用した柔軟な対応が必要となるのだ。

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識者に問う1「地域主体の開発を」
 和田 武(日本環境学会会長)

再生エネは可能か否かではなく、必要である
――― 日本の再生可能エネルギー(以下、 再生エネ)の将来性について、どのようにお考えでしょうか。
和田 現在の「気候変動に関する政府間パネル」 の目標(温室効果ガスの排出を2050年に先進国で1990年比80~95%削減)を考えると、 日本の電力に占める再生エネの割合は2050年で8割に、1次エネルギー全体では5割以上にする必要がある。また、資源が枯渇せず、安全で、 環境にやさしい再生エネは、持続可能なエネルギー構造を考える上で中心となるべき存在である。日本は、幸いにして、 あらゆる地域に様々な種類の再生エネ資源が満ちた国なので、不可能ではない。
 単に資源的な問題だけではなく、日本には、再生エネを開発するのに必要な技術力がある。再生エネの関連分野は、 日本の技術力を発揮できる場なので、この分野で技術開発を促し、日本の経済発展の軸にすべきだ。

■地域住民の資本参加で「自分の再生エネ」の意識を高める
―――  再生エネ普及促進のために最も重視されていることは何でしょうか。
和田 再生エネを普及させるには、地域が主体となって開発することが最も重要だ。 企業が開発する場合でも、発電所の所有権を一部だけでも地域住民のものとすることで、開発はスムーズになる。
 風力では、騒音、景観、バードストライクなどの問題がある。従って、もし、風力発電所を電力会社や地域外企業だけでつくり、 電気の利用者も買電収入も利益を得るのは全て外部となると、地元にとっては単なる迷惑施設となってしまう。こうなれば、 地元で反対が起きやすい。ここで、発電所の所有権を地域住民中心とすれば、計画の段階から住民が係わることとなり、地元では、「自分の風車」 という意識が高まる。また、風力発電による買電収入が、地元に還元されるので、反対は減り、導入がスムーズに進む。 自分たちの風車に反対する人はいない。例えば、デンマークでは風力が電力全体の26%を占めるが、その8割が住民所有である。
 地熱発電開発でも、地元の温泉観光業者も参加させ、観光収入以外にも、定期的な収入が生まれるという魅力を伝えることが重要。 洋上風力発電は、日本でもポテンシャルが高いが、大規模に開発するには地元の漁協が加わることが不可欠だ。バイオマスは、 地元の農林業を軸にする。ゴミ焼却場についても、日本はエネルギー利用率が世界で最も低いが、地方自治体が主体となり、 コジェネ型(電熱併給型)のゴミ発電を入れていくべきだ。地元の関係者が立ち上げから参加すれば、 地場産業と矛盾しないシステムをつくることが可能となる。地域の力を引き出す制度設計ができれば、 分散型の再生エネが大規模に広がることになる。
 実は、日本でも、いくつもの市民共同発電所がつくられてきたが、そのほとんどが市民負担である。それでも、地球温暖化防止への貢献や、 脱原発依存などの市民の思いで続いてきた。そういう力が日本にはあるのだ。これが、 今後は固定価格買取制度(FIT)で採算が取れるようになるので、地域の動きは更に強まるだろう。

■今後は熱利用も促進すべき
――― 再生エネの中では、太陽光、 風力が注目されていますが、その他の技術はどうでしょうか。
和田 エネルギーを全体で効率化するという観点からは、再生熱エネルギーの利用も重要だ。これからは、 日本でもエネルギー政策の中で、熱利用についても、促進施策を持つべきである。
 現実問題として、熱エネルギーでつくられた電気をさらに熱に変換するのは、最も効率が悪い。熱は熱として使う方が良いので、 熱水の供給などと組み合わせた電熱併給(コジェネ)を促進させるべきである。この熱源は、冬場の地域暖房としても活用出来る。例えば、 デンマークでは、バイオマスを中心としたコジェネ発電による地域暖房が、人口の約6割に供給されている。もう一つは、 無尽蔵な再生エネである地中熱利用が挙げられる。地中熱は、深く掘れば熱水を得られるが、逆に浅いレベルであれば、冷たい水も得られる。 日本では、夏の冷房にも使えるので、浅く掘る方が良い。地中熱を含めた地熱利用は、日本のあらゆる場所で利用できるので、促進すべきだ。 バイオマス燃料でのコジェネと地中熱の組み合わせで、日本のエネルギーはかなり効率化されると見ている。

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識者に問う2「電力の「見える」化で工夫を引き出す」
 池辺 裕昭((株)エネット 代表取締役社長)

再生エネに対する顧客の期待は強い
――― (株)エネットは、 発電所の電力や工場などで余剰となっている電力を調達し、 契約電力が50kW以上の高圧の需要家に電力を供給する新電力(PPS)の最大手ですが、その立場から見て、再生可能エネルギー(以下、 再生エネ)の将来性について、どのようにお考えでしょうか。
池辺 昨年の東日本大震災以降、顧客から、「100%グリーンの電力を買いたい」 「地産の電力を買いたい」といった要望も寄せられてきており、再生エネに対する期待の強さを実感している。当社としても、 このような声に応え、再生エネを最大限に調達・活用したいところであるが、30分同時同量制度という現在の制度上、 変動の大きい再生エネは使い勝手の良い電源とはなっておらず、種々の制約が生じている。
 また、現行の温暖化対策推進法において温室効果ガス排出係数は、一社につき一つしか持てないこととなっているため、当社が供給する電気は、 全て一律の排出係数となる。従って、ある顧客に価格は高いけれども100%再生エネの電力を供給し、 別の顧客には価格は安いけれど排出係数の高い電気を届けるというような選択肢を提供することができない。しかし、ITを活用すれば、 様々な電源の選択肢を用意し、サービスを提供することは容易に可能である。技術的に可能なことが制度により活用しきれないのはもったいない。
 今、電力の制度改革で盛んに議論されているが、電源の種類や供給事業者について、 顧客に多様な選択肢が生まれるように制度を変えていくことが大事だ。今の顧客は、豊富な選択肢を持てていないと感じる。

再生エネ活用には「見える」化
――― ITの活用について、 もう少し深くお聞かせ下さい。
池辺 当社は、ITを活用して、種々のスマートサービスを提供しているが、このポイントの一つに 「見える化」がある。一昨年の8月から、「エネビジョン」というマンション向けの供給サービスをスタートしたが、このサービスでは、 スマートメーターを通じて、顧客の電力使用状況をタイムリーに「見える」ようにし、さらに、 時間帯別料金メニューや省エネポイントサービスといった顧客の節電行動を評価するサービスの提供も開始したところ、 こういったサービスを通じて需要家の行動パターンが変わり、ピークカット、ピークシフトの効果が大きく表れるということがわかった。 具体的には、昼間のピーク時間帯で20~30%くらいの節電効果が出た。いままで、顧客は省エネに取り組もうとしても、 自分が今使っている電気の情報がないために、省エネの仕方そのものがわからないということがあったが、「見える化」により、 たとえば節電が要請された時間に買い物に行く、といったように行動パターンの変化や、様々な工夫が生まれる。こうした工夫は、 再生エネの活用にもつながると思う。
 もう一つ、「見える化」を実現するサービスとして、今年の7月から、企業を対象とした「エネスマート」の提供を開始した。 これらの工夫を促すため、様々な情報がオープンに提供されるということが重要である。

電源の種別だけでエネルギーを考えるべきではない
―――  将来の日本の電源における再生エネの構成比率について、どのようにお考えですか。
池辺 エネルギーを考える際には、電源の種別だけではなく、もっと幅広い視野が必要だと思う。例えば、 再生エネだけでも、太陽光、風力、バイオマスなどにはそれぞれ設置に適した場所があるように、地域性を抜きには語れない。 経済性や安定性などの観点もある。エネルギーミックスの検討にあたっては、これらの要素を総合的に捉え、 どうすれば全体で最適化されるのかを考えることが重要だと思う。集中電源と分散電源の組み合わせもエネルギーミックスの要素の一つになるし、 省エネや節電分を買い取るネガワット取引のような需要側での取り組みもこれに含まれると思う。例えば、 再生エネ普及の政策目的の柱であるCO2削減効果という観点で見れば、 ネガワット取引は最もコストがかからない対策になるのではないか。
 大事なのは、何%かという数字ではなく、そこに至る考え方だろう。この点について、国民的な議論を一層深めるべきだと思う。

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識者に問う3「発想の転換が再生エネの可能性を広げる」
 新原 浩朗(資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長)

■エネルギーに対する発想の転換が必要
―――  日本における再生可能エネルギー(以下、再生エネ)の将来性について、どのようにお考えでしょうか。
新原 日本における再生エネの将来性は高い。しかし、旧来の考え方のままでは、 その可能性を十分に生かしきれないままだろう。
 これまでのエネルギー政策は、「安定供給」を厳格に要求しており、しかも、kWh(キロワット時)という供給量のみに着目していた。 しかし、この考えは、現在のグローバルスタンダードではない。発電側の出力変動を認め、 その変動を需要サイドでも調整していくという新たな考え方が必要である。それにより、変動が大きい再生エネでも、その活用の可能性は広まる。 そのため、電力システムの将来像は、これまでの大規模集中電源による中央集中型から、再生エネも活用した分散型になっていく。 省エネの考え方も修正が必要である。エネルギー政策同様、これまではkWhで表される量の省エネしか考えていなかった。ここには、 出力としてのkWへの考慮がない。これからは、デマンド・レスポンス、蓄電池、ピークシフトなど、 需要者側で電力需要を平準化させるという観点も省エネの枠内になってくる。
 現在、再生エネが発電源として占める比率は、水力を含めても10%しかないが経済産業省の総合資源エネルギー調査会の整理では、 この比率を2030年時点で25~35%まで増やすこととされた。これを達成するには、規制改革や意識改革だけでなく、 思い切ったビジネスモデルの変革も必要である。そのために、固定価格買取制度(FIT)では、 再生エネ発電がビジネスとして成立できるような価格設定にしている。

■再生エネ普及の課題は日本の構造問題そのもの
――― 個別の再生エネについて、 普及の道筋をお聞かせ下さい。
新原 太陽光発電の普及には、日本の特徴である民家の屋根を最大限に活用した発電が必要。そのために、 「屋根貸し制度」を世界で初めて導入することにした。発電事業者が民家の屋根を借りることで、 発電によるリスク及び収入はすべて事業者側の責任となり、民家は賃料という安定収入を得る。双方にメリットがあると考えている。
 風力発電は、風車の他にも大型付帯設備が必要なので、集中立地させれば単価は安くなる。スケールメリットが働きやすい。 それには風況の良い広い土地が必要だ。可能性としては、第一種農地と言われる大規模な農地の利用が考えられる。しかし、現在、 転用はハードルが高いが、実際には風力発電施設の転用必要面積はポールの部分だけなので、農地の中に立てても農業はそのまま維持できる。 農地の一部を間借りするだけである。これは、農家にとってもメリットのある話である。欧州では、風力発電には農地を活用しており、 農家の副業となっている。
 地熱発電は、潜在量としては非常に多い。しかし、その79%が自然公園内にあり、景観保護などの観点もあるので、開発は容易ではない。 これに対しては、まずは、優良案件をいくつか指定して推進していく。地熱は2030年以降も増やしていくことを考えなければいけない。 地熱の最大の長所は、原子力発電と同じく、発電量が乱高下せず、安定的な電源になり得ることである。
 農地や自然公園での電源開発は種々の制約もあり、電力関係者以外の各方面との調整が欠かせない。しかし、調整が困難と言っている限りは、 再生エネの普及は進展しない。いうなれば、日本の構造問題そのものが問われている。関係省庁の協力をいただいているので、 がんばって推進したい。

■太陽光と風力が増加の二本柱
―――  2030年までに再生エネはどのように増加するのでしょうか。
新原 2030年時点での再生エネ全体の中での各技術の割合は、大まかに、水力3割5分、風力2割、 太陽光2割、地熱1割、バイオマス1割を目標にしたい。
 現在、再生エネによる発電においては、水力の比率が圧倒的に高く、90%を占める。これからも、 水力は日本の再生エネの主軸であり続けるだろう。しかし、大規模な水力発電は開発され尽くしており、大きな増加は期待できない。 小水力発電の拡大にできるだけ努めたい。
 再生エネを増やす大きな柱は、太陽光と風力となる。2030年までの普及進展は、太陽光が先導し、風力が後から伸びてくると考えている。 太陽光は、比較的短期で導入できるため、ここ数年での上昇が期待できるが、後半は土地の制約等で徐々に上昇幅は減少してくる。対して、 風力は、送電線、アセスメントなどの問題があり、計画してから発電するまでにある程度の期間が必要になるため、 後ろ上がりで増加することになる。

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識者に問う4「市場原理を貫けば首都圏の再生エネ・コジェネにチャンス」
 八田 達夫(学習院大学経済学部 特別客員教授)

再生エネ普及は市場原理に任せる
――― 日本における再生可能エネルギー(以下、 再生エネ)の将来性について、どのようにお考えでしょうか。
八田 一番必要な対策は、再生エネの普及を邪魔している種々の障害を取り除き、 本来の市場原理がいきるようにすることだ。一方、 固定価格買取制度(FIT)のように経済原則に反する形で再生エネを無理に増やす必要はない。これは、 電気料金を不必要に引き上げて再生エネ業界の利権に「奉仕」する政策だ。

電気料金の差別化が首都圏の再生エネ・コジェネにチャンスを与える
―――  市場原理をいかすために一番重視される点はどこでしょうか。
八田 地点ごとの需給の差を反映して電気料金に差をつけることだ。売電価格も購入価格も、 需要超過地では高くし、供給超過地では安くするべきだ。そうすると、需要超過の首都圏では、売電価格が上がるから、発電事業が有利になる。 大型ビルの多い首都圏ではコジェネには直ちに大きなチャンスが生まれるし、太陽光も採算に乗る可能性もある。逆に、供給超過の東北では、 需要家が安く電力を購入できることとなるため、工場や事業所の建設が進むことになる。

――― 電気料金に地域差をつけるためにはどうしたらいいのですか。
八田 送電の地点料金制を導入することである。例えば、現在、電力は、 東日本では大勢として東北から首都圏へ送電されている。この潮流方向でさらなる追加の送電を行う場合、送電ロスを増大させ、 送電線の追加建設を必要とするので、送電費用の増大を生む。反対に、逆潮方向(この場合、首都圏から東北への方向)の追加送電は、 送電費用を減少させる。というのも、電気の性質上、ある潮流方向に対して逆の送電をすると、トータルの送電量が減少するからである。 それにもかかわらず、現在の日本では、送電料金が、売り手と買い手の組み合わせに対する託送料金として、方向に関係なく、 一律にかけられている。このため、発電所や需要家の立地点の選抜に市場メカニズムがうまく機能していない。
 この点を改善するためには、現行制度を改めて、売り手には送電料金を、買い手には受電料金を、 それぞれの立地点ごとに異なる水準で徴収することにするべきだ。しかも、これはマイナスの料金になりうる。すなわち、 料金を徴収するのではなく、補助金を与える場合もあることとする。
 
――― 具体的には、送電料金や受電料金はどう決めるのですか。
八田 東北での追加発電と、首都圏の電力消費量の増加とは、潮流方向の送電量を増やすので、 東北での追加発電には送電料金を、首都圏での受電には受電料金を高めに取る。一方で、首都圏での追加発電と、東北での電力消費量の増加は、 潮流方向の送電量を減らす効果があるので、首都圏の追加発電に送電補助金を、東北の需要増に受電補助金を与える。この料金制よって、 購入価格も売電価格も、首都圏では上昇し、逆に東北では下落する。

――― 例えば、首都圏での追加発電が、潮流方向の送電量を減らすのはなぜですか。
八田 需要超過地である首都圏での発電が増えればまず首都圏の超過需要は減る。さらに、 取引所における電気の全国価格が下がるから、その分、東北における超過供給も下がる。これは潮流方向の送電量を減らす。結果として、 首都圏での追加発電は、両地域での需要増と、東北での発電量の減少で吸収される。一方、東北の工場や事業所などで受電が増えれば、 東北の超過供給が減る。さらに、電気の全国価格が上がり首都圏の超過需要を下げる。これも潮流方向の送電量を減らす。
 この地点料金制によって、潮流方向の送電量は減る。すなわち、首都圏でも東北でも、電気の需要と供給が均衡に近づくことになる。特に、 高い送電料金は、超過供給地である東北での発電の収益を圧迫するので、東北での新規の電源立地を減らす方向に寄与するだろう。その結果、 長距離での送電量が減少し、これまで生じていた送電の無駄を減らすことになる。これらによって、電力市場は地産地消へ向かい、 それによる節約で生じた利益が、経済全体に及ぶことになるのである。
 従って、ここで支払われる補助金とは、利権に資する為のものではなく、電力市場を本来あるべき姿に戻すためのものなのである。

――― その他に改善すべき点はありますか。
八田 現在、新電力には、30分間で契約者の需要に合わせた電力供給が義務づけられており、 供給量が足りないなどのインバランスに対しては、ペナルティが掛けられている。この「30分同時同量制度」を改革し、 調整電力の限界費用で精算することにすれば、インバランスに対するペナルティが減るので再生エネの新規事業者の参入が容易になる。 もう一つは、事前に約束した電力量のみ供給責任を負う「数量確定契約」の導入である。 事前に約束した電力量を超えて電気を使ってしまった場合には、時間毎に電気料金が変動する「リアルタイム市場」を用いて精算すれば良い。

温暖化対策には炭素税
――― 再生エネの普及は市場原理に任せるとのことですが、 温暖化対策はどうお考えになりますか。
八田 温暖化対策という政策目的達成のためには、再生エネの奨励よりも、 法人税減税と組み合わせた炭素税の導入が有効だ。これにより、再生エネは、 二酸化炭素を排出する化石燃料を使った発電に対して相対的に優位になる。その際、日本は国際競争をしているのだから、 他の先進国と同水準の炭素税率にすべきだ。さらに途上国に日本の優れた石炭発電技術を用いた投資をすることも、 費用対効果の大きな温暖化対策だ。

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識者に問う5「政策目的を明確にした議論が必要」
 澤 昭裕(21世紀政策研究所 研究主幹)

再生エネは温暖化対策であり原発事故とは無関係
―――  現在行われている電源比率に関する議論についてどのように思われますか。
 エネルギー政策は、エネルギー安定供給、経済性、温暖化対策の三つが重要な観点。しかし、 これらの政策目的を同時に達成するエネルギー源は、原子力を別とすれば今のところないので、 優先順位を明確にした上でエネルギー源のバランスを考える必要がある。現在の再生可能エネルギー(以下、再生エネ)に関する議論は、 この点があいまいなまま進められており、問題がある。
 そもそも、再生エネの導入は、化石燃料を減らすことを目的とした温暖化対策として考えられてきており、原発事故とは全く関係はない。 事実関係を言えば、去年の8月に可決した「電気事業者による再生エネ電気の調達に関する特別措置法」の法案が閣議決定されたのは、 震災直前の3月11日の午前中である。つまり、 この法案で規定されている固定価格買取制度(FIT)は原発事故を契機としたものではなかった。しかし、 脱原発を個人的主義とする菅前首相が法案の成立を退陣条件の一つにあげたことにより、現在、 原発を代替するための再生エネというイメージが国民の間で強くなってしまっている。こうして、再生エネへの期待が過大となり、 議論がゆがんでしまっている。
 また、2010年に策定された現行のエネルギー基本計画は、 2009年に鳩山元首相が掲げた地球温暖化対策の目標(2020年に温室効果ガス(GHG)を1990年比で25%削減) と辻褄を合わせてつくられている。この目標は、策定当初からその達成が非現実的だと考えられており、例えば家庭部門では、 GHG排出量は既に1990年比で3割以上も増えていたため、 25%削減するには半分程度に減らす必要があるレベルだ。つまり、 最大限の省エネ進展等を織り込んでも、エネルギーの需要側だけでは目標達成できる姿を描けず、供給側で大胆な姿を描く必要があった。結果、 発電において、 GHGを排出しない再生エネと原子力をフル活用することにした。しかし、再生エネはどう積み上げても20%程にしかならず、 結局、原子力による発電量が50%超という偏った構成にせざるを得なかった。つまり、原子力依存も、もとは温暖化対策だったのである。
 いずれにせよ再生エネについては、2030年時点でその比率を25~35%とすることが今議論されている。 この計画策定から2年しか経っておらず技術進展等の大きな変化が起こっていないにもかかわらず、 なぜ急激にこれだけ再生エネを増やすことが可能となるのか疑問だ。また、もしそこまでの比率にするのであれば、 相当な負担が生じる恐れが大きい。

再生エネは安定電源には不向き
―――  再生エネを導入する政策的意義というのはどこにあるのでしょうか。
 特定のエネルギー源に大きく依存することは、安定供給上のリスクを高め危険なので、 電源のバラエティを持つことが重要だ。この意味においては、再生エネも一つの選択肢となる。中でも、 廃棄物発電(ゴミ発電)を含めたバイオマス、地熱、小水力などは、発電できる量の問題は別にして、 出力が安定しているので安定電源になり得る。しかし、太陽光や風力は出力が不安定であるため安定電源にはなり得ず、 バックアップとして火力発電が必要となるため、厳密にはエネルギー安全保障を改善することにもならない。 再生エネの導入できる量の限界も考えると、原子力を代替する現実的な安定電源には火力の方が妥当だ。しかし、 火力では二酸化炭素排出という問題がある。太陽光や風力は、これを緩和するための温暖化対策としての文脈で考えるべきだ。

再生エネ普及は量的に行き詰まる
―――  2030年時点の発電量に占める再生エネの割合を、25~35%に増やせるとする根拠が疑わしいとのことですが、詳しくお聞かせ下さい。
 再生エネは、一定のスピードで増加するのではない。風況が良い、日照時間が長い、土地代が安いなど、 まずは採算がとれるような開発に適した場所から電源立地が進む。しかし、こうした適地は限られており、徐々に開発が難しくなっていく。 発電量に占める再生エネの割合が25~35%とする選択肢が、現在国で議論されているが、 適地を全て開発し尽くしたとしてもこの割合を達成することは難しいだろう。
 FITで再生エネ普及を促進しようとしているが、FITでは、価格は決まっても、導入量は担保されない。もし、 再生エネを量的に確保したいなら、一定量の供給を電力会社に義務づける方が確実だ。そうなれば、 送電線や電源の開発を電力会社が自ら行わざるを得なくなる。もちろん、そのコストは結局、受益者である電力ユーザーに転嫁されざるを得ない。

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識者に問う6「多様な観点と情報をもとに、地域ごとの再生エネ計画を」
 藤野 純一(国立環境研究所 主任研究員)

時代の必然性を先読みした地域に根差した再生エネ開発を
―――  日本における再生可能エネルギー(以下、再生エネ)の将来性について、どのようにお考えでしょうか。
藤野 日本は、世界の中でみても自然が豊かであり、国土の面積と比較しても、 再生エネの資源には恵まれている。風力のポテンシャルでも、ドイツよりも高いとの話もある。
 しかし、一口に再生エネといっても様々な側面がある。日本国内の再生エネ資源の分布状況は地域ごとに異なる。また、「グリーン」 といえば名前の響きは良いかもしれないが、再生エネも万能ではなく、やり方次第で大きな環境負荷を生み出す恐れがある。例えば、 風力発電はバードストライクや低周波騒音などの問題があるし、地熱発電も高温の廃熱が周辺の環境を汚し得る。再生エネを増やせば、 そのための送電網増強が必要となるが、その整備をするにしても、環境への負荷は避けられない。自然のエネルギーというイメージで、 諸問題が全て解決するかのように祭り上げるのは良くない。
 再生エネに求められる社会からの要求も、時代ごとに変わる。温暖化対策や経済性などを重視する場合もあれば、 再生エネがもたらす環境負荷への対応を重視する場合もある。なにを優先するかは、その時代の社会情勢に左右されるが、 そのような不確実な問題の中でも答えを見つけ出せるよう、時代の必然性を先読みした思想が求められる。
 そこで、再生エネの開発にあたっては、許容できる環境負荷も含めた多様な観点から、時代の経緯を含めた、 柔軟でしたたかな地域に根差した方法を選ぶ必要がある。そのためには、地方を主体とした、持続可能な社会への移行(トランジション・ マネージメント)の流れが生み出されなければならない。地域による主体的な選択は、エネルギー計画に関するヒト、モノ、 カネの権限を地方自治体に移すことで実現可能となる。

多様な情報を活用し知をつなげるネットワークを構築せよ
――― 地域が、 自分自身で考えることが重要ということですね。では、そのために解決すべき課題はありますか。
藤野 地域で入手可能なデータの不足があげられる。これまで再生エネが普及してこなかった原因でもある。
 最適な再生エネ利用の計画を作るためには、個々の地域の資源の分布状況、エネルギー需給予測、経済予測、都市計画、 人口動態など様々な情報を組み合わせることが必要だ。しかし、現在、ほぼすべての地方自治体においては、 域内のエネルギー需給の状況などの基礎的なデータですら把握できていない。例えば、家庭や工場など地域でエネルギーを使う場所の需要データ、 域内の発電所のデータなどである。震災など有事の際にも、これらのデータがなければ、復旧のための優先順位も決められず、 市民の安全すら守れなくなってしまう。いざというときの備えがなければ、最適なエネルギー需給計画とはいえない。
 また、欧米では、地域のエネルギー計画を立てる上で、地理情報システム(GIS)を活用している。日本でも、計画を立てる上で、 地理情報を活用すれば、より有効な再生エネの利用につながるだろう。
 情報の活用に加えて、知のネットワークづくりも重要だ。例えば、地元の大学や図書館などは、その地域の「知」が集約する場所なので、 ネットワークの中心になり得る。ここでは、成功事例だけでなく、失敗事例も広域で共有する。再生エネの利用は、 長期的な視点で失敗の中から真摯に学んでいくことが必要であるが、地元の大学などは、失敗理由の分析などで長期的、 広域的に役割を担うべきだ。これにより、地域が必要とする再生エネ開発は必然的に活性化するだろう。

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≪関連頁≫
「天然ガスが新しいエネルギー政策を拓く」」(対談シリーズ第69回/2012年9月)
電力システム改革の課題-「配給」から市場の活用へ-」(NIRAオピニオンペーパーNo.7/2012年8月)


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