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NIRA政策レビュー

改革迫られる電力政策

NIRA政策レビューNo.53 2011/07発行
伊藤元重(NIRA理事長)、金本良嗣(政策研究大学院大学教授・学長特別補佐)、八田達夫(大阪大学招聘教授)、加藤裕己(本誌編集主幹)

問題提起 「改革迫られる電力政策」伊藤 元重(NIRA理事長)
視点1  「岐路に立つ電力市場自由化:原発事故後こそ冷静な政策選択を」
        金本 良嗣(政策研究大学院大学教授・学長特別補佐)
■ 視点2  「原子力発電の費用と便益」 八田 達夫(大阪大学招聘教授)
解説解題  加藤 裕己(本誌編集主幹)
電力用語解説

  3月の震災以降原発の安全性に疑念が持たれ、原発が定期点検などで停止したことで電力の安定供給に問題が生じた。現在のところ、需要家の節電努力や天候条件に恵まれたことから大規模停電などの深刻な事態に陥っていない。しかし、電力の安定供給を実現していくためには、需要者側の節電努力に頼り、天候に期待するだけでは限界があることは明らかである。安全な電力を安定して供給し続けるためには、現状の電力政策を改革する必要がある。
 また、電力の供給形態は地球温暖化問題とも深くかかわっており、この点からも原発の利用を含め抜本的な改革が必要とされる。
 本政策レビューでは、こうした電力政策の改革についてさまざまな観点から議論を行っている。

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問題提起 「改革迫られる電力政策」 伊藤 元重(NIRA理事長)

危機対応と長期ビジョン
 東京電力の運営をどうするのか、これは今や一企業の範囲を超えて、日本全体にとって重要な政策課題になっている。 原発事故を終息に向かわせること、放射能汚染への補償をきちっと行うこと、電力不足の混乱を極力回避することなどが当面の政策課題であるが、 それは同時に東京電力の経営問題にも深く関わってくる。電力料金への転嫁をせず、政府からの支援もなければ、 東京電力は債務超過に近い状態であると言ってよいだろう。日本航空のように会社更生という道を辿るのは、 東京電力の場合には現実的とは思われない。東京電力のリストラと経営改革を前提としつつも、 政府の支援を入れた私的整理を軸とする再建策が模索されるだろう。
 私には、東京電力の問題と日本航空の問題が重なって見えてくる。世界のどの国でも、航空業界は大きく変化している。残念ながら日本では、 航空業界の再編ではなく、日本航空の救済のために膨大な資金が使われている。 日本航空の救済によって日本の空は10年前に戻ってしまったと感じている人は多いはずだ。 日本の航空業界の将来のあるべき姿を考えた改革にはなっていないのだ。時間に追われる日本航空の資金繰りと、 飛行機を一日たりとも飛ばさないわけにはいかないというプレッシャーが、目先の問題に対応することで精一杯、という状況を作ってしまった。 日本航空問題が一段落して周りを見回したら、航空業の姿は理想からはほど遠い状況になっているのだ。
 電力の場合には、「当面の問題」に対応しなければならないというプレッシャーがもっと強い。 電力は文字通り1分たりとも止めることはできない。万が一でも大規模停電が起きたら大変なことになる。放射能汚染の補償額は膨大になるし、 社債や銀行融資などでの東京電力の巨額の資金調達は、一企業の問題を超えて日本の金融システムにも大きな影響を及ぼしかねない存在である。 電力不足の問題についても、対応を誤れば、日本経済全体に大きな影響を及ぼしかねない。 緊急性の大きなこれらの課題に適切に対応しなくてはならないが、目先の問題をクリアするのに精一杯で、 気がついたら見るからにグロテスクな電力産業の姿になっていたというのでは困るのだ。

改革は早期に着手を
 原発事故で、日本の電力政策は大きな見直しを迫られている。震災前の計画のように、 原発への依存度を高めて温暖化ガスの排出を抑えるという道は現実的ではない。今後、 どこまで原発に依存するのかということは国民的な議論に委ねるとしても、自然エネルギーへの利用を拡大していくことと、 節電を徹底していくことが急務となっている。電力改革には、早急に着手する必要がある。
 電力改革は平時でも困難な課題だが、今回のような緊急時にはさらに困難の度合いを増す。 緊急時であるということが改革を先送りすることの言い訳になりかねない。混乱を極力回避したいという意向が働いて、 大胆な改革が回避される恐れもある。
 そうした事態を避けるためには、一刻も早く、電力改革の長期的な方向について政策の方向を決めなくてはいけない。 改革の方向を明確にした上で、当面の問題の処理にあたる。これが、日本の電力政策を正しい方向に持って行く上で必要なことである。 長期的なビジョンなしに当面の対応に当たる、ということはあってはならない。

送電と発電の分離
 地域ごとに送電と発電の両方の機能を備えた独占企業が電力供給を担っている。これが戦後の日本の電力供給の基本であった。 拡大する電力需要に対して、安定的な電力供給を確保する上で有効であったと言われる。しかし、自家発電、自然エネルギーの有効活用、 小規模水力発電など、多様な電力源の拡大を支援し、電力供給で競争メカニズムを強化するためには、送電と発電を分離する必要がある。 海外の先進国で、日本のように送電と発電の両方で独占に近い状態が維持されている国は多くない。
 原発の安全性の確保ということから、原発の管理のあり方も論点となるだろう。原発の管理や運営に国がもっと関与することになれば、 その部分を電力会社から切り離すということも検討されるだろう。送電と発電の分離について乱暴な議論はするべきではないだろうが、 今の地域独占体制を維持したまま、電力で大胆な改革を進めていくことは難しい。

電力の総量買い取り制度
 太陽光発電や風力発電を普及させるためには、電力の総量買い取り制度の導入が有効である。しかも、 その買い取り価格が高めに設定されるほど、これらの自然エネルギーによる発電への投資資金が回収されやすくなる。 高価格での総量買い取り制度を導入すれば、自然エネルギーを利用した発電量は急速に拡大すると考えてよいだろう。
 ただ、こうした制度を導入すれば、それは電力コストを引き上げてしまう。これまで制度の導入に慎重であったのは、 これ以上に電力料金を上げれば日本経済全体に大きな負荷がかかると考えられていたからだ。代替エネルギーの普及と電力コストの間には、 トレードオフの関係がある。ただ、原発事故を契機にして、 代替エネルギーを拡大させるためには電力コストが上がることを容認せざるを得ないという考え方が強くなってきた。もちろん、 どの程度のコストアップを容認できるのか、という問題は残る。

電力料金制度の見直し
 電力料金制度を柔軟に活用することは、節電にも、そして電力の効率的利用にも、 きわめて有効な手法であるはずだ。ピークとオフピークの電力料金が同じであるというのはおかしい。 ピークの料金を高めに設定してオフピークに需要をシフトさせることを可能にするように、スマートメーターの導入を急ぐべきだ。 そうした柔軟な料金制度が導入されれば、それに対応した形でより高度なスマートメーター、低コストの蓄電池、 スマートハウスなどの製品化も進み、節電分野で大きな技術進歩が期待できる。それは将来の日本の主軸産業の一角になるだろう。
 電力不足への対応のためには、ユーザー間の電力取引を拡大する手法の導入が望まれる。当初の予定よりも少ない電力使用ですむ企業は、 余った電力を他の企業に売ることができる。逆に電力が余分に必要になった企業は多少高い価格でも外から購入してくる。 こうしたスポットの電力の市場を設定し、日々の電力需給状況で価格が変動するという制度を導入している国もある。これまで日本は、 電力供給を一定の料金でいくらでも電力会社から受けられるという制度であったが、送電と発電の分離を進めていけば、 多様な発電主体だけでなく、利用者間での電力取引の可能性も開けてくる。

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視点1「岐路に立つ電力市場自由化:原発事故後こそ冷静な政策選択を」
      金本 良嗣(政策研究大学院大学教授・学長特別補佐)


 原発賠償支援法案が8月3日に成立した。この法案の是非については様々な議論があるが、いずれにせよ、 1年後をメドに見直すこととされており、短期的な賠償問題の処理が目的である。 東京電力を破綻させるかどうかを含めた長期的な姿はまだ描かれていない。
 原発事故補償と東電処理のあり方を考える上において、まず様々な前提条件があることを認識しなければならない。
 第一に、電力は生活のために必須なので、東京電力を破綻させたとしても電力の供給に支障があってはならない。電力事業の継続のためには、 供給力確保のための維持管理や設備投資が必要であり、そのための資金供給が確保されなければならない。賠償負担を引きずっていては、 新たな資金調達が不可能(あるいは極めて高コスト)になり、電力供給に支障が出てくる。なるべく早いタイミングで、東電(あるいは、 その後継企業)の賠償負担を確定し、健全な企業経営ができるようにしなければならない。国鉄民営化の際には、 累積債務の一部をJR各社に割り当て、残りを清算事業団に持ち込んだが、このような仕組みが必要であろう。
 第二に、電力市場は自由化のプロセスにあり、すでに50kW以上の需要家については自由化されている。 小売りについての規制が残っているのは、家庭用とコンビニ等の小規模需要家のみである。したがって、 東京電力が関東での唯一の電力供給者であるかのごとき議論があるが、これは正しくない。また、電力料金制度の見直しについては、 規制料金が適用されているのは家庭用と小口需要家のみについてであり、その他は、電力会社の自由になっていることを認識しておく必要がある。 ピーク時の料金を上げ、オフピーク時の料金を下げるといったことは、大口需要家については電力会社の経営判断で今すぐにでも可能である。 逆の視点から見ると、規制料金ではないので、政府は料金体系に介入する権限をもっていない。

送配電と発電は分離されるべきか
 発送電分離についても、電力市場自由化のプロセスをどう見るかにかかっている。電力市場の自由化は、 2000年に契約電力が2,000kW以上の特別高圧需要家について始められ、2004年に500kW以上に、 2005年には50kW以上に拡大された。 家庭用を含む全面自由化に踏み切るかどうかについて2007年から2008年にかけて検討されたが、その際には、 全面自由化を見送ることとされ、おおむね5年後に再度検討することとされた。
 全面自由化を見送った理由の一つは、すでに自由化されている分野での競争が十分でないことであった。PPS(特定規模電気事業者) と呼ばれる新規参入事業者のシェアは3%程度に留まっており、電力会社同士の競争も全くといって良いほどない。これまでのところ、 電力価格は下がってきており、競争性が低いことの弊害は目立った形では現れていないことから、 競争性を確保するための大胆な政策は採用されてこなかった。しかしながら、自由化の前提は競争が確保されることであり、 既存電力会社がほぼ独占的な地位を占めていることは長期的には許容できないであろう。
 電力市場の自由化が着実に進んでいる欧州では、大胆な競争政策が採用されている。 既存電力会社のシェアが依然として大きいフランスやスペインでは、「仮想発電設備」(VPP:Virtual Power Plant) 制度(売却対象の発電所を特定せず、発電容量の一部を競売により売却する方式)が採用されている。英国では、 2000年に大手電力会社の発電設備を半強制的に売却させ、それ以降は、卸市場の競争性が高まって、電力価格が低下した。 電力自由化後発国のイタリアでも、1999年のベルサーニ政令で、一つの事業者が国内の発電量または国内への電力輸入量の50%以上の発電・ 輸入を行うことを禁止した。これを受けて、 既存電力会社のENELは当時保有していた5,600万kWの発電設備のうちおよそ1,500万kW分を売却した。
 発送電分離については、2003年改正EU電力指令で、送電部門の法的分離と機能分離が義務づけられ、2007年にはほぼ完了している。 所有権分離については、採用している国としていない国がある。ただし、所有権分離をしていないフランスでも、 送電会社の経営の独立性は厳格に保たれている。
 日本において発送電分離を行うべきかどうかは、電力市場の自由化を維持するかどうかにかかっている。自由化を維持するのなら、 発電及び小売りの市場において有効な競争が確保されるようにしなければならない。これまでの政策では、 実効性のある競争が起きなかったことを考えれば、より大胆な政策を採用する必要があるであろう。もちろん、 自由化を進めないという選択枝もある。その場合には、実質的な独占力を持つ電力会社が自由に価格を設定できるといったことは許されない。 価格規制の再導入が必要である。

原発と再生可能エネルギー
 今後も原発を維持していくべきなのか、再生可能エネルギーで原発を代替していくべきなのかといったことが問われている。これについては、 原発事故や温暖化のリスクと発電コストを冷静に検討しなければならない。
 第一に、これから5年~10年程度の期間をとると、原発をすべて止めて、 その分を再生可能エネルギーによってまかなうことのコストは極めて高い。全量買取制度の検討の際に、 再生可能エネルギーによる電力を高い価格で買い取ることでどの程度の導入量が達成されるかの試算がなされた(1)。20円/kWh (住宅用太陽光は42円/kWhの余剰買取)で20年間買い入れるケースでも、 全量買取制度導入後15年目における年間発電量は7百億kWhを若干上回る程度であった。これに対して、 最近の原子力発電による発電量は3千億kWh前後である。なお、全電源平均の発電単価は7円を下回る程度であり、CO2削減コストを計算すると、1トンあたり1.9万円程度である。したがって、 全量買取制度は温暖化対策のための政策としては極めて高コストである。
 第二に、原子力発電のコストであるが、電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書(2004年1月)によると、原子力が5.3円、 石油火力が10.7円、石炭火力が6.2円、LNG火力が5.7円となっている。この推計については、 バックエンド費用がすべて入っているわけではないといったことから、原子力のコストが過小に見積もられているという批判がある。 しかしながら、原油や石炭のコストが大きく上がっていることを考えると、原子力の優位性が大きく損なわれているとは考えにくい。もちろん、 福島第一原発のような事故が再度発生するようであれば、原子力発電のコストは極めて高いものになる。原子力発電を維持していくとすれば、 今回の事故を教訓に、原子力発電の安全性を高めなければならない。
 もう一つ注意しなければならないのは、既存原発の稼働と新しい発電所の建設とでは、コストが大きく異なる点である。原子力発電においては、 発電所の建設費用が極めて高く、建設後の燃料や維持の費用は相対的に小さい。上記の5.3円というコストは建設コストを含んでおり、 既設の原発のコストはこれよりもはるかに低い。したがって、建設済みの原発を稼働させないことのロスは非常に大きい。
 原発を維持していくとすると、その運営体制はどうあるべきであろうか。一部に国有化の意見があるが、 国の官僚組織が原子力発電をうまく運営していけるとは考えられない。したがって、原子力安全規制機関の監督の下で、 民間企業が経営していくことにならざるを得ないだろう。その際に、 発送電のすべてをもつ垂直統合電力会社が原子力発電所を保有し続けるべきかどうかは議論になるところである。もし発送電分離を行うとすると、 パブリック・アクセプタンスの面で難しい原子力発電を電力会社から分離し、それらを統合していくという方向も考えられる。

再生可能エネルギーの全量買取制度
 再生可能エネルギーの全量買取制度については、国会に法案が提出され、議論が始まっている。筆者は 「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」に参加していたので、中立的な立場とは言えないかもしれないが、 なるべく客観的に評価してみたい。
 全量買取制度の主たる目的は温暖化対策であろう。温暖化対策については、温暖化は地球全体の問題であり、 温暖化ガスの発生源がどの地域であっても、どの産業であっても、 排出量1単位がもたらす地球温暖化効果は同じであるという基本原理を十分に認識する必要がある。温暖化ガスは、その発生源が生産活動、 消費活動のほとんどすべてに及んでおり、しかも削減コストに大きなバラツキがある。したがって、 削減コストの高い分野で無理やり削減させたり、 コストの高いエネルギー源を普及させようとしたりする政策は国民全体にとってのコストがきわめて大きい。
 こういった視点から見ると、全量買取制度は再生可能エネルギーという特殊な分野に実質的に大きな補助金を出すというものであり、 ファーストベストの政策とは言い難い。先ほど触れたように、買い取り価格20円、20年間の例では、 二酸化炭素1トンあたり2万円近いコストになり、現状での世界的な対策コストの10倍程度となっている。本来は、 こういった特定分野に対する対策ではなく、経済全体に一様に課税される炭素税や排出量取引制度が望ましい。しかしながら、 こういった大きな制度の導入は当面は困難であるので、セカンドベストの政策として位置づけることが可能であろう。

スマートグリッドと電力料金政策
 最後に、脚光を浴びているスマートグリッドについて簡単に触れておこう。スマートグリッドは電力の送配電と電気通信を結びつけて、 より効率的な電力供給システムを構築しようとするものである。現時点では、コストに見合う効果があるとは言えない段階であるが、 将来的には大きな革新がもたらされる可能性がある。
 電力供給における最大の問題は、電力の貯蔵が難しいことである。0.1秒単位で需要に対応する供給をしなければ、 電圧と周波数が維持できなくなり、停電を引き起こしてしまう。したがって、電力会社は夏のピーク時間に対応する発電設備を用意しており、 これが日本の電力価格を高くする一つの重要な要因となっている。スマートメーターを活用して、ピーク需要を制御できれば、 大きなコストダウンが可能になる。
 スマートグリッドが有効に活用されるようになるためには、技術開発だけでは十分でなく、様々な側面における制度環境の整備が必要である。 たとえば、現時点では需要家は電力取引所の取引に参加できないが、欧米諸国のように参加できるようにする必要がある。
 スマートグリッドのためには発送電分離が必要であるという議論がある。一貫体制のもとでもスマートメーターの導入等は可能であり、 発送電分離が不可欠であるという訳ではない。しかしながら、分散型電源の活用のように、発電部門の利益に反するような技術革新については、 発送電を分離していた方がスムースに進むであろう。いずれにせよ、発送電分離は民間企業を分割するという大手術であり、メリット、 デメリットを総合的に判断する必要がある。スマートグリッドといった一つの事項だけで決める問題ではない。
 また、細かい点であるが、スマートメーターについては、計量法によって、全品検査が義務づけられており、 さらに10年ごとに検定が課せられている。この規制によって日本のスマートメーターは割高になっているとともに、 10年間かけて順次導入することになる。関西電力ではすでにスマートメーターを導入中であるが、一挙に導入すると10年間は更新がないので、 製造機器メーカーが困るということで、一年に10分の1ずつ導入するといったことになってしまっている。 ランダムな抜き取り検査に変更したり、耐久性を調査して検定の期間を変更することも検討する必要がある。

●1  http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/iken10033102.pdf

金本 良嗣(かねもと・よしつぐ)政策研究大学院大学教授・学長特別補佐
米国コーネル大学 Ph.D. 専攻は、都市経済学、公共経済学、交通経済学。
東京大学経済学部教授等を経て、2011年4月より現職。
近著に、『政策評価ミクロモデル』共著(2006)東洋経済新報社、ほか。


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視点2 「原子力発電の費用と便益」 八田 達夫(大阪大学招聘教授)

 原発は費用と便益の両面で、他の電源より国益にかなうといわれてきた。 まず原発の施設建設には多額の費用がかかるが運営コストが他の電源に比べて極めて安いため、総費用では安い電源だといわれてきた。さらに 「原発はCO2を排出しないから、地球温暖化対策の切り札だ」とも言われてきた。
 しかし、原発が安いというのは一定の前提に基づいている。さらに、地球温暖化対策として、 原発などの特定の電源に特定の補助を与えることは最も有効な手段ではない。本稿では、これらの事実を明らかにし、 今後の原発のあり方について提案を行う。

Ⅰ.地震国日本における原発の費用

1.過小評価されている費用
 立命館大学の大島堅一教授は、原発の発電あたり単価は、原発のための財政補助を単価に加え、さらに稼働率の実績値に基づいて算定すると、化石燃料より高いことを明らかにした。実は、原発の発電あたり単価は、さらに高く算定されるべき理由が2つある。

①使用済み燃料処分費用
 使用済み燃料はそのままでは、巨大な公害を発生させる。その処分には多額のカネがかかるし、管理は数百年行う必要がある。 処分のための施設は、破産の可能性がある私企業では設立も管理もできない。実際、外国では、これを国が造り、 各電力会社は国にカネを払って使用済み燃料を引き取ってもらうことになっている。
 しかし日本政府は、まだ最終処理の場所も決めていないし、引き取り価格も決定していない。 電力会社がそれにも係わらず原発を採用しているのは、「いざとなれば国が助けてくれる」という期待があったからに違いない。 社会全体の観点からみれば、電力会社と政府との間のもたれ合いのために、使用済み燃料処分の潜在的に巨大な費用負担を、 今の世代は将来の世代に先送りしているのである。
 使用済みの核燃料のワンススルー(再処理せず1回で廃棄あるいは保管する方式)の処分にいくらかかるのか、 きちんと数字を出した上で事業者に原発を続けるか否かを判断させるべきだ。

②原発事故の賠償費用
 原子力発電所が事故を起こせば損害賠償をしなければならない。電力会社は原発事故に対して無限責任を負うというが、電力会社が破綻すれば、 それ以上は負担できない。会社破綻の後に、その時点で残る賠償に関して無限責任を負うのは国である。国は電力会社に対して、 実質的に保険を用意している。ただし現在の日本の仕組みでは、電力会社は、政府に保険料を払っていない。
 ここにも、国と電力会社のもたれ合いによる、実質的な補助金が電力会社に対して与えられている。

2.原発事故賠償保険への加入義務付け
 以前より、建設会社には新築の建物に対する十年瑕疵保証が義務づけられていた。しかし、耐震強度構造計算書偽造事件(いわゆる姉歯事件)が発生し、建設会社が倒産したときにマンションの購入者が十年瑕疵保証に基づく賠償を受けられないという問題が起きた。このため、それ以後は、建設会社が倒産したときも補償がされるように、建設会社に、10年間の損害賠償保険への加入が義務付けられることになった。
 同様のことが原発に関しても言えよう。すなわち電力会社が倒産した時にも全被害者が賠償を受けられるよう、電力会社に原発事故への賠償に関する保険への加入を、元来ならば義務づけるべきである。もし、民間の保険会社がどこもその様な保険を引き受けないのであれば、原発事業は行うべきではないということになる。

3.国による原発事故賠償保険提供が正当化できる場合
 しかし民間保険会社は原発一基あたり1,200億円しか賠償保険を提供しない。このため現行の日本のシステムでは、電力会社が破綻した場合の原発に関する残存賠償への損害保険サービスを実質的に政府が提供している。
 民間の保険会社で引き受け手がないときに、政府が直接保険を行うことを正当化できる唯一の場合は、その事業を行うことが国の存立のために絶対必要な場合である。すなわち国防上の理由で必要な場合である。たとえば、他国からの原子力兵器の脅威に対し、日本が潜在的に核武装できる能力を持つということが必須であり、原発を持つことはその鍵だと考えられる場合には、原発を持つことに国の存立がかかっていると見なすことができる。その場合、原発を持たないことの社会的費用は無限大であるから、起こりうる事故に対して民間の保険がなくとも、賠償に対する無限責任を負う形で危険を引き受けるということは正当化出来ることかもしれない。
 現在の原子力損害賠償法には一言も国防のことが触れられていないが、この法律をつくった人達は共通の理解として、原発は国防のために必要だと考えていたのかもしれない。もし仮に、その立場を是とするならば、電力会社破綻後の国による賠償は正当化できる。しかし、この目的で現在ほどの多くの原発をつくる必要は全く無いだろう。
 国防のために、日本に原発を持つことを否とする立場からすれば、民間の賠償保険への加入義務付けが必要となる。それは、地震国日本では、原発を新設することは、実質的に不可能だと言うことを意味するかもしれない。

Ⅱ.技術先進国日本がとるべき地球温暖化対策

 原発はCO2を排出しない。だから地球温暖化対策を促進する観点からは、これが原発の便益だとされてきた。 それを根拠に、税による立地対策のような補助金が原発に与えられてきた。しかし、CO2排出抑制の観点からは、 CO2を排出しない電源だけに補助金を与えるよりも、CO2を排出する電源に、 排出量に応じて課税する炭素税の方が有効な政策手段である。

1.炭素税が国内でできる対策の基本
  炭素税の導入によって、 発電が生み出すCO2がもたらす社会的コスト分をその発電の追加費用としてその利用者に負担させ、 CO2を排出する電源を不利にすることができる。
 炭素税は、化石燃料による発電を、非化石燃料発電に比べて不利にする。それだけではなく、 CO2削減に役立つ全ての方策を有利にする。例えば、 同じ化石燃料の中でもよりCO2排出量が多い燃料(石炭や石油)から少ない燃料(ガス)への転換を促進する。さらに、 化石燃料の発電効率を引き上げるなどのCO2を削減する技術の開発をうながす。
 したがって、最小の費用で国内の発電所が排出するCO2の削減量を最大化するためには、炭素税を導入することが基本的な対策である。

2.個別業界補助は非効率的
 ところが日本政府は、CO2対策として、炭素税ではなく、原発に対して様々な補助を与えるという手段を用いてきた。 たとえば原発の地元対策のかなりの部分は電源開発促進税で賄われているし、 前述のように原発事故の賠償も電力会社が払いきれない分は国が保険料をもらわずに補償することになっている。さらに政府は、 原発以外にも自然エネルギーに対してCO2対策として補助する政策を行っている。いずれも、 個別業界への補助金である。しかし、これらの補助金は、CO2の発生を大規模に抑えるガスへの転換には無力であるし、 石炭や石油の発電効率を引き上げる技術開発も促進しない。CO2削減のためには、産業を特定する補助金ではなく、 炭素排出量一般に対して課税する税を用いるべきだ。
 これまで、役所は炭素税を導入しようとしてこなかった。役所にとってのうま味がないためだろう。特定産業を天下り先にしたり、 業界が役所の言うことを聞くようにできるので、どうしても特定産業補助になりがちだ。政治家にとっても、 特定の業界への利益誘導となる非化石燃料発電への補助金は受け入れられやすかった。 原発への補助金だけでなく自然エネルギーへの補助金にも政治家がうごめいていることからも、これは明らかだ。
 さらに、電力会社も炭素税に反対してきた。一般的で強力な温暖化防止対策が行われると、 原子力に対する様々な補助措置の存在理由がなくなるからであろう。
 温暖化対策を理由とした原発への様々な補助金をやめて、温暖化ガス発生源への課税に切り替えるべきである。
 なお、このような「一般的」地球温暖化対策を行うと、自然エネルギーの技術がさらに進歩するまでの間は、ガス発電の比重が増していこう。 すなわち石炭や石油による発電からのガス発電への転換が進んでいくことになろう。

3.炭素税導入と法人税の減税との組み合わせ
 ところで「炭素税の導入がもたらす税負担の増加は、日本の産業を衰退させる」という炭素税批判も根強い。しかし、 炭素税の導入と同時に税収が一定に保たれるように法人税減税を行えばこの問題はなくなる。 これまでCO2をあまり排出してこなかった企業に関しては法人税減税が活性化のきっかけを与える。
 なお、炭素税の代わりに、やはり業界横断的なCO2対策である排出量取引を採用することができる。 温暖化対策として、炭素税と排出量取引のいずれを採用するべきかについては、八田(2008,pp.404,405)を参照されたい。

4.国外での貢献が基本
 日本が一定の財源を用いて最大のCO2削減を達成することを目的とするならば、日本の削減努力は、 主に国外で行うべきである。世界のCO2の発生のうち日本は4%で、同じGDPの中国は20%だ。したがって、 CO2の排出抑制のために同じ1億円使うのならば、 日本で使うより燃焼効率が悪い中国等の途上国に技術援助するほうが、はるかに効果的だ。
 京都議定書の目標を律儀に国内努力だけで達成しようとすることは、グローバルなCO2削減の観点からは、 無駄が多い方策だ。特に震災が起きて、原子力発電所が止まってしまった今、 日本は海外でのCO2削減に貢献したほうがいい。そのための政策を打ち出すべきであろう。

Ⅲ.原発対策

 以上をまとめると次のようになる。
1.温暖化対策は、外国への効率化投資と炭素税で行うことにし、
  電源開発促進税等による地元対策や無料の損害賠償保険などの補助は
  廃止すべきだ。
2.事業者が原発事業の採否に関する判断を、潜在的な政府による
 救済補助への期待無しに出来るように、政府は使用済み核燃料の
 処分費用と具体的処分プロセスの提示をすべきである。
3.さらに新規の原発については、損害賠償保険への加入を義務づけるべきだ。
 最初の2点が実行されると、多くの電力会社は既存の原発も採算に乗らないと考えるかもしれない。 そう考える電力会社に対しては、国は発送電分離を条件に原発を買い取ることにすべきである。それが、 これまでの歪んだ原子力政策を正すに当たって国の果たすべき責任であろう。購入した原発は国有の原発会社で運営される。 これは原発事業を縮小していくための事業になる。
 一方で、東電は、自己の資産では今回の事故の賠償を払いきれないから、いずれは破綻させ会社更生法を適用することになる。
 その際、 まず福島第一原発については、国の機関が引き取り、今回の事後処理の貴重な経験を生かし、 将来の国内外の事故に対して対応できるサービスを供給する研究開発を併せて行うべきであろう。
 つぎに、福島第一原発以外の原発は、 国が買い取り国営の原発会社として運営すべきである。原発の費用が正しく開示されるようになった時点で、 新安全対策が保険会社の目から見ても安全で、民間の賠償保険に加入できる民間の原発運営企業が現れるのなら、 そこに再売却することもあり得る。そうでなければ、償却までの間国が運営し続けることになる。
 日本の原発政策は原発の費用と便益を正しく再評価して根本的に見直される必要がある。

[文献]
1.八田達夫、2004年、「核燃料再処理は電力会社の自己責任で判断すべき」
  『日本の論点2005』文藝春秋、 pp.460-463.
2.八田達夫、2008年、『ミクロ経済学Ⅰ』東洋経済新報社。
3.大島堅一「原子力政策大綱見直しについて-費用論からの問題提起-」
  原子力委員会第48回定例会議、議事録および会議資料、2010年9月7日。
4.八田達夫「原発は電力自由化(発送電分離)の下で維持できるか」
  原子力委員会第19回定例会議、議事録および会議資料、 2011年6月7日。

八田 達夫(はった・たつお)大阪大学招聘教授
国際基督教大学教養学部卒、ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士。専攻は公共経済学。前政策研究大学院大学学長。2011年4月より現職。また現在、 学習院大学経済学部客員研究員を兼任。
近著に『日本の農林水産業』共著(2010)日本経済新聞出版社、電力分野では『電力自由化の経済学』共著(2004)東洋経済新報社、 ほか。

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解説解題  加藤 裕己(本誌編集主幹)

  伊藤氏の問題提起では、今回の原発事故が日本経済に及ぼす影響の大きさに鑑み、早急に電力政策の改革を行う必要性が強調されている。必要な改革は多岐に及ぶが、ここでは発送電分離の必要性、原発の安全確保や管理形態、再生可能エネルギーの全量買取制度の是非、効率的な電力料金制度の構築、そのためのスマートメーターの導入の是非等が提示されている。
 これに対し金本氏は、全ての問題について、また、八田氏は原発問題に絞り議論を展開している。金本氏は、現状の制度、データに基づいた認識に立って議論を進めている。発送電分離に関しては、現状で電力自由化のプロセスが既に進められているが、競争が不十分である事実を指摘し、自由化を維持するためにより有効な競争が行われるよう大胆な改革の必要性を主張している。スマートメーターの導入については、ピーク需要の制御を可能とし大幅なコストダウンが期待できるとしているが、一部電力での実施例からみて制度上の問題が制約条件となっており、広く導入するためには制度・環境の整備が不可欠なことが指摘されている。
 原発に関して、金本氏は新規の建設コストは高いが、既存設備による発電コストが再生可能エネルギーなどに比べ安いことから、原発を稼働させないことのロスの大きさを示し、原発国営化に対しては、国営では効率的な運営が難しく、民間企業による経営が望ましいとする。一方、八田氏は、原発費用が、使用済み核燃料の処理費用、事故に対する補償といった面で過小評価されているとした上で、賠償費用については、電力会社への賠償保険への加入を義務付けの必要性を指摘している。民間企業で保険の引き受け手がいない場合は、国防の観点から政府が保障を行う以外は、当該事業を行うべきではないこと、電源開発促進税などによる補助の廃止、使用済み核燃料の処分費用、損害賠償保険への加入費用、など電力会社が負担すべき費用を明らかにした上で、原発が採算に合わないのであれば国が買い取り、国営とし事業の縮小を図るべきことを主張している。
 また、金本氏は、再生可能エネルギーの全量買取制度の主目的は温暖化対策とし、特定産業への補助金となり望ましいものではなく、基本的には市場メカニズムに基づいた炭素税や排出量取引などが必要なことを指摘している。八田氏は、原発の温暖化対策としての活用は、費用の面から問題があり、特定産業に補助を与えるのと同じであり有効な手段とはいえず、基本的に炭素税で行うべきで、企業の負担増に対しては、法人税減税で対応すべきこと、日本国内における温暖化ガスの削減費用が国外に比べ高いことから、削減は国外で行うべきことを指摘している。
 震災以降の電力供給のあり方については、脱原発を始め再生可能エネルギーの活用など、様々な議論がある。しかし、事実に基づいた正確で客観的な現状認識なしにはどのような改革案も意味を持たない。金本氏が具体的なデータを示し議論を進めているように、建設的な議論には電力供給の形態ごとのさまざまな費用、便益についての客観的、詳細なデータが必要である。発送電の分離、スマートメーターの活用は、金本氏の議論にあるように自由化の促進の成果が十分に生かされる環境整備や新技術を効率的に活用できる規制改革があって初めて可能となる。原発に関しては、既存原発は廃止するにも膨大なコストが発生するため安全対策を十分に行いながら活用することが望ましい。八田氏が主張する原発事故の賠償保険制度は必要であるが、国が原発の必要性を認め安全基準を設けてきた以上、安全基準の範囲内の事故による賠償は民間企業の責任であり保険の対象となりえても、それを超える範囲の事故の賠償は国が保障せざるを得ないのではないだろうか。一方、原発の新規建設に関しては、建設コストの高さなど様々なコストを考えると困難であろう。
 最後に、温暖化対策については、ここでの主張のように原発の活用はコストの大きさから再検討すべきであろうし、再生可能エネルギーの全量買取制度も特定産業への補助金であり、競争条件を歪め望ましいとはいえない。基本的には、両氏の主張にあるように国内対策としては炭素税などの経済的手段の活用であり、合理的に削減目標を達成するためには八田氏の主張のように削減コストの低い国外での削減を進めることが望ましい。電力の供給においても温暖化対策においても、基本は市場原理を積極的に活用する政策により改革を進めることにある。

加藤裕己(かとう・ひろみ)本誌編集主幹
1974年東京大学経済学部卒。経済企画庁入庁。経済社会総合研究所総括政策研究官、内閣府官房審議官(経済財政分析担当)、日本エネルギー経済研究所理事を経て、2006年より東京経済大学経済学部教授、現在に至る。2006年より本誌編集主幹。著作に『日本経済読本』(共編著)[2007]東洋経済新報社、等。

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電力用語解説

電力10社体制
 電力事業は初期投資等の固定費用が大きく、規模の経済が働くことから、一つの企業が独占的に生産した方が低コストで効率的と考えられてきた。このため、戦後の日本における電力供給は、地域毎に国から許可された電力会社(10社)が独占的に行ってきた(地域独占)。

電力料金制度

自由化以前の電力料金は、電力供給原価に一定の報酬を加えた総括原価をもとに国が認可をする規制料金であったが、この下ではピーク需要に合わせて設備投資が過剰に行われる傾向があるなど、高い電力料金の要因となってきた。このため、電力自由化を通じて料金制度の改革が進められている。

電力自由化
 地域独占や規制料金がもたらす非効率への批判や発電技術の進歩による新規参入の可能性拡大などを背景として、欧米諸国では90年代以降、発電市場や小売市場の自由化が行われた。日本においても、95年に卸電力市場への参入規制が撤廃されるなど発電市場に競争原理が導入されたほか、2000年より小売市場も段階的に自由化が進められ、現在では契約電力50kW以上の高圧需要家までが自由化され、料金規制も撤廃されている。なお、家庭用を含む全面自由化については引き続き検討課題となっている。

発送電分離
 電力の安定供給を維持するためには、発電・送電・配電・小売の各段階を1つの事業者が一貫して行うこと(垂直統合型供給体制)が重要と考えられてきたが、欧米諸国等では電力自由化を進める過程で、競争に委ねる部門(発電・小売)と引き続き自然独占として規制を行う部門(送電・配電)に分割した。これにより、発電の効率化や再生可能エネルギー等の分散型電源の普及などが進むとも期待されている。

電力取引所
 電力自由化によって様々な新規参入者が参加する中で、電力取引を行うための市場として各国で開設された。1日前やリアルタイム等の電力を取引するスポット市場のほかに、将来の価格変動リスク等をヘッジするための金融市場もある。日本でも2005年より日本卸電力取引所(JEPX)で電力取引が開始されたが、取引量は低迷している。

原発賠償支援法(原子力損害賠償支援機構法)
 福島原子力発電所事故に伴う損害賠償等への対応や電力の安定供給確保を図るため、原子力損害賠償支援機構を設立し、原発を持つ電力会社等からの負担金や政府からの資金援助等を基に、機構が東京電力に対して資金援助等を行うための枠組みを規定している。

電源開発促進税
 原子力・水力・地熱等、石油に代わる代替電源の設置促進等を図るための目的税。一般電気事業者の販売電気1,000kWhにつき375円を課税し、その税収(2010年度で約3,500億円)を主に原子力発電所の立地対策や発電所周辺の地域振興等に用いている。

原発のバックエンド費用
 原子炉の廃炉や放射性廃棄物の処理、使用済核燃料の再処理を行うための事業に要する費用。費用推計についての不確実性が高く、これらを加えると原子力による発電コストは非常に高くなるとの指摘がある。

再生可能エネルギーの全量買取制度
 再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)により発電された電気について、国が定める一定の期間・価格で電気事業者が買取ることを義務付けるとともに、各事業者がそれぞれの需要家の電気料金に同費用を上乗せすることなどを認める制度。

スマートグリッド
 情報通信技術の活用により効率性・品質・信頼性の高い電力供給システムの構築を目指すものであり、次世代送電網とも称される。双方向通信機能を持つスマートメーターからの情報を活用した電力消費の負荷平準化や、再生可能エネルギー等の分散型電源の制御などが可能となることから、低炭素社会実現の上でも有効であると考えられている。


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