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対談シリーズ

電力市場の再設計を急げ

対談シリーズ第64回 2011/09発行
冨山和彦(経営共創基盤代表取締役CEO)、伊藤元重(NIRA理事長)

伊藤 冨山さんは、産業再生機構での活動をはじめとして、 いろいろな企業の再生を手がけて来られました。今回は、個別の企業の再生だけではなくて、電力業界全体のあり方も視野に入れながら、 お話を伺いたいと思います。最初は、福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力についてです。いま破綻しているわけではないのですが、 巨額の事故対応費用だとか、原発の補償問題もあり、資産売却も含めて相当大胆な改革をやらなければいけないと思います。 冨山さんはどのように見ていらっしゃいますか。

冨山 理事長が言われたとおり、単純な破綻事案としては処理できないですね。通常の案件と違い、 二つの大きな問題があります。
 一つは、普通には考えられない巨大な損害賠償問題を起こしていることです。巨大というのは、範囲が大きいということだけではなくて、 時間軸においても長期にわたる補償をしなければいけないということです。ですから、例えは悪いのですが、 水俣病の巨大版のような性格を持ってしまっているので、会社更生法などが想定している普通の状況ではない。会社更生法のような「破綻法制」 は、債務が確定できていて、いったん時間軸の中に不連続をつくり、要は「御破算で」という仕組みなのです。ところが、 債務そのものが不確定かつ巨額で、時間がたたないと確定しない。そのため、そういう不連続をつくる方法では、清算できないという、 非常にヘビーな問題を抱え込んでいる。<続く


議論のポイント

●東京電力の問題は、長期にわたる巨額の損害賠償問題を抱えていること、 日本の電力に関わるエネルギー政策が大きな曲がり角に来ていることに、難しさがある。

●既存の法律では原発事故に伴う賠償問題を解決できない。原賠法では、東電が一括して責任を負うか、免責しかなく、 国と東京電力との共同責任の形がとれない。一方、会社更生法も債権者のための法律であり、被害者を救済できない。

●緊急避難的に作られた原子力損害賠償支援機構法に、損害賠償のための資金を提供するだけでなく、 抽象的ではあるが国の責任の規定が入ったことも重要である。

●2年ぐらい後に損害賠償の全貌が見えた段階で、最終処理スキームが決まる。その時までに、 将来のエネルギー政策についての議論を深めておく必要があるが、大事なことは、効率的な価格メカニズムと、新規参入を促し、 イノベーションが起き得る自由度を、電力市場の中に組み込んでおくことである。


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