利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > 長期的な視点でESGと向き合う

NIRA政策提言ハイライト

長期的な視点でESGと向き合う

NIRA政策提言ハイライト 2019/5発行

■ESG投資への関心の高まり
 近年、ESG投資への注目は高まり、その投資額は拡大している。ESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、企業統治(Government)を表す言葉である。そして、機関投資家が企業に対し、これらの社会的責任に配慮した経営を求めていく投資をESG投資と呼ぶ。昨今話題の、食品ロス問題への対策や働き方改革は、ESGに関する課題の解決策の1つといえよう。
 ESG投資の考え方が世界に広まったきっかけは、2006年に国際連合事務総長のコフィー・アナン氏が提唱した「責任投資原則(PRI)」である。PRIは、機関投資家が企業に投資を行う際、その投資分析や意思決定プロセス、株式保有等においてESG課題を考慮することを求めるものである。この趣旨に賛同し、PRIに署名する機関投資家は、アセットオーナーのほか、インベストメントマネージャーやサービスプロバイダーが含まれ、図1にあるように、その数は年々増加している。その資産運用残高も増加している。

 図1 PRI署名数と資産運用残高の推移

 (出所)PRIホームページ https://www.unpri.org/pri/about-the-pri より作成。

 日本においても、ESG投資額は近年急増しているが、機関投資家による資産運用全体に占めるESG投資の割合は18.3%であり、他国と比べ、まだ成長の余地は大きい(欧州48.8%、米国25.7%、カナダ50.6%、オーストラリア・ニュージーランド63.2%)。
 そこで、NIRAでは、5名の識者に、ESGへの関心が高まった背景や、日本がESG先進国となるにあたっての課題を伺った(NIRAわたしの構想No.34「ESG先進国に向けて」)。

■投資家にとってのESGの重要性
 国連の呼び掛けで始まったESGだが、世間の関心を集めたきっかけとして、竹ケ原氏(日本政策投資銀行)はリーマンショックに触れている。リーマンショックを機に、それまでの短期志向の投資を反省し、企業の長期収益の重要性が機関投資家の間にも認識されるようになった。長期収益を求める機関投資家にとって、ESGの考え方はマッチしており、投資する際の大きな判断材料になりうるだろう。
 この点について、GPIFの水野氏も同様の考えだ。同氏は、同法人のESG投資への取り組みは、倫理的に必要とされているからではなく、環境や社会に配慮しない企業は投資対象としてリスクが高い、という合理的な判断に基づいた結果であると主張する。
 その一方で、投資する際に現在のESG評価指標に頼りすぎることも問題である。大場氏(日本投資顧問業協会)は、ESGの観点から企業を評価する指数も開発されているが、ESGが数値化しにくい情報であることから、その有効性は未知数であると主張する。つまり、ESGを単なる投資判断のための形式指標と見るのではなく、その企業が持続可能な成長をしていくのかを見極める判断材料とすることが重要なのである。

■企業はESGへの取り組みが必須
 企業側の視点からみてもESGに取り組む意義は大きい。ESGの本質を理解し、持続的に成長を続けていかなければ、投資家から魅力的な企業と見なされなくなる。井垣氏(オムロン)は、企業がグローバルに活動するいま、環境や人権などの社会問題に与える影響と責任は大きく、経営と社会的課題は切り離せないものとなっていると主張する。それを前提に、経営の透明性を高め、市場との対話を進めることにより、事業を通じた中長期にわたる持続的な価値を社会に還元することが企業に求められている。

 以上みてきたように、投資家や企業がESGの意味を理解し、それを積極的に取り入れることが求められている。現在、日本は、欧米に水をあけられている状況だが、今後、日本の株式市場や企業の価値が大きく向上することを期待する。

<参考文献>
NIRAわたしの構想No.34(2018)「ESG先進国に向けて
GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT ALLIANCE “GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2018,” 8-9.

渡邊翔太(NIRA研究コーディネーター・研究員)

このページのトップへ