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NIRA政策提言ハイライト

誰が地域再生を担うのか

NIRA政策提言ハイライト 2019/2発行

■ハード面だけではない地域再生の問題
 人口減少と高齢化が進む日本で、地域経済・社会の再活性化が課題になって久しい。空家や空き地などハード面の問題解決の難しさに注目が集まりがちだが、だれが、どのように、何を目指して地域を再活性化するのかというソフト面に関わる問題が解決されねば、地域は再生されない。NIRAわたしの構想No.40「ドイツ社会都市の可能性」では、ドイツで行われている、従来の建物の更新・再開発というハード面の施策に、住民参加によるコミュニティ再生というソフト面を一体化した、都市部の地域再生事業「社会都市プログラム」が紹介されている。この「社会都市プログラム」は、「フェライン(Verein;協会、同好会、あるいはNPO。英語のassociation)」など地域住民組織を通じて住民参加を図っていることが特徴である。他方で、日本では、以下に述べるように、地縁を基盤とした地域住民組織である自治会・町内会が、容易には地域社会形成の担い手になれなくなっている。ドイツの「社会都市プログラム」から何が学べるのだろうか。

■地縁を基盤とする日本の自治会
 日本では地域住民の横のつながりを担い、地域社会の核となってきたのは自治会・町内会など地縁を基盤とした団体であった。2013年の総務省調査によれば、自治会・町内会など地縁団体は、日本全国で298,700団体ある。自治会・町内会の基盤となる「地縁」は、無条件に存在すると思われた地域住民全体の共有利害であったが、人口減少・高齢化の進行とともに消滅しかけており、そのために地縁団体は弱体化している。住民の加入率も地域によっては6割程度まで下がっているといわれる。また、近年では、増加する外国人住民に自治会が対応しかねているような状況だ。

■共通の生きがいを基盤にするドイツのフェライン
 それに対して、ドイツのフェラインは、商工会議所なども含まれるが、多くはスポーツなどに関する同好の友、生きがいを共有する人たちが地域のなかで結成した住民組織である。法人として登録されているフェラインだけでも約60万団体存在し(2017年現在)、任意団体のフェラインを含めると100万団体を超えると言われている。ドイツでは、趣味クラブ的な目的で結成された団体も含めて、住民組織であるフェラインが公共サービスの補完的役割を担う公益活動を行うことがよくある。「社会都市プログラム」では、さらにフェラインの役割を拡大し、段階的に地域再生プログラムの実施者そのものにする仕組みである(注1)。地域の「同好の友」の連帯感が、地域再生プログラム実施にあたっての推進力にもなっている。それにより世代や属性の異なる住民が一緒になって「自分たちの地域」のあり様を考え、地域再生が実行されている。
 このフェライン的団体の活用は日本でも参考にできよう。ただし、日本には、趣味クラブ的に結成された団体が公共サービスの補完的役割を担う社会的コンセンサスが存在しないため、まずは住民間での社会的コンセンサスの形成が必要である。

■外国人と地域再生
 フェライン的団体の活用を考える際に、社会的コンセンサスを得る以外にも留意点がある。同好の友団体が持ちがちな排他性である。トルコ移民、近年の中東諸国からの移民など、多くの外国人・移民住民が長年にわたり各地域に居住するドイツでも、実は、フェラインそのものは「同じ文化的背景」をメンバーで共有する集団であり、2017年時点で5%の団体しか外国人をメンバーに受け入れていない(表参照)。外国人・移民住民を含めた地域コミュニティ再生事業である「社会都市プログラム」において、フェラインが事業の担い手になるにあたっては、メンバー間の連帯感を、排他性に向かわせず、メンバー外の地域住民との対話と協働の推進力に転換する努力と工夫が重ねられている。今後、日本でもさらに増えるはずの外国人住民も含めた地域コミュニティの再生を考えるとき、その工夫と知恵を日本も学ぶべきであろう。
 日本でも空家・空地問題といったハード面の問題の解消に向けて、少しずつ法制度の整備が進んでいる。地域再生の担い手問題といったソフト面についても議論を深めていかねばならない。ドイツの「社会都市プログラム」の取り組みは、生きがいの共有など連帯感の強い住民団体の活用、そうした住民団体がメンバー以外の住民と対話・協働する仕組みづくりなどの面で参考になるだろう。

表 外国人をメンバーに受け入れているフェラインの割合(ドイツ、2017年)

(注)2017年に実施された非営利団体の活動調査、Ziviz-Surveyにおける回答より、「フェライン」の回答(5081団体)のみを集計したもの。ここでは回答したでフェラインを活動内容別に区分し、区分ごとに外国人をメンバーに受け入れている割合を算出。この調査では、フェラインとは法人格の異なる非営利団体も調査対象となっており、全体の回答団体数は6334団体。
(出所)Ziviz(2017)“Ziviz-Survey 2017,” ABB.29, 38頁。

注1:「社会都市プログラム」において、住民参加はフェラインだけではなく、伝統的な慈善活動を行っている赤十字やキリスト教系組織(カリタスなど)を通じても行われている。これら慈善活動組織は「Stiftung(財団、英語のfoundation)」の形態をとって全国で活動しており、どちらかというと大都市での活動を得意としている。ドイツの非営利活動法人には他に「gemeinnützige GmbH(公益有限責任会社)」「Genossenschaften(協同組合)」などがある。

<参考文献>
NIRAわたしの構想No.40 (2019)「ドイツ社会都市の可能性

森直子(NIRA研究コーディネーター・研究員)

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