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NIRA政策提言ハイライト

プラットフォーム化の波に乗り遅れるな

NIRA政策提言ハイライト 2018/12発行

 政府の「未来投資戦略2018」における規制・制度改革の柱の一つに、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備がある。経済産業省と公正取引委員会及び総務省は、デジタル・プラットフォーマーを取り巻く各国制度の研究・評価や日本の課題と対応について検討を進めており、2018年12月には「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理」を公表した。GAFAと称されるグローバルプラットフォーマーがIT市場を席巻する中、我が国の政府や事業者もその潮流を見極め、適切に対応していくことは喫緊の課題だ。

■銀行業で何が起きているのか―オープンバンキングの動き
 NIRAオピニオンペーパーNo.35「オープンバンキング時代の銀行業」では、プラットフォーマーの金融サービス参入によって競争状況の変化にある銀行業を追い、プラットフォーム化がもたらす可能性や課題を議論した。筆者の日本総合研究所の翁百合理事長によると、銀行は今、従来の閉鎖的なビジネスモデルから、外部のフィンテック企業などと連携して金融サービスを提供する「オープンバンキング」に舵を取りつつあるという。銀行の顧客データへの接続方式を第三者に開放する「オープンAPI」を実装することで、サードパーティーによるデータの参照や取引指示が可能になり、データ活用によって利便性の高い顧客サービスや付加価値の高い金融商品の提供が実現する。
 この動きは英国をはじめ欧州において政府主導で推進されているが、日本政府の取り組みも決して遅れてはいないと述べる。2017年の銀行法の改正では、銀行などに対してAPI公開の努力義務が課された。銀行側にも意識の変化が見られる。引用されているオープンAPIの実施状況に関する調査によると、実施済みの銀行は1割にとどまるものの、導入を前向きに検討している銀行が7割ある。政府の積極的な改革に呼応するように、銀行業もオープンバンキングへ動き出していると言えるだろう。

図 銀行におけるオープンAPI 導入・検討状況に係る調査結果(2017年12月)

(注)邦銀は、回答137行中114行(83%)が提供・体制整備済み、あるいは2020年6月までに提供する方向で検討中。
(出所)全国銀行協会(2017)「決済高度化に向けた全銀協の取組状況について」より作成

■急がれるプラットフォーム型ビジネスの確立
 オープンバンキング時代のビジネスモデルについて、欧州銀行協会は「サードパーティーが開発した商品を、銀行のプラットフォーム経由でAPIを通じてサードパーティーが提供するプラットフォーム型」にシフトすると指摘する。先の翁理事長は、顧客本位の姿勢に立ち、データを整備し、サードパーティーと連携して付加価値を創出するなど新たなビジネスモデルの確立が必要だと主張している。
 こうした動きは銀行業にとどまるものではないだろう。エコシステムの形成を通じたネットワーク効果によってビジネス機会を最大化できることはチャンスである一方、変化の時機を逃せば大きく取り残される恐れもある。プラットフォーマーが様々な分野に進出している現在、ビジネスモデルの革新にいち早く乗り出すべきだ。

■安心して利用できるプラットフォームの構築を
 冒頭で挙げた「中間論点整理」では、プラットフォーム・ビジネスの適切な発展を促進するために、競争政策、情報政策、消費者政策等の知見から様々な論点が示されている。丁寧かつ迅速に吟味し、対応していく必要がある。その際、個人データの取り扱いは重要だ。欧州ではオープンバンキングの動きの中で、個人情報の保護の強化と個人にデータ移管の権利を与える一般データ保護規則が施行された。データを守りつつ有効活用を試みる事例に学び、我が国に合ったプラットフォームの構築・整備が望まれる。

<参考文献>
NIRAオピニオンペーパーNo.35「オープンバンキング時代の銀行業
経済産業省・公正取引委員会・総務省「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理

関島梢恵(NIRA研究コーディネーター・研究員)

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