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NIRA政策提言ハイライト

超高齢社会における社会保障のあり方とは

NIRA政策提言ハイライト 2018/05発行

■今後予測される要介護者の急増
 政府の経済財政諮問会議で、2040年度までの社会保障費用の推計が今月示された。2040年代は高齢者人口がピークを迎え、人口のおよそ3人に1人が65歳以上となる。社会保障費の対GDP比は208年度の21.5%から2040年度には24.0%へと上昇する見通しだ。名目額では121兆円から190兆円となる。
 本発表に先立ち、NIRA総研でも本年3月に、2041年度までの社会保障給付費の推計を示した(NIRAオピニオンペーパーNo.34「人口変動が突きつける日本の将来―社会保障は誰が負担するのか―」)。本推計でも、2041年度に対GDP比24.5%、名目額190.7兆円と、今回の政府発表とほぼ同様の結果となっている。医療・介護給付費が上昇するが、特に介護費は2016年度の2倍以上(対GDP比)と大幅な伸びが予測される。これは、単に高齢者人口比率が高まるだけでなく、その中でも介護サービスの需要が大きい80歳以上の人口比率が増え、要介護者が増加することが予測されるためである(図1)。
 実際、年齢階層別の要介護認定率は、年齢が上がるほど高くなっていく。2016年10月の統計によると、65歳~69歳ではわずか3%だが、80歳を超えると急増し、85歳~89歳で50%、95歳以上では90%の人が要介護状態となる(図2)。
 国立長寿医療研究センターの鳥羽研二理事長によると、80歳以上の高齢者の3分の1は、加齢にともない心身の虚弱がみられる「フレイル」という状態にある(わたしの構想No.30「分岐点を迎える超高齢社会」)。少子高齢化は、単にお年寄りの数が増えることではなく、そもそも高齢者は若い人とはおかれている状態が質的に異なるということを理解しなければいけない。

■生活の質を大きく左右する介護サービス
 人口構造の変化から見れば、社会保障費用の増大とそれにともなう負担増はもはや避けることはできない。先の鳥羽理事長は、医療・介護の質を落とせば、財政上は助かるが、介護離職、老老介護などそのしわ寄せは家族にくるとも指摘する。医療・介護サービスは、高齢者とその周囲の人々の生活の質を大きく左右するからこそ、その質と負担はセットで考えられるべきである。
 その一方で、そもそも介護に頼らずに生活できる、健康な高齢者を増やしていくことも重要である。東京大学の辻哲夫教授は、「地域包括ケア」システムにより、高齢者が可能な限り自分の住まいで生活することで、元気でいる期間を長くすることを目指している。高齢者になっても安心して生き続けられるシステムができるのならば、高い負担もポジティブに受け止められるはずだと辻教授は述べる。
 また、生活をケアするシステムだけでなく、日々の生活の中で健康を維持していけるための工夫も必要だ。日本医療政策機構の小野崎耕平理事は、食事指導や都市計画、コミュニティーづくりなど自治体の総合的な政策を通じて、健康をつくるための社会的決定要因にアプローチし、健康を維持できる社会にしていくことの重要性を主張している。この実現には相当の財源が必要となるが、高齢になっても健康を維持できれば、社会に参加し続けて自立した生活を送ることのできる高齢者も増えるだろう。
 高齢者に関わる問題は、若い人も含め、すべての国民にとって他人事ではない。医療・介護サービスそのものだけではなく、それらに頼らない生活のあり方を考えていかなくてはいけない。限られた財源の中で、どのような生活を送りたいのか、国民全体での議論をすべき時である。

 図1 2016年の日本を100人で見ると―25年度、人口はどう変わる?

 (出所)NIRAオピニオンペーパーNo.34付属資料


 (出所)厚生労働省「介護給付費等実態調査月報」および総務省「人口推計」より作成

<参考文献>
NIRAオピニオンペーパーNo.34(2018)「人口変動が突きつける日本の将来―社会保障は誰が負担するのか―
NIRAわたしの構想No.30(2017)「分岐点を迎える超高齢社会


川本茉莉(NIRA研究コーディネーター・研究員)

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