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NIRA政策提言ハイライト

ふるさと納税で、地域に関係人口を呼び込め

NIRA政策提言ハイライト 2018/04発行

■地方の課題、関係人口が克服のカギ
 人口の急速な減少に悩む地方部が直面する大きな課題として、地域社会の担い手の不足が指摘されている。これまでも東京一極集中の是正は試みられてきたが、東京都への人口流出は今もなお顕著である(図1)。また、2014年に実施された世論調査によれば、東京在住者で地方への移住に関心をもつ人は4割にのぼるものの、特に働き口に対する懸念などから、実際に移住するのはハードルが高いと考える人も多い(注1)。


 こうした中、近年「関係人口」という考え方が注目を集めている。明治大学の小田切徳美教授によれば、「関係人口」とは、地方部に関心を持ち、さまざまな形で関与する都市部の人々と定義される(注2)。この概念が注目される背景にあるのは、地域社会の担い手を地域の定住者に限定せず、ビジネスや余暇活動、ボランティアなど、地域外からさまざまな形で関与する人々を、担い手として積極的に巻き込んでいこうとするムーブメントである。

■ふるさと納税は有効なきっかけづくり
 この動きには、「ふるさと納税」も大きな役割を果たそうとしている。2008年に創設されたふるさと納税は、返礼品の話題性も手伝い、今では都市部を含め多くの人々に知られる制度となった。今年は創設から10年となる。それを機に、NIRA『わたしの構想』(No.33)でも、よりよい制度のあり方は何かを考えるために特集を組んだ。そのなかで、2014年度にふるさと納税受入額が日本一となった長崎県平戸市の黒田成彦市長は、返礼品を通じ、市民が日々味わっている地域の魅力を寄付者に共有してもらい、地域外の応援者、さらにはバーチャル市民として寄付のリピーターとなってもらいたい、と述べている。また、ジャーナリストの三神万里子氏は、ふるさと納税では「(都市部の人々に)地域への長期継続的な参加と心的な絆を促す」プロジェクトの立案に知恵を絞るべきだとし、それをふまえた寄付募集を通じた地域活性化を提言している。このように、ふるさと納税は、地域外や都市部の人々に地域に関心を持ってもらい、さまざまな形での関与を促す。地域の「関係人口」を増やす有効なきっかけになりうるのである。

■都市と地方の共生に向けて
 今後、少子高齢化と人口減少は都市部でも大きな課題となる。そのような中でも、「関係人口」は都市と地方の共生のあり方の一つの可能性を示唆している。東京をはじめとする都市部はわが国の経済的な競争力の源泉である。他方、農山漁村は、国土の保全や伝統にもとづいた暮らしなど、都市部にはない価値や役割をもつ。それぞれの役割を尊重しつつ、共生の方向性を探ることが必要だ。今後は、国民一人ひとりが多様なライフスタイルを実現する中で、自分が居住する地域以外の地域ともさまざまな形で関わり、応援していく、――それを豊かさと考え享受する意識の醸成が求められるだろう。同時に、いかに東京をはじめとする都市部の住民の感性に訴え、関係人口として彼らを地域に呼び込む仕掛けを作っていくか、地方自治体の知恵と情熱も問われる。


注1 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部(2014)「東京在住者の今後の移住に関する意向調査
注2 小田切徳美(2018)「関係人口という未来 ――背景・意義・政策」『月刊ガバナンス』No.202/2018年2月号

参考:
NIRA『わたしの構想』No.33「ふるさと納税の新段階
NIRA『わたしの構想』No.3「人口減少時代の地域の強み
NIRA『わたしの構想』No.6「グローバル都市 東京

榊 麻衣子(研究コーディネーター・研究員)

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