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NIRA政策提言ハイライト

デジタル時代にふさわしい社会システムの構築を目指せ

NIRA政策提言ハイライト 2018/03発行

これまでにない速さで社会へ浸透するテクノロジー
 昨今のAI、IoT、ブロックチェーンといった、新たなテクノロジーの発展には目を見張るものがある。とりわけ注目すべきは、こうした技術が社会へ浸透するスピードである。たとえば、仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーンが誕生したのは2008年といわれるが、その後10年足らずで仮想通貨の時価総額が30兆円(Coin Market Cap調べ/2018年3月)を超えようとは、誰も想像していなかった。また”Amazon Echo” “Google Home”といったスマートスピーカーなども、数年前まではSF映画の中に登場する近未来のデバイスとして捉えられていたものだ。これまでにないスピードで社会へ浸透するテクノロジーは、我々の生活を急速に変えつつある、といえるだろう。

急速なデジタル化によって生まれる不安
 テクノロジーにより我々の生活が便利になる一方で、そのスピードが速すぎて不安を感じる向きも多い。内閣府が行った「科学技術と社会に関する世論調査」(2017年11月)の中に「科学技術の発展で不安に感じることは何か」という問いがある。回答をみると、地球環境への悪影響や軍事利用の懸念など世界規模的なものから、「AIなどの発達により仕事が奪われる」「進歩が速すぎてついていけなくなる」といった身近なものまで、多くの人がさまざまな不安を感じていることがわかる(下図表参照)。
 こうした不安を解消していく為には、人々が安心してテクノロジーを受け入れられる社会システムを、タイムリーに構築していく必要があるだろう。NIRAオピニオンペーパーNo.2(2014年1月)「技術と社会の対話に向けて」で、夏野剛氏(慶応義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授)は、「技術進化が最も早い現在、社会が新しい技術にどう適応していくのか、つまりソーシャルアダプテーションが極めて重要だ」と説いている。

社会が新しい技術に適応していくために
 ソーシャルアダプテーションの実現に向けては、まず「テクノロジーを我々の生活にどう取り込んでいくか」を考えなければならない。たとえば、生活の大きな部分をしめる「働く」ということにおいて、人とAIがどう協働し、共創していくかは大きな課題である。AIを実装していく上で、企業は業務フローを見直し人間とAIの協働を促す経営戦略をとり、政府は職業訓練制度の充実や自営的就労者に対する保護といった対策を講じていく必要があるだろう。とりわけ重要なのは、こうした課題を官民で共有し、テクノロジーを取り込んでいく体制を共に整えていくことである。
 そしてもう一つ忘れてならないのは、「テクノロジーをどうコントロールしていくか」という視点である。昨今頻発する仮想通貨取引所のハッキング事件をみても明らかなように、テクノロジー浸透の過程においては、現行の規制では対処しきれない問題が続々と起きる。こうした問題に対応するためには、制度や規制をつくるプロセスそのものを見直し、スピーティーに対応していくことが欠かせない。規制する側にも、ビックデータやIoTなどテクノロジーの力を活用し、急速な環境変化にあわせリアルタイムに規制を変えていけるような仕組みを作っていくことが求められるだろう。
 人々が安心できるデジタル社会の構築=ソーシャルアダプテーションの実現は、テクノロジーと社会を上手に融合すると共に、それをコントロールし秩序を維持していくという、こうした両面の取り組みからはじまるのではないだろうか。





わたしの構想No.2「技術と社会の対話に向けて

林 祐司(NIRA総研 主任研究員)

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