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NIRA政策提言ハイライト

都市機能の集約化に関わる計画の実現を

NIRA政策提言ハイライト 2018/01発行

集約化の計画と必要性
 2017年末、全国の814の自治体の首長に何らかの形で市域や集落を集約化する計画の有無について尋ねたところ、回答のあった自治体のおよそ5割が人口減少の影響を考慮し、居住地や都市機能の集約を計画・検討していることが報じられた(注1。こうした動きの背景には、国土交通省が「コンパクト・プラス・ネットワーク」の考え方のもとで都市構造の見直しに関連する法整備を進めていることがある。
 この問題についてNIRA総研でも、わたし構想No.17「岐路に立つユニバーサルサービス」では人口減少地域において全国一律の料金で当たり前のように利用してきた行政サービスの維持が難しくなり、サービスを提供する地理的範囲を制限する必要性が生じることを示している。さらに、それは地方都市に限らず、首都圏にあってもダウンサイジングが必要となることは藤村龍至氏がわたしの構想No.6「グローバル東京」において指摘している。

分散的な都市空間の利用
 一連の都市の集約化に関わる計画の策定や議論は決して目新しいものではないが、エリアの調整や施設再配置に関する実現への動きは鈍い。国勢調査の結果から都市利用の状況を観察してみると、継続して人口集中(DID)地区の面積が拡大しているために、人口密度が高まる状況にはなっていない(図参照)。加えて、合併による影響も考慮する必要があるが、全国市部においてDID地区外に居住する人は増加している。
 一見すると、中心市街地の再開発などによって集約化の動きが進んでいるように感じられるが、実際には分散的な都市空間の利用が継続され、「コンパクトシティ」が認知されて久しいが、現状に変化はない。

QOLの低下から居住者の喪失
 だが、内閣府(2016)は、2010年時点の人口規模で50%以上の確率で立地できた生活関連サービスの店舗も、2040年には立地確率が50%未満まで下がることを示している。住民が日常的に利用する銀行や一般病院でも1割を超える市町村で失う可能性があるとされる(注2。つまり、都市機能や居住地の集約化に関わる計画を掲げるだけにとどまり、それが実現されない場合には、20年後に地域住民のQOLが損なわれていることが想定される。
 とかく、都市機能の集約化は敬遠されることが多いが、NIRA研究報告書「選べる広域連携」では多世代にわたって費用を分散しながら施設の統合や再編を行うことが、地域の価値を高めることを確認している。地方自治体を中心にステークホルダーが「利害関係者」から「地域の人」になって計画の具現化を急がなければ、各地域は生活関連サービスだけでなく、居住者をも失うことになるのではないだろうか。

注1:詳細は日本経済新聞社(2018)『日経グローカルNo.331』参照。
注2:内閣府(2016)「地域の経済2016」参照。



<参考文献>
NIRAわたしの構想No.17(2015)「岐路に立つユニバーサルサービス
NIRAわたしの構想No.6(2014)「グローバル都市 東京
NIRA研究報告書(2014)『選べる広域連携―自治体による戦略的パートナー選択の時代へ―

豊田奈穂(主任研究員)

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