利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > 民泊を経済成長のチャンスに

NIRA政策提言ハイライト

民泊を経済成長のチャンスに

NIRA政策提言ハイライト 2017/08発行

法整備より先行する実態
 2020年に東京オリンピック・パラリンピックをひかえ、近年の訪日外国人の増加もあり、一般住宅を旅行客に貸し出す民泊が広がりを見せている。2016年1月の国家戦略特区での民泊解禁に続き、2017年6月に「住宅宿泊事業法」(通称:民泊新法)が国会で成立した。年間営業日数などの制限はあるが、日本全国で民泊が2018年1月より解禁される。民泊の実態は法整備よりも先行している。
 NIRA『わたしの構想』No.23「民泊到来、問われる日本」でも、民泊の規制のあり方や日本へのインパクトについて考察している。その中で民泊サービスの旗手ともいえるAirbnb Japanの田邉泰之氏が述べているように、同社が2014年に日本法人を立ち上げた翌年には、前年比4~5倍のペースで利用者が増え、そのニーズは非常に旺盛である。政府統計からも、外国人観光客の民泊利用がうかがえる。訪日外客数と宿泊施設の外国人宿泊者数はともに2011年より増加し続けているが、2015年から2016年の伸びを見ると、訪日客数ほど宿泊者数は伸びていない。従来の宿泊施設に含まれない、民泊などの新しい宿泊スタイルの利用が広がったことにより、この差が生じたと考えられる。

ルールの遵守が推進の鍵
 今回、法律の制定によって民泊のルールが明確になった。これにより、民泊の透明性を高めつつ、より広がっていくことが期待できるが、ルールに基づいて民泊を推進していくうえで、気をつけなければいけない点もある。
 まず重要なのは、民泊サービスを手がける百戦錬磨の上山康博氏が主張するように、サービスの提供者に法律を遵守させることである。現行の規制に抵触する「ヤミ民泊」がすでに先行して広まっているため、新たなルールをこれから遵守させるのは難しいかもしれない。しかし、ルールを守らない民泊により事故が起き、民泊をすべて禁止すべきだという批判が高まってしまうことを上山氏は危惧している。経済活性化の可能性を持つシェアリングエコノミーの芽をつぶさないためにも、違反者をしっかりと取り締まっていく必要があるだろう。

行政依存の考え方も問われる
 また規制のあり方について、サービスの利用者となる市民の側の意識も問われている。中央大学の安念潤司教授が指摘するように、シェアリングエコノミーは個人間での取引が生じるため、そのすべてを監督官庁が把握し、規制が100%守られているかを確認することは不可能である。これまでの宿泊施設のように行政側が安心・安全を担保してくれるものではく、自己責任で判断し取引をすることになる。まさに、行政依存の姿勢を変えられるかどうかの試金石となるだろう。
 民泊をはじめとしたシェアリングエコノミーはグローバル化、IT化の中で進展した新たなビジネスの形であり、それがもたらすインパクトは予想のできないものだろう。しかし人口減少の進んでいく日本にとって、これは経済成長につなげていくチャンスとして捉えるべきだ。



<参考文献>
NIRA『わたしの構想』No.23「民泊到来、問われる日本

川本茉莉(研究コーディネーター・研究員)

このページのトップへ