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NIRA政策提言ハイライト

リアルデータでグローバルな価値の形成を

NIRA政策提言ハイライト 2017/07発行

■バーチャルデータの活用で劣後した日本
 6月に出された成長戦略「未来投資戦略2017」では、イノベーションの源泉として「データ」利活用がうたわれている。IoTにより収集された膨大なデータ(ビッグデータ)をAIで解析し、その結果をIoTにフィードバックしていく第4次産業革命では、データが価値を生み出す資源となる。(図1)
 周知のとおり、検索情報やSNSといったWEB上のバーチャルデータの活用で、既に日本は劣後した。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといった企業による大規模なプラットフォームが形成され、日本企業は大きく水をあけられた。原因の一つに、言語の壁があることは無視できない。この問題は、NIRA研究報告書『孤立する日本の研究プラットフォーム-放置すれば日本の科学そのものが衰退する-』でも、英語の研究プラットフォームから日本語の研究が取り残される危機を指摘し、警鐘を鳴らしている。

■データ活用の主戦場は、バーチャルからリアルへ
 しかし、政府は、言語を基盤とするバーチャルデータでの劣戦は、まだ第1幕に過ぎないとしている。今後グローバルな競争の主戦場となるのは、医療介護、自動走行、工場設備、農業、建設といった現場で日々蓄積される膨大なリアルデータだ。急速に進化するIoT技術によって、生産現場や人々の生活など、実社会に張り巡らされた機械が現場の動きを吸い上げ、データ化していく。そのデータを活用し、いかに社会の課題解決をはかる効果的な仕組みを構築し、企業の生産性や競争力を高められるかが、巻き返しの勝負となる。
 長年、ものづくりの技術を高め、現場を知っている日本企業が、その優位性を生かせる勝機が必ずあるはずだ。出遅れが指摘されるIoT戦略ではあるが、リアルデータを活用し、個別のモノづくりから、顧客のさまざまなニーズや課題を解決するためのサービス提供へと軸足を移す、速やかな展開が期待される。

■問われるオープン戦略
 データは、企業、行政、個人・・・といったさまざまな主体が保有している。第2幕となるリアルデータの勝負を優位に運ぶために、まずは、所有の垣根を越えて、データをオープンに利用可能にする制度が必要だ。データ利用に際しての権限と責任を明確にした上で、データ取引市場や情報銀行の形成などデータが流通する場を確保し、利用の利便性を高める取り組みが早急に求められる。内閣官房参事官の犬童周作氏(注1)は、データは組み合わせることにより付加価値が高まるものであることから、データをただ囲い込むのではなく、業界の垣根を越えて共有することが、新しいサービス開発や公共価値の向上につながるという意識改革が必要だとしている(NIRA『わたしの構想』No.28「オープンガバナンスの時代へ」)。
 バーチャルデータの二の舞は避けねばならない。急がれるリアルデータのプラットフォーム構築だが、その成否は、いかにグローバル市場における価値を形成できるかにかかるだろう。企業においては、グローバルな連携やアライアンスも視野に、これまで以上に、何をオープンとし、何をクローズにするかの戦略が問われる。

注1 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 内閣参事官(総括)(当時)

【掲載図表】


<参考文献>
NIRA研究報告書『孤立する日本の研究プラットフォーム-放置すれば日本の科学そのものが衰退する-』(2015年6月発行)
NIRA『わたしの構想』No.28「オープンガバナンスの時代へ

榊 麻衣子(研究コーディネーター・研究員)

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