利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > 高齢者を正しく理解して活躍の場を創出する

NIRA政策提言ハイライト

高齢者を正しく理解して活躍の場を創出する

NIRA政策提言ハイライト 2017/05発行

労働力の担い手として期待されるシニア層
 独立行政法人中小企業基盤整備機構が5月8日に公表した「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」に関するアンケート調査結果では、実に、7割以上の中小企業が人手不足を感じていた。そのうち、人手不足の影響として、「人材の採用が困難」と感じる企業が75.6%、「売上減少」を感じている企業は34.4%となった。
 このような状況への対応として、中小企業では、主に「従業員の多能工化・兼任化」(75.6%)、「業務の一部を外注化」(39.3%)などを実施しているが、人材採用面に目を向けると、21.9%の企業が、「高齢者の採用」を推進している。これは、「女性の採用増」(13.2%)、「外国人の採用」(8.7%)よりも多く、シニア層が人手不足時代における労働の担い手として期待されていることを表している。

シニアが輝ける場とは
 NIRAオピニオンペーパーNo.18「エイジレス就業の時代を拓く」では、能力面からみて高齢者が働ける職業のリストを提示している(表1)。シニア人材のニーズが高い飲食・宿泊業や運輸業では、ファストフードの調理人や飲食店員、タクシー運転手などが「経験がなくても働ける職業」としてリストアップされている。これらの業界・職業では高齢者の活躍が期待できるだろう。
 他方、高齢者が働くには設備改修などの特別な配慮が必要となる職業も提示している(表2)。同ペーパーにおいて長田桜美林大学大学院教授は、これらの職業では、適切な配慮がなければ、ミスが誘発され、思わぬ事故につながる恐れがあると指摘している。だが、それは高齢者が働けないことを意味するものではない。長田教授は、これらの職業でも、働き方の社内制度の変更やサポート器具の導入などにより働く環境さえ整えれば現在のシニアは十分に活躍できる可能性をもっているとも述べているのである。シニアの活躍を一層促進するためにも、個々のシニア人材の得手不得手を理解した上で職務環境を改善することが急務だ。

求められるのは「高齢者」を正しく理解すること
 しかしながら、より根本的な問題として、冒頭の調査結果において「人材の採用が困難」と感じる企業が75.6%もいる中で、人手不足への対応として「高齢者の採用」を推進する企業が21.9%という結果は、シニア人材への認識が十分に広がっていないことも示唆している。では、高齢者の採用をさらに広げるためにはなにが必要なのだろうか。長田教授は、高齢者の就業を阻害する要因として、能力を過小あるいは過大に評価するなど、高齢者を誤って理解する「エイジズム」(年齢差別)の存在を指摘している。
 エイジズムを克服するために重要なのは、ありのままの高齢者と向き合い、偏見なく等身大の姿を理解するという姿勢である。実際、高齢者は人生経験や職務経歴の違いから、能力や体力面で個人差が大きい。そのため、「高齢者」としてひとまとまりでみるのではなく、ひとりひとりの人物と向き合い、その人となりや個々人の能力差など、多様性があることを認めるところから始めるべきだ。社会全体で高齢者という存在への理解を深め、個々の人材に適した環境を整えれば、人手不足時代の大きな担い手としてシニアの活躍が期待できよう。



<参考文献>
オピニオンペーパーNo.18「エイジレス就業の時代を拓く―支えられる存在から支え合う存在へ―

西山裕也(NIRA総研 主任研究員)

このページのトップへ