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NIRA政策提言ハイライト

必要な情報を共有して人口減少への対応を

NIRA政策提言ハイライト 2017/04発行

総人口は減少する
 国立社会保障・人口問題研究所が「将来推計人口(平成29年推計)」を公表した。それによれば、総人口は2040年に1億1092万人を経て、2053年に1億人を割る見込みである。単純に考えれば、概ね神奈川県と埼玉県に匹敵する人口が2040年までに失われる計算となる。今回の推計によれば若干、人口減少のスピードは緩和されたというが、縮小への対応が必要であることに変わりはない。地域社会は長期的に進行する変化への準備ができているのだろうか。

前進するまちづくりと停滞する制度改正
 NIRA総研ではかねてからこの問題を議論し、2010年には地域と医療の課題を解決するためのまちづくりの処方箋「まちなか集積医療」を提言した。実際、長野県小諸市では中心市街地に市役所と病院の整備が進んでいる。また、JRさいたま新都心駅前には県立小児医療センターとさいたま赤十字病院が併設され、連携して地域医療の充実を図っている。
 だが、そうした再開発が進められる一方、NIRA研究報告書『選べる広域連携』で指摘された、エリアの縮小や行政サービスのフルセット主義の見直しなど、従来の仕組みの再編、マイナスの調整を必要とするより大きな制度改正への対応はほとんど進んでいない。

情報の格差
 その理由の1つに、行政と住民との地域に関わる情報格差が障害となっている可能性が考えられる。制度改正ではその必要性や方法など、検討項目は多岐にわたるが、住民側にも十分な情報がなければ、最終的に行政の対応策を支持することは難しくなる。NIRAわたしの構想No.28『オープンガバナンスの時代へ』でも熊谷俊人千葉市長が、政策を決めるための選択肢を提示することが大事だという。千葉市では「子ども小児医療費助成制度」の改正にあたり、財源、負担額などの政策決定に関する情報を机上に載せることで、対象年齢の引き上げを、従来では難しい負担額の増加とセットで実現している。

情報共有による政策決定
 高齢化の状況や減少の時期は地域ごとに異なるが、総人口の減少過程ではどの地域も一定程度の再編を迫られる(図参照)。そのため、長期的な縮小を受容できる地域の形成には、冷静なエビデンス・ベースでの議論が欠かせない。今後は、これまでのような情報公開にとどまらず、行政と住民、全て関係者が政策の効果やそれに伴う損失といった必要な情報と選択肢を共有しながら、縮小する地域社会への対応を急がなければならない。


<参考文献>
NIRA研究報告書(2010)『「まちなか集積医療」の提言―医療は地域が解決する―
NIRA研究報告書(2014)『選べる広域連携―自治体による戦略的パートナー選択の時代へ―
NIRAわたしの構想No.28(2017)「オープンガバナンスの時代へ

豊田奈穂(主任研究員)

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